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みらいがきた

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第43話

◆ドン43話「トキかけナゾかけ」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 喫茶どんぶらで新作マンガを皆に読ませるはるかだが、皆の反応は芳しくなく、正直者の太郎の採点は、ズバリ、25点。
 「最高ッス!」
 (あんたはいい)
 一人、満面の笑みでサムズアップしてくるジロウに向ける視線が、仲間(一応)に向けるものじゃ無くなってます、はるか先生!!
 ……鬼頭はるかさんの、どんな表情でも怖いものなし、の演技プランは素晴らしいと思います(笑)
 一方、警察あまりに酷くない? と思われた犬塚翼の指名手配はさすがに取り消され、獣人の森で何が起きたのかを考え続ける犬塚は、チラシを配る着ぐるみを見た瞬間、ウサギの着ぐるみの姿がフラッシュバック。
 どんぶらに飛び込んできた犬塚は、獣人の森からトーンカッター(以前のマンガ対決の時も思いましたが、デジタルによる執筆が増加していくにつれ、マンガ家を示す記号表現もどんどん難しくなりそうだなぁと思ってみたり)を振るって自分を救ったウサギの着ぐるみの姿を慌てて書き留め、それをはるかが、怨敵「椎名ナオキ」と認識。
 冗談社に向かった二人はタクシーから降りてきた椎名を発見するが、犬塚に声をかけられるや椎名は突然逃げだし、あ、割とナチュラルに、立ちはだかった女子高生を投げ飛ばしたぞ、ウサギ。
 「……逃げても無駄だぜ。なんせ、俺の専門だからな。以前、獣人の森で会ったろ? 教えてくれ。どうやって俺を助けた? どうやって、森に入った?」
 「私は、知っていました。あなたがあの日、獣人の森に行く事を」
 「知っていた……? どういう事だ?!」
 女声を加工したような声で喋る椎名ウサギを問い詰めようとするプロ逃亡者の犬塚だが、突然、次元の裂け目を押し開いてバイクに乗ったムラサメ(サングラスと肩に金色で模様入り)が出現。
 その標的は――どういうわけか、椎名ナオキ。
 たまにはこういうのもやりたい的なバイクアクションを取りこみつつ、成り行きで一緒に逃げる犬塚と椎名が追い詰められたその時、響き渡るギターの音色……じゃなかった風を切り地面に突き刺さるもう一振りのムラサメ。
 (戦いなさい、ムラサメ。アレは――存在してはならぬ者)
 ムラサメとライジングムラサメが切り結ぶと、引き起こされた衝撃波により吹き飛んだウサギの首がもげ、もといヘッドが外れ、中から出てきた顔は、鬼頭はるか、と瓜二つの女。
 (椎名ナオキが、わ、わ、私ぃぃ?!)
 「て、思ったよね。わかるよ、わかる」
 椎名ウサギがうんうん頷き、立て続けにサプライズの嵐が吹き荒れる中、二人(犬塚視点だと、一応ただの一般人)を逃がすために囮を買って出た犬塚が、ウサギオン
 一方その頃、喫茶どんぶらに真っ青な背広を着た男が入ってくるとローズヒップティーを注文するのだが……
 「無いよ」
 「え? 無いものもあるんですか?」
 「うちにはなんでもある。だから無いものも、ある」
 頓知のような事を言い出したマスターは、どこか冷淡な調子で奥に引っ込んでしまい、トイレから戻ってきた猿原が目にしたのは、死んだアラブの大富豪が親戚だった事が判明して莫大な遺産を相続した結果、すっかり拝金主義に染まってしまったような見た目をした、猿原真一と瓜二つの青年であった。
 更にそこに二人のはるかがやってくると、
 「迎えに来たよ、はるちゃん!」
 「しんちゃん」
 手に手を取って見つめ合う二人はなにやら桃色の波動を周囲に振りまき、なんかもう、Aパート、ひたすら、衝撃の展開しか無い(笑)
 二人は未来から来たと説明され、戦いに疲れた未来はるかが休暇を取ろうと「マンガ家として売れっ子だった時代に戻りたい」とキビポイントを使った結果、時空が混乱して別の次元に辿り着いてしまい、二人のはるかが同時に存在する世界で、成り行きにより盗作騒動が巻き起こってしまったのだった。
 未来猿は、はるかを連れ戻しにこの世界にやってきた事を語り、二人は、「未来」かつ「別次元」の存在という事のようですが、そこに呼び出しを受けたタロウがやってきたその瞬間――
 「桃井タロォォッ!!」
 鬼の形相になったアナザーはるかが加速を付けた全力の左ストレートをタロウの顔面に叩き込み、うん、これはもう紛う事なき、鬼頭はるか先生ですね……!
