東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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マシンの証明

人造人間キカイダー』感想・第22話

◆第22話「シロノコギリザメ悪夢の12時間」◆ (監督:北村秀敏 脚本:島田真之)
 「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 深夜零時の鐘の音と共に、テンション高く絶叫するプロフェッサー・ギル
 「遂に我ら12時間作戦の実行の時が来た! 北緯35度60分、東経139度56分にあたる、団地を占領するのだ。……占領するのだ!」
 …………お、オカルト?
 「いいか! 12時間後に団地の上空を通過する、特殊液体燃料を搭載した、ジャンボジェット機を、特殊光線レーザー銃によって、撃ち落とすのだ!」
 と危惧されたのですが、その指定は別に月の満ち欠けや星辰の配置とは関係ない航空路の都合であり、真夜中の団地にアンドロイドマン工作部隊が入り込み、電話線を切ったり下水道に潜り込んだり電源設備を破壊したりしていくのは、面白い映像。
 「約10万人の居住者の居る、マンモス団地を火の海にして、居住者全員を焼き払ってしまうのだ。ははははははは……俺はその恐怖の世界をこの眼で、この眼で見たいのだ!」
 口角泡を飛ばすプロフェッサー・ギルは、少々ストレスでお疲れのようです。
 「……やれぇ……やるのだ! シロノコギリザメ!」
 かくして恐るべき航空機爆破テロ計画が実行に移され、団地の一室に乗り込んでいくシロノコギリザメ。粘液質の段重ねめいたスライム顔はどちらかといえばノコギリエイですが、頭頂部にわかりやすくついた丸鋸とは別に、左腕が尾びれ、右腕が特徴的な口吻、と体の左右で横向きにもモチーフを取りこんでいるのは秀逸なデザイン。鋭利なヒレの飛び出す紡錘形のシルエットも面白いのですが……真横から撮ると、凄く格好悪いのが弱点(笑)
 ノコギリザメ一味は、午後12時丁度にジャンボジェットを撃墜するのに最適な部屋に特殊光線銃を設置し……あれ、この作戦、決行の暁にはノコギリザメ部隊もまとめて、マンモス団地の火の海に沈むのか……。
 元よりギルの命令には絶対忠実なダークのアンドロイドではありますが、処刑が見せしめやお仕置きになる程度には死に対する忌避や恐怖があるとは描かれているので、犠牲前提の作戦行動は珍しい印象。
 その調整の影響なのか、深夜に他人の家に入り込み当然のように寝室の母子に目撃されると「死にたいのか!」と凄み、その母子を放置したまま隣室で作戦内容を確認すると、「貴様たち、今の話を聞いたな!」と怒鳴り込み、どうも情緒不安定。
 夜が明けて、朝7時――ノコギリザメは少年と母親を拘束しておりダークにしては仕事が異常に手ぬるいのですが……なにぶん『キカイダー』だけに、和服美人のお母さんを縛りたかっただけなのでは疑惑が持ち上がって困ります。
 なお、この母親役の松木路子さんは、今作ここまででは伊香保編を担当、次作『01』にも参加している永野靖忠監督の奥様との事。
 ダークにより密かに占拠されたマンモス団地! 迫る飛行機爆破のタイムリミット! 果たしてキカイダーはこの危機を知る事が出来るのか?!
 とプロットは胸躍る大仕掛けなのですが、現場指揮官の最も高いスキルが《小芝居》な事には定評のあるダーク組織がマンモス団地の封鎖作戦を滞りなく進行できるわけもなく、少年の家を友人一行が訪れた辺りから、一挙にぐだぐだに。
 作戦の全容を知る少年をものの見事に逃がしてしまうと、大量の子供たちを人質に(公募企画……?)団地内部に大々的に占拠を宣言する力業を繰り出し、思わず子供を救おうと飛び出した親たちが、宙を舞うノコギリにより次々と惨殺されていくシーンは、勢いがありました。
 より盛大な地獄絵図を生み出す為の〔ノーキル〕チャレンジに失敗したノコギリザメは、逃げた少年を片付けようとするが、光明寺の目撃情報を追ってきたミツ子一行まで団地内部に入り込んでしまい、半平の勝負服(競馬の騎手)姿は、もはやツッコんだ方が負けなのか。
 外部に情報を伝えようと懸命に走る少年と行き会ったミツ子たちがアンドロイドマンに囲まれるとギターが響いてジローまで侵入し、なんかもう色々駄目な気配がしてきたノコギリザメは、歩道橋から投げ落とされるとそのまま逃走。
 恐怖にうなされる少年をひとまず団地入り口の交番(ダークの手により警察官は既に殺害)に運び込んだジローは、ミツ子とマサルに少年の家探しを頼み、半平には医者を呼んでくるように命じる二重の罠を仕掛けると、医者に化けて《小芝居》で近づいてきたノコギリザメの後頭部にチョップをお見舞いし、結果的には半平に方に食いついてきたものの、明らかにミツ子さんも釣り針の餌に使われているのですが、ジローに内蔵された不完全な良心回路は、ギリギリのところで戦っていた。人間とやらはそんなに偉いのか。本当に愚かなのはいつまでも地球を汚染し続ける人間の方ではないのか? ならば今すぐ、全人類に筋肉を授けてみろ我夢ぅ!!
 少なくとも半平に関しては既に守るべき対象から外し気味のジローの策にはまったシロノコギリザメは、かくなる上はとジローに大量の人質を見せつけると、助けたければ胸部の集積回路を開けと要求し、今ジローの、人質への雑さが問われる!
 「どうするんだ?!」
 「…………仕方がない」
 さすがのジローも集積回路の蓋を開き……
 「キカイダーの能力の全てが収まっている集積回路。いぃぃー! 俺様がズタズタにしてや」
 「とう!」
 頭突きに来たところに、躊躇ゼロで反撃(笑)
 明らかに人質を救う為の算段はなく、「人質を守る為に相手の要求を飲む判断」と「それはそれとして自分の身を守る為に反撃する判断」が全く別々に作動しており、良心回路とは何か。人間の価値とは何か。
 人造人間はどこから来てどこへ行くのですか、ファーザー。
 「ダークの裏切り者は、ダークに倒される。それがダークの掟。死ねぃ!」
 真理はただ、ダークの闇の中だけだ! とギルの笛の音が響き、再び迫るノコギリだが、その回転刃が壁を切り裂く音で起死回生のスイッチオン!
 そうこうしている内に11時55分となり、慌てて光線銃の元へ戻るノコギリザメ。ゲスト母がその存在をキカイダーに伝えるがタイムリミットは刻一刻と迫り、アンドロイドマンに行く手を阻まれている内に、ジャンボジェットの機影が照準へと入り……
 「5・4・3・2・1!」
 あわやのその時、キカイダーがジャンボジェットと交差する形で照準の前に飛び込んだ事で、発射の妨害に成功。
 「俺が居る限り、おまえ達の悪の野望は実現させない!」
 光線銃を破壊したキカイダーは、EDテーマをバックに改めて一騎打ちに挑み、回転ドリルを叩き降りると、逃げるサメを追ってホバージャンプ。そして大車輪投げからデンジエンドが炸裂するとEDテーマがぶちっと途切れて、斜面を派手に転がったサメはミッション失敗の通知と共に敢えなく爆死するのであった。
 多くの母子らは無事に再会し、ジローたちはその姿を尊いものと見つめ……次なる戦いへと走り去っていくジロー。
 次回――結婚式を中止せよ! 嫉妬の炎を燃やすアリジゴク?!