東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

すべてがバグになる

仮面ライダーエグゼイド』感想・第21話

◆第21話「misteryを追跡せよ!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高橋悠也
 「天才ゲーマー・エムを推薦したのは、黎斗なの」
 今、遂に明らかになる、衝撃の真実。
 久しく今作の根底にわだかまっていた、幾らなんでもライダー適合手術についてさえ知らないと不自然にすぎるポピ子が永夢の変身を受け入れていたのは、ネクストゲノム実験について衛生省ルートで把握していたからだとすれば筋が通るので、それについてずっとだんまりを決め込みながら献身的なサポーターを装っていたのではないか疑惑については、当時協力者だった黎斗の言葉を鵜呑みにしていたから、と元社長に責任を負わせる形で解決。
 ……それはそれとして、黎斗と敵対関係になった時点で衛生省に問い合わせるなどしなかったのかとか、永夢が適合手術問題で他のドクターに責められている時に持ち出す話題だったのではとか、告白のタイミングが不自然すぎて後付け感が半端ありませんが、トップローブからド派手にブレーンバスターを決めて、細かい不合理は吹き飛ばしていくスタイル。
 後、衛生省までまるまる騙されていましたは、さすがに無理がありすぎるので(そもそも第1話で日向審議官は天才ゲーマー探しに異論を挟んでいたわけで)、ポピ子の内臓と衛生省の暗黒面との切り離しこそ行われたものの、衛生省はもろもろ把握した上で永夢を泳がせている可能性は引き続き高値安定なのですが、CRはもう少し、自分たちの頭上について気に懸けた方がいい。
 「あの人が作ろうとしてる、究極のゲームって……なんなんだろう」
 「余計な事は考えるな。俺たちドクターの仕事は患者を救う事だ。謎解きじゃない」
 永夢をたしなめる飛彩の言葉は、医者の本分を見失って本当に大事なものを取り落とすな、という意味では言いたいことがわからないでもないのですが……問題にしているゲンム/檀黎斗が、
 ・ドクターライダー1名を、実質的に殺害している
 ・頻繁に治療行為を邪魔しにくる
 ・そもそも治療手段(ガシャット)を奪い取ろうとしている
 ・根本的にバグスターと繋がっている
 ので、むしろ真剣に活動目的を考慮するべき相手な為に、単なる思考放棄宣言になっており、それは、どこをどうひっくり返しても余計な事ではないと思います鏡先生!!
 考えるんじゃない感じるんだ、とメスで切るマシーンに徹しようとする鏡先生、ドクターライダーはあくまで最前線の実働部隊、ブレーン(衛生省)は別にある、というニュアンスも含んでいるのかもしれませんが……裏で動いているだろうにしても、このところ衛生省の存在感がまるで無いので物語としての説得力も低く、CRドクターズの視野が狭くなりがちなのは目の前の患者を第一に考えているから! とフォローを入れる筈が、かえって深手を負わせる事に。
 最大限好意的に解釈して、まだ研修医である永夢は色々と気を回さずに治療に集中していれば良く、面倒ごとは先輩に任せておけが真意……とギリギリ思えなくもないですが、例えば黎斗が組織の黒幕ポジションで滅多に対面しないのなら行動の推察が後回しになる感覚はわからないでもないですが、なにぶん毎回のように最前線で出会うので気にしない方が無理があり(むしろみんなで一度、話し合った方が落ち着くレベル)、とにかくCRには、野菜の冒険者の至言を、額縁に入れて飾っておいていただきたい。
 「もう少し頭を使った方がいいぜ。結局、この世は頭がいいヤツが勝つ事になってるんだ」
 一方、5年前の事件を追い、黎斗の父・檀正宗と面会中だったベテラン刑事・上杉がゲーム病を発症し、檀正宗こそ「ゼロ・デイ」を引き起こした人物であると明らかに(物凄くあっさりした触れ方を見るに、劇場版で先に説明されていた感じでしょうか)。
 ほんの数ヶ月前まで「ゼロ・デイ」そのものが隠蔽されていた事を考えると、一体どんな裁判が行われてどんな罪状で収監されているのか気になりますが、檀正宗に対する面会の許可を得られる時点で、上杉刑事は割と大物なのでは……名バイプレイヤー・諏訪太朗さんを起用し、如何にも叩き上げの頑固刑事、といった風情なのですが、もう少し警察の有力者めいたキャラ付けの方が、諸々の説得力が上がったような気はします。
