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つばさよふたたび

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第17話

◆ドン17話「ひかりとつばさ」◆ (監督:加藤広之 脚本:井上敏樹
 内なるオーラパワーおじさんの声に導かれたジロウによるやみうち騒動がひとまず落ち着き、とんでもない不穏分子を身内に抱える事になったドンブラザーズだが、夏美そっくりの女――雉野みほ――と出会った犬塚翼には、一つの光明が訪れようとしていた。
 (……記憶喪失? それとも、夏美そっくりの別人、だったの、か……まあ、いずれにせよ、今日でハッキリする。あれから1年、あの日の事を俺は、一瞬でも忘れた事はない)
 虚空にぽっかりと空いた謎の渦に飲み込まれて消えた夏美の姿を思い出す犬塚は、何者かとの“約束”の時を迎えようとしていたのだ。
 (俺は、約束を守り、1年間、あの出来事を誰にも話さなかった。今日こそ夏美に会える筈だ)
 脳内夏美がラッパを吹き鳴らす天使を従えながら地上に降りてくる映像でも見えているのか、宙に向け手を伸ばしてニヤニヤする犬塚だが、ビルの屋上から飛び降り自殺を行おうとしている男に気付くと、咄嗟にアバターチェンジ。
 男を助ける事には成功するが、変身の瞬間をソノニに目撃されており、奇襲を仕掛けてきたコンドール仮面が敢えて目の前で変身を解く事で、ソノイとタロウに続く、ソノーズとのご対面。
 「……おまえは」
 「思い出したか。驚いたぞ。まさかおまえが、ドンブラザーズのイヌだったとは」
 ……しばらく、オープンカフェで初対面の女性に真実の愛について語る、ハードボイルドな回想をお楽しみ下さい。
 「私にもわかった事がある。人は、愛ゆえに、欲に歪み、憎しみ合い、争う。違うか?」
 立って至近距離で並ぶと、身長差が凄い。
 「愛について語るつもりはない……恥ずかしいからな」
 回想シーンで思い切り語っていた直後の自己認識が絶妙すぎて、いきなり呼吸困難になりそうなほど笑いました……なんかもう、久々の『ドンブラ』成分が満たされてしまったぞ。
 「だが、一言だけいうなら――愛は光だ。光がなければ人は、一歩も歩けない」
 高まるハードボイル度を受け、なにやら難しい顔で考え込むソノニさん。
 「…………今のは恥ずかしくないのか?」
 「……聞くな」
 スキル《ツッコミ》を修得したソノニは、なにやら女性の名を呟き続ける自殺未遂の男の額を見つめて、ほくそ笑む。
 「おまえ、私と賭けをしないか? この男はもうすぐ、ヒトツ鬼になる。おそらくは愛のせいでな。この男の闇を、光に変える事ができるか?」
 ヒーローフィクションにおいては、とかく便利なマジックワードとして使われがちな「愛」を、善に限った観念ではなく、善悪とは切り離したものとして描こうとするのは井上脚本にしばしば見られるアプローチですが、「愛」を巡る犬塚とソノニのやり取りもぐっと存在感を増してきて、タロウとソノイの関係に続き、どう転がっていくか楽しみです。
 ヒトツ鬼になる、と聞いては放置していくわけにもいかず、自殺未遂の失恋男・田辺の相談に乗る翼。田辺はかつて、街で地球鬼に襲われた際に恋人・加奈子を見捨てて逃げてしまった事から関係が冷え込んでおり……原因が過去の鬼事件、というのは面白い仕掛け。
 それを聞いた犬塚は、悪魔の扮装をして二人に襲いかかる事で田辺に名誉挽回のチャンスを与えようとするが、通りすがりの自称スーパーヒーロー・ファイヤードラゴンに出会ってしまい、アスファルトの地面にボディスラムで叩きつけられて、ノックダウン!(よい子は絶対真似しないでね! ファイヤードラゴンとの約束だ!)
