東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

おでんさくれつ

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第37話

◆ドン37話「イとニとザとシ」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 「獣人の森に囚われた俺は、なぜ助かったのか。それは……俺自身にもわからない」
 前回ラストの謎については一応触れたけど、ざっくり投げ飛ばされました!
 今作の場合、切り札中の切り札として、最近誰も触れないキビポイントの存在もありますが、諸々上手く繋がってほしいところです。
 OPのモノローグが終わると、いずこともしれぬ荒野でドンブラザーズとソノーズが向かいあっており、武器を構えるバロム仮面。
 (私たちはドンブラザーズと最後の決戦に挑もうとしている。そして……戦いの前にする事といえば…………名乗りだ。何故、こうなったかというと……)
 散発的な導入パターンですが、決闘リフレイン回の後も使った事によりネタとして成立し、時間を少し巻き戻ると……
 「展開に無理がある! おまえの悪い癖だ! もっと、ストーリーの縦軸を考えろ!」
 天女舞うスランプはるかはソノイから、割と専門的な用語でマンガの駄目出しを受けていた。
 「頑張れ! 俺はおまえを信じてるぞ。――おまえなら出来る」
 がっくりうなだれ、原稿を拾うはるかの頭に手を置き励ますソノザ、叱責&原稿ばらまきからの頭ポンが、若干DV男風味で頬が引きつりますが、多分、マンガで覚えました。
 再びマンガと向き合うようになって以降、タロウとの距離感は落ち着きを取り戻しているはるかですが、基本的にちょっと、虐げられる事に慣れすぎており、その光景を、黒フードで仮面をかけた怪しすぎる人物が見つめていた。
 ソノニは犬塚が獣人から元に戻った事を確認しており、なんか、座る時の距離近いな……!
 ハードボイルドに背を向けて去って行く犬塚の背にソノニは微笑み、その光景もまた、謎の人物が見ていた。
 「そっかー。じゃあ、返ってきたんだ、雉野の奥さん」
 まさかの地獄のおでん屋再登場で、雉野は暴言狼藉の謝罪として仲間たちにおでんをおごり、確かに鶴野夏美は犬塚の元には戻りにくそうとはいえ、雉野の家にみほとして戻ったの……? という点は、今回の隠し球として最後に突き刺してくる事に。
 送れてきたタロウも合流し、楽しくおでんで仲直りの集い(ジロウ? 誰ですかそれ……?)となり、時代は今、焼肉ではなく、おでん……! そう、おでんこそ至高の美味! と、すっかり常連となり、「おやじ、いつもの」「ノイちゃん」で通じ合う仲となったソノイ率いるソノーズとエンカウント。
 「ノイちゃん……」
 「……ソノイったら、すっかり通になってるよ」
 「ま、随分通ったようだが、しょせんは付け焼き刃だ。俺とは年期が違う」
 余裕の表情を浮かべるソノイを、子供じみた対抗心を燃やすタロウ(やはり、タロウに必要なのは「友達」でありましょうか)が挑発し、ソノイは横のソノニに耳打ち。
 一「いい気になるな。驕るな」
 二「いい気になるな……」
 (ソノイの奴、まだ続けるつもりか)
 前回と繋げて、あくまで直接的な交流は避ける姿勢を貫くソノイにより伝言ゲームが発生し……
 三「いい気分だ。驕るな」
 鬼「いい気分だ、奢ろう」
 約一名、明らかに悪意を持って内容を変えてますね!
 「ほぉ~、そうか、おごってくれるのか」
 タロウはいやらしい笑みを浮かべると全種類を注文し、慌てるソノイから再び伝言ゲームがスタート。
 一「そんな筋合いは無い!」
 二「そんな筋合いは無い」
 三「そんなすじ肉は無い!」
 鬼「今日はすじ肉がいい、だって」
 約一名、明らかに悪意を持って内容を変えてますね!
