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描くと出る(らしい)

仮面ライダーエグゼイド』感想・第34話

◆第34話「果たされしrebirth!」◆ (監督:田村直己 脚本:高橋悠也
 飛彩の裏切りに揺れるCRにパラドとグラファイトが乗り込んでくると、院長を人質にしてゲムデウスの情報とケーキを持ち帰り、元々1クール目から問題のあったバグスターの出鱈目ワープ能力なのですが、いつでも本丸に乗り込めるんだぜ、を実際にやってしまうと物凄く多くの要素が茶番になりかねないので、もう少し慎重に取り扱ってほしかった要素。
 前回はパラドにはっぱをかけ、今回は背景でケーキを頬張りと、田村監督の目配りなのか、突然グラファイトさんの存在感がアピールされており、出来ればあと半クールは早く目配りがあれば良かったのですが……ここからのミラクルもあるかもしれないと、期待だけは持っていようかと思います。
 ゲムデウスの力でクロノスを攻略してやる、とパラとグラが去った後、救急通報に出動した永夢を奇襲した魔王ブレイブは、無抵抗のMAXエグゼイドを切り刻むと、永夢が装備していた元・九条のドライバーを強奪。
 「患者の命がかかってるオペを妨害するなんて……それでもドクターですか?!」
 「こんな事が衛生省に知られたらどうなるかわかってるの?!」
 え、なにその、突然のハリボテへの言及。
 いやまあ、飛彩を翻意させる為に、敢えて冷たい口調で権威を持ち出し、医師免許剥奪の可能性(小姫の想いを無にする行為)をちらつかせているのはわかるのですが、それにしても、ポピ子さんがポピ子さん(衛生省から派遣されている筈なのに、衛生省と全く意思疎通できていなかった)で、衛生省が衛生省(とにかく現場で何が起きているのかほとんど情報共有できていなかった)なだけに、会心の自虐ネタがトキメキクライシス。
 「……小姫に会えるとわかった今、あいつの無念を晴らさずに……人の命を預かる事なんて出来ない」
 永夢とポピ子に背を向け続ける飛彩は、そもそも小姫のストレスの原因は自分にあり、小姫の死に責任を感じ続けていた事を告白。
 「……小姫を殺したのは……俺だ……」
 飛彩はそこから目を背ける為に大我に憎しみを向け、グラファイトに敗北した責任を感じる大我はハードボイルドな男の度量で飛彩の心を守る為にそれを受け入れ、勤務時代にまだ学生だった飛彩を見ているというのもあるのでしょうが、花家先生はとことんいい人(笑)
 大我は、小姫との再会を願う飛彩を止められず、永夢の叫びは飛彩には届かず、強奪したドライバーを手に飛彩が去って行く一方、パラドクスとグラファイトはゲムデウスの細胞の一部を入手し、グラファイトは自らの体を苗床にしてその培養を行う。
 「『仮面ライダークロニクル』を完成させる為、おまえは一人で戦い抜いた。今度は俺が貢献する番だ」
 復活から10話ほど放置されていた(そして、復活前は全くもって仲良くなどなかった)二人の間に突然の友情パワーが発生し、基本グラファイトは、バグスターという種の拡大の為には協力的という事なのでしょうが、時間が無かったのではなく、時間はあっただけに、中途の空虚が勿体なさ過ぎます。
 飛彩から永夢(元九条)のドライバーを受け取った正宗は、労働の報酬として小姫のセーブデータを呼び出し、早くも便利使いの始まった「クロノスの力」の連呼には不安しか感じませんが、壊れたレコーダーのように消滅寸前の“最期の言葉”だけを繰り返す小姫を前に、それでも涙をこぼす飛彩の姿は胸に迫ります。
 一方、ドライバーを失った永夢の手には、実はとっくに修理していましたー! と過去にZゲンムに腐食させられたドライバーが戻り…………いやどうして、肝心のアイテムを、物凄く雑にポケットから出しますかね……。
 2クール目クライマックス、九条の形見のドライバーを身につけた永夢の変身や、今回、心を鬼にして小姫の為に永夢のドライバーを奪い取った飛彩の姿が劇的だっただけに、代替品がぽろっと出てくる事に物凄くガックリ。
 患者のゲーム病を治す為、帰ってきたゲーマドライバーを手にロボットバグスターを切除しようとする永夢は、それを阻もうとする飛彩と再び激突。
 「飛彩さん……僕に教えてくれましたよね。僕たちドクターの事情は、患者には関係ない。ドクターは、多くの患者の命を預かってる。私情に引きずられるなって」
 ……あれそれ、全否定してませんでしたっけ? と思ったら、全否定していたのは「患者には関わらない。それが俺の主義だ」でしたが(まあ色々おかしかったので、2クール目に多少のフォローは入りましたが)、立ち上がりこのインパクトがあまりにも強い事もあり、え? そんなイベントあったけ……? と戸惑う事に(笑)
 どうやら九条退場直後、第13話の「ドクターは多くの患者の命を与ってるんだ。私情に引きずられている暇はない」からのようですが、2クール目に入って改善されてきた永夢-飛彩の関係性の象徴とする“飛彩から永夢への教え”としては元シーンの力が弱く、両者の訣別のピークに持ってくるには、あまりにも劇的さが不足。
 「患者が苦しんでるんです」