 「すまん、突発事故でな」
 「いえ、俺の方こそ、こんな格好までしてくれて……」
 コントめいたデビル犬塚の扮装に田辺は申し訳ない気持ちで一杯になり、作戦が無残な失敗に終わった犬塚は、違う女を見つけろ、と方針転換。渋る田辺だが、通りすがりのみほに見とれると、その姿に気付いた犬塚が慌てて後を追い、みほさんのモテパワーだけが広がって、世界を覆い尽くしていく勢い。
 デビル犬塚(走りにくい)は花屋の前で雉野とばったり遭遇すると、「美人さんなら今さっき、向こうのほうに」と、怒って歩き去っていった加奈子=夏美と誤解され、犬塚がそれを追いかけた後に花屋からはみほが出てくる、と悪気の無いすれ違いにゲストキャラの絡め方が鮮やか。
 夏美を求めて街を駆けるデビル犬塚は、炎天下に黒ずくめで全力疾走の末に意識が朦朧としてくると、道ゆく女性という女性の顔が全て夏美に見えるようになった末に車に轢かれそうになった所を追いかけてきた雉野に助けられ、交通安全・交通安全・こーーーつうあんぜぇん!!
 おうだんほどうにきゅうにとびだしたら、あぶないぞ!
 危地を救われ、デビルメイクを落とした犬塚は、雉野と田辺に1年前の出来事を語り、揃って売れない劇団員だった犬塚と夏美、本当に、演劇関係の人でした。
 劇団仲間たちと旅行に行った先で夜中に目を覚ました犬塚は、体を這い上る白い折り鶴を無意識に握り潰していたのだが、夏美をはじめ仲間達の口の中にその折り鶴が入り込んでいく光景を目撃する。そして、かっと目を見開く夏美。
 「目を覚ましたか。この女は適合者だ」
 不気味な影が現れると共に、一瞬、正気を取り戻した夏美の体は謎の渦の中に吸い込まれていき……
 「男よ。この事は一年間口外するな。そうすればおまえは、再びこの女に会えるだろう」
 獣人らしき存在に「言うな」のタブーを課された犬塚は、夏美との再会を希望に沈黙を守り続けていたが、他の団員たちは目覚める事なく、怪事件の重要参考人として追われる身になっていたのだった。
 タブーはもう破ってもいいのか? 先程みほとすれ違ったのが「会える」カウントなのか? と予想外にファジーな扱いだった犬塚の“約束”ですが、ハッキリした事は、1年前の時点で既に獣人が人間界に干渉しており、某囚人の
 「脳人の者よ、獣人の出現はありえない。私がここに居るかぎり」
 が案の定、口から出任せだった事と、ソノイの目も割と節穴なのでは、の二つです。
 「夏美に……会いたい……」
 犬塚がぼそりと呟くと、他人の惚気を聞くと愛の衝動が我慢できなくなる雉野はダッシュで走り去っていき、代わりに現れたのは、ソノニ。
 「聞いたぞ、今の話。予言しよう。おまえの話が本当なら、おまえの愛は、辛いものになる」
 獣人に関する不穏な布石が共有される一方、惚れっぽい田辺はソノニのフェロモンにやられてその後をふらふらとついていくが、土壇場で加奈子を裏切れない自分の心に気付いて……ソノニ、フられる(笑)
 今度こそ自分の気持ちを伝える為、再び加奈子を呼び出す田辺だが、そこで加奈子は、脇目も振らずに逃げ出した田辺に代わり、地球鬼から自分を救ってくれた男に運命を感じていた事が判明。
 (は?! …………もしかして……ひょっとして……お、俺か……?)