 「すいません、私たちの、世界では、ドンブラザーズ内で、色々、揉め事が……」
 「……面白い」
 鋼鉄の額ではるかパンチを受け止めたタロウは邪悪な笑みを浮かべ、やはり基本、正面から自分に歯向かってくる相手に好意的です。
 その頃、アナザームラサメから必死に逃げ惑うウサギの着ぐるみの姿を、ソノーズが首をひねりながら見物していた(笑)
 「いったいどうなってる? あれもこれも全然わからん」
 倉庫に逃げ込んだ犬塚が、視聴者の気持ちを代弁しながらウサギヘッドを外したところをソノニに目撃され、とにかく鶴野みほを犬塚に斬らせた後のグッチャグチャの修羅場を見たくて仕方がないソノニは、犬塚の代わりにウサギオン
 どんぶらでは、時空の扉が開いて未来からの迎えが来る前にどうしても、とアナザーはるかが『新初恋ヒーロー』の最終回完成を目指してギリギリまで原稿に向かっていたが、タロウはそれを冷たく一瞥。
 「マンガなどどうでもいい。とっとと帰れ」
 「おまえは黙ってろ! 桃井タロウ!」
 (いったい何があったんだ……?)
 (((マジで……)))
 男ども、戦々恐々。
 「すいません、マンガは、はるちゃんの、夢、だから……」
 「夢? 夢よりも、目の前の現実の方が、ずっと大事だ」
 「いつでも、どこでも、変わらないな、君は。君は夢を持つほど不幸ではない。だから幸せを知らない」
 「意味がわからん」
 海賊鬼回あたりを区切りに、一時期消えかかっていた「個人」の「夢」と「ヒーロー」の「使命」の相克が、一分一秒に命を燃やすアナザーはるかの姿と、それを見守るアナザー猿原の言葉で再浮上し、思えば脳人がヒトツ鬼にならないのは、欲望を理性で制御できるという以上に、いっそ鬼になるほどの狂おしい想いを持てないから、ともいえるのかもしれず、根を同じくするタロウは、
 「完全」であるがゆえに「夢」を持つ必要がなく
 「完全」であるがゆにに「幸せ」を理解できない
 と、その抱える欠落が改めて浮き彫りに。
 近年見た作品の中で、より神仏の領域に近い文字通りの超人的ヒーロー像というと『キカイダー01』のイチロー兄さんが印象深いですが、イチロー兄さんも自身の「夢」とかピンと来なさそうですし(他人のそれを否定はしないとは思いますが)、人造人間であるイチローと、桃井タロウの近接を見る時、「己以外に祈る神などいない」事こそが、完全無欠のヒーローが抱える究極的な孤独なのかもしれません。
 その流れで考えると、「絶対正義」を捨てた存在が、何故「見果てぬ夢」と「人間愛への狂信」を抱えた“正義の怪物”・ジャンパーソンとして甦ったのかが見えてくる気がするのが、東映ヒーロー史における『特捜ロボ ジャンパーソン』の面白いところでありますが、『ジャンパーソン』とは、神に擬せられた己を否定しようとする者の物語、の一面も持っていたのかな、と。
 閑話休題、はるかはアシスタントとして手伝いを申し出て一緒に最終回に取り組み、なにやらわけあってアナザー猿には冷淡なのか? と思っていたマスターはローズヒップティー仕入れて奥から姿を現し、別次元の猿原は、見た目通りに金持ちであった。
 「たとえ未来でも別次元でも許しがたい……! 侘び寂びはどうした?!」
 怒れる高等遊民へ向けてアナザー猿はスマホ的装置を手に短歌を詠み、
 「素敵! しんちゃん!」
 猿原はライバル意識を燃やしながら俳句を詠み、通じ合ったのかどうなのか……背後ではマスターが、アナザー猿の出した二千円札をしげしげと眺めてからポケットにしまっていた。
 「あのぉ……もしかして……そっちの世界で付き合ってます? 猿原さんと」
 「……ええ。……ラブ×2です」
 「うわぁぁっ! どういう趣味なの」
 「はぁっ?!」
 恋愛観の違いから二人のはるかが顔芸対決でぶつかり合い、雉野とみほちゃんについてはアナザー猿が固く口をつぐんだところで、はるかが囮となってくれた犬塚の事を思い出し、色々それどころではない事が多すぎたので、見ている側としても責めづらい(笑)
