東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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ふぉろー・ざ・たろう

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第33話

◆ドン33話「ワッショイなとり」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 「おまえ……ちょっと変だぞ」
 タロウ細胞の汚染を受けた復活ソノイは「タロウを倒した」宣言すると、お供扱いに反発するソノニとソノザを実力行使で黙らせ、跪いて忠誠を誓わせるノンストップ暴君ムーヴ。
 一方、ソノイに斬られた後で銀ドラに拾われたタロウは、辛うじて絶命こそ免れたものの瀕死の状態で河川敷に転がっており、
 「死ぬな、タロウ……おまえが死んだら、俺は、どう生きれば……」
 負傷した人間の手当の仕方がわからないなりに、水に濡らした布を額に置いてみたりするトラジロウ、前回ラストから動きがほぼ野生動物となっておりますが、生ジロウよりも好感度を稼がないで下さい!!
 割と深刻な問題です。
 そこにソノザの手を離れたヒットマン・ムラサメが飛んでくると、マザーの命令により跡目争い決着じゃぁとドンモモにトドメを刺そうとするが、自らの手で万全のタロウを倒す事にこだわるトラジロウと激突。
 ムラサメの忍者ワイヤーを受けた銀トラがシャイニングタイガーアタックを放つとムラサメは撤収し、基本的に持てあまし気味のキャラではあるのですが、突っかかっては逃走を繰り返しがちなので、戦績も伸び悩み気味。
 一方、強制サングラスされたドンブラ一同はソノイから会談を持ちかけられるが、みほちゃんをストーキング中の犬塚はフレンド申請を却下。美容院に客として乗り込むと、みほのカットを受けた過去の体験と照らし合わせる事で、みほ=夏美の確信を抱き……伊達にイマジナリー彼女とのきゃっきゃうふふを繰り返していたわけではない所を見せつけますが、まあ、匂いで判断、とかではなくて良かったか。
 ムラサメを退けるが自身も大きなダメージを受けたトラジロウは、タロウを喫茶どんぶらへと運び込み、マスターに助力を要請。
 「これは……酷いな。すぐオペ室に運ぼう」
 「…………オペ室?」
 「喫茶どんぶらに無いものは無い」
 マスターは手術台に横たえたタロウを前にチェンジ全開し、ブラックジャ……ならぬブラックゼンカイザー先生が「俺に斬れないものがない」と術式を開始、しようとしたところで店にやってくるはるか達。
 会合の場所として正面からソノーズが現れて一同席につき、タロウよろしくきび団子を頬張るソノイ、今のところはギャップ狙いの面白さが勝っていますが、これまでの蓄積がある為、ソノイがやると「荒々しい」というよりも「下品」に見える度合いが強く、あまり引っ張りすぎない内にタロウエキスに抜けてほしい気がします(笑)
 「結論から言おう。タロウは俺が倒した。おまえたちドンブラザーズは、俺のお供になれ!」
 ソノイから爆弾発言が飛び出す一方、食事を提供してオペにもどるBZ先生だが、緊急手術の真っ最中にモニターに映る、きび団子を喉に詰まらせて死にかけているソノイは、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて面白かったです(笑)
 マスターは手術を中断すると水を出してソノイを救い、どちらが大事なのか、となっていますが、店内で人死にが出ると外聞が悪いので、仕方ありません。
 「何者だ、あの男は」
 「謎の男。信用できる、謎の男」
 ……ええっ?!
 一応まあ今回は、タロウの救命に全面的に協力してくれたりもしているのですが、ソノーズとは面識が無かった事がハッキリしたマスター、ここまで物語に関与しておいて、一体どこから来て、どこへ行くのか。
 タロウの生死について戸惑うはるか達が、マスターの「生きてるよ。……今のところ」発言に力を得、編集のソノザがまたもスランプに陥ってしまったはるかに「スランプから抜け出せれば、きっと成長できる。ある意味チャンスだ」とネットで読んだような助言を贈る一幕を挟み、会合は再開。
 ドンブラからの疑問にソノイが答えるか、ドンブラがソノイのお供になるか、凄く割りの悪いゲーム対決が始まるとまずは猿原がソノイから一本先取。
 「おまえ達の力は、脳人のかつての王家、ドン家が作ったものだ。恐らくタロウが覚醒すると同時に発動するようになっていたのだろう。タロウを助ける為に」
 第33話にして戦隊メンバーの力の背景が明かされる事となりましたが、考えてみると、都合の悪い事項については話を逸らすおじいさん、すぐにだんまりを決め込むマスター、知っているのか知らないのかとにかくあらゆる質問に答える気の無いタロウ、と、身近にまともに対応してくれる人が居なかった……!
