東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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雇わなければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第41-42話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第41話「視線」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹

  • 祭だ祭だガゼル祭だぁ! が怪獣もといサバイブドラゴンバイク襲来で幕を閉じ、一度は断腸の思いで家族を諦めた香川が、龍騎のヒーロー行動により妻子を救われ、「一度手放したものが無事に戻ってきてしまう」事により、次はより大きな痛みとの直面を迫られるのが、グロテスクなほどにえげつない。
  • ミラーワールドから戻るや妻子の無事を確認する香川に、あーあガッカリだなぁ……と視線を向ける東條。……好感度を上げる気が全く無くて凄い(笑)
  • 「いいですか東條くん、英雄であるという事は、人の命に鈍感になるという事ではありません」「……勿論……わかってますが」……本当にわかってるの?!
  • 「先生は多くの者を救う為に、自分の大切なものを犠牲にできる人なんだよ。英雄だからね」「大切なものがあるなら! どんな犠牲を払ってもそいつを守ればいい。それが人間じゃないのか?」
  • 浅倉は標的としてロックオンした東條の居場所を求めて北岡の事務所やらOREジャーナルやらを訪問して回り、見所は、頭突きノック。
  • 劇場版やTVスペシャルに回っていた関係もあってか、夏のお笑い編だった第29-30話以来となる井上敏樹ですが、ここに来て割と真司を書きにくそうで、小林脚本において「これ以上の死を招かずになんとか事を収めようと必死に立ち回っている真司」が、井上脚本だと「その場その場の対人関係で色々となぁなぁにしがち」で、心の底から人を恨む事ができない真司のキャラクターは、井上敏樹にとって「情念」の核が掴みにくい人間なのかもしれません。
  • ミラーワールドの存在に近づきつつある令子をなんとか真実から遠ざけようとする北岡だが、令子と一緒に香川の研究室を訪れる事となり、ベンチに座る2人の背後に窓越しに立つ東條がとってもホラー。
  • 東條はトラモンスターを令子にけしかけて北岡と戦闘になり、背後の窓ガラスに向けて北岡がデッキを突き出すと、ブラインドが上がって建物の内側に立つ東條もデッキを掲げるのは、凝った見せ方。
  • 「信じられるか? ……この俺が……あんな……あんなわけのわからない奴に! あいつが強いのか……俺が弱くなったのか……」……ライダーである以上、メインキャラの一角となっている北岡にも始末をつけれなければいけないわけですが、なんやかんや、吾郎ちゃんが側に居て、令子さんに粉をかけてはあしらわれ、真司や蓮と馬鹿やったり殺し合ったりする、そんな“生”に充実を感じ始めている、という流れになりつつある感。
  • “終わらせるべき戦い”が“このいびつで愛すべき日常”に変わっていくのは白倉Pの嗜好かなとも思いますが、“戦わなければ生き残れない”が“終わらなければ忘れられない”のかもな、と与太を一つ。
  • 「しかしわからんな。おまえ、なんだって俺を助けたりしたんだ?」「おまえに貸しを作っておくのも悪くないと思ってな。でかい貸しだ。いずれ返してもらうぞ」「ははははは、はははははははは! …………やな奴だな」「……お互いにな」
  • “英雄”の名の下に短絡的な行動を繰り返す東條の手綱を香川が抑えきれなくなっていく一方、オーバーアクションでやたら調子の良い長身の青年が花鶏を訪れ、「仮面ライダーインペラー 佐野満」と名刺で名乗る新機軸。
  • 最終盤に登場する新ライダーとして、戦力として自分を雇わないか、と売り込みを図ってくる道化的な立ち回りはわかりやすい掴み。
  • インパラ×エンペラー、の名前が一ひねりあって面白いインペラーは、カードリーダーが膝についている神崎士郎の苦し紛れを感じるデザインで、ガゼル乱舞からの真空飛び膝蹴りでミラーモンスターを粉砕。
  • 「どうです? オレ強いでしょ? お買い得ですよ。ね、先輩たち」

