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オートバトルの落とし穴

仮面ライダーエグゼイド』感想・第31話

◆第31話「禁断のContinue!?」◆ (監督:上堀内佳寿也 脚本:高橋悠也
 「檀黎斗という名前はもう捨てた。今の私は――新檀黎斗だ」
 データ化能力を利用し、ポッピールームを勝手に模様替えしていく新黎斗は、CRをオフィスとして使うと宣言するなど、生前の人間関係に全く頓着せずに好き放題。
 「本当に黎斗さんですか? なんであなたが……生きてるんですか」
 Zゲンムを倒した際には「黎斗さんは本来ただのゲーム好きなんですから、純粋な笑顔を(リプログラミングで脳をちょっと弄って)取り戻してあげたい」とか言っていたり、パラドが黎斗を抹殺した際には怒りを燃やしていた覚えがあるのですが、割と永夢先生の、視線が平板。
 全く自分の行為に問題を感じていない黎斗が、万が一を想定してゲームオーバー対策を仕込んでいた事を明かし、消滅した人々についても「データまでは削除していない」と謎めいた発言をしたところで、バグスター通報に永夢と大我組は出動。
 以前ちょっと触れたように、演出ローテがほぼ固定で来ていた今作ですが、ここで初参戦した上堀内監督は今回が本編監督デビュー(監督としてのデビュー作は、前年『ゴースト』のVシネマ特典)。
 劇場版を任されたり、『リュウソウジャー』のメイン監督に抜擢されたりと、その後5年あまりで一気に主力級の存在感になりましたが、オペが入っていると出動に加わらなかった飛彩が、満開の桜が咲き誇る道を歩いて行く場面は、広く画角を使って、いかにも上堀内監督らしい見せ方。
 自転車バグスターに襲われるボーズを救おうと駆けつけた永夢のMAX大変身も、画面の奥行きを大きく使って縦軸でダッシュ変身を見せ、TV本編デビューで色々と工夫を凝らしてきます。
 チャーリーを二度と自転車に乗れない体にしてやろうとするMAXエグゼイドだが、そこにパラドが乱入し、ポピ子さんはカプセル黎斗を投入。
 「パラドぉ」
 「……またおまえかよ?!」
 「私のゲーマドライバーを勝手に使うとは……ゲームマスターの私に逆らった罰だ! 君を削除する!」
 「フォローして!」
 「グレード0――変身!」
 一度死んで甦ったものの、これといって人情の機微には触れなかった為にまるで人格に修正の跡が見られない黎斗は、未だにゲームマスター気取りでパラドへと憎悪を向けると、ポピ子の頼みを完全無視してゲンムゼロへと変身。
 その隙に『E.T』パロディで逃走を図った自転車バグスターはエグゼイドにあえなく撃墜されると、ゲームクリアの為にトドメをかっさらいに来たニコ昇竜拳によってノックアウトされ、運営のペナルティが発生しなくなった事により、ライダーギルドが好き放題にやっています。
 一方、パラドクスにクレームを付けるも圧倒的な能力差で手も足も出ないゲンムゼロだったが……
 「はっははははは! 取ったぁ! ふはぁ!」
 「ぁん?」
 「レベル0は無の力。私に捕まればウィルスが抑制され、君のレベルは徐々に下がる!」
 その存在は対バグスター特化のレベルドレイン能力を持つ、とても嫌なエネミーと化しており、最強変身からほんの2話程度で害虫のような存在に翻弄されるパラド、宿敵にもラスボスにもなりきれないちょっと可哀想な奴。
 慌てたパラドクスに手をふりほどかれたゲンムゼロは、パラドクストレートを顔面に叩き込まれてゲームオーバーになると、あっさりと消滅するが……高笑いと共に、Continue土管から平然と復活。
 「このガシャットは私が一番最初に開発した、アルファ版でね。コンティニュー機能が搭載されている。ちなみに私のライフは一つ減って、残り98個だ!」
 満面の笑みで残機制を解説し、何から何までさいてーだった。
