『仮面ライダーエグゼイド』感想・第29話
◆第29話「We're 俺!?」◆ (監督:山口恭平 脚本:高橋悠也)
「俺、もうドクターやめるから」
融合エムはデュアルガシャットで赤パラに変身すると、ブレイブとスナイプを一撃粉砕してアジトに戻ってから、再び分離。
「いつだって、俺とおまえの心は――繋がってた。俺たちの心は、一つだった」
「……まさか」
「そう。俺なんだよ。おまえに感染してる、バグスターは」
永夢への執拗なこだわりを、「おまえが望んだ事だろう」と告げるパラド……その正体は、バグスターウィルスの影響により実体化した、永夢のイマジナリーフレンドだった!!
「おまえの願望が、俺を生んだんだ。だから俺たちは戦う運命にあるって言ってんだよ」
パラドは再び永夢に憑依すると、XXを起動し、分裂。
「さあ、俺と勝負だ。エム」
少年時代に永夢が空想を広げていたのは、ゲームのアイデアばかりではなく、それを一緒に遊ぶ友達の存在もであり、本当に、「一人で協力プレイ(涙)」だった哀しすぎる事実から、パラドが永夢と執拗に“遊ぼう”とする理由が明らかになる一方、CRでは飛彩と大我がこれまでに得た情報を繋ぎ合わせ、永夢とパラドの真実に到達。
これでようやく、永夢の激変する二つの性格は、既にある種の“実体化”をしていたバグスターすなわちパラドの影響によるものだと共有され、6年前、ゲーム大会の決勝でニコを倒した王子エムは概ねパラド人格であった事も判明。
黎斗が確認した「バグスターウィルスの成長」とは「パラド人格の発現」であり、ネクストゲノム手術によりパラドが分離した事で、永夢は医者の勉強を熱心にするようになったのだった……と、これまで謎だったパラドの出自、俺エムとパラドの性格の類似に説明が付けられるのですが、2クール目終盤、黎斗による怒濤の種明かしと比べると、微妙に間を空けてしまった事で話をぐいっと引っ張っていくようなインパクトは不足。
折角切った「ポッピーが敵に!」というカードを4話ほどで回収してしまったのに続き、新展開早々に「パラドと俺エムの素性判明(仮)」を行った事で、大仕掛けであった『仮面ライダークロニクル』の存在感も急速に薄れてしまい、広げた舞台と、舞台上の出来事が巧く噛み合っていない印象なのですが、今作得意の早い展開にしても、もう少し、“『仮面ライダークロニクル』の起動した世界”を馴染ませてから状況を動かしても良かったのではないか、と思う部分です。
まあこの点に関しては制作サイドの方で、人類が嬉々として『クロニクル』に突き合う展開は説得力を持たせにくい、という判断があったのかもですが。
もう一つ、以前にも触れたように、第14話で“俺エムの方が先に”「……ゲーム? …………なに言ってんだ? ……俺がやってんのは――患者のオペだ!」に辿り着く展開が割と気に入っていたので、俺エムはパラドとの共生の影響による中間的人格だとしても、現状その要素が拾われていないのは、不満点。
この先で回収・接続されてくれると嬉しいのですが……そのパラドは、黎斗によるゲーム病暴露のストレスで永夢が消滅しなかったのは、一時的に永夢の肉体にパラドが戻っていた為と説明。
「俺がおまえの命を、コンティニューしてやったんだよ。
「……そんな……」
「おまえを生かすも殺すも、俺のパズル次第。おまえには、運命を決める力なんて――無い」
通報で駆けつけた飛彩らの前で、パラゼイドはエムゼイドを執拗に挑発。
「……ふざけるな」
「ムカつくか? なら自分の手で運命を変えられるって証明してみせろ。俺を倒さないと、おまえのゲーム病は治らないぜ?」
殴られる一方だった永夢は遂に戦闘を決意し、激しくぶつかり合う右モヒカンと左モヒカンのエグゼイド。エムゼイドの多分リプログラミング光線が炸裂すると両者ともに変身が解けて膝を付き、MAXで無くても使えるの……? とか、まだ殴り合いになってから30秒も経っていないのに……とか、急に勝ち誇る周囲の仲間とか、色々と唐突で困惑が先に立ち、見せ方にもう一工夫欲しかったところです。
