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仮面ライダーエグゼイド』感想・第33話

◆第33話「Company再編!」◆ (監督:田村直己 脚本:高橋悠也
 「俺たちバグスターが……死ぬなんて……」
 コンティニュー可能だと信じて疑わなかった同胞の“死”に衝撃を受けたパラドはアジトで膝を丸め、黎斗の復活により人類視点の「命」の意味が書き換えられようとしている世界で、バグスターの側からパラドもまた、「命」の概念について見直しを迫られる事になる、のは面白い要素。
 「君たちは我が社の大事な商品だ。今後とも君たちには敵キャラとして、『仮面ライダークロニクル』を盛り上げてもらいたい」
 そこに厭味ったらしく果物かごを手に現れた正宗は、満面の笑みで悪徳社長然としてパラドらに重圧をかけ、ゲームの新たな支配者として、バグスターの命運を握っている事を強調。
 “ゲーム”で“現実”を塗り替えた筈のバグスターが、再び“ゲーム”の虫かごに囚われて『仮面ライダークロニクル』は続き、ソルティとライダー達の戦いに介入したクロノスは、時間停止能力を用いてブレイブだけを別の場所へ連れ去ると、提案を持ちかける。
 「タドルファンタジー、『仮面ライダークロニクル』の運営の為に、君に協力してもらいたい。私の右腕としてね」
 「この俺が頷くとでも思ったか」
 剣を抜く魔王ブレイブだが、時の止まった世界でクロノスに抗うすべがまるでなく、完敗。クロノスは提案の交換条件として、衛生省から盗み出したプロトガシャットを取り出し……データ化された人々の命が、正宗の手中で半ば人質となっている事が明らかに。
 正宗の真意を確かめに直談判に向かう永夢とポピ子だが、『仮面ライダークロニクル』を全世界展開する為に適切に管理する、とうそぶく正宗は、指先一つでソルティをデリートし…………いや、あの、ただでさえバランス崩壊しているのに、貴重な初級エネミーを削ったら、ますますゲーム性が崩壊するのでは……。
 というより、『クロニクル』収録バグスターの生殺与奪権を握る大事なマスターガシャット、どうして社長室の引き出しの中に無造作に放り込んであったのー?!(……まあ、重要性を誰も理解していなかったとか、起動条件が限られているとかあったのでしょうが……)
 「言っただろう――君たち全員の運命は私がジャッジすると」
 クロノス登場時のインパクトはあった正宗ですが、「私は神だぁぁぁ!!」の父親が「社長自ら商品管理します」なのは方向性がまるまる被ってしまい、三代目黒幕としては、別方向の飛躍が欲しかったところ。
 序盤から存在を匂わせる・『仮面ライダークロニクル』を一貫としたキーとして繋げる、と『ドライブ』の問題点であった“悪役サイドの要素の断絶”を繰り返さない工夫は見られるのですが、今度は「実は私の計画でした」「実は私の計画でした」「実は私の計画でした」が続いてしまい、繋ぎながらの一ひねりが欲しかったなと。
 「ふざけるな。ボタン一つで命を弄ぶなんて……」
 「我が社の経営方針に、口を出す権利は君にはない」
 「だったら力尽くでおまえを止める! 『仮面ライダークロニクル』を終わらせるために」
 株主総会にリアルカチコミ宣言をして永夢は撤収し、今作の難点の一つなのですが、なまじ悪役サイドの偉い人が気軽に話し合いに応じてくれるので、説得に失敗したヒーローが「こうなったら暴力で解決してやる!」と実力行使に訴えようとするのが要所で悪目立ちします(笑)
 まあクロノスに関しては、向こうから先制攻撃を仕掛けてはきたので…………あ、いや、出てきただけで最初に武装して集団で襲いかかったのドクター達だ……(言い訳できない)。
 要するに、ある種の身も蓋もない話として「武力による解決」を気持ちよく見せる為に如何に巧く嘘をつくのか、という話になるのですが、そもそも「悪の組織/首領」といった存在が、それを行う為の現実の寓意的存在であるわけで、そうやって寓意的に表現される対象だったもの――この場合、人を人とも思わない悪徳企業の社長――を、そのまま「悪の組織/首領」ポジションに位置づけてしまうと、それに対して振るわれようとする「武力」からも寓意性がはぎ取られてしまう、という点への意識が弱い所があるのかな、と。
 もちろん檀正宗が狂気を抱えた外道である事は表現されているのですが、あくまで“人間の経営者”として振る舞っている段階では、“ドクターの倫理”が全殺しを肯定しないのが前提条件となるので、なんとか巧く、「殴って言うことを聞かせる」以外の抜け道を、実行できるとかは別に行動規範として用意して欲しかったところです。
 CRに戻った永夢は、クロノスの時間停止能力を打ち破る手段を黎斗と共に思いつき、『仮面ライダークロニクル』の発売中止を求め、臨時株主総会へと向かう一同。
 出撃前に、小姫の問題について
 「亡くなった命がコンティニューできるなんて、本来ドクターの俺たちが認めていい事じゃない」
 「飛彩さんが笑顔になれるなら、応援します」
 といったやり取りがあるのですが、“コンティニューして復活した命”について社会倫理的にどう扱うかの問題は生じるとしても、別に“医者として”は救えなかった命を取り戻せる事を否定する必然は無いように思うので、なにか問題意識が混線してきているような。
 まあ飛彩としては、私情に基づいているからこそ自らに厳しい倫理観を課そうと煩悶しているのでしょうが、どちらかというと最近の永夢先生が「笑顔無罪」になりつつある事の方が、危うさを感じます。
 正宗と黎斗の邂逅が描かれ、実の息子さえ「商品」としての価値しか見ていない正宗は、クロノスとなるとZゾンビゼロを一蹴。だがその黎斗が即座にコンティニューする代わりに正宗のバグバイザーに入り込む事により、クロノスと同じプレイヤー側となって止まった世界で動けるようになる……というのは、頓知としてもあまり面白くは感じず(そもそも、自分から好きにバグバイザーの中に入り込めるんだ、という点がいきなりなので……)。
 黎斗がクロノスを羽交い締めにしている間に(不意打ちにしてもこれも無理がありますし……)、戦士の友情パワーでクリティカルキックを叩き込もうとするエグゼイドだが、その決定的チャンスを、何故か魔王ブレイブが妨害。
 「労働には報酬を与え、人心を掴む事でカンパニーを形成する。それこそが会社経営というものだ」
 前回力強く宣言したように、「私こそが社長」スタンスを強調し、ライダーやバグスター達を徹底して「商品」扱いする事で檀正宗の常人離れした精神性を示すと共に、何かにつけ言動を商売に絡める事で面白みを出そうとしているのはわかるのですが、肝心の主力商品(『仮面ライダークロニクル』)に魅力が感じられないので、何を言っても節穴、としか思えず、ボスキャラとしての説得力が致命的に不足(笑)
 あなたが今、世界的に売り出そうとしている『仮面ライダークロニクル』に、全く人心が掴めるように見えないのですが!!
 魔王ブレイブはクロノスと共に去って行き、それを愕然と見送る永夢。観戦していたパラドが何故か、たぎってきたぁ、と失意から立ち直って悪い笑みを浮かべ、それぞれの想いが再び衝突に向かいながら、つづく。
 次回――レーザー本当に復活?! というか、ブレイブがレーザーにリプログラミングされるの?!
 永○「飛彩さんを笑顔にする為に、小姫さんとの思い出を切除して、代わりに貴利矢さんの記憶を移植してみました!(にっこり) 今日から貴方は、花柄アロハが大好きな、新鏡飛彩です!」