 これが『鋼の錬金術師』の世界だったら99回すり潰されそうですが、それはそれで根気が要るので、しらけたパラドは帰宅。
 そして、黎斗の姿を見て宿主の更なる記憶を思い出したポッピーは、6年前に聖都大学病院に入院していた黎斗の母・檀桜子こそが、宿主であった事を一同に語る。
 桜子はその時、余命宣告を受けており、ポッピーは未来ある人間を乗っ取って誕生したわけではないよ……とされるのですが、「死の床にあった母親にウィルスを感染させてデータ化し、そこから作り出したポッピーをメモリー代わりにする事により、母親の死の直前のデータを保管したかったのではないか」という推測を、まるでいい話のようにポピ子さんが語るので、どうも首をひねります。
 黎斗は、消滅した人間のデータを保存し、コンティニューできるシステムを作ったのは自分の為だ! とうそぶくも、ポピ子の推測がだいたい当たっており、母親への愛情が存在していた事はほのめかされるのですが……相当にエゴイスティックな行為を、善悪を超越した愛情の発露というよりも、ポピ子さん主観による黎斗のフォローのように描かれるのに困惑。
 とにかくポピ子さんに関しては、基本設定が軌道を外れすぎて、この中盤になんとか修正を試みようとするも、だから許されるわけではないのでは……の蟻地獄状態。
 結局のところ、物語としてポピ子さんの“存在”に触れる事が出来ずにいた歪みが延々と尾を引いているのですが、作品世界の基本的事項からズレた所に発生していたポピ子について誰もが無視を決め込んでいたにもかかわらず、今になって物語の核心に近い位置の歯車として填め込もうとしても、意外なピースというより虚しい空転しか感じられません。
 「何がコンティニューですか……命を、ゲーム感覚で弄ぶなんて」
 なんだかいい話にまとめようとするポピ子に対し、永夢が黎斗への怒りを募らせる一方、飛彩は消滅した恋人がコンティニューできる可能性に心を乱し、それを気に懸ける大我。
 「……期待してんのか。もう一人の白衣を着てないおまえが」
 は、大変格好いい言い回し。
 「……笑いたければ笑え」
 オペが入っている、と出動を断っていた飛彩は、一人でこっそりバグスター狩りを行っていた事が明らかになり……勝利のガシャットを入手しているという事は、わざわざ、『クロニクル』を起動して、ライド飛彩になったのでしょうか。
 「大我が! 大我が笑うと思う?」
 「俺ならゲンムを利用する。全てのバグスターをぶっ潰して、『仮面ライダークロニクル』を終わらせる為ならな」
 事件の当事者でもあり、大切なものを失った飛彩を気に懸けている事をすっかり隠さなくなってきた大我は、清濁併せ呑んだ先で、ゲームをクリアする事こそが最優先だと宣言。
 「俺は今度こそ、この手でグラファイトを始末する。だからおまえは、クリアした先にあるものを確かめろ」
 一方、一つきりの命だからこそ大切だと考える永夢と、命をデータ化する事で復元可能にしようとする黎斗は決定的に対立。
 黎斗の行為を命に対する冒涜だと憤る永夢先生が、その過程において生み出されたポピ子の“存在”をどう考えているのかについては徹底して触れないので、前も後ろも説得力が不足してしまうのですが、この先へ進むのならその理由はどうあれ“人間の命のデータ化”を苗床として誕生したポッピーの存在を、永夢先生がどう捉えるのかに向き合わなくてはならないと思うのですが……第12話で「知ってますよ」をやってしまったので、何をやっても茶番にしかならない無限ループ。
 その一方で、黎斗の復活により、この世界における「命」とは何か? の定義づけが変更されようとしているのは、『仮面ライダークロニクル』起動により「現実がコンティニューできないゲームになる」パラダイムの変換と同様、物語全体に関わるキーワードの意味そのものをひっくり返してくる面白い仕掛けであり、これを広げるのか広げないのかは、物語の行き先として興味深いポイントです。
