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桃缶と逆説

仮面ライダーエグゼイド』感想・第39話

◆第39話「Goodbya 俺!」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也
 福利厚生の不備から右腕と左腕に裏切られ、プロトガシャットは大半を退職金代わりに持ち逃げされ、暴力ではハイパー無敵エグゼイドに手も足も出ず、ハッキリ言ってじり貧の正宗は、自己肯定力を回復する為に、貴重な格下であるパラドとグラファイトを襲撃。
 前回の反省を活かして変身アイテムを攻撃するクロノスに対し、即座に生身で地面にパワーゲイザーを打ち込むグラファイトが妙に格好良かったものの、《ポーズ》は発動。
 だが、打倒エグゼイドの為にパラドをJudgment! しようとした寸前、横からクロノスを止めるグラファイトがやたらに男前で、グラファイトさんの声の格好良さは、序盤からもっと活かしていくべきだったと思うわけなのです。
 「なぜ動ける?!」
 「ゲムデウスの、力だ」
 ……重ね重ね、元来はゲムデウスに対抗する為に存在する筈の“クロノスの力”が肝心のゲムデウスに通用せず、むしろゲムデウスの力が“対クロノスの力”の扱いになっているのはおかしい気がする――対ゲムデウス特効のクロノスのスキルは《ポーズ》以外なのかもですが、現状クロノス最強の力が抜けて《ポーズ》なのに、では何が有効なのか? に関する説明・言及・疑問の提示など、が一切無い――のですが、毎度毎度の事ながら大森P作品における、「視聴者に対して劇中で見せる情報の取捨」と「スムーズな展開の為に私が必要だと思う情報」が致命的に噛み合わないという、相性の悪さが、ここに来て『クロニクル』周りで大噴出。
 合理的な説明の付く背後設定はあるかもしれませんが、それが劇中で示されなければ存在しないのと同じわけで、「ここは説明ないし言及が必要」「ここは触れなくても大丈夫」の判断基準と勘所が、我ながら驚くほどに、とことん合いません(笑)
 以前にも少し書きましたが、一連の大森P《ライダー》、素材時点では決して嫌いではない、むしろ好き寄りな気配さえ漂い、実際『ビルド』も『ゼロワン』も1クール目はそれなりに楽しく見ていたのですが……進んでいく内にどこかでほぼ確実にボタンの掛け違いが発生し、欲しいところの情報が無い・無視される、となるのは、もはや呪いレベル。
 必ずしも設定を全て説明する必要があるわけではなく、ある事象に対して、登場人物がちょっと疑問を持ってくれる、だけでも全然違うのですが、それさえも無い場合が多い上で、その曖昧な部分が往々にして、物語を都合良く進める為に使われてしまうのは、余計な引っかかりになって残念なところです。
 「ポーズだけがクロノスの力ではない」
 ゲムファイトに《ポーズ》を強制解除されたクロノスは真っ正面からゲムファイトを殴り飛ばし、つまり……ゲムデウスに有効なクロノスのスキルとは、《クロノスの筋力》なのか。
 それはそれで納得してしまうものを感じつつ、パラドクスをいたぶってぎゅいーんぎゅいーんと自己肯定力をチャージしていると、通報を受けた無敵エグゼイドが乱入してくるが、クロノスはまさかの《待った!》
 ニコをゲムデウスウィルスによるゲーム病に感染させたと告げたクロノスは、ニコを救う為にはゲームクリアを目指してパラドクスを倒すしかない、と悪夢の二者択一を突きつけると、パラドに絶望を囁いて、撤収。
 「しょせん君はゲームの敵キャラ。人間に殺される為に生まれた命にすぎない」
 正直エグゼイドがする事は、思わずときめきガシャットとか受け取っていないで、さっさとクロノスの前歯を全部折る事だと思うのですが、どう考えても攻略のチャンスは充分にあったクロノスを追い込まないでいる内に、先に逆転の手を打たれてしまった大失策。
 なまじ前々回、カチコミかけて暴力で解決しようぜ! をやってしまっただけに、その路線を押し進めれば良かったのでは感が出てしまうのは、正宗が相変わらず幻夢コーポーレションにあぐらをかいている為もあるのですが、「あくまでも社長」をやりたいが為に秘密基地に引っ込む事もできないのはやはり、“秘密結社という寓意”を破壊する事のデメリットを、作品が消化しきれていないと思うところ。
 また、出遅れた正宗がアドバンテージを得るためには「ゲーム病の掌握」こそが重要だったのでは、と書いたところに今回この展開になったのですが、“第三のボスキャラ”としては、最初からそれぐらいの優位を確保していて欲しかったですし、作品の特性として「ゲーム」にこだわるのは理解できる一方で、正宗登場後は完全にそれが裏目に出ている印象です。
 それはそれとして、ハイパームテキ最優先の黎斗が、CRに運び込まれたニコの頭を優しく撫でながら、未だかつてない柔らかな仕草と声音で、
 「心配いらないよ。たとえ消滅しても、私たちのように、バグスターとしてコンティニューできるからね」
 と囁くのは素晴らしかったです(笑)
 クロノスの言葉に混乱する永夢から、今おまえのヒエラルキーは最底辺! 具体的に言うと、1クール目後半ぐらいの某Mさんこと桃缶先輩と同じぐらいだから! と断言されたPさんは、弱りながらも激高。
 「俺は人間に殺される為に生まれた存在じゃない!」
 正直、クロノスの茶々入れ抜きで、後半2クール、このテーマを中心に掘り下げていくのでも良かったような気はしないでもないのですが……げにテーマの分量というのは、難しい。
