東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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さいくろぺでぃあ

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第19話

◆ドン19話「もしもしユーレイ」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
 知っているか!
 日本初の公衆電話は、1900年、新橋駅と上野駅に設置された。その通話料は、1通話5分で15銭。ピーク時の1993年には全国に93万台以上が設置されたが、スマホなどの普及により、その数は年々減少の一途を辿っている、という(特別ゲスト:黒岩都知事)。
 時代の波の中で役割を終え、そんな撤去の憂き目に遭おうとしていた電話ボックスの中から突如として鬼が出現し、香坂バスのりばの合恩停留所前に設置されていたので、わかりやすく炎神鬼でありましょうか。
 着ぐるみは高速鬼のスーツ改造? と思われる炎神鬼が作業員を襲ったところに駆けつけるドンブラザーズだが、赤の攻撃は鬼の体を素通り。お供たちの銃撃も擦り抜けてしまい、退治しようにも攻撃を当てる事ができない。
 「実体が無い……だるまさんがころんだの時と同じか」
 手を打ちかねるドンブラザーズだが、工事のトラックが走り去ると鬼は姿を消し、代わりに、いつの間にやら電話ボックスの中に座り込む女性が一人……。
 妙に女性の事が気にかかったはるかは、ログアウト後に再び電話ボックスへと向かい、女性と接触
 「あの……大丈夫ですか? どこか具合でも?」
 「あなた……見えるんですか? 私が」
 「は?!」
 不穏な気配に身を引く間もなく、初夏だというのにコート+マフラー装備でテンション高くまくしたてる女性・鷺山美奈子に、友達になってほしいと迫られたはるかは、その場を逃れる方便として、承諾。
 ところが美奈子は、自転車で一目散に逃げ出したはるかが帰り着いた鬼頭家のリビングに平然と入り込んでおり、自分にしかその姿が見えないどころか鏡に映っていない事に気付いたはるか、一応のヒロインポジションとは思えない顔芸を連発(笑)
 圧倒的勢いで後続を突き放す雉野みほの牙城を突き崩すには、もはや、他の芸風で勝負するしかないのだ!!
 最悪でも、油断していると後輩系ヒロインの座に滑り込みそうなジロウと、あれこれ高いポテンシャルを秘めていそうなドン・ムラサメには、後れを取るわけにはいかんのだ!!
 「はい! 私、幽霊です! 自覚してます! 成仏してません!」
 やたら明るい幽霊は、時間を気にすると再び電話ボックスへ戻っていき……なんだかんだ放っておけないはるかは、協力を求めて仲間達を招集。
 どういうわけか、息を止めると雉野と猿原にも美奈子が見えて話が聞こえる事が判明し、幽霊に接触する為には二人がいちいち息を止める小ネタが、場面にリズム感を付けて、くどすぎない程度の面白いアクセントに。
 美奈子は、50年前に文通相手だった男性・田所新造から問題の電話ボックスに毎日電話を貰っていたのだが、いよいよデートして直接会おうとなった際に、その約束を電話で受ける前に事故で死んでしまい、電話を受けられなかった事、田所と会えなかった事を、未練としていたのだった。
 文通と電話から美奈子が脳内で妄想を膨らませていた理想の田所新造の想像図で、はるかが久々に元売れっ子マンガ家のスキルを見せるも、当然、現在での人捜しにはさっぱり役に立たないが……遅れてやってきたタロウを目にした瞬間、「新造さん?!」とテンションの上がる美奈子。
 「幽霊?」
 タロウは、おもむろに美奈子の腹の中に手を突っ込んで通り抜けるのを確認し……デリカシーの5文字は、川を流される前に捨ててきていた。
 昭和のリアクション(なの……?)でそれを受け流した美奈子は、更にマスター(勿論、幽霊、見える)と犬塚(もはや普通にランチを食べに寄る指名手配犯)にもハートを飛ばし、ごく単純に、二枚目に弱かった…………が、その美奈子のセンサーに引っかからなかった猿原……うぅ、猿原……。
 ちなみに個人的な見解として、ゴーオンブルー/香坂連と、サルブラザー/猿原真一には、風貌・参謀役・充分に二枚目なのだが二枚目半ポジション、といった辺りに共通項を感じていたり。
 想像図に疑問を抱く猿原は喫茶店の隅に置いておいて、乗りかかった舟という事で美奈子の成仏大作戦として、タロウ・犬塚・マスターとの3連続デートが企画されるが、まずタロウには、他人のペースに合わせるという概念が無かった。
 「よく食うな……きっと胃腸が丈夫なんだろう。気持ちがいい!」
 それはそれとして、美奈子の食べっぷりが気に入ったタロウはロボタロウ化するサービスで東京遊覧飛行を体験させ、犬塚は犬好きの美奈子の為にアバターチェンジして愛でられ(幽霊は浮気に入りません……?)……美奈子が受け入れてくれて良かったですが、どうして君は、自分が可愛がられる事に、そんなに自信満々なんだ。
 「で、マスターは?」
 「あの人は、最っ低です」
