東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

取って代わらなければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第37-38話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第37話「犠牲」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • ミラーワールドに引きずり込まれた優衣に襲いかかる、トゲトゲの剣を持った新たなライダー……格好いい!
  • 優衣を助けに向かった龍騎はストライクベントを発動し、優衣ちゃんを守る為ならやむを得ん! とウルトラ警備隊魂を発揮して謎のライダーをどかーんしてしまうのかとドキドキしましたが、煙幕代わりにして逃走。
  • 香川一味の暗躍、優衣を狙う謎の悪意、その辿り着く先は――神埼士郎?
  • ここで真司が、手塚の「神崎優衣から目を離すな」を思い出すのは、前半との接続に加え、カメレオン脳天落としになっていた最新の手塚の記憶が上書きされて良かったです!
  • 「忘れたのか? ライダーになった以上、戦い続けなければ……死ぬしかない。それに……無かった事にするには、戦いすぎた」……恵里は昏睡状態から意識を取り戻すが、医師からその状態について何かを聞いた蓮は戦いの渦中に身を起き続ける事を選び、奇跡の代償としての「世界のルール」から「個人が見てきたもの」に繋げる、キャラの心情と行動を繋ぐ台詞回しの巧さが光ります。
  • それを聞いた真司が、改めて香川の口にした「ミラーワールドを閉じる方法」に希望を見出そうと考えるのも上手い流れで、しかし、真司、遂に、クビ。
  • 「おまえさ……最近なにやってんだ?」「え?」「おまえはバカだけど、ただサボる奴じゃないってのはわかってるわけよ俺だって。……言えよ。なにやってんだ」……慌ててスライディング跪いて忠誠を誓いにOREジャーナルへ戻ると編集長が格好いいところを見せ、黙り込む真司は大幅言及を言い渡されるも、首の皮一枚でクビが繋がる事に。
  • 研究室に突撃した真司に対して香川教授は虎のライダーの名を「仮面ライダータイガ」と呼び……あれもしかして、劇中で本人がライダー名を名乗るのは初では? と思ったら同じ見た目のデッキが三つ出てきて、メタ的には「本人でなかった」という仕掛けなのかも(笑)
  • 「ミラーワールドを閉じるのは、まさに英雄的行為が必要なんですよ」「英雄?」「例えば、10人の命と、1人の命。どちらかだけを救えるとすれば、どちらを選びますか?」「……それは……」「いいですか。多くを助ける為に、一つを犠牲に出来る勇気を持つ者が、真の英雄なんです」
  • いやーな命題を突きつけてくる香川。神崎士郎にしろ香川先生にしろ、どっちを向いても、胡散臭くて感じ悪くて究極の選択を突きつけて逃げ場が無い!
  • 病院を抜け出した恵里の前で蓮はナイトに変身すると、えらく格好いい見せ方でモンスターとの戦闘に入り、いちいちドラマチックな男。
  • そこに龍騎も飛んできて二人でサバイブするとファイナルベントを発動し、空を舞うサバイブドラゴンに龍騎がまたがると、空中でバイクに変形するのと、その後の接地シーンのCGがなかなか格好いい。
  • モンスターを撃破して帰還後、恵里に向けて「おまえは何も心配するな」のパーフェクト駄目男ムーヴを炸裂させて走り去る秋山、秋山……!
  • 一方、役に立たない下宿人たちに堪忍袋の緒が切れたおばさんは新たなアルバイトを募集しており、色々それどころではないにしても、もはや仕事しないのがデフォルトになっている真司ですが、「下宿先の手伝い」+「出社して仕事」をこなしながらヒーロー活動するのはハードルが高かった事を感じさせます。……実は、仕事とライダーを両立させている貴重な存在なのでは、北岡先生。