 その点では、タロウエキスが注入されても根が真面目なソノイですが、明かされた背景については、だいたいドン家のせいで今後も片付けられていきそうなのは、悪い意味で井上脚本らしいざっくり加減ではあり。
 「ドン家って?」
 「質問は一つだ」
 かくして質問権とお供を賭けたゲームは続き、何故か自信満々に「沈黙のゲーム」を提唱する雉野、物凄く面白くないのですが、基本的に営業センスに難があるキャラクター、と考えると物語の筋は通ってしまっているのか……。
 ゲーム開始早々、くしゃみをしたはるかが脱落し、ドンブラザーズ失格により、油性マジックでおでこに「脳人」と刻み込まれる事に。
 何故か自信満々に二回戦に入ろうとする雉野、本当に面白くないのですが、基本的に営業センスに難があるキャラクター、と考えると物語の筋は通ってしまっており……視聴者の気持ちを代弁するかのように「もういい」と口にした猿原は、満座から指を突きつけられて脱落し、隙を見せたら、身内も敵です。
 二人が脱落し、いよいよ佳境に入っていくDGP(ドンブラグランプリ)だが、3回戦ともなると、さすがに不毛な事に気付いたソノイがタロウの手術を終えたマスターを捕まえて筆談でゲーム終了を宣言し、物語内における“つまらなそうなゲーム”という以上に、皆が黙っているだけなのが芝居として面白みが特に広がらなかったのは苦しかったところ。
 話の流れとしてはそれが、マスターの持ち出す次なるゲーム「大食い競争」の真意を隠す煙幕及び伏線になっているのですが、誰に煙幕を張っているかといえばタロウの身内にであり、「謎の男。信用できる、謎の男」なのか、はるかはもう一度、物語を最初から落ち着いて振り返った方がいいと思います。
 テーブルの6人が食事に夢中になっている内に背後でクロカイザーとなったマスターは、6人から溢れ出る生命エネルギーを無許可でこっそり回収し、タロウに注入(身動き一つしないまま、口に漏斗を突っ込まれ、液体を流し込まれる地味に辛いのではないかと心配になる芝居)。
 すると、御神輿の幻像が眠れるタロウの下に浮かび上がり……半分ソノーズ、という掟破りの宙返り(笑)
 まあ、ソノーズが純然たる「敵」なのかというと微妙な関係ではありますし、ソノイがタロウのエネルギーで甦っているので、巡り巡って循環したりもしておりますが。
 大食い競争に敗北した雉野もめでたく脳人のサインを書き込まれ、これにて新生・脳ブラザーズが誕生…………誕生……?
 だがお供にも1軍と2軍がある! とソノザとソノニが格の違いを主張すると、猿原がこれに反発。脳人は決してヒトツ鬼にならないので、欲望を解放してもヒトツ鬼にならなければ1軍入りを認めよう、とソノイが宣言し、激しく目が泳ぐ雉野(笑)
 はるかと猿原は、満面の笑みでそんな雉野をセンターに据え、隙を見せたら、身内も敵です。
 「欲望――解放!」
 (もっとわびを! もっとさびを!)
 (マンガ……面白いマンガを描きたい!)
 (みほちゃん……誰にも渡さない。みほちゃーーーん!!)
 1軍入りに向けて自信満々の3人だったが、あっさりと欲望に負けると太陽コロナ顔の鬼となり、ばくはつだ! ばくはつだ! ばくはつだ! ぷらずまだ!!
 太陽コロナ的なモチーフは基本こうなりがちとはいえ、先日の科学鬼の芸術×爆発に続き、太陽鬼のデザインには『タローマン』との奇縁を感じてしまうのですが、雉野で一回やっているから、というのはあるにしても、メンバーのヒトツ鬼化、といういくらでも広げようのありそうなネタ惜しげも無く使い捨てしてくるのがでたらめで恐ろしい。
 「何をしている。お供たち」
 そこにタロウが復活すると、はるかと猿原は人間に戻り、雉野は雉野でみほちゃんへの執着が強すぎるのは間違いなく意図されているのですが、あっさりと元に戻る鬼と猿は鬼と猿で、人として「公」と「私」のバランスが崩れているのではないか、というのはやはりちょっと引っかかるところです。
 「貴様、生きていたのか?!」
 「当然だ。天国も地獄も俺には縁が無い。俺は不死身だ――フェニックスのようにな!」
 この辺り、「デンキエイ! 俺は最高級の改造人間だという事を忘れていたらしいな!」みたいな昭和ヒーロー(の中でもべらぼうな部類の人たち)のノリを意図的に取り入れてはいるのでしょうが、やはり今回のエピソードの下地は、『コンドールマン』なのでは(笑)
 『正義のシンボル コンドールマン』は、衝撃的な主題歌が著名な、1975年の特撮ヒーロー作品(主人公はソノニ変身体のモチーフであり)。
 暗殺された国連事務局次長の仇討ちに身を投じるも無念の死を遂げた青年・三矢一心が、古代ムーの術者・タバの手により死体を焼かれ、古代ムー帝国の守り神である幻の怪鳥・ドラゴンコンドルの生んだゴールデンコンドルと炎の中で融合する事により、三矢一心の愛と正義の心・ドラゴンコンドルの鋼の体・ゴールデンコンドルの飽くなき闘志、が三位一体となって誕生した正義を守る超人である! さあ、みんなでコンドールマンの歌を唄って、美しい日本を守ろう!