「負けた? この俺が? 冗談よせよ」
立ち上がったパラドは外野の発言をせせら笑うと、永夢がパラドのリプログラミングを行った事により、共有されていた人間の遺伝子がパラドの中に組み込まれ全ては運命のパズルの計算通りだ、と言い出すのですが、悪い意味で理屈はさっぱり不明。
九条の遺産(ここから割と無理はありましたが……)、という意味づけのプラスも含めて、打倒Zゲンムの切り札としては相応に物語の力で押し切ったリプログラミング光線ですが、ただでさえ都合の良い万能化をしつつあったところに、特に受け手を納得させる為の段取りもなく敵の思惑通りの効果を発揮して「実は○○は○○だったんだ!」とやりだす、大変よろしくない展開に。
前回まで駄々っ子だった敵が究極のライバルに返り咲くジャンプ台としては、あまりにも粗末な作りになってしまいました。
とにかく人間の遺伝子を手に入れたパラドは、人間にしか使えないゲーマドライバーでデュアルガシャットを起動する事で、バグスターとして定められたレベルを超えるMAX大変身を発動。
OPにシルエットで登場していた日輪ヘアーの新たな姿となり……
ナレーション「なんだこれは? そう、それは芸術の巨人・タローマンである」
…………すみません、あまりにもタイミングがドンピシャだったもので。
気を取り直してまして、
「『パーフェクトパズル』、『ノックアウトファイター』、LV50の二つのゲームが混ざって、一つになった。その名も、『パーフェクトノックアウト』! 仮面ライダーパラドクス――LV99」
赤と後の両面仕様から、それが組み合わさった姿へと仮面ライダーパラドクスがレベルアップを遂げ、デザイン的にはどうも宿敵感の薄かったパラドクスが強化形態となるのは、納得の流れ。
ブレイブとスナイプが立ち向かうもレベル差がありすぎて攻撃が全く通用せず、MAXパラドクスの手にした斧-銃の可変武器による銃撃戦に敗れ、クリティカルストライクを受けた提督スナイプ、ばくはつだ!
変身解除となった大我が落としたガシャットを拾い、久方ぶりの魔王となるブレイブだがMAXパラドクスにはそのメス捌きも通じず、今度は斧でクリティカルだ! と新装備のプロモーションの犠牲となって、ばくはつだ!
大我と飛彩が立て続けに完敗を喫し、ゲーム病によるノイズを走らせながらも最大級の顔型ボディに収まるエグゼイドだが、レベルMAXキックの打ち合いに敗れ、ばくはつだ! げいじゅつだー!!
「これで俺とおまえは同じレベルだ。おまえの運命を決めるのは……俺だ」
親戚の駄々っ子を脱し、圧倒的な力を見せるMAXパラドクスの前に撤収しようとする一同だが、パラドは再びエムの体を乗っ取って、余裕の嘲笑を浮かべながらアジトへと帰宅し、普段は気弱なへっぽこドクターの永夢が時折見せてきた、感じ悪い笑顔の蓄積が、パラド永夢の象徴として効いています。
ドクター達が屈辱的なコールド負けを喫していた頃、宿主のものと思われる記憶を垣間見たポピ子は、記憶の中に現れた少年黎斗の言葉を頼りに、元アジトへと忍び込んでいた。
「感染対策って、なんなの……黎斗?」
最重要問題(誰を犠牲にして実体化したのか)が不問に付されたまま、相変わらず物凄く曖昧でアンタッチャブルな立ち位置のポピ子ですが、その記憶の元で独自行動を取るのは、ちょっと面白い使い方に。
記憶の断片を追いかけ、隠し部屋(どうやらゲンムコーポレーションの旧社屋?らしい)を発見すると、そこに在ったのは、どちらも割と新しく見える、革製の宝箱と、レベル0マニュアル。
少年黎斗の幻像に導かれるかのようにポピ子が宝箱を開くと、そこに入っていたゲーマドライバーとプロト『マイティアクションX』は、いったい何を意味するのか。
「でも、色が、違う……」
次回――突然、16歳(或いは6歳?)の子持ちになってしまった事実を、永夢は受け止める事ができるのか?!