◆第38話「盲信」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • 「勇気さえあれば、誰でも英雄になれるしね」……花鶏の新たなアルバイトに雇われたのは、香川研究室の白シャツ学生・東條悟。
  • 優衣の前には再び謎のライダーが現れ、コオロギなのかアリなのか、とにかく滅茶苦茶格好いいのですが、そういえば、龍・コウモリ・カニ・牛(?)・サイ・エイ・蛇・フェニックス(?)・トラ……と来て、意図的に排除していた昆虫系をここで出した、という事でありましょうか。
  • 「ライダー同士の戦いを止める為……かな。神崎優衣が死んでしまえば、全てが終わる」・「さっき戦ってたのは、仮面ライダーじゃなくて、オルタナティブ。ミラーワールドを閉じるために、香川先生が作ったんだ」・「彼女が居なくなれば、みんなモンスターに狙われる事もなくなるらしい。大勢の人が助かるとしたら、小さな犠牲だよね」
  • 東條の口から香川一味の目的その他がぺらぺらと語られ、何が怖いって、「……だって」「らしい」など、東條の行為が受け売りや伝聞に基づいているのが示される事で、人一人を害そうとしながら、自分の意志がどこまであるのか見えないこと。
  • 東條の純白を強調した衣装には、(良し悪しとは別に)「純粋・無垢」といったニュアンスもあるのでしょうが、割とストレートに、「カルト宗教」のイメージも入っているのだろうなと。
  • 「自分で真実を知ろうと動く」ジャーナリスト・真司、との対比の意図もありそうですが……前回問題になったように、真司が、いまいち、ジャーナリスト、やっていない(笑)
  • 真司にはまたも重い葛藤が突きつけられ、蓮は正しいも間違いも関係なく、ただ恵里を死なせない為だけに戦うと宣言。
  • それにしても、恵里視点の優衣ちゃん(一年の空白があったとはいえ、これまで全く面識が無かったが、あの蓮の友人らしく、えらく親身に看病してくれる女の子)、凄く謎の人物。
  • 恵里の見舞いに通う優衣の図は、優衣ちゃんの悪い子じゃないアピールの意味も大きいでしょうが。
  • 蓮は病床の恵里を担ぎ出すとテーマソングを背負って思い出の海へとバイクを走らせ、凄く、長石多可男です。
  • 「蓮……」「心配するな。またすぐに目覚める」「お願いだから、私の為じゃなくて…………自分の為に……」「……ああ。……俺はそうしてる」……秋山はとにかく、言い回しが格好良くて得。
  • 「優衣ちゃんに! 優衣ちゃんに手を出すな!」龍騎は優衣を狙うオルタナティブを妨害し、「一つを犠牲にするのは、勇気でもなんでもない。俺は……大きな犠牲も、一つの犠牲も、出さない! 綺麗事かもしれないけれど、今はそれしかない」と香川一味とは違う道を行く事を拳で表明。
  • 殴り倒されたオルタナティブは、立ち去ろうとする龍騎を背後から攻撃すると倒れた龍騎に必殺攻撃を放とうとするが、突如発動したタイガのファイナルベントによって抹殺され、消滅したその正体は、割と長々と登場していた学生・仲村。
  • 王蛇の、ライダー脱獄(第18話)→デビュー戦でガイ爆殺(第19話)には及ばなかったものの、顔見せ登場の第33話の後、実質的なデビュー(第35話)から4話であっさりキルマークを叩き出してみたタイガの正体は、東條悟。
  • 「おまえが、タイガだったのか……。……どうして仲間を……」「僕も、優衣ちゃんを殺してしまうのが嫌になったんだ」「だからって!」「仲村くんには、悪い事したかも」……こ・わ・い。
  • 激昂する真司だが「もう、やっちゃったから」で片付けつつ涙をこぼす東條とは意思疎通が噛み合わず、浅倉とは別方向に凄いの出てきた感。
  • 「久しぶりだなぁ……こんなに苛々するのは!」……その浅倉は拘置所で苛立ちを募らせており、消失事件を追いかけ続けてきた令子が、北岡ルートから再び浅倉に近づいて、つづく。

 オルタナティブは、登場タイミングといい、毛色の違うデザインといい、前作『アギト』におけるアナザアギトを彷彿とさせますが、『アギト』においては前半からずっと名前の出ていた「木野さん」がいよいよ姿を見せて……という形だったのに対して、今作では「東明院大学」がキーだったという形に。
 そして、神崎士郎の元ゼミ仲間として、大学を象徴する役割を示していたのが仲村だったのですが、東條の踏み台にされて、さっくり退場。
 「仲村くんには、悪い事したかも」
 は実に凶悪な台詞でしたが、神崎士郎の魔の手を逃れながら、悲惨な最期を迎える事になってしまいました。復讐に囚われて一線を越えてしまったものの、そもそも復讐の動機が「ゼミの為」なので割といい人だった気はしますが、その過去ゆえに、事件関係者(主人公サイド)に突っ慳貪な反応をする憎まれ役を割り当てられたところもあり、あれこれ可哀想な人であったな……と、何故か、20年ぶりに見たら、物語の被害者ぶりが気になる存在になってしまいました(笑)
 まあ今作、神崎士郎に関わったら最後、感が凄いですが!