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剛力招来!

イナズマン』感想・第1話

◆第1話「恐怖の新人類 バンバの挑戦!!」◆ (監督:田口勝彦 脚本:伊上勝
 一番最初に「今回の怪人」が紹介される趣向から(そんなわけで、記念すべき作品最初のカットは、イツツバンバラという事に)、青白い電光を四方に拡げるヒーローの放射する赤い閃光が一つずつタイトルの文字になっていく演出が格好良く、OP映像は主人公の乗るスーパーマシンを強調。
 ナレーション「イナズマンとは、新人類と戦う自由の戦士である!」
 OP時点でびしっとヒーローの立ち位置をナレーションで示すのは、ストレートに『仮面ライダー』を意識した作りでしょうか。
 放映された1973年の東映ヒーローは、2月に『V3』、4月に『ロボット刑事』(9月まで)、5月に『キカイダー01』、10月に今作がスタートしており、主演の伴直弥さんは、片方でイチロー兄さんを助け、片方で新人類帝国と戦う事になる大活躍。
 「夜の夜中けったいな連中が現れ、お嬢さんと子供が狙われている。男なら逃げるわけにはいかん!」
 夜の街で足を揃えて行進する、ヘルメットにガスマスク風な見た目の不気味な兵士に対し、正義感を発揮して立ち向かうのは、通りすがりの大学生――その名を、渡五郎、とコメディリリーフの丸目豪作。
 ……まあ、襲われている側のお嬢さんと子供も、世が世なら怪獣と戦っていそうなオレンジ色のけったいなコスチュームに身を包んでいるわけですが。
 「新人類帝国のマークだ!」
 生身で謎の兵士を蹴散らしていく五郎と丸目だが、闇の中に縦に並んだ五つの顔が浮かぶと、インパクト抜群の不気味なデザインながら何故か両腕がイカのゲソにしか見えない悪のミュータント、新人類帝国のイツツバンバラが姿を現す!
 「驚いたか。驚くのはまだ早い」
 自己完結と切り替えの早いイツツバンバラは巨大な地割れを引き起こし、更に火炎放射を受けた渡五郎は埠頭から海へと落下するが、悪のミュータントを集め世界征服を企む新人類帝国と戦う、オレンジコスチューム軍団・少年同盟のアジトに保護される。
 「渡五郎くん、新人類は悪のミュータントを集めました。私は、世の悪に穢れていない少年少女たちのミュータントで、この同盟を作ったのです」
 謎の声がさらっと、子供を戦場に送り出す事を正当化してきたぞ!
 「ミュータント?」
 「ミュータントとは超能力者。すなわち、優れた能力を持つ人間の事です」
 超能力者=現生人類の中に登場した変異種、というSF的な要素が持ち込まれ、旧人類を殺戮したり奴隷化しようとする新人類帝国は、冒頭における戦闘員の見せ方やデザインがナチスドイツを想起させる事からも、悪しき「優性思想」を下地にしている模様(ちなみにアメリカンコミックでは、『X-メン』が1963年にスタート)。
 古典SF『スラン』(ヴァン・ヴォークト)に見るように、ミュータント(超能力者)テーマはそれ自体が「差別」や「迫害」のテーゼを寓意的に含む面がありますが、果たしてどこまで踏み込んでくるのか……声の主――白いコスチュームの中年男性――が姿を現すと、腕を組んで不審げな視線を向ける五郎、正しい(笑)
 怪しすぎる男はキャプテンサラーを名乗るとプロパガンダ映像で戦いの正当性を訴え、
 「……新人類。……戦ってやる!」
 まんまと乗せられた五郎が超能力テスターにかけられると、計器の針を吹き飛ばす潜在能力を示してトントン拍子に話は進み……命の恩人を助けた風を装っていますがこれ、気を失っている間にアジトで分析装置に掛け、「あー、こっちの髭は駄目だな、素質ゼロ。適当に記憶をいじって路地裏にでも置いてきてくれたまえ。お? こっちの素材はいいな。しめしめこの数値なら……」と実験中の人工ミュータント開発薬の投与とかされていませんか。
 「キャプテンサラー、僕はどうすればいいんです。僕に戦う力を教えて下さい! 新人類は許せない!」
 「君はその装置の中で正義の為に戦う、自由の戦士になるのだ」
 五郎はついさっきまでテスターだった筈の装置で何かの刺激を与えられて超能力を活性化させられ……このキャプテンは、本当に、信じていいキャプテンなのか。
 一方、禿げあがった頭に尖った耳で地底人というか宇宙人というか如何にもミュータント的なデザインの帝王バンバ(石を斬る蛮族ではない)が東京攻撃を指令すると、大々的な爆破映像に続いて一般市民が新人類帝国の襲撃を受け、キャプテンの胡散臭さが解消されたわけではありませんが、少なくとも新人類帝国は旧人類に対する悪の組織と判明したところで、少年同盟はキャプテンの趣味と思われる変なポーズを取って緊急出動。
