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未知との遭遇XX

仮面ライダーエグゼイド』感想・第14話

◆第14話「We're 仮面ライダー!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 前回ラスト、エグゼイド分裂後の顛末は一旦スキップされ、CRに戻った飛彩とポピ子の疑念に基づくプレイバックの形で描かれ、誰にとっても衝撃の出来事だったと強調。
 「おまえ誰だ?!」
 「僕は宝生永夢です」
 「いや、永夢は俺だって!」
 「いや、永夢は僕です!」
 “俺”と“僕”、二人のエグゼイドが誕生してZゲンムそっちのけでにらみ合い、今ここに踏み込んだら、多分ギャグ時空に飲み込まれるな……と様子見していたZゲンムとバグスターは、エグゼイド同士が揉めている間に一時撤収。
 九条退場の直後としてはかなり思い切ったコミカルな見せ方なのですが、スーパーエグゼイドブラザーズによる爆発規模のあまりの大きさに、色々なものを吹き飛ばす、突き抜けた面白さは発生しています(笑)
 同時に、その爆心地に立っているものが、色彩といい、絶妙なグロテスクさといい、喜劇的のようで悪夢的であり、これが「仮面ライダー幻夢」と言われたら頷く、という、コミカルな味付けの背後に得体の知れない素材の存在を感じさせるデザインなのが、登場2話目に入ってみると、かなり秀逸。
 青モヒエグゼイドがガシャットを解除すると、橙モヒエグゼイドのガシャットも自動的に解除され、宙に浮かび上がった二人のエグゼイドは、まるで磁石のように引きつけ合うと融合してLV寸胴、そして“一人の”宝生永夢へと戻る。
 「……二人のエグゼイドに……なれるなんて……」
 呆然と呟いた永夢は激しい頭痛に襲われて気絶し……
 「エグゼイド……おまえは何者だ」
 薄暗い診療室で格好良く呟いた大我先生は、ニコによっていきなり部屋の電気が付けられると露骨に驚き……返せ! 俺のハードボイル度を返せ!!
 急速に、曲がり角のフライドチキン屋の駐車場から、満面の笑みで手を振る左翔太郎の幻影が見えてきていた。
 思わせぶりな言動で花家大我のハードボイル度を削っていくニコは、昔の永夢は「僕」なんて言う性格では無かった、と口にし……ひとまず、現在の永夢は二つの人格を有している、と捉えておいて良さそうですが、「僕エム」の方が主人格では無いらしき示唆は、面白い一ひねり。
 一方、永夢から白河の病状について相談を受けた飛彩は、魔法使いバグスターが飛彩を狙ったのは、白河が この機会に生意気な自称天才外科医(笑)を始末してやろう 飛彩なら手術を成功できるかもしれないと本心では希望を抱いているからだ、と指摘。
 「決めるのは、ドクターじゃないと言ってるだろ」
 それでも、己の立ち位置を貫こうとする飛彩だが、俺エムから「ヘイヘイ、外科医ビビってるー!」と煽られたり、おまえが膵臓ガンを倒すなら、俺はバグスターを倒してみせる、と啖呵を切られると、白河の元へと足を向ける。
 「オペをするかどうか……決めるのは患者である、貴方です」
 ――そして、飛彩を狙う魔法使いバグスターが病院を襲ったその時、永夢がバグスターに立ち向かい、飛彩が手術室で白河の患部に立ち向かうのは、前回持ち込まれた“命の価値(意味)”を「医療」と「ゲーム」の要素を繋げて描くテーゼともぴったり噛み合って、ようやく『エグゼイド』の見せたいものが一つ形になってなかなか格好良かった……のですが、なにぶん、1クール目の積み重ねがあったからここに到達できたわけではないのが、ホント凄いきりもみ飛行。
 天才外科医にいきなり手術をねじ込めるのは許容するとしても、これまで散々、飛彩に対して「技術云々以前に医者に値しない人間」と言ってきた永夢が、飛彩に白河の手術を任せる心の動きには激しく無理があり(人格には問題があるが腕は認める、というレベルではない暴言を浴びせていたわけで)、何度か書いてきましたが、永夢と飛彩の週替わりで全く一貫性の見えない人間関係が、ものの見事に大噴火。
 1クール目に積み重ねてきた無駄に険悪な人間は要らなかったというかむしろ無かった事になっているのですが、衛生省によるゲーム病の公表にともなって、いったいCRは何をされたのか。今まで彼らが、定期検診と称して飲まされていたものはなんだったのか?!
 …………それはそれとして、職場の人間関係としては大きく改善が図られ(次回どうなっているかはわかりませんが)、1クール目から、そりが合わないなりに認めるべき部分は認める、これぐらいの距離感でやはり良かったのでは……となってだいぶ作品としてクリアになったのですが、後の『ビルド』における、筋道も足下も巨大なザルだが目の前で何か凄く盛り上がっているのを受け入れるかどうかの綱引き(が延々と発生し続ける)、はこういう感覚だったのだろうか、と今になってちょっと理解を(笑)
 まあ今回は、再挑戦で完走を目指すので出来る限り前向きな体勢&なんだかんだ飛彩のスタンス(がちゃんと描かれている時)は嫌いではない、の合わせ技で消化するとして、魔法使いバグスターと戦闘を開始したエグゼイドが、亡き九条から託されたバイクガシャットを起動し、死者の事を改めて思い出してくれたのは良かったところ。
 エグゼイドのバトルと、“もう一つの戦い”としての手術シーンが交互に描かれ、顔……はついていたけど瞳が入っていないレーザーバイクにまたがったエグゼイドは、魔法使いバグスターを轢く事で、改めて東映ヒーローとしてのイニシエーションを完了。
 「九条貴利矢の形見か。――乗り心地はどうだい」
 台詞も実に悪役らしくなってきた社長が現れるとZゲンムに変身し、デンジャラス!