 パラド出現の報にすっかり人間を辞めた黎斗はデーターテレポーテーションし、それを追ったポピ子は、自分の欲求を満たす事しか考えていないゲンムゼロに怒りのクリティカル平手打ち。
 「ゲームマスターの私に逆らう気か!」
 「……これでも、少しは感謝してる。この世界に私を産んでくれたのは……黎斗だから。私に名前をつけてくれて、性格をプログラミングして……私にとっての黎斗は、生みの親だから」
 パラドクスは裏切り者としてポピ子消滅にこだわり、放たれたゾンビームからポピ子をかばった黎斗は、残機1減して復活。
 「パラド! ポッピーは削除させない……彼女は私が産み出した、命だ!」
 命の大切さ……というか、創作物への愛に目覚めた感じですが、黎斗は良くも悪くも創作者なので行動原理としては納得が行き、それを聞いていた永夢は、ポピ子の意を汲んで、黎斗と共に戦う事を飲み込む。
 「……コンティニューであなたが手に入れたのは、自分の命じゃない。罪を償う機会です。パラドを攻略して、『仮面ライダークロニクル』を終わらせる。……あなたには共に戦う義務があります」
 「私の才能が必要になったか」
 「誤解しないで下さい。あなたの事を一生許すつもりはありません」
 「許しを請う気も、ない」
 諸悪の根源に近い存在と、目の前の悪を倒す為に一時共闘する展開なのですが……
 気になる事1:黎斗に対する永夢の対応が「もともとあなたは悪い人じゃなく、純粋にゲームを愛する、一人のゲームクリエイターだった筈です。僕は、黎斗さんの笑顔を取り戻したい」とだいぶ違う(分離合体を繰り返す内にパラド成分が抜けたから……?)。
 気になる事2:主にポピ子さんがいい話風に解釈しているけれど、檀母が完全に「死人に口なし」扱い。完全でないにしろ、宿主の記憶が残っているので、その影響の元の解釈の筈……と受け止めてほしいのでしょうが、相変わらず、誰一人ポピ子にそこのところを問いただそうとはしない。
 の2点(特に後者)が主に引っかかって、どうもノれず。
 今作恒例ではあるのですが、情報を都度整理しながら視聴者に対する説得力を積み上げていくのではなく、わざと整理させないままイベントの瞬発力頼りで進めていく(際に整理できない理由の工夫も無い)、のは好きではない手法です。
 「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」
 「コンティニューしてでも、クリアする!」
 エグゼイドとゲンムゼロは並んで変身し、今回もじわじわレベルドレインされたパラドクスは弱ったところにダブルマイティクリティカルフィニッシュを叩き込まれ、共闘フレンドの座さえ失って、デンジャラスゾンビ(?)をドロップして撤収。
 CRへの居候を許可された黎斗は、これまでのミッション攻略に対する報酬を与えてやる、とメンバーにプレゼントを渡し、共有装備である事が面白くはあったもののそろそろ面倒にもなっていたデュアルガシャットがどこからともなく出てきて、ようやく提督スナイプと魔王ブレイブが並び立てるように。
 そして飛彩に対しては、消滅した人間のデータは、感染したウィルスと同じ種類のプロトガシャットに保存されていると情報公開。
 「失った恋人と再会できるかどうかは……君次第だ!」
 全く悪びれる事なく飛彩を煽る黎斗だが、ポピ子に強く出られると頭が上がらない立場となって、とにかく『仮面ライダークロニクル』完全攻略の為には、この腐れ外道も使い倒そうぜ、と一致団結(すっかり居着いている大我コンビ……)。
 「いよいよ、上級ステージに挑む時だ」
 から、次回予告の煽り文字が「ついに最終決戦!」凄く『エグゼイド』ですが、しかしそこに現れる新たな影?!
 ところで、OPに元社長が早くも復活する一方、黄色いノイズの空席が一つあり……命のデータ化保存が明かされたところで、これはまさかの、九条復活フラグ?(下手するとバイクで)