東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

背中を向けたら生き残れない

20年ぶりの『龍騎』メモ・第21-22話

(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第21話「岐路」◆ (監督:佐藤健光 脚本:小林靖子

  • 前編のラストに、どうなる?! と引っ張って、後編冒頭で割とどうという事のない形で解決するのは、《平成ライダー》の負の名物っぽいところがありますが、龍騎とナイトの激突を止めに入るエイ、背後でのっそり立ち上がる王蛇、そこに突撃してくるサイモンスター、とバタバタしすぎてちょっと面白い事に(笑)
  • 手塚が故ガイの契約モンスター「メタルゲラス」の名前を持ち出し、フラフラしている蓮に代わって、名付けキャラに昇格。
  • なにやら浅倉と因縁があるらしい手塚。
  • 「最後に残ったライダーが手に入れる力で、俺は恵里を救う」「俺は戦って勝ち残らなければならない。どんな事をしても。その為だけにライダーになった」……手塚が蓮の目的を明かし、恵里の存在を知った真司は、戦いを止めれば皆が救われるわけではない事を知り、主人公として次のステップに。
  • 神崎士郎が張り巡らせるライダーバトルの蜘蛛の巣の中で、その行き着く先について“疑問を呈す真司”と“信じるしかない蓮”の対比が成立しているので、視聴者の感じる「え? それ信用できるの?」の受け皿が存在しており、主催者の主張による“なんか凄い力が手に入る”らしい! という、あやふやな目標設定でも物語が成立しているのは、今作の基本設計の優れた部分。
  • 真司の抱く当然の疑問が劇中で描かれる事により“そんな事はわかっていても踏み込まなければならない蓮の情念”も強調されるのがまた上手い作りで、キャラクターの柱となる情念を大事にする小林さんらしい組み立てですが、改めて見ると非常に、ダブル主人公構造。
  • また、当初は、蓮(強固):真司(曖昧)、という対比関係で始まったものが、北岡事件やガイとの対峙を経て、蓮(懊悩):真司(強固)、と逆転し、更にそこからまた真司の信念に新たな揺らぎを入れる事で蓮との関係性を考え直していく事になる、と「変化」と「対比」の組み合わせ方が巧妙。
  • 優衣の手に入れた「家」の写真に手塚はコイン……ではなく虫眼鏡を取り出すと細かく検分し、そこは占いじゃないのか。
  • 「俺……戦いに来たんだ」……悩みに悩んだ真司は、蓮にとっての戦いの重さを理解する為に心ゆくまで殴り合おうと持ちかけるが、浅倉から横槍が入って王蛇と戦う事に。ところが鏡に向かって「変身」中に背後から鉄パイプで殴りつけられ、汚い、浅倉威、汚い。
  • ヒール街道一直線の浅倉によるダーティープレイで負傷した龍騎は王蛇に一方的な攻撃を受け、遂に毒々ライダーキックが放たれたその時、割って入ったのはナイト。
  • 「どんな事をしても勝ち残る」とは言いながらも、戦う事そのものに誇りや信念が無ければ何より自分自身が戦っていられない蓮が、そういったものを一切持っていない浅倉の言行に耐えられなくなるのは、納得の流れ。
  • ……それにしてもここが80年代だったら、「俺は命の大切さは知っている。だが、卑怯者のおまえだけは許せない!」と、さくっと始末されそうな、浅倉。
  • そういう点で浅倉は、『龍騎』ならではの悪役である、というレベルデザインも、後世まで大きなインパクトを残した理由の一つといえそうでしょうか(言ってしまえば、士郎的な悪役は色々な作品で見るわけなので)。
  • 優衣と手塚は写真の「家」に到着し、そこにかけられた表札は「神崎」。ガラス面というガラス面を封印した洋館の中に入り込んだ手塚は、逆に鏡だらけの部屋で神崎士郎と接触し、頭痛に苦しむ優衣は、自らの過去の断片を思い出す……。
  • ミラーワールドでは、ずーーーっと走っていたメタルサイがようやく現場に到着すると王蛇を背中から襲うが、王者が二枚目の契約カードを取り出すとサイと契約する予想外の展開。二枚目の契約カードは突然もいい所なのですが、背後の左右に2体のモンスターを従える王蛇の姿はまさに悪の帝王というかギャングのボスというかで、映像の迫力で展開に満足感を与えます。
  • 「……なあ、本当に楽しいよな、ライダーってのは」 ……の言い回しが、大変素敵。