 まあ今回、BZ先生が取り出した謎のオペアイテムによる手術シーンの描写の関係で(故意に未来的かつ戯画的に見せただけだとは思うのですが……)、タロウボディの内部に詰まっているのが歯車とオイルなのではないか疑惑も微妙に生じてはおりますが。
 トラジロウの貢献にマスター以外の誰も気付かぬ内に此の世への帰還を果たすタロウだが、自分に酔ったストーカーの気配がする! と雉野太陽鬼はみほちゃんを求めて走り出し、先回りした赤青黄と戦闘に。
 「おまえたちのエネルギーが、俺に新しい力をくれたからな」
 ドンモモが指笛を吹き鳴らすとゴールデンコンドルもとい御神輿フェニックスが飛来し、ドンブラスターに装着する事でゴールドアバターチェンジ。
 「はははは! 見せてやる! 俺の真の力を!」
 黄金の波の上で御神輿サーフィンしたドンモモは、金色のアーマーとマントそして強化サングラスを身につけた新たな化身、完全無欠の鬼退治、天下無双のゴールデンモモタロウにパワーアップし、さあ、みんなでドン・モモタロウに跪いて忠誠を誓おう!
 崖上からソノイが見つめる中、金モモは増援のアノーニを御神輿レーザーで次々と虐殺していき、戦隊的に、戦闘員については深くは考えないで下さい扱いなのでしょうが、なまじ脳人の戦士とは交渉も交流もあるだけに、人格を有したサラリーマンであるところのアノーニに対する外道アクションが、強化フォームのお披露目バトルとしても、あまり気持ちよくならないデメリットは出てきていたり。
 アノーニを蹴散らした金モモは、柏手を打った手で桃のマークを形作り、額のクリスタルの中に閉じ込めた太陽鬼(このくだりに凄く既視感があったのですが、なんだったか思い出せず)をドンブラコドンブラコして御神輿アローで撃ち貫き、モモマークが反転してハートマークになると、大・爆・発。
 「みほちゃーーん!!」
 「俺こそが――オンリーワンだ」
 金モモは扇子を広げて決めポーズを取り、強化展開の雑さについては安定感のある今作としては大変珍しい、1話まるまるドンモモ強化を主題としたエピソードだったのですが、強化される主人公は登場シーンの大半を寝て過ごし、メンバーの一人は私情を最優先した末に最後まで全く関わらず、敵味方は延々と不毛なゲームに時間を費やした上で、勝手に改造強化の儀を執り行った暗黒メンターが「仲間の力を結集する」プロセスを“強化の理由付け”に用いるが、その力は無許可で回収したものという、全方位に酷すぎる展開(笑)
 純粋に「主人公強化エピソード」として考えると抜けが多くてだいぶ酷いのですが、(一応ソノイに敗北したとはいえ)「そもそも主人公を強化する必要がほとんど感じられない」為に、そのひねくれ具合を含めた全てが『ドンブラ』的コメディの一場として成立してしまう(今回たまたま最後に派手な花火が打ち上がっただけ)、のが今作の恐ろしいところです。
 それはそれとして、中盤のゲームの退屈さなどもあり出来が良いとは言いがたいエピソードでしたが、派手な爆炎が収まって元に戻った雉野が出てきたところでEDテーマが流れ出すとだいたい許せてしまうので、ドンブラコドンブラコ。
 ……個人的に、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』OP並みに、劇中で流れ出すと大抵の事は流せる歌になっています、「Don't Boo!ドンブラザーズ」。
 歌といえば、かなり力業で盛り込まれた今回のヒトツ鬼ですが、原典『太陽戦隊サンバルカン』主題歌の、「太陽」のところに「みほ」ないし「タロウ」を代入すると、ちょっと面白かったり。
 雉野のみほに対する依存心が改めて強調されたところで、次回――ハードボイルドはもう止まらない、一人より二人がいいさ二人は良いけど三人は駄目で、空っぽの手を握り合った二人の男と一人の女、行き着く先はどんなハッピーエンド?!