20年ぶりの『龍騎』メモ・第7-8話
(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第7話「錯綜」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹)
- ミラーシマウマと戦う新たなる仮面ライダーに変身していたのは、口笛・黒手袋・ヒョウ柄の男?!
- 前回までで、『仮面ライダー龍騎』はこういう作品です! と提示して一区切りがついたところで、前作『アギト』でメインライターを務めた井上敏樹が参戦。なお井上敏樹は、『クウガ』~『カブト』まで、7作品連続で《平成ライダー》に参加する事に。
- 凄まじくエネルギッシュな優衣のおばがヒマラヤから帰国し、絡まれて面倒くさそうだな……と思った秋山、「早くアマゾンへ行けと言っといてくれ」発言。おばの帰国により喫茶・花鶏が営業を再開し、真司はおばに好評を得る。
- 「金色のザリガニ発見」の取材を令子に任された真司は張り切るがバイクを車にぶつけられ、追う男たちと追われる男の騒動に巻き込まれ、取っ組み合いになったり、殴り合いになったり、追う方も追われる方もよくわからない内に一蓮托生の逃走劇に発展するのがとても、井上敏樹です。
- 追われていた男の正体は、弁護士・北岡秀一。
- 「右斜め45度。これ、俺の角度ね」
- 投資詐欺グループを無罪に持ち込む敏腕ぶりを見せる一方、そのグループの金を使い込んで追われているとんでもない不良弁護士であり、カーアクションの無駄遣い(笑)
- 男達に取り囲まれて絶体絶命から土下座戦術を行使中のその時、口笛・黒手袋・ヒョウ柄の男がその場に現れ、スーツで決めた男とガラの悪い男が「吾郎ちゃん」「先生」と呼び合う事で一気にキャラ二人の取っかかりが生まれるのが、鮮やか。
- 吾郎ちゃんは翔一くんぽいポーズから……普通に生身で喧嘩が強かった(笑)
- いきなり前作のセルフパロディを突っ込んできましたが、『龍騎』ここまでの面白さとはちょっと違うというか、素材は『龍騎』を活用しつつ、内容はシェフの気まぐれパスタな感じ。……まあそれで面白いのが、好調時の井上敏樹の敏樹の筆力ではありますが。
- 良くも悪くも、井上敏樹色が強く出たエピソードでしたが、第5-6話は重くて暗くなるのがわかっていたので、がらっと雰囲気を変えて欲しいとか、そういったオーダーがあったりしたのやら。
- 投資詐欺グループは吾郎ちゃんに叩きのめされ、その間に逃げ出した真司と北岡は、シマウマモンスターの気配に反応。
- 牛のマークのデッキで緑色のライダーへと変身した弁護士・北岡秀一が、どでかい大砲を召喚してシマウマを粉砕して、つづく。
- モチーフ動物の縞模様を活用した、シマウマ移動・シマウマ輪切りは、面白い見せ方でした。
- 真司、花鶏に下宿する事に。
- それにクレームを入れる、爽やかヤクザ・秋山。
- ザリガニ事件の背後に製薬会社の工場が絡んでいるのでは、とジャーナリストの嗅覚を発揮した令子の前に、取材申し込み先の顧問弁護士として北岡が登場。
- 令子さん、周囲に舐められないように肩肘張っている姿勢に一定のリアリティはあるのでしょうが、ヒーローフィクションの登場人物としてはやたらと他人に攻撃的で好感度の持ちにくい部分はあるので、軟体動物の北岡と絡めた事で、さっそく互いの存在感を引き上げてくるのは、上手い。
- まあちょっと井上敏樹これ、令子さんのキャラ立て好きじゃないのかな……感は滲んでいますが(笑)
- 北岡は真司を籠絡しようと接近し、美食万歳!
- 「俺はな、人間の欲望ってやつを愛してるんだ」
- 北岡が欲望を満たし続ける為に求めているのは、永遠の命……?
- 真司は下宿の条件として花鶏を手伝い始め、それに難癖をつける、爽やかヤクザ・秋山。
- 蓮を気にする真司は、そんな気がした《ドジっ子》スキルを発動し、「あんたもしかして……ぶ、ぶきよぉ?!」 ……これも、セルフパロディでしょうか(笑)
- 謎の食器洗いスキルを見せつける爽やかヤクザ。
- 謎のウェイタースキルを見せつける爽やかヤクザ。
- 令子のジャーナリズムは空回りに終わり、奇形生物は発見者の自作自演と判明。社会派テーマかと思わせて、個人の自己顕示欲に着陸する一ひねりの後、発見者はシマウマモンスターに輪切りにされてしまい、この前後編はかなり、被害(ヒーローが間に合わない)描写が多め。
- 前回今回とキャラクターを描く事を重視して、それがミラーモンスターのバトルとは全く繋がっておらず、少々割り切りすぎた作りなのですが、とりあえずバトル始まったら挿入歌の勢いで誤魔化すスタイル。
- 『クウガ』『アギト』は、怪人サイドの辻斬り行為から、その共通点――事件の全体像を探り出そうとする公的捜査機関の存在がある事で、〔怪人の殺傷行為・物語の進行・ヒーローの行動〕がダイナミックに連動していたのですが、今作では、「ミラーモンスター」というピースが抜け落ちたまま「失踪事件」を追う民間組織しか存在しないので、そこに気を遣わないと怪人の殺傷行為と物語の進行が分断されたままになってしまい、『クウガ』『アギト』とは別の方法論になっているな、と。
- ドラゴン大火球でシマウマモンスターに大ダメージを与えた龍騎は、必殺昇竜キックでトドメを刺すが、直後、砲撃。
- ライダーバトルの標的となった龍騎の運命や如何に、でつづく。
- 次回――今度こそ、逮捕。
第5-6話が秋山編だった事もあってか、第7-8話は、真司と新キャラ・北岡の絡みが中心となり、2話続けてナイトが登場しない、のは近作ではまず無理なのでは、と思われる作り。
登場ライダーを絞り、見せないといけない強化アイテムも特になく、そこに生まれた余裕で何を描いているかといえば、ザリガニおじさんとか、北岡&真司のセレブツアーとか、今日見るとかなり枝葉の部分なのですが、実はそういった部分こそがこの時期の作品の雰囲気形成に一役買っているのだろうな、と。
で、近作幾つかには、そういった雰囲気をコンバートして再現したい、みたいな意識が垣間見える事があるのですが、「余裕」の有無が全く違うので、あまり上手く行かないわけだな、と。
どちらが良いとか悪いとかで無しに、20年経つと、同じブランドタイトルでも別のものになっているな、と改めて。