東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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泳げなければ生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第31-32話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第31話「海魔」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • 契約モンスターから給料未払いを責められる浅倉、モンスターが増えればいいものではない、と悪役サイドのリスクも示唆するのが手堅い。
  • アバンタイトル、フェリーと飛行機の合わせ方が、大変、長石多可男
  • 真夏の朝の悪夢で終わるかと思った浅野めぐみ、普通に、出てきた。
  • 洋上を進む無人の大型フェリー。発見された生き残りは13歳の少女・浜崎実加ただ一人。
  • 関与しているのは3匹のミラーモンスター……?
  • そこに浅倉は関わっているのか? をサスペンスにして展開。
  • 原因調査の為に同じコースでフェリーを出航させる事となり、マスコミ関係者として乗り込んだ真司と蓮も船上の人となり、実際のフェリーを使った映像がかなり豪華で、全体のアクセントとして面白いエピソード。
  • 「あの人が助けてくれる」……操舵室で乗組員が消滅する中、浅倉が姿を現してミラーモンスターから実加を救っていたらしき事がわかるが、なにぶん実弟殺しの実績も解除している浅倉であり、果たしてその真意は? は、今作の積み上げてきた浅倉ならではのサスペンス。
  • 赤黄銀のハチ型ミラーモンスター・スティンガー3兄弟が現れて、龍騎・ナイト・王蛇との3対3のバトルに突入し、王蛇の毒々ライダーキックをブラザーコンビネーションではじき返す荒技を見せた3兄弟は、海へと逃走。
  • 「実加ちゃん駄目だ。離れて」「その男は人を助けるような奴じゃない!」 「ズルテンだけはどうしても信用できない!」
  • 黙して語らず浅倉は海へとダイブ逃走し、“気まぐれな凶暴性”の権化ぶりを存分に発揮して、謎と強敵を残したまま、つづく。
  • 浅倉絡みのサスペンスに関しては、「とにかく本人が何も語らない」を通すのでズルい所はあり、また現状、真司が正義感から糾弾する相手が少女にかばわれる、のが序盤の北岡絡みのエピソードとかぶってもいるのですが、とにかく映像の豪華さと変化球が面白かったエピソード。
  • ところで今回登場する看護師さんが、『超光戦士シャンゼリオン』に登場する敵幹部・ザファイヤの人間体に似ているような気がする……と思って確認してみたのですが別人でした。

◆第32話「幻灯」◆ (監督:長石多可男 脚本:小林靖子

  • 浅倉の置かれた不渡り手形寸前の危機について、完全に服従していないサイとエイが人間を食う事を拒否しているのではないか、と蓮は推測。
  • メタルゲラス(サイ)とエビルダイバー(エイ)の名前が劇中で初めて出てきて、相変わらず、謎の攻略情報を参照している蓮。
  • 実加の病室を見舞う真司、君に、花束を持っていくデリカシーがあったなんて!!!
  • スティンガー3兄弟の狙いは生き残りの実加?
  • だがその気配にうっすら気付きつつ、怪物が現れれば浅倉が現れるのでは、と考える実加……が窓ガラスの外に浅倉を発見した時の笑顔の見せ方が、凄く長石多可男で、いい。
  • 「そろそろ奴らも限界だ。モンスターが現れるのが先か。それとも俺が食われるか……」
  • 令子はアメリカで士郎を教えていたポトラッツ教授に取材し、士郎がアメリカで実験中に事故死していた事、優衣とは10年以上も音信不通だった事を確認するが、士郎が操ったと思われるモンスターにより、教授は忽然と消滅してしまう。
  • 「蓮……俺やっぱり……浅倉を見殺しにしないよ」……結果的なものとはいえ、パニックホラーのような巨大フェリーでの一夜において実加の精神を守り、今も実加の心を支えているのは浅倉の存在だと認めた真司は、「きっと、誰だって、誰かが必要としてるんだと思う」という結論に至るが、その浅倉は、そういう「誰かの為の誰か」を消し去ってきた人間であり、現状「浅倉が仮面ライダーである限り、法で裁くのは難しい」という前提で動いている今作、ならどう落とし前をつければいいのか? の結論が出せないまま、真司は能動的なようで消極的に、答を先送りしてしまう事に。
  • 一応今回に関しては、「実加を守る」為に「浅倉を助ける」という形を取ってはいるのですが、浅倉を「断罪する」立場に自らを置けない真司の姿は、ある意味で“不完全な良心回路”であり(故にこそ、“人間”としては当然の姿といえるのですが)、真司は「英雄」と「人間」の境界でフワフワしている感。
  • ここには今作の意識する、もう一つの「境界」があるのかな、と。
  • 前作『アギト』の主人公・アギトが、“完全なる良心回路”に基づいて行動する存在として登場した後、聖から俗への転換を物語のベクトルとしていたのに対し、今作は、英雄未満の俗人が、英雄の決断を迫られながらどこへ向かって進むのか、の物語になっているといえそうでしょうか。
  • スティンガー3兄弟が再び姿を見せ、浅倉、そして蓮が変身。更に嫌がらせでゾルダも参戦し、王蛇・ナイト・ゾルダの、3方向からの同時攻撃を防ぎきれずに、消し飛ぶスティンガー3兄弟。
  • 給料を巡る争い(コウモリの妨害行為)はドラゴンの介入により王蛇グループが回収で決着し、実加について「囮に使っていただけ」と断言しながら、去っていく浅倉。
  • 「実加ちゃんには、あいつが必要だったんだ。……だから……」「だが浅倉は誰も必要としていない。それだけは確かだ」
  • そんな浅倉に、光がずっと当てられている(実加にはそういう存在として見えている)のが、なかなか面白い演出でした。
  • 「見たの。あなたがガラスから出てくるところ」……予告で思い切り見せてしまってサプライズになりませんでしたが、まさかの目撃者:浅野めぐみで、え、このトンデモキャラ、真面目にキーパーソンになるの!? と、先が混沌としながら、つづく。

 夏休み展開を挟んで次のウェイブもまだ来ず、キャラクター掘り下げ期間ではありますが、だいぶややこしくなってきている感あり。劇中世界の一般的な観念においても犯罪者であり、仮面ライダーとしても殺人者である浅倉は、真司が向き合わなくてはならない「課題」そのものであると同時に、やはり劇薬であります。
 エピソードとしては一応、「少女の為」を理由に行動させ、「王蛇・ナイト・ゾルダの結果的な合体攻撃」を見せ場とし、「ミラーモンスター退治」で決着する事で体裁を整えているのですが、ここまで来たら軽々しく答を出せないとはいえ、寓意の機能を用いた飛躍を抑え、「現実的な難問」に「現実的な難問」として立ち向かう事になっているのは、ヒーローフィクションとしては、重苦しいもたつきも感じるところ。
 ……それにしてもナイトのサバイブ後、一向に龍騎の強化ターンが来ないのは、当時としても思い切った作りだったのでは。真司の精神面は、総集編回で一つアップデートされてはいるのですが。