 恐らくは、子供のごっこ遊びの中に取り入れてほしい意図なのかと思われますが、少年同盟のミュータント兵士たちが直接ワッペンを投げて戦うなど、前年の作品にして先日まで配信で見ていた『キカイダー』に比べるとだいぶ、児童層への意識がハッキリと見える作り。
 バンバラ兵をワッペンで次々と屠り去る超能力戦士たちだが、イツツバンバラにまとめて炎であぶられたその時――
 「新人類! 俺は、サナギマン!」
 ちょっとミミズっぽさを感じる茶色の戦士が高いところに現れてその危機を救い、著名な二段階変身の一段階目として敢えてのデザインでありますが、色といい顔といい、土属性のメンバー三番手感が迸ります。
 ナレーション「サナギマンが成長すると、ベルトのゲージが頂点に達し、イナズマンとなるのだ」
 イツツバンバラの火炎放射をくるくるかわしている内にゲージを溜めたサナギマンは、「超力招来!」の掛け声と共に内側から派手に弾け飛ぶ驚愕の実質爆死技により、羽化登仙。
 「貴様、何者だ?!」
 「サナギを破り、蝶が舞う。トランの殻を破った時、このトランザが――天に輝く!」
 ……じゃなかった、
 「貴様、何者だ?!」
 「自由の戦士! イナズマン!」
 第一段階が土属性なら、第二段階は空属性、といった具合で、特徴的な触角を広げて黄色いマフラーをなびかせ、青空の色のボディに稲妻の意匠が散りばめられた超人・イナズマンが誕生し、人の尊厳を踏みにじる悪に対して、その尊厳を守る者、というのは直球で仮面ライダーを継承。
 イナズマンがイツツバンバラの火炎を逆転して追い払ったところでAパートが終了し、大学に戻った五郎の前に、鏡越しに姿を見せた帝王バンバが宣戦布告。
 サラーのところよりうちの方が絶対待遇いいから! 制服も格好いいし、今ならおやつ券もつけるから! と五郎をスカウトするも断られたバンバは、五郎が面会を取り付けていた生物学の植田博士をさっくり殺害すると罠を仕掛けるが、少年同盟の介入によりこれも失敗すると、イツツバンバラが五郎へと襲いかかる。
 「剛力招来!」
 人の命を蔑ろにする新人類へと怒りを燃やす五郎がポーズを取ってサナギマンに変身すると、またも火炎にあぶられている内にゲージが溜まり……ヒーローに必要なものは筋肉、ヒーローに必要な属性は、M。
 そう、タローマンも言っていた気がします。
 「超力招来!」
 再びサナギを吹き飛ばし、一種、自家発電的に「死と再生」を繰り返すヒーローであるところのイナズマンは、イツツバンバラの作り出した地割れに飲み込まれそうになるも自在に空を飛び回ってこれを回避すると、触角を動かしてイナズマタイフーンによりビル火災を鎮め、肉弾戦では無しに、互いの超能力を強調するスタイル(なお、超能力バトルマンガとしてヒットした『バビル2世』(横山光輝)の連載が1971~73年で、1973年1月にはアニメ化された頃)。
 この前座として、サナギマンが従来的な戦闘員との肉弾戦を担当するのが二段階変身を上手く活用していますが、イナズマンは強力火柱返しにより敵ミュータントの得意能力を封じ、後の伊上作品でも登場する「○○返し」はもしかして今作が発祥? ……と思ったら既に前年の『超人バロム・1』で「パンチ返し」により主人公が必殺技を破られておりました。
 激しい超能力同士の衝突の末、互いにMPを使い果たしたのかEDテーマをバックに地上での格闘戦となると、相手を投げ飛ばしたイナズマンは空中で強烈な右ストレートを打ち込み、新人類チェストでごわす! により、イツツバンバラは大爆死。
 背後で流れるEDテーマで「チェスト」が連呼されるなど、やたら九州推しなのですが、鹿児島弁で喋る相棒・丸目豪作の苗字も、江戸時代に九州一円に広まったタイ捨流の祖・丸目長恵からでありましょうか。
 「勝った……俺は新人類を倒した!」
 高層ビルの屋上から地上まで、生身でひょいっとジャンプして着地できるようになった五郎には、変形機構を持った空飛ぶスーパーマシン・雷神号がニンジンとしてぶら下げられ、自動車税キャプテン払いの愛車が手に入る条件は、少年同盟の同志としてこれを着る事! と揃いのコスチューム(黒)がセットでついてくるのであった。
 だが、新人類は無数に居る!
 ナレーション「恐るべき悪の組織・新人類帝国は、平和な地球を狙っているのだ。戦え、自由の戦士・イナズマン!」
 予告は約15秒と短めで、帝王バンバが次回の悪のミュータントと作戦を簡単に紹介し、ナレーションがサブタイトルを読み上げるスタイルで、次回――ダム破壊!