東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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殺るのは誰だ

人造人間キカイダー』感想・第7話

◆第7話「怪物ブルスコング大暴れ」◆ (監督:北村秀敏 脚本:伊上勝
 キャンプ場を襲うダーク破壊部隊のブルスコング(か、可愛い……)により、生徒たちをかばった女性教師が性能テストという名の辻斬りで惨殺され……後日、渋谷駅前でダークの脅威を訴える遺族の父子だが、世間の風は冷たい。
 「ダーク……この言葉を私は聞いた事がある……」
 父子が去った後、路上に捨てられ踏みにじられたビラを拾った光明寺無職は、記憶のよすがを追い求めて父子の後を追い、アイコン的表現として仕方ないのですが、なんだかんだ背広を着て現れるので、キャッシュカードの暗証番号ぐらいは覚えている疑惑が募ります。
 その頃、家に戻った遺族父は、いつの間にかリビングに置かれていた3つのトランクに首をひねると近づき……え、これ、蓋を開けると妻のバラバラ死体が入っているやつでは。
 おそるおそるトランクを開いた遺族父は中身を見ると案の定悲鳴を上げ、そこに詰まっていたのはバラバラ……はバラバラでもブルスコングのパーツ、と完全な猟奇殺人物の筋立てから、「バラバラ死体」のモチーフはそのままに、ダークロボットの出現に繋げるのが、鮮やかな展開。
 「ダークの秘密を知った人間は死ぬ事になる」
 自分から名乗って自分で被害者を増やしていく、大変嫌なタイプの猟奇殺人ロボだったブル頭部が目を開くと喋りだし、ラバーマスクがぐにぐに動いて……可愛い。
 冒頭からかなり残酷な殺人を行っている怪ロボットなのですが、寸胴体型と、歯を剥き出しにした表情が逆にマンガ的なコミカルさを出している顔デザインが掛け合わされて生み出す絶妙な可愛さにより、悪としての恐怖感はいまいち出ません(笑)
 基本、闇夜に現れ、家屋にもいつの間にか侵入している正調スリラー路線の筈なのですが……悪魔の笛の音が響くと宙を舞うパーツが一つに合体し、その造形物がまた、可愛い(笑)
 だが、KAWAIIだけがDARKじゃない! とブルは遺族父をくびり殺し、部屋に現れた謎のトランクは、窓から入ってきたアンドロイドマンが回収する衝撃の処理で、密室トリックなんて始めから存在したなかったのです。
 大変タイミング悪く、情報を求めて家屋に侵入してきた光明寺@記憶喪失は、男を抱き起こしているところをその息子に見とがめられて殺人犯と誤解され、両手を真っ赤に染めながら弁解する描写がえぐい。
 「話を、話を聞いてくれ。私は殺していない……」
 「人殺し、人殺しー!」
 意図していたのかはわかりませんが、パイロット版で面白かった、連続殺人鬼・偽光明寺の要素が、冤罪として本物の身に降りかかるのは面白い趣向となって、光明寺不審者、逮捕。
 「プロフェッサー、TVを、TVのニュースをご覧下さい」
 アシスタントロボ(可愛い)からの情報で光明寺逮捕を知ったギルにより、警察署に送り込まれたブルスコングは首輪攻撃で3人の刑事を殺害すると光明寺の身柄を強奪するが、そこに響くギターの音色。
 「誰がやったんだ?!」
 「俺がやったんだ!」
 博士が殺人容疑で逮捕の流れから、開始9分にして登場したジローが、アンドロイドマン殺しを自白するのが妙に面白い流れに(笑)
 凄く高いところから飛び降りたジロー(今回、「光明寺の人造人間!」ではなく「ジロー」と呼ばれている)は、生身ダブルチョップを浴びせると博士と共に逃走するが、その姿を遺族少年が目撃し……
 「あ! 父さんと母さんを殺した犯人が逃げる!」
 前回に続いて、後の井上敏樹が好んで用いる誤解とニアミスを重ねる話法が盛り込まれているのは、影響の有無を見るかはともかく、面白いところです。
 「ダークに生まれし者よ……帰れよ……ダークに……ダークの元にぃ……」
 黒衣の袖を翻しながら笛を吹くギルの見せ方が大変格好良く、忠誠回路と良心回路の衝突に苦しむジローに迫る首輪ミサイルだが、その爆発により笛の音が遮断された! とナレーションで説明が入り、スイッチオン!
