東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

命の天秤

仮面ライダーエグゼイド』感想・第37話

◆第37話「White knightの覚悟!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也
 ゲームバランスを無視したハイパー無敵エグゼイドに思わぬ敗北を喫した檀正宗は、飛彩に『タドルレガシー』を突きつけると、永夢は殺せなくてもパラドなら切除できるだろう、とゲーム病治療によるエグゼイドの変身能力喪失を画策。
 恋人を取り戻す為に飛彩が悪魔に魂を売る苦悩は納得できる一方、小姫の命を人質に飛彩がひたすらに追い詰められていくのに対して、九条がさっくりと復活しているのは、どうにもこうにも不均衡が目立ち、ここまで飛彩を追い詰めるのならば、「九条の命」に対する永夢の葛藤は、もう少し欲しかったかなと……実際やったらくどくなった可能性はありますが、現状、飛彩だけが飛び抜けて重い葛藤を突きつけられているのは、物語としてのバランスの悪さを感じてしまいます。
 劇中世界のパラダイムとしても“過渡期”と描かれているとはいえ、「黎斗と貴利矢のバグスター化による復活」を、「“命”の定義が変わった(変わりつつある)世界、のルールにおける出来事」として扱っている一方で、「飛彩と小姫の悲劇」については、「それ以前のルールに則ったドラマ性」になっているのを、同じライン上で展開している事によるちぐはぐさ、とでもいいましょうか。
 まあ、黎斗はともかく貴利矢に関しては、今後なんらかのリスクの存在が描かれるかもですが(あるなら今の内に仄めかしてほしいですが)、悪の組織の運営に際して肝に銘じておくべきは、忘れず付けよう、忠誠回路!
 そんな中、小姫の父親・百瀬和王がCRに運び込まれ、回想シーンで、超! 爽やかな頃の! 大我が!!
 そして飛彩は、白銀の豪華仕様ガシャットで術式レベルハンドレッド、純白の鎧に身を包んだブレイブレガシーへと変身する。
 「レベル……100」
 「そいつは心が躍るな」
 『タドルクエスト』の起動音声が好きだった身としては、『レガシー』起動音声がそのアレンジなのは、地味に嬉しい。
 ブレイブLがパラドクスと戦っている内に永夢はいきなりムテキングし、後方のドレッドヘア風味は、よく考えてみると流星の尾のイメージでありましょうか。
 星のエグゼイドは、もはや大人げない実力差で皆伝バグスターを瞬殺し、パラドクスはパラドクスでブレイブLに手も足も出ず、なんかもうすっかり、可哀想な奴になってきていた。
 「おまえを切除すれば――俺の望みが果たされる!」
 ところが、ゲームクリアが目的でしょ? と状況を把握しきれていないニコが横からトドメをかっさらおうと乱入して揉めている間にパラドクスは逃走。
 かつての仲間たちの声を背に飛彩はその場を去って行き、小姫父の治療を終えたCRでは、『仮面ライダークロニクル』のマスターガシャットさえ強奪すればいいのでは、と無敵の力を背景に、軍事的拡張路線へとアクセルが踏み込まれていく。
 「ブレイブにやられたのか?」
 「……やられたわけじゃない。あいつの実力を、ためしただけだ」
 体育座り中のパラドは、ちょっと追い詰められただけだ!
 「LV100か……野放しにしておけば、後々面倒になるな」
 ゲムデウス培養中のグラファイトは体をピリピリさせながらも立ち上がり、本日も雇用主から罵声を浴びせられ、一人寂しくいちゃいちゃ……未満回想にふける飛彩の元に現れる、パラドとグラファイト@乙女のメモリー所有。
 「2月2日、貴様は公園のベンチで挙動不審になりながら、旅先で買った子犬のキーホルダーを彼女にプレゼントしたなぁブレイブぅ!!」
 「……な、何故それを……!?」
 「続けて言った言葉はこうだ……」
