20年ぶりの『龍騎』メモ・第3-4話
(※サブタイトルは本編中に存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第3話「兄妹」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
- 突然殴られたので殴り返そうとする龍騎に対して、ナイトはトリックベントで分身攻撃し、なかなか見栄えのある戦闘演出。
- 〔スキルカードの読み込みによる攻撃手段・前作でもそれなりにやっていはいたものの、ライダー同士の闘争を強調する激しい肉弾戦・鏡の内と外の断絶〕といった今作の特徴を冒頭一つのバトルでまとめて印象づけてくるのは、巧み。
- トドメの寸前、優衣が外部から窓ガラスをたたき割り、前回に続き「組まない」発言に矛を収める蓮。優衣は「仮面ライダー」ではないようですが、鏡の中の戦いを認識する事が出来るなど、キーパーソンとしての存在感をきっちりと与えてきます。
- 勿論、警備員が出てきた。
- 蓮による「ライダーは共存できない」発言。
- その夜、デッキを入手した事により、きゅぴーん体質となった真司に、鏡の中から話しかける謎の男。
- 「最後に」「存在できる」「ライダーは」「ただひとり」「ライダーを」「倒すんだ」「戦え」
- 謎の男の正体は、優衣の兄・士郎であり、問題のカードデッキの制作者。子供の頃から鏡の中にモンスターが見えた優衣を信じ、守り続けてきた兄だが、両親の死により別々の親戚に引き取られた事で生き別れとなり、優衣の目的は、士郎に会ってその真意を確かめる事にあった。
- 優衣の事情を知った真司は、「少なくとも俺は、モンスターと戦う為に変身する。誰かを守る為だけに変身するから」と、士郎がデッキを作ったのは悪意からではない事を証明してみせる、と決意表明。
- 二体一組のガゼルっぽいミラーモンスターが出現し、きゅぴーんと駆け出してバイクにまたがる真司の描写は、割と『アギト』まま。
- 真司は、初のポーズを決めて「変身!」からミラーワールドをバイクで移動し、どこかで専用バイクを入れるありきだったのでしょうが、結果としてこの移動シークエンスが、完全にうつぼ舟(神霊が異界と現世の往来に用いる中空の舟)になっているのは、興味深い点。
- 龍騎は右手に大きなドラゴンヘッドをはめ、ドラゴン大火球でミラーガゼルを撃破するが、もう一体の同型モンスターが少女をを襲い、またも現場に居合わせた蓮に不信感を募らせる真司で、つづく。
- クレジットによると今回のモンスターの名前は、「メガゼール」に「ギガゼール」で、ほぼダジャレ(笑)
◆第4話「不審」◆ (監督:石田秀範 脚本:小林靖子)
- 小学校を足早に去っていく不審な成人男性2人。
- 近作より話数をかけられる、というのは第一にありますが、問答無用で殴りかかられたのに始まり、事件現場で次々見かける無愛想な黒い影……と、万事に突っ慳貪で説明を拒否する蓮に真司が不信感を抱く流れは丁寧。……それはそれとして、激しく蛇行運転するな。
- カメラを回す代わりに、バイクの周りをグルグル回る二人は、石田監督ぽい演出(笑)
- 真司は優衣に蓮への不審を告げるがバッサリ否定され、むしろ「おまえの方が信用できねーよ」と言われる主人公(笑)
- 近作だとここで女性キャラが、そうそうその通り、と主人公の側に回りがちなイメージですが、むしろ無愛想な男の側に立つバランス。
- 「蓮はね……性格悪くて意地悪で、ケチで、好き嫌い激しくて、何考えてるかわらないけど、きっと何かの為に戦っている。蓮の戦いを見ていればそれがわかるし……だから私は蓮を信じられる」
- それはそれとして蓮は小学生をストーキングし、なんかもう、通報まっしぐらであった。幾らヒーローフィクションといっても、小学校に超フリーダムに出入りする成人男性2人の図は、現在だと却下されそう。
- そんな蓮に対して、堂々ストーキング宣言してくる真司に対し、割とすぐ物理に訴える蓮。
- 「おまえはライダーをやるには甘すぎる」から、下記別項のやり取りを経て、そりが合わないなりに2人は一時休戦し、蓮の強固な意志と正面から衝突させる事により、真司のふんわりとした正義感に“戦う理由”としての強度を与えるのは、巧さが出ました。
- その点で、「おまえに殴られる程度で引っ込めるかって。俺はモンスターと戦うって決めたんだ」は、ここまでの蓮のリアクション(割と執拗な暴力描写)そのものを真司の燃料に変えて、鮮やか。
- 敵は高速移動するモンスターという事で誤解は解けて、迎撃の形で2人は並んで変身し、それぞれのポーズはストレートに1号・2号のオマージュでしょうか。
- ミラーワールドなら小学校で器物破損しても大丈夫なバトル。
- モンスター召喚攻撃から必殺ベントでガゼル2号とガゼル3号を葬った真司と蓮は揃って帰還し、空気に戸惑う優衣。
- 一方、行方不明者の一部にアンティーク趣味があった事を見つけ出す令子だが、その先に新たな仮面ライダーが……?
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「おまえに殴られる程度で引っ込めるかって。俺はモンスターと戦うって決めたんだ」
「なんのために?」
「だから、モンスターから誰かを守るために」
「じゃあ聞くが、その安っぽい正義感で誰かを殺せるか? それぐらい出来なければ、この戦いには生き残れない! 優衣だって同じだ。俺は自分の背負っているものの為なら出来る。今ここでおまえを叩き潰したっていい。おまえはこの戦いに何か背負ってるものがあるのか?」
「…………しゃっきん」
「なにぃ?」
「おまえへの借金3万。とりあえずそれを返すまで死なないよ。多分。……それでどう」
「おまえ……本当の馬鹿か」
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今作の背景を成す要素に触れ、蓮の背負う何かが仄めかされると共に、真司が屈しない意志で蓮を押し切るのですが、格好つけきれない「多分」が、いい味を出していて好き(笑)