 はるかの案内で倉庫街に向かったドンブラ一行が目にしたのは、ウサギを装着したソノニを守りながらソノーズがムラサメと戦う意味不明な光景で、ムラサメに蹴り飛ばされた拍子にウサギヘッドが外れて慌てるソノニの表情が、なんともいえない面白さ。
 アナザームラサメがはるかを標的に誤認した事から一同アバターチェンジするとイヌブラザーも現れ、思い通りに事が運ばない事に苛立つソノニは変身すると怒りの矛先をイヌとキジに向け、アナザー猿はスター仮面の存在に反応。
 「インチキ編集長! よくもはるちゃんと!」
 「何言ってんだおまえは!?」
 「あっちの世界の揉め事を、こっちに持ち込むな!」
 何か、あったらしい(笑)
 「おい、聞きたい事がある。おまえには夢があるか?」
 ドンモモはバロム仮面と剣を打ち合わせ、なし崩しの交戦ながら、かなり力の入った殺陣で激突。
 「そんなものに興味はない!」
 「ああ。それでいい。さすがだ」
 完璧な存在を自認するソノイの答は勿論ノーで、最終章へ向けて改めてタロウと脳人の同源が強調され、不確かな未来にかなえたいものなど存在せず、今この瞬間に全力で開き切ってこそ生きてるって気がするだろう?! と高笑いするドンモモは闘争を加速。
 コンドール仮面はキジとイヌに矢を乱射し、ダブルサルは侘び寂びのパワーで編集長を襲い、ドンモモとバロム仮面は死闘を繰り広げ、オニを巡ってムラサメとムラサメと金ドラがぶつかる敵味方行方不明の大乱戦の中、アナザームラサメの攻撃を受けて地面に倒れるはるかだったが、マンガを描き終えたアナザーはるかが到着すると、二人並んでアバターチェンジ。
 背後に次元の亀裂が広がる中、アナザーオニは指笛で御神輿フェニックスを召喚し、
 (いったい何があったんだ……?)
 (((マジで……)))
 別次元の桃井タロウは何をやらかしてしまったのか戦慄が駆け抜ける中、アナザーオニは御神輿フェニックスを装着し、祝え! 全ヒーローの力を受け継ぎ、時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者、その名もオニシスター:オミコシアーマー。また一つ、マンガの王に近づいた瞬間である!
 オニ魔王とサルロボタロウの合体ラブラブエンドで大爆発したアナザームラサメが巨大化するとムラサメロボ同士の戦いとなり、マザーの声に攪乱されたアナザームラサメロボの隙を突いて全力シャーク光線が炸裂すると、アナザームラサメロボは木っ葉微塵に弾け飛ぶのであった。
 追跡者ムラサメ、覚醒ドンキラーに続き、超次元の刺客アナザームラサメ、おまけで別作品ですが同期『ギーツ』における洋館のジャマトライダー、と不死身のモンスターに追われるサバイバルホラー展開が重なり気味なのですが、東映特撮関係者の間で、今なにか流行っていたりするのでしょうか。
 ウサギの着ぐるみを活用しての今作らしいドタバタへの持ち込みは面白かっただけに、短期間に似たようなアイデアが繰り返される形になってしまった点は、惜しまれます。
 「短歌もいいが、俳句もいいぞ」
 「色々ごめんなさい、はるかさん……」
 「ちょっと、もう少し話を」
 「……私の、マンガの中に……」
 アナザー鬼とアナザー猿は、次元の裂け目を通ると長い休暇を終えて正しい次元へと帰って行き、喫茶どんぶらに戻ったはるかがテーブルの上に残された原稿を目に留めると、そこには、「はるかさん 最後のコマ お願いします」の付せんが。
 「……誰が書くかい!」
 原稿の束に手をかけひと思いにこの時空から抹消しようとするはるかだが半ば以上に本気ではなく、椅子に座って原稿に正対したところからエンディングテーマが流れ出し、白紙の大コマにペンを入れ始めたはるかに頭上からカメラが寄っていくと――

 目指すは どんな ハッピーエンド?

