東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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付けよう○○回路

人造人間キカイダー』感想・第40話

◆第40話「危うしジロー! 機能完全停止!!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳
 ここ数話、シリアス度を増すサブタイトルと、ダークロボの奇声による読み上げがあまり噛み合っていなかったのですが、今回は渋めの声での読み上げ(ナレーターさん?)となり、いや増す緊迫感……と思ったら草むらから響く、
 「チョンギリース」
 の奇怪な鳴き声と共に、石ノ森章太郎めかした少年画家の首を背後からちょんぎろうと迫るダークロボットに困惑していると、今回は中華コスプレの半平が通りすがり、姿を見せるダークロボット・キリギリスグレイ(だいたいカマキリ)。
 前回の宣言通り、半平と行動を共にしていたマサルくんがデスホイッスルを浴びせてキリギリスの動きを止めるとホイッスルを吹き、便利屋扱いに文句を言いつつ現れたサブローは、マサルらの逃走を手助け。3人の逃亡後、ナイフの刃を顔の前に立てると劇中初のハカイダーへのチェンジ(特に台詞やアクションは無し)を見せ、マサル達に手を出すな、とキリギリスと対立する。
 「俺はおまえ達のように、命令通り動く低脳ロボットではない」
 「馬鹿め。プロフェッサー・ギルなど、怖くは無いわ」
 駄目な悪役語録を華麗に埋めていき、実に恐るべき、東映ヒーロー悪のライバル……!
 アジトにすごすご逃げ帰ったキリギリスは、「日本中の市民をキチガイ(台詞ママ)」にする為、その用いるマッドサイクルを増幅するアンテナを建設していたが、そのアンテナを少年画家に写生されてしまった事で抹殺を目論んでおり、少年の家ではマサルが放浪の身の上の事情を説明していた。
 「君、本当はジローが好きなんだね」
 ジローについて語るマサルが涙を流す姿を見て同世代の少年がその心情に寄り添うのは面白いアプローチで、マサルには「父を殺したジローへの憎しみ」と同時に「壊れた(と思っている)ジローを見ていられない悲しみ」と「ジローとの暖かい思い出」がある事が掘り下げられて、ここに来て長坂さんの筆が冴えてきます。
 一方、ハカイダーの野郎が調子に乗ってるんですよ! とギルに告げ口したキリギリスは再び少年画家を襲撃すると、バッタの改造人間のようなポーズで腕を回しながら
 「キリギリスマッドサイクル!」
 を放ち、ハカイダー編に入って以降、バイクにスカーフに改造人間にと、同期『仮面ライダー』を彷彿とさせる要素が盛り込まれている今作、今回のこれは完全にパロディと思われますが、ダークロボットとしては、今までにない芸風の扉を開いていて、ちょっと面白い(笑)
 助けに現れたキカイダーが羽ブーメランを弾き返してキリギリスを追い詰めていくが、マサルがデスホイッスルを向けると、ジローの姿に戻って機能を停止。
 またも、くったり人形と化してしまったジローはキリギリスの猛反撃を受け、とどめのサブローを召喚するマサルだったが、痛めつけられるジローの姿に思わず目を閉じている内に光線の照射口がズレてしまい、サブローが現れた時にはジローの姿はなく、硬直していたのはキリギリス。
 光線を照射していると身動きが取れない、その状態でうまく吹かなくてはならない、と効果が絶大な代わりに使用条件の厳しいデスホイッスルですが、序盤でジローに対するマサルの心情にスポットを当てていた事で、マサルの複雑な気持ちを示す小道具として機能したのは、良かったところ。
 ジローはホイッスルの効果が外れた隙に斜面を転がり落ちて難を逃れていたが……ギ、ギタァぁぁぁッ?!(首の骨が折れる音)
 大事なギターのネックが無残に折れ曲がり、盾を落としたキャプテン・アメリカばりに容態の不安になるジローがミツ子さんに拾われる一方、ほとんどコントのようなノリで、ハカイダーはギルの部屋の扉を蹴破っていた(笑)
 「なんの真似だハカイダー?!」
 「俺を呼んでいると、聞いたんだがな」
 「……おまえは、キリギリスグレイの邪魔をしたそうだな」
 「……そんな話か。そんな話なら聞く必要はない。とぉ!!」
 ギルの詰問を鼻で笑ったハカイダーは、わざわざ天井を突き破って飛び去っていき、プロフェッサー・ギル大ショック。
 付けよう、礼儀正しく入退場する回路!
 その頃、問題の絵をコンクールに出したいのだが、東京に郵送すると途中でダークに奪われるに違いない、と心配する画家少年に輸送役を買って出たマサル達はキリギリス部隊に狙われており、標準的といえば標準的ですが、いつの間にかキリギリスの狙いが判明していたり、それでもコンクールに出したいと強行したり、ミツ子さんが合流していたり、なんの劇的さもなくハカイダー光明寺脳の関係についてジローから聞いて情報が共有されたり、ジローは既に修理完了していたり、と万事が急に荒っぽくなってしまったのは少々残念。
 それでも、マサルくんの心情の掘り下げに尺を割いてくれたのが今回の良かったところですが、落石や橋の爆破で半平の車を狙うキリギリス部隊の破壊工作はジローによって阻止され、背中にダイナマイトを貼り付けられて弾け飛ぶアンドロイドマンの描写がバイオレンス。
 だが、キリギリスのキチガイ音波が半平の車を破壊すると、徒歩となったミツ子とマサルが襲撃を受け、大事なホイッスルを落としたマサルの危機を救ったジローが、拾ったホイッスルを敢えてマサルへと手渡すのが、大変格好いいシーン。
 「君が本当に僕を信じられず、お父さんの仇を討ちたいんなら、好きなようにしたまえ」
 「ジロー!」
 「僕は随分考えた。だが君にまで疑われて、生きていたくない。バラバラにされた方が良い」
 キリギリスが背後に迫る中、裁きをマサルに委ねるジローの姿には、若干以上に