 「そうか、すじ肉か」
 「すじ肉……?」
 井上敏樹で伝言ゲームといえば『超光戦士シャンゼリオン』第10話「サバじゃねぇ!」(監督:小中肇)――珍しい言語の話者と会話する為に、複数の言語をまたいだ通訳により混乱が広がっていくエピソード――を思い起こすところですが(実のところ、個人的にはそこまで高く評価している回ではないのですが、とにかくタイトルのインパクトが物凄い(笑))、『シャンゼリオン』は諸田監督の本編デビュー作であり、監督も思い出して面白がったりしていたのかも。
 撃って死んだら人間だ! 撃ってとけたらアノーニだ! の精神を忘れ、すっかり和気藹々の一同だが、そこに乱入してきたのは馴れ合いを許さない巨人、そう、タローマ……じゃなかった、全身を黒フードで多い金色のドミノマスクを身につけた怪しすぎる人物。
 カウンターの上の物を払いのけ、隣席との間にアクリル板を置き、周囲に消毒液をかけ回り、菜箸ではんぺんなどをつついた末に「とても口にする気にはなれません」とのたまう物凄い感じの悪さで、絆の象徴・おでんを愚弄した謎の人物がオカリナを吹き鳴らすと、突如としてアノーニが出現。
 「やはりおまえは……」
 「……お久しぶり、ソノイくん」
 「ソノシ」
 追い払う為にタロウたちが変身して戦闘している間に、フードと仮面を取ってソノーズに姿を見せたのは、真紅の瞳と金色の耳たぶを持つ男。
 第一印象は鳳ツルギ×エンターだったのですが、なんとなく過去作出演キャストっぽい使い方だけど、知っているような知らないような……と思い、演じる廣瀬智紀さんについて確認してみたところ、《スーパー戦隊》への出演は無く、過去に井上敏樹がメインライターを務めた『衝撃ゴウライガン!!』(未見)のレギュラーだったとの事。
 「おまえが……監察官?」
 君ら、最近ろくに鬼退治の報告書上がってこないけど、人間界をバカンス先だと勘違いしてる? この「おでん代」「カフェ代」「画材代」の領収書、経費で落とせると思ってんの? とソノーズの上官として赴任したソノシは、さっそく、ドンブラザーズとの関係性について追求。
 特に、もはや鬼頭はるか担当編集と化しているソノザにはいやみったらしく耳垢を吹きかけると、全員に跪いて敬意を示す事を要求し、嫌々従うソノーズに対して、ドンブラザーズとの決着を命令する。
 「私の報告次第じゃ、君達は元老院で裁判にかけられれ、無限の、床ふきの系よ」
 正々堂々、脳人の戦士として名乗って欲しい、とソノーズに注文をつけたソノシは、今度は喫茶どんぶらに襲来し、タロウすら圧倒する勢いで店内に消毒薬をふりまくと、脳人の監察官を自ら名乗り、決闘の約束を取り付ける。
 「戦うのは勿論ソノイ達だけど。馴れ合わず、本気で」
 「……馴れ合う? ……意味がわからない。俺たちはいつも本気だ」
 タロウ主観ではそこに一切の嘘は無く、これは一種の“戦隊イズム”と呼べそうですが、はるかはソノザとの新作打ち合わせについて暴露されるとよろめき、一応、メンバーには隠している意識があった模様。
 わざとらしく吹きかける金粉耳垢(被害者:ソノザ・雉野・猿原)は、単なるギャグなのやら何かの布石なのやら、ソノシはスキップしながら去って行き、はるかとソノザ、タロウとソノイの距離感に絡み加減になった猿原は、閃いた。
 「ならば私は、ソノニに接近してみるか」
 そう、人生一発逆転、これで4クール目のキーパーソンは私だ! と秘策に手応えを感じる教授だが、既にその席は、埋まっていた。
 「変な下心は無い!」
 更に、思わずやに下がると一同からの視線を受けて慌てて桃色のイメージ図を吹き消し、猿原真一、枯淡の境地に達しきれない男。
 そこへマスターが奥から出てきて、真っ白になった店内の様子に、目を見開いて普通に驚いているのが、妙にツボに入って面白かったです(笑)
 街へ繰り出したソノシは辺り構わず消毒薬をばらまくと、アノーニを召喚して人々をどこかへ連れ去っていき、それを見ていたソノイ達から「あれではヒトツ鬼と同じだ」と評されると直後にドンブラ召喚され、少なくともドンブラシステムから退治目標として認定される存在の模様。
 「おまえ達も、綺麗にしてやろうか」
 優雅に腕を交差させてソノシもまた仮面の戦士へと変身し、ソノーズを見るにソノシ仮面も昭和ヒーローモチーフの可能性がありそうですが…………仮面の忍者赤影……?