 が入るのが圧倒的に美しく、演出の勝利!!
 引っ張ってきた椎名ナオキ問題をドンキラーばりに1話でさっくりと片付け、しかもその説明が「未来」とか「別次元」とか何でもありだったのはガッカリした部分もありましたが、「過去」を知る者が現れたけれども、それでも「未来はまだ白紙」であり、そこに何を描いていくのかは「今のはるか次第」である事を、マンガのコマとEDテーマの合わせ技で表現したのが125点だったので、気分はスタンディングオベーション
 かくして、はるかとはるかの合作で『新初恋ヒーロー』は完成し、無事発売された最終巻は大ヒット。
 (大ベストセラーか……越えること、出来なかったな)
 EDテーマをバックに本屋の平台を見つめるはるかは、一度は宿敵と見定めた椎名ナオキ――アナザーはるかに、一礼。
 「……さすがです、はるかさん。………………って!」
 EDテーマがぶつっと途切れて、鬼頭はるかは、気付いた!
 (盗作問題は、どうすんじゃーーー?!)
 真っ暗なはるかの部屋では、マンガ対決の時に椎名ナオキが描き、クリアファイルに収めて保管されていた『新章 真 初恋ヒーロー』が床に滑り落ち……
 ――「私の、マンガの、中に……」
 去り際にアナザーはるかが残した言葉は、最初見た時は物語の核心に迫る何かなのかと思っていたのですが、盗作問題を解決する仕込みレベルの可能性もありそうな気もしてきて、つづく。
 昨年11月頃は、物語のゴールが見えてこない中で演出がふわついているような印象があったのですが、さすがにだいたいの着地点とその経路は定まってきたのか、椎名ナオキの正体からアナザー猿原の登場そしてタロウへの正拳突き、と衝撃の展開を釣瓶打ちしつつ、重要な情報とそうでもない情報を、音楽も含めた描写の仕方で割とハッキリ色分けしていたのは、終盤の演出として良かったと思います(勿論、演出サイドの野生の勘の可能性もありますが!)。
 そう見ると、「マンガの中」に隠されているのは、物語の核心に迫る要素なのかな、とは思いますが。
 型としての鬼退治(怪人撃破)にこだわる今作としては、第18話以来となるヒトツ鬼が登場しないエピソードとなり、こういう時は便利なムラサメですが、キビポイントを使って時間を遡り、自らの作品を完成させる為には過去の己自身を蹴落とす事さえ厭わない鬼頭はるか先生こそ、やはりマンガの鬼だったという事なのか(笑)
 道中、消えかけたり蛇行していた部分もありますが、前回辺りから「桃井タロウとは何者なのか?」を中心に、今作の芯に設置されていたと思われる要素が再浮上してきつつあるのは明るい材料で、ここからの点火と加速が上手く決まってほしいと思います。
 次回――真っ白な嘘と、真っ黒な真実で、予告が、衝撃映像しかない……!
 刺すの?! やっぱり、最後はマスターが、刺すの?!!!
 上記してきた解釈と繋げると、「いっそ鬼になるほどの狂おしい想い」のサンプルとして「愛」を知ろうとしていたのがソノニであるのかと思うのですが、それ自体が脳人としてのバグといえるのかもしれず、果たして、その狂おしさの行き着く先はどこなのか……まあ、マスターの改造手術を受けて、「君は今日から、愛のエネルギーを使うソノニクイーン。そして、ドンブラを倒すのだ」される可能性もありますが!