『タローマンヒストリア』感想
遅ればせながら見たのですが、のっけから、「資料提供:北青山タローマン記念館」ってなんだそれは?! (「山口一郎コレクション」も登場)
に始まり、タローマン・プロデューサー補佐の加古捏三さん(名前……)のインタビューを交え、「70年代に、生まれたとされ」「お茶の間の一部で、局地的な人気となったともいわれ」「後世の特撮作品に、多くの影響を与えたといわれる事も、稀にあるらしい」『タローマン』を、過去の出演番組映像で振り返るとんちきな作りで、出鱈目をやってごらん。
『タローマン』とは何か、を語るに際して、“『タローマン』の記憶”を外側から埋めていく本編トークコーナーと同様の手法が持ち込まれているのですが、その為にわざわざ、70年代風クイズ番組や、80年代風教育番組を再現する作り込みに、唖然とすると共に大笑いで、いやこれは参りました。
『タローマン』の場合、既に本体が出てきているのでアプローチは異なりますが、UMAの足跡とか、UMAの目撃談とかにより、実態不明なまま生み出された輪郭が共同幻想を形作っていくのにも似ているような感もあり、これ、『タローマン』本体無しで、タローマン出演映像だけが発掘される、という形もそれはそれで面白いよなーとか(笑)
そういう仕掛けの作品は作品で、どこかにありそうですけれども。
べらぼうな滅茶苦茶をやりつつも、『タローマン』前夜のパイロット版の紹介において、架空ヒーロー番組を描くなら、「主題歌を見せる」のが、絶妙な巧さ。
細かいところでは、燦光社とか藤映とか、作風に合わせた特撮ファン向け制作会社パロディもクスリとさせてきます。
極めつけは、「アマチュアカメラマンによって撮影された貴重なフィルム(1976)」による、野外ステージでのヒーローショーのライブ映像(と称するもの)であり、凄まじすぎる凝り具合(笑)
そこに映っているのが、本編のテーマを離れ、いつしか形骸化してしまったタローマン像という自己批判もスパイスが効いており(特撮ヒーロー作品がえてして、パブリックイメージの中で実態から乖離しがちな事例を下敷きにしているとも見て取れます)、好かれるヤツほどダメになる。
個人的には、人型の着ぐるみがある都合だったのか、本編で印象深かった奇獣「未来を見た」の出番が多かったのが嬉しかったです。
『タローマン』を見ていた、影響を受けた、と主張する人物たちによるインタビュー映像を挟み、事前に予告されていた主題歌『爆発だッ! タローマン』のフルバージョンは、番組制作中に発掘された秘蔵フィルムとして、歌番組での歌唱シーンの態で放映され、どこまでも本編コンセプトをひたすら貫き、架空史を拡張する架空史の解説、という形式が素晴らしい。
そして、ちょっと泣かせの効いたフレーズの辺りで、横に岡本太郎展の紹介が出て少し正気の世界に引き戻されかけたところから、トドメに、「タローマン総選挙〔中間発表〕」が繰り出され、なんだそれは?!
『タローマン』サブテキストとして抜群の完成度で実に濃厚な10分間、お見事でした。