 九条なら偉い人の弱みを握って……とかメインキャラ特権で解釈できる範囲ですが、どう考えても檀正宗、ほいほい面会できていい相手だとは思えないので……。
 「……必ず、俺が……真実を……」
 5年前の事件に強い執着を見せる上杉の体が、ブリキ頭が編み笠風になって二刀流を操る免許皆伝バグスターに乗っ取られ、XXエグゼイド&Dブレイブと激突。
 顔を出したZゲンムは提督スナイプと戦うと、スナイプ波動砲に吹き飛ばされてガシャットをドロップし、
 「ちょろいな。レベル10のおまえが、レベル50の俺に勝てると思ったか」
 スナイプは早くも力に酔っていた(笑)
 皆伝バグスターが今回も話の都合で上杉の体内に引きこもる一方、提督スナイプはドロップガシャットを取り戻し……取り戻すとはいうものの、つい数時間前まで黎斗の手元で何されていたかわからないガシャットを、平然と自分のものとして扱えるドクター達は勇気とか無謀とかを完全に通り越していますが、やはり適合手術の際に、人間として大事な何かを失うチップとか埋め込まれているのでしょーか。
 「調子に乗っていられるのも、今の内だ……君たちも、妙な詮索はしない事だ。九条貴利矢のようになりたくなかったらな」
 聞くべき価値のある忠告を残して黎斗が姿を消すと、取り残された3ライダーがぼんやり佇む絶妙に間抜けな提供シーンを挟み(放送時は、それぞれスポンサーの文字が入って、もう少し誤魔化しが利いたのでしょうが)、黎斗はアジトに帰還。
 「だいぶ死のデータが蓄積した……あと一度、致死ダメージを受ければ……――ゲンムはレベルエックスに達成する」
 ライダーゲージ要素はすっかりどこかへ消えてしまいましたが、エグゼイドもブレイブもスナイプも、死んだら仕方ないよねぐらいの勢いでZゲンムを殴っていた事が改めて判明し、近年の作品解像度だとやはり、殴ったら中の人が死にかねない問題は最初から克服しておくか(これが上手かったのが『W』)、途中で葛藤か検証が欲しいとは思うところです。
 まあZゲンムに関しては、死なないからいいのでは、とドクター達の感覚がマヒしている感はあり、慣れって怖い。
 CRに運び込まれた上杉は治療を拒否して捜査の続行にこだわり、その心情を激白。
 「息子がバグスターウィルスに感染して、消滅したんだぁ!!」
 家族が「ゼロ・デイ」の犠牲となった上杉は、檀正宗が事件の原因となった過失について認めるも、バグスターウィルスが生まれた理由については曖昧な供述しかしていない事から、そこに隠された真実があるに違いないと睨んでおり、黎斗と九条が失踪している件について正宗を問いただしていた事が判明。
 ここで外部(世間的な)視点では、黎斗と九条は謎の失踪中扱いである事が改めて描かれるのは効果的になりましたが、正宗さん、この件に関しては本当に関わっていないので、濡れ衣もいいところですね……(笑)
 (まあ、どこでも好き勝手に出入りできるパラドと繋がって情報を持っている可能性はありますが)
 黎斗の真意を掴む為、上杉に治療に専念して貰う為、「僕が代わりに、捜査します」と宣言した永夢は、それが原因で飛彩にまたも胸ぐらを掴まれる事に。
 「監察医と同じ運命を辿ってもいいのか?!」
 近しい人を失った過去にもよるのでしょうが、永夢を止めようとする飛彩は、周辺他者の命の危険を看過したくない思いが強い、といった感じの立ち位置に徐々にスライド。
 「知りたいんです。なんで貴利矢さんの命が、奪わなきゃならなかったのか」
 一方で永夢のモチベーションに九条の死を使ってくるのは納得のいく推進剤となり、九条貴利矢という男が居た事を物語として捨てた石にしないのは、好感を持てる組み立て。
 「君なら止めてくれるのか? 私の息子を」
 ふてぶてしい態度ながら永夢に興味を示した正宗が、九条に明かした情報――隠されていた真実を語る一方、大我はゲンムコーポレーションに乗り込むとZゲンム対策にガシャット制作を依頼し、400万円ぽっちでゲームが作れると思ってるのかぁ!! と、小星に激怒……されてはいなかったが、テーブルに現ナマをばらまく大我の図、を優先するにしても、もう少し金銭的なインパクトは欲しかったところです(笑)