 「面白い! お掃除対決だ!」
 僕の人生から、犬塚翼を漂泊だぁ!! と赤影仮面とドンブラザーズが激突し、赤影仮面の力量は、ドンモモに匹敵。
 短剣から鞭を伸ばすと青黄桃黒を打ち据えた赤影仮面はさらりと撤収し、そこに現れたソノーズに突っかかろうとしたイヌブラザーは、ドンモモにより画面の外に蹴り飛ばされて、正体判明を回避(笑)
 「話がある」
 一同は喫茶どんぶらへと場所を移し、無言のマスターは、いつになく、怒っていた(笑) 無言のマスターに対し、雉野とはるかが懸命に謝る見せ方が面白かったです。
 「戦うのは望むところだが、奴の命令で……というのは気持ちが乗らない」
 「同感だ」
 リーダー同士の意見が合う中、4クール目のキーパーソンとなるべくショートケーキを手にソノニにお近づきを図ろうとした高等遊民は、その席は既に予約で埋まっており、おまえの俳句には愛が足りていない、と顔面にショートケーキを叩き込まれるバッドエンドを迎えて、ハードボイル度が不足していた。
 まあ猿原はいつでも、自宅の畳をはがすとペンギンの折り紙がびっしりとか、地下室の壁という壁に幼少期からこれまでのタロウの写真が貼ってあるとか、はるかに向けてぼそっと「実は君の両親と私は……いややめておこう」とか呟くだけでキーパーソンになれるから大丈夫!
 本社で蘇生の儀式までやってもらってズバッと復活から一転、ダークネビュラ送りの危機に切羽詰まっているソノイは、「ソノシは脳人の恥」と上官への叛意を理論武装して正当化すると、ソノシをヒトツ鬼にする事により脳人の駆除対象とする禁じ手を提案する。
 本来はヒトツ鬼になる筈のない脳人だが……
 「成熟する寸前のヒトツ鬼を採取し、ソノシに移し替えれば……」
 のところでマスターのアップが映るのは、いつも思わせぶりな立場ではありますが、なにやら怪しげ。
 「要するに、ヒトツ鬼になりそうな人間を探せばいいのか」
 タロウの心当たりの元へ向かったソノニとソノザが目にしたのは、ミラクルバロム仮面に斬られた筈の忍者フリークであり、まさかまさかの4回目の登場となりましたが、ミラクルバロム仮面モードで斬った――つまり、ドンブラシステムで斬ったのと同じ扱いになった……のでしょうか?
 「あの男は?! まさか生きていたとは」
 いくたび鬼と成っても情念を捨て去る事が出来ず、忍者修行に明け暮れる男の背には既に新たなヒトツ鬼の姿が浮かび上がっており、本当に世が世なら一廉の英雄ないし伝説の悪鬼となっていたかもしれない人物と化していますが、ソノザが傘を用いて新鮮なヒトツ鬼株を回収し、いよいよ決戦の日――
 「一つ、言っておきたい事がある。戦いの場で、私たち脳人は名乗りをする。気は乗らないが、ソノシの命令でな。笑わないでほしい」
 「名乗りか。わかった。ならば、俺たちも名乗ろう。名乗りには名乗りで返す。それが礼儀というものだ」
 (キターーー! 名乗り好き!)
 はるかが心中喝采をあげる中、ドンブラザーズとソノーズは荒野で対峙し、ソノーズ変身。
 「清廉潔白・完全主義――ソノイ!」 「美しい花にはトゲがある……愛を知りたい、ソノニ!」 「思い込んだら一直線! ソノザ!」
 「「「脳人三人衆、見参!!!」」」
 三人の背後で爆発が起こり、タロウ達もアバターチェンジ。
 「桃から生まれた、あ! ドン・モモタロウ!」 「憂き世におさらば、サルブラザー!」 「マンガのマスター、オニシスター!」 「鳥は堅実、キジブラザー!」
 台詞やポーズは、番組開始当初に配信で公開されていたPR嘘動画のものだと思いますが、イエス・ドンブラ! そしてジロウも駆けつけ、腕立て名乗りから、脱臼(トラ化)。
 「筋骨隆々! ドンドラゴクウ!」「……俺が最強、ドントラボルトぉ」
 誰か一人足りていない気はするけれど……
 「暴太郎戦隊――」
 「「「「「ドン! ドン! ドンブラザーズ!!」」」」」
 多分にセルフパロディ的ではありますが、上司命令で名乗りを強要されるソノーズ → それに名乗りで応えるタロウ、は前回よりも遙かにスムーズで、名乗りが飛び出す事の必然性はある流れ。
 イヌが不在でやってしまう、も『ドンブラ』らしさ、としては前回の見せ方よりはだいぶマシと思われ(前回があまりに酷かったので、その対比で加点されている部分はあり、いきなりこれだと、どう感じたかはなんともいえませんが)、どうして前回、あんな形で名乗りを押し込んでしまったのか、重ねて首をひねります。