 「九条貴利矢の形見で、苦しむがいい」
 ギリギリアローを取り出したZゲンムがエグゼイドと戦いを始めると、花家とニコは物陰からそれを見つめ……それにしても前回から、魔法使いとゾンビが妙に息ぴったり(笑)
 「ゲームマスターの私に許可なく、君は不正なゲームを生み出した。そのゲームは削除させてもらう」
 「……ゲーム? …………なに言ってんだ? ……俺がやってんのは――患者のオペだ!」
 以前、チーム医療大惨事回の際に、肝心の永夢の「ゲーム/オペ」に対する意識が不明瞭な点が気にかかったのですが、ここで、俺エムの方が先に「これはあくまでもオペだ!」と立ち位置を明確にしてくるのは、なかなかな面白い転換。
 「患者の運命は、俺が変える!」
 新展開に合わせたヒーローまき直しがカチッとはまり、立ち上がった永夢は再び『XX』を起動して、二人でビクトリー! から、すかさず、だーーーーーーーい変身し、巨大なエグゼイドの顔から左右に4本の手足が飛び出す変身バンクは、主人公ヒーローとは思えない悪夢的映像(笑)
 空中で分裂したエグゼイドブラザーズはXXを背負い、色々とんでもなのですが、変身バンクからの着地ポーズと、それに合わせて流れるBGMがえらく格好良く、なんか凄く誤魔化されそうになります。
 今作、基本、音楽はいいというか、目の前で起きているハチャメチャな事象を貫通してウェットな部分を揺さぶってくる系で、ちょっと危険なレベル。
 「俺はおまえだ!」
 「僕はあなた」
 「「超協力プレイで、クリアしてやるぜ!!」」
 トモダチなんかいなくてもいい! We're 仮面ライダー
 と、二人で一人のエグゼイドは、どこからともなく湧いてきた新装備を手に魔法使いとゲンムに斬りかかり、自由奔放なブラザーコンビネーションでゾンビゲンムを翻弄すると挿入歌に乗せて怒濤の攻撃を浴びせ、忘れられずに飛彩の執刀シーンが挿入されてあくまでも同じレベルの“戦い”としてこだわりをもって扱われるのは、今回の良かったところ。
 XXエグゼイドはマイティダブルクリティカルストライクで魔法使いバグスターを粉砕するが、Zゲンムはそのデータを回収。
 「フン……いくら患者の運命を変えようと、大いなる運命は変えられない」
 若干、負け惜しみめいた台詞を残したZゲンムは帰宅。一人に戻った永夢はまたも頭痛で倒れ、そこに歩み寄った花家は、これでおまえのガシャットは俺のものぉ!! と懐を物色……する事なく口元の血を採取して場を離れ、アウトローに染まりきれない体質を感じます(笑)
 「……俺に切れないものはない」
 目を覚まし、病院に駆け戻った永夢に飛彩がオペの成功を終了後のハイテンションで伝えると(家に帰ってから恥ずかしくなるやつ)格好いいBGMが流れだし、その背に礼を告げる永夢、満更でもない笑みを浮かべる飛彩(家に帰ってから恥ずかしくなるやつLV2)……そして大我は永夢の血液を分析し……
 「道理で二体に分裂したわけだ」
 そこに検知されたのは、明確なバグスターウィルス反応。
 白河と笑顔で握手をかわす永夢のシーンでBGMが途切れるのが効果的に決まり――
 「エグゼイド、おまえはゲーム病だ」
 エム人格の一つは、バグスター……?! と、幻夢の欠片が破裂して、つづく。
 勿論、キャラクターとしては九条が退場して良かった、とは思わない上で、
 〔九条退場×檀黎斗との明確な敵対×XXエグゼイドのフィーチャー〕
 が掛け合わされた結果、『エグゼイド』史上最高にまとまりが良かったのですが……裏を返すと1クール目における「主要メンバーを事あるごとに衝突させつつ誰かしらのパワーアップイベントをこなし、クロゼイドがちょっかいをかけてくる中でゲーム病患者の問題も解決する」のは、改めて無理のあるボリュームで、器から盛りつけがはみ出してテーブルの上が地獄絵図になるのも当然であったな、と。
 新展開に入って、対立の為の対立を排除し、当面の敵が明確になって物語の構造がスッキリした上で、
 ・医療×ゲーム要素を活かした、今作主題の言語化
 ・それにともなう、永夢の立ち位置の確立
 ・職場の先輩後輩として見るからに破綻しない程度の永夢と飛彩の人間関係
 と、1クール目の問題点が急速に改善され、またそれにより
 ・CRを離れて独自にバグスター事件と関わる花家の遊撃隊ポジション
 ・エゴイスティックな敵としての檀&パラド
 ・宝生永夢/エグゼイドにまつわる謎
 のそれぞれがコントラストを上げて物語にメリハリが増し、作品全体に奇跡的な好循環が発生。
 特に歴史改変レベルのCRの環境変化が大きいのですが……もしかすると九条が、消滅寸前に手持ちのキ○ポイントを全て使ってくれたのかもしれません……。
 次回――吉と出るか凶と出るか、逆説の仮面ライダー、現る。