『人造人間キカイダー』感想・第35話
◆第35話「ジロー デンジエンドの最期!」◆ (監督:北村秀敏 脚本:長坂秀佳)
予告に続き、怪人名の入らないサブタイトルがぐるぐる回りながら表示される変化球で、いやが上にも高まる期待感。
雇い主であるバーのオーナーを見捨て、密かに盗み出したダーク犯罪計画書を焼き捨てた光明寺は農家として新たな人生を歩んでいたが、不気味な烏の群れに襲われ、鍬で叩くと、爆発!
意外と珍しい流血表現も有りで光明寺がメカ烏に追い詰められた時、ジローが駆けつけてなんとか軽トラで逃れるが、メカ烏軍団はしつこく光明寺を追い続け、ひたすら、烏・烏・烏の姿と鳴き声が響き続け、不気味さを煽る見せ方(ヒッチコックの『鳥』が1962年公開ですが、未見なのでオマージュがあったりするのかはわからず)。
光明寺の目撃情報を手にミツ子らと待ち合わせしていた半平が、逃走中の光明寺を見つけてその後を追う一方、ジローの前には、メカ烏が合体した漆黒の円盤が、立ちはだかる。
「おまえは誰だ?!」
その問いかけに応えるように……円盤から足が!(笑)
そして頭が!
翼が!
「俺の名はダーク破壊部隊、クロガラス!」
銀の嘴と紅い瞳を除くと全身ほぼ黒一色で、伸ばしたピザ生地(或いはナン)から、両足と両翼と頭部だけが突き出したような、驚くほどシンプルなデザインとそのまんま過ぎる名前だが声だけはやたら格好いい(CV:飯塚昭三……ではなく渡部猛さんでした!)クロガラスを前に、ジローはチェンジスイッチオンするが、いきなり空中ではたき落とされる衝撃の展開。
「俺の強さは、今までの破壊部隊とは違って桁違いだ。その姿でも俺には勝てんぞキカイダー!」
「なに?!」
なんかちょっと1000%社長みたいな事を言い出すクロガラス、扁平な胴体に付いた翼をパタパタ動かしてKAWAIIをアピールし続けながら渡部猛の声で喋るという、なんと恐ろしい敵……!
一方、ロボ烏に追われ続ける博士を助けようとした半平は、ハンドルから両手を離す危険運転で路肩に乗り上げてリタイア、かと思いきや勢いで軽トラの荷台に飛び込むミラクルを発動し、
「かっこいー! 吾輩なんだか主役みたい!」
とうとう、笑劇時空の効果が切れて、新展開の生け贄となる日が来たのでしょうか。
光明寺&半平サイドの前にはアンドロイドマン部隊が現れ、キカイダーは大車輪投げからデンジエンドを放つが、クロガラスは必殺コンボを受けても平然と起き上がり、翼をパタパタ。
何か動かしていないと格好がつかないと思ったのでしょうが、結果的に、凄まじいばかりのKAWAIIのオーラを放出しており、それはデンジエンドも通用しないわけです。
見たかキカイダー! これが、今までの破壊部隊とは桁違いのKAWAIIだ!
なお、後の戦隊ロボによく見られる“デカいは強い”理論だったのか、カラスの胸部から喉元あたりに中の人の頭が来て、その上にカラスの頭部が乗っている設計なのでキカイダーより頭一つ二つほど背が高いのですが、簡素すぎる造形と頭部の前傾の為、迫力よりも高まるKAWAII。
「効かない! デンジエンドが効かない!」
「それで終わりかキカイダー! こちらから行くぞ!」
サイドマシーンで逃亡するキカイダーにクロガラスが背後から襲いかかり、モニターしていたギルは高笑い。
「やれぃ! 殺せクロガラス! キカイダーを殺して光明寺を連れてくるのだ! 光明寺には、是非ともやってもらわねばならん仕事がある」
今作にしては派手なカラス機関砲を受け、遂に撃墜されたキカイダーは真っ逆さまに転落。鳥型モンスターに空中戦を挑むあたり、連戦連勝しすぎて少々ダークロボットを甘く見過ぎていた節はありますが、反省したのか今度は地上を逃げるキカイダーを空中からカラスが追いかけ、鳥取大爆発(3度目)は、シーンの繋ぎが良く、かなりの迫力に。
その爆炎を利用して、サイドマシーン空蝉の術で窮地を脱出したキカイダーはミツ子とマサルに発見されるが、迫るアンドロイドマン山狩り部隊により絶体絶命――のその時、何故か響き渡るギターの音色。
「キカイダーだ!」