 躊躇う小星に対して年収1億円の押しかけ嫁は、ハンバーガーの事は忘れたのか……? と耳元に囁いて復讐に駆り立て、だいぶアウトローに染まってきていた。
 正宗との面会を終えた永夢とポピ子がCRに戻ろうとしていると、画面手前側に斜めの線を引く形でかかる橋の上に、永夢とポピ子の行く手を塞ぐ形で凄く格好良く黎斗が登場。
 「妙な詮索はするなと、警告した筈だが」
 「黎斗……おまえの父親に全部聞いた。全ての始まりは――」
 ミステリアスな音楽とともに、橋の欄干によって形成され、画面に斜めに走る事で不安定な印象を与えている線が、画面のフレームごと回転していく映像が非常に面白く、これは諸田監督が良い演出。
 そして、檀正宗が語った真実、2000年問題直後に起きた出来事、それは……
 「あの時人類の運命は変わった。コンピュータの僅かな誤作動によって人知れず生まれていたんだよ。バグスターウィルスが。その事に気付いたのが……黎斗だった」
 過去の時事問題を取りこみながら、高度にネットワークの発達した社会において、ネットワークそのものが“人知を超えた存在”を生み出す、というSF的なテーゼが入り、いちはやくバグスターウィルスの存在に気付いた檀黎斗こそが、「ゼロ・ディ」を引き起こした真犯人だったのだ!
 ……まあ、露骨に胡散臭い正宗さんは“信頼できない語り手”なのですが(くしくも、2022年大暴れ中のどこかの囚人と被ります……)、黎斗もそれを肯定して高笑い。
 一方、永夢とピポポ子に患者を雑に押しつけられた飛彩は、5年にわたって事件を追いかけ続ける上杉の姿に、微かに己の境遇を重ねていた。
 「……過ぎた事を調べて、意味はあるんでしょうか? ……そんな事をしたって……失った人が帰ってくるわけじゃない」
 事件の真相に積極的に迫ろうとする事なく、展開の都合で部屋の隅っこに追いやられていた飛彩、このまま蚊帳の外だと悲惨すぎた所ですが、飛彩と上杉がCRに二人で残ったからこそ飛彩の内心の吐露が行われるのは、状況設定と人間関係を見事に活かし、前回の大我とのやり取りも受けて、冴えた展開。
 檀正宗と永夢を繋ぐばかりではなく、飛彩に過去と現在を見つめさせ、ゲストが二つの機能を果たしたのも使い方が秀逸となり、その上杉が皆伝バグスターとして再起動。
 橋の上で高笑いしていた黎斗は、ジャケットの裾を翻して格好良く飛び降りると永夢の至近距離で小指を立てながらガシャットを構えて永夢を煽り、ノイズフィルター演出は何度か使っているものの、本日の元社長は、かなり私好みの元社長(笑)
 「さーて……君に救えるかな」
 両者が間近で睨み合いながら同時に変身するのもばっちり決まり、展開したゲームフィールドに、XXエグゼイド・Dブレイブ・提督スナイプ・Zゲンム・赤パラ・皆伝バグスターが勢揃い。
 3つの戦いが同時に展開し、今回は完全にお邪魔キャラ扱いのパラドクスは、青パラになると〔筋肉×筋肉×硬質化〕の重ねがけによる、黎斗は裏切っても筋肉は裏切らないキーーックにより提督スナイプと相打ちし、パラドの筋肉への憧れだけは、好きになっていい気がしてきています。
 「お互いゲンムには気をつけようぜ。あいつはレベルって概念さえも、超越しようとしている」
 笑顔で忠告してきたパラドは、戦いそのものを楽しんでいる設定にしておくと負けて格落ち度が減少するから便利ムーヴで撤収し、ZゲンムはXXエグゼイドのブラザーツインシュートを受けて変身解除すると地面に転がり、残ったドラブレは、「俺に斬れないものは無い」にこだわっていた(笑)
 それはそれとして、鍛えれば鍛えるほどメスの早さも3倍! と筋肉の神に祈りを捧げたDブレイブはドラゴン真空剣・縦一閃で皆伝バグスターを両断してゲームをクリア。
 だがそのデータは黎斗によって回収され、その行動に気付く俺エム。
 「おい! 今なにをした?」
 「仮面ライダーも、バグスターも、全ては究極のゲームの一部に過ぎない」
 「究極のゲームって、なんなんだ」
 「『仮面ライダークロニクル』。一般人が仮面ライダーに変身し、現実の世界でモンスターと戦う、命がけのサバイバルゲームだ」
 神に等しい私でさえ、二次元に行く事は出来なかった……だがそういう時は、逆に考えるんだ。つまり、二次元を現実に引っ張り出してくればいいのさぁ!!