 「…………仮面ライダークロニクルの主人公は、俺なんだ……」
 劇場版の布石らしきシーンを挟み(この局面で、こういう要素も交えないといけないのは、本当に大変だなとは思います……)、病院ではニコの発症に気付いた大我が起き上がろうとするも飛彩の懸命の説得になんとか自制し、さすがに前回、大我を救う為に飛彩が何を諦めたのか(そして何を得たのか)は、覚えていてくれて良かった。
 ニコは6年前の格ゲー大会で負けた恨みは俺エム=パラドにぶつけるべきで、永夢にとってはとばっちりだった事を謝罪し、前回から、過去を清算する謝罪祭なのですが、やはり、永夢も飛彩に真剣に謝った方が良いのではないか。
 「永夢…………私、怖いな。…………死にたくない」
 死を前にした恐怖がストレートに描かれ、消滅度が上がると基本それどころではなかったり、中盤以降はCRに悪態をつく患者のイメージが強かったりで、割と今作において、不足していたパーツかもしれません。
 「……大丈夫。君の笑顔を取り戻してみせる。――必ず」
 患者を救う為、今の自分に何が出来るのか……黎斗から情報を聞き出す事を諦めた永夢はPさんと対峙し、一時休戦してはいるものの、黎斗はあくまでゲーム病の治療には興味がなく、場合によっては『クロニクル』のGMに返り咲く事を狙っていそうな節もある一線が保たれているのは、一貫していて良いところ。
 ……まあ今となっては、黎斗がディレクションに戻った方が、倫理的にはともかくゲーム的にはプレイヤーを楽しませてくれそうですが……序盤は快調にレベルが上がっていき、初級バグスターも倒してプレイが楽しくなり始めたところで、トラウマ請け合いの精神をえぐりに来るイベントが続々と用意されている感じで(笑)
 「16年前……。おまえが僕に感染して間もない頃――僕は事故に遭った」
 水中に浮かぶイメージ(この後ハッキリしますが、ストレートに「死」の比喩)に繰り返し苛まれるパラドに永夢は語りかけ、曇天模様を背景に、両者の姿を繰り返し交互に映す演出は、正直ちょっと安っぽいというか、学生の自主制作映画みたいになった印象(ところどころ永夢がどんな表情でその台詞を口にしているのか見せない、という機能はありましたが)。
 永夢の患者の治療に関する強い想いの背景には、自分の命を救ってくれた医療への感謝と感動のみならず、自分が感じた死の恐怖から一刻も早く患者を解放したい意識があったと補強され、ニコの治療の為に、ある意味では自らの分身ともいえるパラドを倒す覚悟を決める永夢。
 「おまえと僕の…………決着をつける」
 応じたパラドはマックス大変身し、永夢は……あ、大人げなく、ハイパー大変身した
 「おまえと戦うのはこれが最後だ。おまえの運命は、俺が変える」
 パラドが求め続けた本気の永夢との戦いは当然のことながら無敵エグゼイドのワンサイドゲームとなり、賞味期限切れのパイン缶の運命は俺が決める! と、サンドバッグ状態からゲージは残り1。
 「ニコを救うには、ゲムデウスに辿り着かなきゃいけないんだ」
 黎斗の制止を振り切ったエグゼイドのハイパー無敵キックが炸裂すると、永夢とパラド、両者の抱える死の恐怖のイメージが繋がり混ざり合うような映像の後、パラドは消滅。
 「パラド……俺の、勝ちだ」
 エグゼイドは変身が解け、水底に沈んでいくパラドのイメージで……つづく。
 序盤はバグスターワープを駆使して“思惑ありげな実力者”ポジションとして都合良く立ち回り、パラドクス変身を経て黎斗を追い落とした3クール目から、“第二のボスキャラ”として表舞台に登場したパラド。
 今思えば、そこで“快楽主義者のゲームジャンキー”の面と“バグスターのリーダー格”としての立場を上手く融合できなかったのが失策で、口では「バグスターvs人類」の構図を煽りながらも、本人の行動原理は「永夢と遊ぶ」な為、結果的に『クロニクル』の方をうっちゃって「永夢に勝てばバグスターの勝利だ!」と、ゴールの位置を変えるどころか、コースの位置を変えるみたいな事になったのは、どうにも強引であったな、と。
 その後、檀父子に振り回されて“最強の宿敵”の座からあっという間に蹴り落とされると、しばらく実質的な蚊帳の外に置かれてしまい、再び焦点が当たるまで、迂回路が長すぎた印象です。
 パラドに関しては、思い入れが無い、というより、どう思い入れを持てばいいのかわからない、というのが正直な感想で、本質的に大きな子供だが頭は回り、自分最優先の行動原理だが種族全体について考えているような事も口にはする、というキャラクター像を、話の都合優先を超える一つのキャラクターとして消化できないまま、ここまで来てしまいました。
 ポッピー同様に、パラドもまた、望んで生まれたきたわけではなく(あらゆる生命がそうであるとは言えるからこそ、「原罪」がテーマとして成立するわけですが)、それは今回の「俺は人間に殺される為に生まれた存在じゃない!」の叫びに象徴されているのですが、ポッピーのアイデンティティ問題だったり、貴利矢のバグスターとしての蘇生だったりと出来事は積み重ねている一方で、“バグスターとして生まれる(生きる)”事について、人類側メインキャラの誰一人として真っ正面から向き合おうとしないので、パラドの存在そのものが虚無の中で空転を続ける歯車になってしまっていて、やはり序盤にポッピーの「私バグスター」発言を雑にあしらったのが、根深い病巣になっている気がしてなりません。
 まあ、最終盤の手札として残しているのだとは思いたいですが……次回――正宗すなわち“M”の頭文字を持つ男は、賞味期限を回復する事ができるのか?!