 「浩司くん、ジーザス・エンドを完成させてくれ」
 「ジャンパーソン……」
 「そして君の手で、ネオギルドを潰すんだ!」
(『特捜ロボ ジャンパーソン』第30話「爆裂!!最期の魂」)

 がちらついて大変困りますが、改めて、それまで縁もゆかりもなかった少年に向けて、自身の抱える人間愛信仰と破滅願望を昇華させる為に、ジェノサイドによる真の革命家への脱皮を迫っていたJPさん、オカシイ。
 ジローはジローで、ここでは「公の正義」よりも「個人の信義」を重要視しているのですが、機械仕掛けの英雄が、考えに考えた末に、肉親ともいえる相手との個の関係性に身を委ねるのは実に“人間らしい”選択であり、不完全な良心回路にとっての、一つの到達点であるのかもしれません。
 ここでジローが死ねば、誰が光明寺博士を救い、誰がダークを止めるのか……の問題が発生するわけですが、今この時は、それよりもジローくんとの関係の方が大事なのだ、と大義を脇に追いやったジローは、マサルの為なら死ねると極めて私的な関係性の中に己の存在意義を委ね、こう見ると後の『ジャンパーソン』における大問題作《ジーザス・エンド》編はオマージュの意識があったのかもと思わされますが、“間違った世界”に対する自己認識と自殺願望を日本中のロボットに適用し、その瓦礫と炎の中からでも人間は立ち上がって真の理想社会を築き上げられる筈……つまりこれは、世界に対する殉教である! と位置づけられるJPさん、オカシイ。
 JPさんの狂気はさておき、これは、相手の握っている銃を自ら眉間に押し当てて、オヤジのケジメ取ってみせろ、と迫るやつだな……と緊張感が高まったその時、ジローの背後に近づいていていたキリギリスの足下に投げナイフが突き刺さり、紆余曲折の末、サブローが立会人を務める中、キカイダーとキリギリスが激突。
 いつものアレは? と思っていると、キリギリスの懇願に応えて、あ、ごめん、ちょっとメールチェックしてた、と遅れてギルが悪魔の笛を吹き鳴らし、キリギリスは、ギルの吹く悪魔の笛を自らの能力で3000倍に増幅する頭脳プレー。
 悪魔の笛に対して、
 「そんな笛はキカイダーになった俺には効かない! 今の俺はジローじゃないんだぞ!」
 と叫ぶのが、ジローがこの上なく“人間らしさ”を見せた直後だけに強い印象を残しますが、まんまと策にはまり、地面をのたうち回るキカイダーが見事に屈服すると、ギルの命令でサブローに襲いかかるのは面白い流れ。
 対するサブローがハカイダーに変身すると、バイクとサイドマシーンが激しく交錯し、これは勢いで光明寺脳がぐちゃあっとなってしまうのでは(多分ギルは、ぐちゃあっとなった後で問題に気付くタイプ)と慌てたミツ子さんは音波増幅中のキリギリスの背後に近づき、ロッコを、ぶつけた(笑)
 高笑いしていたら背中に思い切りトロッコをぶつけられ、のけぞり倒れる悪の怪人が誕生し、笛の呪縛から解放されるキカイダー
 結果としてキリギリスとハカイダーに挟まれる形になるものの、ハカイダーは偏頭痛で早退し、残ったキリギリスはキカイダーを持ち上げる怪力ぶりで健闘を見せるが、必殺キカイダーハリケーンに翻弄されると、連続パンチからの膝蹴りによって崖下に叩き落とされ、秘密のアンテナと共に大爆死を遂げるのだった。
 やたらスッキリしたフォルム、『仮面ライダー』パロディめいたポーズ、だいたい通用しない羽ブーメラン、と不安しかない戦力でしたが、クライマックスではまさかの頭脳プレーによってキカイダーを追い詰め、そこからの転落も含めて、なかなか面白いダークロボットでありました。
 ジローはなおもマサルによる断罪を求めるが、マサルは遂にホイッスルを投げ捨ててジローの胸に飛び込み、そのぬくもりを感じながらも振り払ったジローは、光明寺救出の為に果てしない戦いの道を走って、つづく!
 次回――これはまた、女性型ダークロボットが出てきてしまうのか。そして、折れ曲がったギターはやはり不吉の暗示だったのか?!