 ヒーロー行為が、とんでもない地雷になっていた。
 「わかってるの? どこの誰か」
 「うん」
 頷く加奈子が取り出したスマホの画面に映っていたのは、この顔、ロックオン。
 加奈子が頷いた時点で、犬塚ならそれが出来るな、とは思いましたが……指名手配の貼り紙を、こう使ってくるとは(笑)
 予想もしない三角関係の勃発に物陰で苦悩する犬塚の前に、泣き方を教えろ、とソノザが現れ困惑していると、多分フられた腹いせに、ソノニが犬塚=イヌブラザーであると暴露。
 ソノザはスター仮面に変身し、未だ身内に正体不明のイヌブラザーが、ドンブラザーズの誰よりも早く、コンドール仮面とスター仮面の人間体を知る、これまたややこしい状況に。
 スター仮面の攻撃を受けた犬塚がアバターチェンジすると、それを目撃した加奈子が、運命の王子様が二等身の犬なんて許せない!! と身勝手な理想像の押しつけから鳥人鬼に変貌し、犬塚の過去、獣人との関わりが明らかになるエピソードではあるものの、期待させて引っ張った鳥人鬼そのものは、割とあっさりした扱い。
 まあ、フレーバー以上に「○○鬼」にこだわりすぎない方が作品バランスとしては良さそうですが、それはそれとしてこの後、金ドラがドラゴンレンジャーにアバターチェンジして一暴れしたりはするので、どこまでがメタ的な素材と割り切るのかは、悩ましさが付きまといます。
 出来れば物語の要素としてまとめてほしくはあるのですが、率直に、メタ要素の取り込みに関しては白倉Pには不安先行なので……下手に消化しようとするよりは、それはそれ、これはこれ、の方が面白くまとまるかもな、とは。
 劇場版の撮影スケジュールの影響だったりするのか、今回ここまで全く出番の無かったタロウが、鬼と猿による人間神輿で登場し、恐らく理央様(『獣拳戦隊ゲキレンジャー』)の人間玉座以来の暴虐を決めると、キジも参戦。
 犬塚とソノニの再会・みほ/夏美との続くすれ違い・ゲストとの思わぬ三角関係勃発……
 と1年前の事件に触れつつ敵味方ゲストを巻き込んだ『ドンブラ』らしい錯綜がここまでは面白かったのですが、が……鳥人鬼の女優さんの、凄く気の抜けたアフレコが大変辛く、この後、鳥人鬼が何か喋れば喋るほど、物語への没入感が削岩機で粉々に砕かれていくのが、大変残念。
 空中を自在に舞う鳥人鬼をこどらロボが手裏剣アタックで翻弄すると、先輩チェンジでドラゴンヤクザvsスター仮面を挟んで、打ち上げロボタロウから巨大戦に突入して各種キャンペーンを駆け足でこなしていき、心を一つにジャンプキックからドンブラパラダイスで鬼退治、完了。
 (気づきもしないか。それでいい。うまくやれよ……田辺)
 後日、犬塚はよりを戻してすっかり二人の世界に入り込んでいる田辺&加奈子を目撃してエールを送り……みほ/夏美問題に関しては、過去の顛末が語られただけで現在に動きはなく、獣人との“約束”も有耶無耶な形になり、エピソードの焦点として期待していた要素は何も解決されないままに終わってしまいましたが(何故か満足感を出している犬塚翼、流れで芝居っ気を出してしまう男)、そもそも獣人の意図もさっぱりわからないので、次の展開でどう拾ってくるのか期待したいところです。
 一方、ソノーズアジトから階段を降りて豆腐屋の角を曲がり二丁目の交差点から歩いて2分と15秒、平均113歩目にある喫茶店の横を抜けて裏通りを抜けた先にある扉を開いた辺りとおぼしき異空間に、謎の声が響いていた。
 「目覚めなさい……目覚めなさいムラサメ……ムラサメ」
 OPに、不穏な名前(「マザー」)と、不穏さを煽るキャスト(「能登麻美子」)がクレジットされていましたが、ジロウの素性問題が全く前進しないまま、次なる爆弾、投下?!