 「や、やめろ! やめてくれ!」
 とかやったら精神的に鏡先生を殺せそうな気がしてなりませんが、そこにグラファイトを倒そうと提督スナイプが参戦する一方、永夢・九条・ポッピーは、マスターガシャットを手に入れる為に、ボウケンジャー理論で幻夢コーポレーションにカチコミを仕掛け、
 「ガシャットは早いもん勝ちじゃないもん!」
 「そうよね~、強いもん勝ちだもんねぇ!」
 ……ところで、別に無敵の力でなくとも、グラサンアロハでチンピラモードの貴利矢が背後からクロノスを羽交い締めにして「今です兄貴ぃ!」とかすればウィルス抑制パワーでクロノスに勝ててしまうのではないか(貴利矢なら一緒に刺しても大丈夫そうですし……駄目?)。
 おうおう社長さんよぉ、これ以上痛い目を見たくなかったら、とっとと出すもん出してもらいましょうか、と地下駐車場でクロノスを袋だたきにし、なんだか凄く反社の薫りを漂わせるCRライダーズ(場所が悪い)だが、そろそろ運転手の呼んだ警察が到着しそうでドキドキします。
 私は反社会的勢力の脅しには屈しない! と立ち上がったクロノスは、右腕であるブレイブLがパラドクスを倒してしまえばエグゼイドは変身不能になるので私の高度な頭脳の勝ちだ! と余裕の解説を行うが、
 「その前に、おまえを攻略してやる!」
 ……ですよね。
 「変身能力を無くして、ゲーム病患者を救えなくなってもいいのか!」
 二度とコントローラーを握れない体にしてやる、とクロノスにケジメを付けようとする無敵エグゼイドだが、何故かレーザーTが必死に押しとどめ……いや、今現在、ゲーム病患者を大量に発生させる元凶になっているのが『仮面ライダークロニクル』なので、その確保よりも未知の患者の治療可能性を優先するのは本末転倒も甚だしく、実はまだクロノスの左肩に繋がっているのではレベルの支離滅裂。
 仮に『クロニクル』のマスターロムを確保するも永夢が変身不能になったとしても、ゲーム病を治療できるドクターライダーは他にも居るわけですし、そもそも適合手術が確立している以上(時間がかかったりリスクがあったりはするのかもですが、本編では一切触れられていない)、今作における変身能力の喪失は決して不可逆なものではなく、この場で「永夢の変身能力」を優先して守ろうとするのは、理由付けとしてあまりに的外れでは。
 勿論、登場人物が常に正しい反応をするとは限らないのですが、劇中でもトップクラスに頭の切れる扱いの貴利矢の発言としては、たとえ感情ベースにしても無理が目立ち、登場人物の知性・判断力が著しく一定しないという『エグゼイド』の悪いところがまた出てしまいました。
 一方、超絶グラファイトの必殺攻撃により大ダメージを受けたスナイプは、変身が解けながらも必死にグラファイトに食らいつく。
 「……やり残した過去に……決着つけるまでは……グラファイトを、ぶっ潰すまでは……倒れるわけにはいかねぇんだよ!!」
 「ハハ、やってみろ」
 「ブレイブ!! おまえが今向いている先は過去じゃない。未来だ!! 恋人との未来だけ考えて、前に進んでりゃいいんだよ!」
 5年前に空いた穴をずっと胸に抱え、その精算の為に生きてきた大我は生身で銃を撃ち続けるが、無防備な土手っ腹にグラファイトパンチが直撃。
 ブレイブは咄嗟にパラグラを叩きのめすと大我を助けようとするが、そこに永夢たちも駆けつけ、遠吠えが板に付いてきたパラグラは逃走。
 「無様だな……結局俺は、グラファイトに勝てなかった」
 「やめてよ……過去形とかマジで」
 「わりぃ……おまえの事を……診てやれなくて」
 内臓破裂で花家大我、死亡……? で、つづく。
 次回――その命を救う神のメスを振るえるのは、天才外科医のみ?! は、成る程、医者としてのスキルがここで焦点になるのか、と飛彩の抱える葛藤のバランスも取れて盛り上がる流れ。