 前作『アギト』で、夏のインターミッション的エピソード2本(「川流れする前の亮」と「テニス対決」)を担当した佐藤監督が、今作初登板。
 この時期は、石田監督を筆頭に、画面奥に強力なスポットライトを配置するなど、強い光源を用いた絵作りは全体的に多めなのですが(ビデオ撮影における実験的要素もあったのでしょうか……?)、特にそれが極端で、ライト強調系の演出を私があまり好きではないのはあるにしても、水面の揺らぎの反射光めいたものをライダーやモンスターにずっと当て続けたりするのは、ちょっとやりすぎ感。
 まあこの辺り、映像の画質によっても見え方は変わりますが……ちょっと画面の見づらさが気になってしまう2本でした。

◆第22話「火種」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子

  • 王蛇は龍騎とナイトをサイチャージでまとめて吹き飛ばすが、時間切れ……を「もう帰るなんて言うなよ? 折角面白くなってきたんだ」無視した(笑) とにかくこの、端々で無軌道なルール破りを行う事で、浅倉のデタラメぶりを印象づけてくるのが、上手い。
  • 溶けかけの王蛇は「限界は――自分で決めるっ。諦めなきゃ……限界なんかない!」とファイナルベントを放つも不発だったのか、真司と蓮はなんとか外へと脱出し、リアルバウトに突入しようとした浅倉は、ひっくり返って気絶。
  • 浅倉の処遇に関しては、連絡しても警察の被害が増えるだけだからライダールールでなんとかするしかない、と理由付けして、まずは浅倉問題を優先すべき、と真司と蓮については結論を先送りする形に。
  • “各々の正義”がぶつかり合ってややこしい時に、大半の視聴者が頷ける“明らかに倫理的な悪”を出してひとまず矛先をそちらに向けるのは、定番の手法ではあります。
  • 「戦え。ライダーの宿命に逆らうな。戦わなければ、次に脱落するのはおまえになる」……手塚の前に現れた士郎は新たなカードを手塚に投げつけて姿を消し、床に落ちていたスケッチブックを発見する手塚だが、中身のページは全て切り取られている、なにやら不穏な伏線。
  • 「調べるのはいいが、優衣をあまり巻き込むな。あいつが倒れるなんて、普通じゃない」……花鶏に戻るや、女の子には優しいポイントを稼ぎ、あざとい、秋山蓮、あざとい。
  • おもむろにマッチ占いを始めた蓮は、「次に消えるライダーは…………俺だ」発言。
  • 一夜明け、気絶から回復するや、気絶前のモーションのまま鉄パイプを振り下ろしにいく浅倉、面白すぎるぞ浅倉。
  • 浅倉vs吾郎、ラウンド2!
  • 「……あのさ。……おまえ、なんで平気なの? 自分が死ぬかもしれないのに」「……かもではない。俺の占いは当たる。……――だが、運命は変えられる」
  • 13年前に神崎家で起きた原因不明の爆発事故により優衣の両親が死亡している事を真司に伝えた手塚は、死んだ親友の代わりにライダーになった事を明かし……お客様、お客様、会計をさらっと真司に押しつけてませんかお客様ー?!
  • 神崎士郎の指示?により手塚を襲うミラーフェニックスは、手塚の親友と関係があるような描写がされ、マンタアタックにより爆散。
  • 「俺がライダーとして戦うのは、自分の為だけなんでね。その一線を踏み外すと、おまえ達みたいに弱くなるんだよ」……スネーク不意打ちを受けて浅倉の人質とされた吾郎を助けない、と宣言した北岡は事務所を訪れた蓮と衝突し、声の震わせ方で、北岡にも主義と人情の狭間で揺れるものがある事を表現。
  • 「今おまえとなら……戦う理由はある」……蓮に向けてデッキを叩きつけた北岡、鏡は……? と思ったら、机の側に巨大な姿見がありました!