 お茶をしながらソノシが優雅に見物する中、両陣営が激突を始めると、バロム仮面の一撃がドンモモを切り裂き、「し、死ぬ……」と口にしながら倒れるタロウ、「死ぬ」と嘘をつく事で死ぬ、離れ業。
 近づいたソノシが、確かにタロウの心配が停止している事を確認すると、油断して隙だらけの背中にソノザが採取してきたヒトツ鬼の株を投げつけられた事で星獣鬼と成り、忍者男が轟轟鬼誕生回で馬の世話をしていたのは、本当にこの伏線だったのか(笑)
 もしそうだったとすると、どこでどう使うのはさておき、「ミラクルバロム仮面が斬った忍者マニアが再登場する」までは想定されていたのかなと思われ、タロウエナジーによるソノイの蘇生も、今後の展開に更なる意味を持って関わってくるのかもしれません。
 「ははははは!」
 驚愕する鬼ソノシの前で、目をかっと見開いたタロウはドンモモとして復活し、この時の、笑い方と立ち上がり方が、素敵(笑)
 「何故だぁ?!」
 「桃井タロウは嘘をつくと死ぬ。つまり、死んだふりをすれば脈が止まる」
 「そういう事だ」
 タロウの体質を活かした偽装トリックは面白くはまって一時共闘の形となり、ソノシを自らの手で倒す事にこだわるバロム仮面だったが、星獣鬼に向けて振り下ろした剣は、寸前で止まる――
 じゃあ俺が、と金モモと銀ドラが同時に必殺技を放ち、星獣鬼はライジングエンド。巨大化するとギンガの光を集めようとするが、ジロウズハリケーンとドンブラユートピアが突き刺さって金色の大勝利を収め、ドンブラザーズ、それは、リーダーの横暴に耐え抜く者のみに許された、名誉あるお供の称号である。
 「おまえ達……忘れないぞ、決して! おまえ達の運命は、私の手に!」
 「なぜだソノイ……なぜヤツを倒さなかった!」
 「確かにヤツは、嫌なヤツだ。だが、それでも脳人……私たちの仲間だ」
 出張先での上官失踪がソノイの躊躇により失敗したソノーズは大きな遺恨を抱える事になるが、土壇場で剣を振り下ろせなかったソノイの姿に何か感じるものがあったのか、タロウはその肩に手を置き、とにもかくにも、おでんのアニキのケジメはつけた。
 食い物の恨みは、何よりも深く恐ろしいのだ。
 ……率直に、3話ぐらい(せめて前後編)かけてソノシの嫌なヤツぶりを徹底した上での方が、ソノイらがやむなく禁じ手に出てドンブラと一時共闘さえしてみせる事に説得力と盛り上がりが出たとは思え、1話にぎゅぎゅっと圧縮したのは、端折りすぎた感。
 『ドンブラ』自体は、基本、1エピソードにまとめる、前後編のような形になる場合も鬼退治を組み込んで最低限のまとまりはつける流儀なので、そのスタイルを遵守してテンポを合わせたとはいえますし、そろそろ残り話数も見えてくる時期なので、終わってみたら、ここは1話で圧縮で良かったとなるかもですが、面白かったけれど、(全体)構成自体でもっと面白くなったのではないか……という点で少々物足りなさの出てしまうエピソードでありました。
 端折り具合の関係で完全に、ソノイたちが不正な取引を本社に報告されるのを恐れるあまり取引相手と結託して山に埋めた(実際、ソノイはバッチリやましい心当たりがあるわけで……)形になってしまったので、ソノシ討伐の正統な説得力を引き上げる為にソノシによる人間狩りの場面を挟んだのでしょうが、そこもだいぶ唐突になってしまいましたし。
 ソノシはなぜ人間をさらったのか、元老院と現場に人間界に対する思惑のズレが生じているのか、そしてソノーズの「変化」はどこへ向かうのか……が上手くまとまってくれる事を祈りつつ、戦い終えて、満面の笑みで帰宅した雉野が鞄を置いてソファで寄り添う「みほちゃん」は……小さな西洋人形だった。
 「今日もさー、色々あって疲れちゃったよ~。寂しかった? うふふ、僕もだよ~」
 嫌なヤツこそ出てきたものの、基本的には陽性のドタバタ劇だった今作、最後の最後で、とんでもない隠し球が炸裂し、ま、まあ、過去には、エアお誕生日会とか? 動物にしか心を開けない男とか? 妄想フレンズとかあったので? 戦隊ヒーローとしてはフツー、フ、フ、フツーじゃないよ?!
 笑顔で物言わぬ人形と楽しげに語り合う雉野の完全にぶっ壊れた姿で、つづく。