◆第42話「信仰」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹

  • 「多分……オレを味方につけた方が勝つんじゃないかな~」……お調子者の仮面を被るインパラ佐野は、真司と香川の双方に自分を売り込み、そんな佐野を背後から冷たく見下ろす東條への好感度が、ちょっぴり上がりました(笑) やればできるじゃないか、東條!!
  • この局面で、瞬間的に東條よりも感じ悪いキャラを出せるのは、井上敏樹の恐ろしいセンスだと思います(笑)
  • 浅倉は神崎から東條の居場所を教えられ、北岡はどうかすると現状に甘んじそうになる己を振り切る為に、蓮は真司が佐野を優衣ちゃん親衛隊に加えた事に腹を立て、同時に皆が動き出すのは面白い流れ。
  • 大変楽しそうに清明院大学に突入する浅倉だが、香川の実験室は既に引き払わており、空振りで大暴れ。そこに北岡・蓮・真司が揃うと、当面の敵は東條、と真司を除く皆の心は一つだった。
  • 揺れる照明によるチカチカ演出は、目に痛いのでやめてほしかった。
  • 香川に雇われたインペラーはガゼルモンスターで優衣を襲い、オルタナティブ・タイガ・インペラーと3対1で龍騎が身動き取れず、複数のモンスターに優衣が追い詰められたその時――優衣は、モンスターを強制的に支配する謎の力を発揮する。
  • 「先生……僕、ミラーワールドを閉じるの、嫌になっちゃって。ライダーの戦いに勝ち残るのが、真の英雄かな、って」……タイガは突然、オルタナティブを背後から攻撃し、不意打ち常套のファイナルベントといい、タイガ、“背後から急に攻撃”が多いのも、感じ悪さを強めている要因なのだろうな、と(笑)
  • しかも、本人の中では特に問題行為だと感じていないので、卑怯を売りにするわけでもないという。
  • タイガのファイナルベントを受け、派手に地面を引きづられたオルタナティブ、呆気なくリタイア。
  • 「先生は僕にとって一番大事な人でした。だから犠牲になってもらわなきゃ。僕が英雄になる為に。……ごめんなさい先生。……ごめんなさい」……多くを守る為に大切な者を犠牲に出来るのが英雄であるならば、大切な者を犠牲にするのが英雄の第一歩だ! と超解釈を発動した東條は香川を殺害し、消滅していく香川の死体を抱えながら歩く東條の狂気は、インパクト大。
  • オルタナティブ・ゼロ、デザイン大好きなのですが、改めて見ると、そんなに良いところのないまま、タイガインパクトの踏み台としてリタイアしてしまいました(笑) 最後の見せ場は、電人バイクスピンか(その後、ガゼル軍団にはやられっぱなしでしたし)。
  • 龍騎の呼びかけに一切応えず、虚空を見つめる優衣の瞳に映るものは果たして何か――。

 大を取るか小を取るか、主人公に「選択」を突きつける側だった香川が、主人公に自分の大切な「小」を救われた事により、「大」の為に「小」を切り捨てる覚悟に強烈な揺らぎを与えられ、逆にその「選択」を迫れるのかな……と思ったら、身内の暴走であっさり片付けられてしまったのは、割と残念。
 商材としてのタイガを目立たせる都合で、数話に渡って浅倉の存在を控えめにしないといけなくなっているのも、全体の流れとしてはあまり面白くなっていないと思うのですが、秋口まで話の展開を緩めないといけなくなった弊害が出ている部分かな、と。
 俗の塊、ともいえる佐野は実に井上敏樹らしいキャラクターですが、色々な点でメタ的には大きな扱いになりそうにもなく、設定上、“敵としての仮面ライダー”はエスカレートさせにくい(神崎士郎直轄を除くと、近い条件で始まっている筈なので)点が、“終盤らしい作劇”との兼ね合いの中で、やや難しくなってしまっている感。