 生前の美奈子の年代に合わせてなのかプレスリー風衣装でデートの待ち合わせ場所に現れたマスターは、群がる女性たち全てに笑顔を向け、誰にでもいい顔をする不誠実な駄目男認定を、幽霊から受けていた。
 「完っ全な浮気者です、あの人は」
 (……言葉なし)
 「私、今回の事で思い知りました。……私には新造さんしか居ないんだって。私、待ち続けます……新造さんからの電話を」
 美奈子は再び電話ボックスの中で独り座り込み、なんとかしたいと思うも手を出しあぐねるはるかだが、「田所新造」の名に聞き覚えのあった雉野が、以前に仕事をした事があると名刺を発見。幸い新造は50年前の交流、初恋の相手だった美奈子を今も覚えていたのだが、美奈子の脳内新造は50年前の理想の姿で停止しており、今の新造を直接会わせるわけにはいかない。
 そこではるかが一計をひらめキングし――夕方6時に、鳴り響く電話。
 「……新造……さん?」
 「ああ、そうだよ。随分待たせてしまったね」
 ここまでお笑い重視のドタバタ風味から、50年ぶりの通話はストレートにしんみりと描く事で物語に起伏がつき、大団円寸前に迫る電話ボックス撤去業者による暗転も、より効果的に。
 「電話の、邪魔を、するな!」
 業者が来た所から、日の光が夕方6時では無くなった気がするのはご愛敬として(1970年代の若い恋人たちの逢瀬と、冬なら夜、初夏なら夕方直前で通りそうな時間がギリギリここだったのでしょうが)、電話ボックスを守ろうとする美奈子の情念が炎神鬼となってしまい、電話を見守っていたドンブラ変身。
 「僕も力になりますよ、タロウさーーーん!!」
 今回全く蚊帳の外だったジロウは、高い所から絶叫して存在をアピールするが、参戦前に飛んでくるJPカー……じゃなかった、ムラサメソード。
 (戦いなさい、ムラサメ)
 「ハイ、マザー」
 もうこれ、どう聞いても“脳内正義の声”なのですが……そう見ると、ドン・ムラサメに近いのは、タロウよりもジロウなのか。
 両者が激突する一方、物理攻撃無効の炎神鬼が自力で巨大化し、シリアスなBGMに合わせて、おふざけ無しの大合体。執着の違いからか、巨大炎神鬼から切り離された美奈子は新造との会話を再開。
 「美奈子さん、僕はずっと、君の事を忘れた事はなかった」
 「……私も」
 「いつかきっと会える。光の溢れる、美しい場所で」
 「……はい。楽しみにしています」
 金ドラが紫サメを退け、オニタイジンはガードに徹する中、50年越しの電話は、新たな“約束”で終わりを告げ、動きを止めた巨大炎神鬼は、ドンブラパラダイスで怨霊退散。
 (……美奈子さん、どうか、安らかに)
 「……ありがとう」
 此の世への未練を失い、鬼となった魂も祓われた美奈子は無事に成仏し、後日、電話ボックスの撤去を見守るはるか。
 遠い恋の面影がノスタルジーと共に去って行くと、それを見送るはるかの元には復縁を迫る花村@学園のマザコン王子からのメッセージがしつこく届き、直接電話をかけて
 「花村! いい加減にして! だいたいなに? LINEばっか。男なら電話したらどうなの?!」
 は綺麗なオチでした。
 『ドンブラ』的には小品といった内容でしたが、特別切れ味は無かったものの手堅い作りで水準をキープ。その中で、感情を探し求めるソノザが『初恋ヒーロー』単行本を入手する伏線が敷かれ、これは、弟子入りフラグ……?
 ソノザが絡むとしたらジロウ(正体も知らないし)かなと思っていたのですが、「先生のマンガに感動しました! アシスタントにしてください!」「……よし。まずは冬コミ合わせで、私を捨てた愚かな漫画界に復讐をする……!」も見たくはなって参りました。
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 「何か出ているぞ?!」「こ、こいつはまさか……」「いや、間違いない……奴だ……!」
 「――全世界に告げる。全世界に告げる。大手出版社の発信を鵜呑みにする、全ての読者に告げる。今、1年前の借りを返す時が来た。これは、鬼頭はるかの名の下に行う復讐である。私を切り捨てた漫画界への復讐である! そして、その鉄槌を下すのが、この超極厚同人誌、その名は、『真・初恋ヒーロー』ーーーーーーーー!!」
 「鬼頭はるかが……生きている……?!」
 「じゃが、あの盗作騒動の中心に居て、作家として生きているなどという事があるまい」
 「だが、あれはまさしく鬼頭はるかの画風。それに、あの内容にしてみても、鬼頭はるか以外の誰に描ける」
 「ふふふふふ……そうだ。私は1年前、この日の為に生き延びた。今こそお見せしよう、本当の、『初恋ヒーロー』を。それは、幻ではない……」
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 ……発作的『ジャイアントロボ』ネタはさておき、登場2回目にして正面から金ドラに打ち負けた紫サメの株価はいきなり下がりましたが、金vs紫は、とにかく出番を作らないといけない都合が出てしまい、この辺りの軛からは『ドンブラ』も逃げ切れない模様。とはいえ、攻撃無効の幽霊を説得エンドでドンブラ側の戦闘が派手さに欠ける分、それを金vs紫が担当する形なった面はあり、次回――ようやく、トラ参上。
 ……テーマ的にはなんだかむしろ、次回の方が『ゴーオン』要素を入れやすそうな。