 「……苦しんでいるのは、小姫も同じだ」
 「……だったら、もう手加減はしません。あなたに教えられたやり方で、あなたを切除する」
 永夢と飛彩の間で形や立場を変えて「ドクターじゃない」が衝突しながら、両者の変化が描かれていく2クール目と同じ手法なのですが、2クール目は重ねの妙味があったものの、3クール目になると、手法的繋がりよりもしつこさの方を強く感じて、あまり面白く思えず。
 また、永夢先生はこれまで小姫問題には深く関わってこなかったので、飛彩と大我の間では劇的になりうるのですが、永夢と飛彩の激突の題材とするには、永夢からの距離が遠かったように思います。
 エグゼイドとブレイブが激突する一方、クロノスに挑んだパラドクスとグラファイトは、ゲムデウスウィルスをクロノスに打ち込む事で時間停止能力の封印に成功し……もともと黎斗の話では
 〔全てのゲーム > ゲムデウス > クロノスの力〕
 だったと思ったのですが、「裏を返せばゲムデウスならクロノスに対抗できるって事」だという謎理論により、
 〔クロノスの力 < ゲムデウス
 になっていて、「全知全能のゲムデウスに唯一対抗できるクロノスの力」が「最強無敵のクロノスに唯一対抗できるゲムデウスの力」にすり替わっている気がして、大変困惑。
 ところが、一気呵成に責め立てようとしたパラドクスとグラファイトは何者かの奇襲攻撃を受け、更にその何者かがクロノスのドライバーに触れると、せっかく培養したゲムデウスのウィルスが効果を失ってしまう。
 「審判の時だ――」
 時間停止能力を取り戻したクロノスは、お仕置きJudgmentキックを放って、パラドクス、グラファイト、そしてブレイブを完封してバグスターを倒したエグゼイドをまとめてなぎ払い、3人揃って変身解除。
 降りしきる雨の中、レベル0の力でゲムデウスウィルスを抑制したのは、新たに雇われたクロノスの左腕、仮面ライダーレーザーターボ。
 「レーザー……貴利矢さん……」
 「ふふふふふふ……ははははは」
 檀正宗が九条のドライバーを求めたのは、復活の触媒にする為だった(ゲームオーバーした適合者のメモリはドライバーの中に保存されている?)と明らかになって、つづく。
 ……さてどうも、ここ数話、いまいち話にノれないでいるのですが、つらつら考えてみると、理由の一つはヒーローフィクションとしての面白みの薄さかな、と。
 物語として「永夢先生の行動原理の核となるゲーム病患者が必要」であり、3クール目は「『クロニクル』プレイヤー」をそこに当てはめているのですが、『クロニクル』ゲーム病は「起動するとゲーム病を感染し、治療の為にはバグスターを倒さないといけない」マッチポンプ構造になっている為、「『クロニクル』ゲーム病患者はだいたい自業自得」であり、そこで「永夢の「治したい」に受け手の感情を寄せる工夫も施されない」為に、「苦しみながら永夢が勝利を収めて好感の持てない患者が治る」事に特にポジティブな感情が喚起されてこない、のは辛いところ。
 特に前回今回は、何も背景が描かれないので自業自得にしか見えない患者がCRにも非協力的、なのは見ていて無駄にストレスが溜まるだけですし、おそらくは意図的に「どんな患者でも治そうとする永夢」の姿をこそ“ヒーロー”として見せたいのかとは思うのですが、個人的にはデメリットの方を強く感じる描写でした。
 一応、既に消滅した人間の関係者がやむにやまれず……パターンも用意しているのですが、そればかり繰り返すわけにも行かず、ここに来て「ゲーム病患者」が完全に、「永夢の行動規範を作る為だけの道具」になってしまっているのは、ヒーロー物として単純に面白くないと思う部分。
 永夢が何をしても、「患者を治す為」と言っておけば通るというか、物語が永夢にある行動をさせる為に「永夢が治したい患者」を用意しているというか、「ゲーム病患者を与えると行動を簡単にコントロールできる主人公」と「ゲーム病患者を粗製濫造できる『仮面ライダークロニクル』」の相性が物凄く悪い。
 私は基本、ヒーローが壁を壊していく話が好きなのですが、現状今作は、ヒーローの行動原理を都合良く壁の中に囲う事に使っていて(永夢の「正しさ」が内向きにばかり用いられているというか)、今は物語として雌伏のターンなのかもしれませんが、なんとか壁を突き破ってほしいところ。
 加えて、基本的にクロノス無敵キャンペーン中なので、ヒーローは完膚なきまで叩きのめされるばかりであり、悪が魅力的でこそヒーローも輝く、次のジャンプの為のバネのたわみは必要、とは思うものの限度はあって、「強大な悪を描く事」と「ヒーローの活躍を描く事」のバランスが悪すぎる印象。
 「クロノスには負ける」が「患者は治す」事でバランスを取ろうとするのならば、患者の好感度こそが必要で、何故その逆を突き進んでいるのかは、率直に戸惑います。
 なんだか似たような感想を抱いた覚えがあるな……と思ったら『ゼロワン』お仕事対決編でサウザーが無敵キャンペーン中だった頃でしたが、うーん……小姫の為に裏切った飛彩に苦悩する永夢の前に、近しい人物(九条)が甦って現れる、というカードの切り方そのものは面白いのですが……。