「だが、キカイダーはここに居るぞ?!」
「じゃあ誰だ?!」「誰だ?!」「誰だ?!」
「…………あ! あそこだ!」
「貴様誰だ!」
赤いギターを弾きながらぼかした映像で近づいてきたのは……半平でした(笑)
「服部半平――只今参上!」
わざわざぼかすので、まさかの光明寺?! とちょっぴり思わせたところからのやっぱり半平でしたが、ヒーロー登場のテーマといえるギターの音色とのアンバランスさは素直に面白く(一度、アオタガメ回でギャグコピーをやっているのも効果的に)、全能力値+5の赤いギターを振り回した半平は、アンドロイドマンを蹴散らしてジロー達の死地を救い、ここまで34話分の負債を返す大活躍。
……やはり、今回か次回に死ぬのでは。
一方、棒きれを振り回していた光明寺はとうとうアンドロイドマンに捕まってしまうのだが、父を助けようと、軽トラで突っ込んでいくミツ子はアンドロイドマンを跳ね飛ばして光明寺を救出し、なんかもう、段々、好きになってきました。
ジローを背負った半平も合流に成功し、第34話にして、傷だらけながらも集う一同の図は、なかなか染みるシーン。
だが光明寺はまたも、若い女の子に頼まれて畑の手伝いをしていた事が発覚し、染みるシーンでも光明寺でありました。
デンジエンドの通用しないクロガラスを倒す為、あっちが風力ならこっちは電力だ、とジローは決死の覚悟で高圧電流をチャージ。半平(と農家の女性)を囮にクロガラスの監視網を逃れたジローたちは廃棄されたバスの中に身を隠すが、光明寺が目を覚ましたのも束の間、メカ烏に発見されてしまい、響き渡る悪魔の笛。
(よく聞けキカイダー、おまえはダークの戦士なのだ。おまえはダークの命令に従わねばならない。光明寺を連れてこい)
光明寺の首は割と本格的に絞めにいくジローだが、マサルがバスのクラクションを鳴らした事で正気に戻り、バスの屋根に飛び乗って、太陽を背負いながらのチェンジが大変格好良く、ここで流れ出す、
この世に悪のある限り~ この世に敵のある限り~
が痺れます。
おおレッドアンドブルー おおレッドアンドブルー
正義の技の鉄腕振るう
次作『01』で多用される挿入歌ですが、やはり非常に格好いい。
勢いよく走って行く光明寺を追うキカイダーの前にはクロガラスが立ちふさがり、翼パタパタからの頭突き、そしてカラスフライの連続攻撃を受けたキカイダーは崖っぷちに追い詰められ、マサルの声援を受けながらデンジエンドを放つも無効。
「くそ~」
ならば、もう一度だ!
「デンジエンド!」
それでもカラスは健在!
「ジロー、負けないで!」
「頑張れ~!」
珍しくギャラリーの声援を受けるキカイダーであったが、尾羽アックスから嘴ドリルにより、崖から転落。雄々しい挿入歌を背負いながらもドリルに追い詰められたその時――なにか、電力が、馴染んできた気がする!!
ドリルの一撃をかわしたキカイダーは、突然の脱出スクリューでチェーンを引きちぎるとライジングキカイダーキックを叩き込み、新技・キカイダー投げで天高く投げ飛ばすと、空中二回転ひねりからのフライングクロス光線・キカイダースパーク(実際の映像では軒並み聞き取れなかったのですが、ヘイスタックさん、ガチグリーンさん、ありがとうございました)を浴びせ、強敵クロガラスを打ち破るのであった。
しかし、光明寺博士はまたも姿をくらませてしまい……
「クロガラスが破れても、まだまだダークは負けはせん! 光明寺博士! 貴様の手でダークは、恐るべき秘密兵器を作り上げるのだ。キカイダーよりも強い、悪の戦士をな!」
障子に浮かぶ、黒い影は何者か……
「どんな事をしても貴様には、この悪の戦士を、完成させてみせるぞ……光明寺!」
画面に大写しになったギルは獰猛な表情をカメラに向け……やはりこの人、光明寺とはわかり合える筈、と一方的な友情を感じていた気がしてなりませんし、光明寺は光明寺で、ほんのちょっと運命がズレていたらプロフェッサー・ジーとかになっていた気がしてなりません。
逃げる光明寺の姿にナレーションが重ねられた後、プロフェッサー・ギルの高笑いで、つづき…………
予 告 詐 欺 だった。