東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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梅雨寒の読書メモ

週末海賊

●『週末探偵』(沢村浩輔)
 入社4年目にして就職先が突然倒産する憂き目に遭った瀧川一紀は、どうにか再就職に成功。職場近くの駅に引っ越して三ヶ月ほど経ったある休日――閑静な住宅街を散策中、外塀に囲まれ芝生の生えた敷地の中に、家屋の代わりに電車の車両が1台ぽつんと置かれている、奇妙な光景を目撃する。大学時代の友人・湯野原海にその電車について疑問を投げかけたところ、瀧川は湯野原と二人で、週末だけの探偵事務所を開く事に――。
 平日はそれぞれ会社勤めをしながら、週末だけ、犯罪性がなく、興味をかき立てる、ちょっとした不思議に無料で取り組む、男二人の探偵事務所の活動を描く、連作短編集。
 人物造形は上手く、主要キャラの織りなす“気持ちの良い”空間の描き方も良かったのですが、連作短編としての仕掛けが、好みに合わず。
 作品としては、この作品世界を積み上げていく事で跳ねそうな雰囲気はあるのですが、2016年の刊行後、続刊は出ていないようで、残念。

●『海賊島の殺人』(沢村浩輔)
 約20年前、王国を悩ませる名だたる海賊の数々を海に葬り、更には海賊の根拠を壊滅させた英雄・バロウズ卿が、事もあろうに海賊によって誘拐された! この離れ業を成し遂げたのは、勢力を急拡大する海賊団<南十字星>を率いる謎多き海賊アルバート・リスター。若き海軍大尉アランは、一向に実りのない交渉を続けるリスターの真意を探り出す密命を帯び、海賊として<南十字星>に潜り込むのだが、そこで待ち受けていたのは思いもかけぬ殺人事件であった……。
 17世紀末~18世紀前半頃、“海賊の黄金時代”の英国をモデルとした背景を舞台に、「海洋ピカレスクロマン」×「青年士官の冒険スペクタクル」×「殺人事件の謎に挑むミステリ」を組み合わせた一作。
 ではそのハイブリッドに成功しているかといえば……道中はそれなりに面白かったのですが、終わってみると、「青年士官の冒険スペクタクル」の面をもっとしっかり描くべきではなかったのかというか、作品を貫く軸にする要素の選択をミスした印象。
 主人公が場面場面で都合のいいピースになってしまい、終始キャラクター性があやふやなまま進行する為に、海軍士官からスパイとして海賊に潜り込んだ主人公が“何者になっていくのか”が物語のクライマックスと噛み合って劇的に跳ねられず、もどかしさの残る読後感となってしまいました。

 『夜の床屋』が面白くて同作者を続けて読んでみたのですが、二作ともいまひとつの出来。