 「ブルスコング、勝ちを焦ったのがおまえの命取りだな!」
 「なにを~、最後に笑うのはこの俺様だ!」
 そのまま流すと、敵方の間抜けな行動がヒーローを助けた、で終わってしまうのですが、そこでヒーローが敵の心理を指摘し挑発する事により行動の正当化が行われると共に、即座に敵方が切り返す事で丁々発止の活劇的面白さが発生しているのは、極言すれば、怪人が喋れるのはこの瞬間の為にあった、とさえいえる切れ味で、伊上脚本の冴える部分でありましょうか。
 恐らくその基盤は、更に一つ二つ前の時代のエンタメの文脈なのでしょうが、考えてみるとこの、悪玉に対する挑発的な言行は、本邦ヒーローフィクションにおいては次第に“ヒーローとしてあまり好ましからざる言行”とみなされるようになったのか、時代が進むにつれて減じていく要素ではあるかもしれません。
 余談にして雑語りですがその辺り、アメコミヒーローでは現在も生きている印象で、映画やゲームなどで、本邦ヒーローとは別種の魅力を感じる要因の一つになっているかもな、と(そこで出てくるウィット混じりの表現などは、本邦エンタメの苦手分野でありましょうか)。話がズレてきているかもしれませんが、洋ゲーやっていると、チンピラの語彙の豊富さや、そのチンピラに対する侮蔑や挑発表現のバリエーションの多さ、は明確に違いとして感じる部分(笑)
 キカイダーとブルが激突している間に、朦朧としていた光明寺博士はその場を走り去り、記憶喪失なので仕方ない面はあるのですが、映像上はどんどん、駄目な感じな人になっていきます。
 光明寺容疑者を追おうとした少年を、ブル首輪ミサイルからかばったキカイダーは損傷し、少年を連れてサイドマシンで逃走。なんとか服部探偵事務所に辿り着くがダメージは大きく、右腕を直すにはダークのロボット工場を利用するしかない、とギター背負って潜入アクションがスタート。
 半平の協力により後を追ってきたミツ子が修理を請け負って、博士の助手として培ってきたエンジニア技能を発揮するのですが、作業前にジローの両手両足を念入りに拘束するのが、ダーク仕草です。
 …………ほ、ほら! 回路の調整中に誤作動を起こして、不意にダブルチョップとか飛び出したら人間の技術者はすぐに壊れてしまいますからね!
 ミツ子による修理は無事に完了するが、仕上げを前にブルスコングに踏み込まれてしまい、両手両足を封じられたジローは解体の危機。だがその時、動力室に忍び込んだ半平の工作により高圧電流が流れて復活し、戦力としては突出したジローを、人間の仲間達が助ける構図になっているのが手堅い。
 「工場もろとも、ぶっ飛ばせぃ!」
 良心回路を取り外しての再洗脳が無理と見るや切り替えの早いギルの指示により吹き飛ぶ工場だが、そこに響くギターの音色。
 「キカイダーめ! くたばらずに居たのか!」
 「そうともブルスコング! ダークの破壊部隊がある限り、私は戦うのだ!」
 高い所からホバー移動で大ジャンプしたキカイダーは、いつになくタメを効かせてポーズを取ると主題歌バトルに突入し、今回は敵も味方も、トランポリンでよく飛びます。
 アンドロイドマンが直立3段タワーによる攻撃を見せるが、ひらりひらりとそれをかわすキカイダー。ブルスコングの首輪攻撃を受けて振り回されるも拘束を脱すると必殺コンボを発動し、二段構えの大車輪投げからデンジエンドで、谷底へと叩き落とされたブルスコングはあえなく大爆発するのであった。
 最後、カラカラと音を立てて無残に転がる歯車がロボットの亡骸として印象的で、台詞回しのキレやアクションの工夫に、「ニュースで光明寺の行方を知るギル」「キカイダーの損傷箇所について部下と検討するギル」などの面白シーンも含めて、全体的に見応えのある良エピソードでした。
 ……ダークに両親を殺害された少年は、ダークに負けずになんか前向きに生きていくよ! と70年代らしく投げ飛ばされましたが。
 そして光明寺容疑者は世間的には、警察官を3人殺して逃走中の凶悪殺人犯にクラスチェンジした気がしますが、果たして、再会までに後幾つの罪状が積み上げられてしまうのか。
 なお、「ダーク!」「ダーク!」ってやっぱり言いづらいよね……という話になったのか、今回からアンドロイドマンの奇声が「ギル!」「ギル!」に変更。同期『仮面ライダー』への意識でやってほしいとか言われたのかもですが、相変わらず普通に話すので、この奇声そのものが、必要なのかどうかちょっと疑問ではありますが……。