 遂に元社長の野望が永夢らに告げられ、事態は風雲急。
 「…………ゲームだ? 人の命を危険にさらすゲームなんて……そんな事の為に、貴利矢さんを犠牲にしたのか?!」
 「ふふふっ……多少の犠牲はやむを得ないさ。……満たされない人々に、夢と冒険を与える。それがゲームという、エンターテイメントの使命だ。そしてそれを実現させる、神の才能が、私にあるのだからな!!」
 2クール目に入り、“現実の命はコンティニュー不能/ゲームの命はコンティニュー可能”を大きな対比軸として明確にした今作ですが、ここで、“ゲームがコンティニュー不能な命を侵食する”という、逆転の構図が予告されたのは、興味深い仕掛け。
 またそれにより、作品世界における固有名詞みたいなものにしても、これまでずっと劇中で浮いてきた「ゲーム病」の名称が、現実の命を害するものとして切実な意味を持ってくる――「ゲーム」という単語そのものにパラダイムシフトが発生する――のは、上手く繋がりそうになってきました。
 「おまえのせいで、大勢の人の命が無くなった。上杉さんの、家族の無念を……飛彩さんの、恋人の無念を…… 大我さんの、毛根の無念を…… そして……貴利矢さんの、無念を晴らす!」
 格好良く啖呵を切る永夢だが、生身なので黎斗に踏まれて蹴り転がされ、語りシーンの都合で致し方ないのですが、圧迫面接をする時はやはり変身は解かない方が無難だったと身を以て知る事になりました。
 「君には止められない。不死身でありながら、レベルXの力を手に入れた私をな……」
 黎斗はデンジャラスゾンビを再起動すると、凄まじいエネルギーの噴出とともに計測不能(自称)の力を持つZゲンムXへと変身し……見た目は、一緒……?
 「絶対におまえを止める!」
 立ち上がった永夢は、XXに変身すると色々簡略化して即座に分裂し、ブラザーダブル攻撃を受けたZゲンムは主題歌イントロと共に大爆発に飲み込まれ……主題歌をバックにゲンムX無双だったらそれはそれで大笑いだったのですが……あれ? 今回も死んだ??
 まあこれまでなら、アジトでデータを整理しないと強化できない筈だけど、「手に入れた」発言やこれまでにない変身シーンから既に強化されたのかと思いきや、予告を見ると、次回が本番の模様。
 「目の前の患者を救うだけじゃない。亡くなった人たちの思いも背負ってたんだね、永夢」
 「……俺は見くびっていたのかもしれない。あいつの事を」
 ゲーム病にかかっている筈だし、研修医だし、あれこれ手を出しすぎると、永夢がキャパシティの限界に達してしまうのではないか、と考えていたらしい飛彩は認識を新たにし、CR全体にレベルアップの気配が漂う中、永夢が改心のコケ芸を披露するも抱きつく相手は床だった、でつづく。
 ……どうでもいい話として、既に改造手術を受けている永夢はともかく、前半にも一回、ベッドの高さから顔面ダイブしている上杉刑事は、ギャグ抜きで心配になります(笑)
 まあゲーム病発症時点で、人より少し体が頑丈になっている可能性は充分にありえますが…………まさかの、ふ・く・せ・ん?
 なお永夢と上杉の友好度が上がった事により、上杉が黎斗について衛生省に報告するとの発言があり、それがどうも次回へ繋がるようですが、むしろ衛生省は黎斗の行方をずっと追いかけていないとおかしいわけなので、今回冒頭のように、フォローを入れようとしてかえって深手を負う事にならないといいのですが……とりあえずホント、小星をとっとと逮捕しないと、もはや完全なテロリスト予備軍なのですが。