東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

『恐竜任侠伝』第2話「勃発!跡目争い」

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第18話

◆第18話「憎しみの兄弟剣」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升
 1億7千万年ぶりに出所するや大和組の後継者を名乗り、ジュウレンジャーを襲った男・ブライとは何者なのか……ゲキに重ねて問われたバーザとノームは、遂にその重い口を開く。
 「ゲキ、ブライは……」
 「ブライは?」
 「……おまえの実の兄さんなんじゃ」
 「……兄さん?! そんな……俺に兄が居たなんて聞いた事がない! 両親だってそんな話は!」
 「その両親が、ヤマト国王であったその両親が、おまえの本当の両親ではなかったのじゃ」
 ブライ8歳の時、当時1歳だったゲキは組の幹部だった両親の元から、跡継ぎに恵まれなかった組長夫婦の養子となった。ところが、野心家だったゲキ実父(同じ一族、と説明されているので、王位継承権も持っていたのかも)は組を奪おうと手勢を率いて反旗を翻し、激突するヤマト国王(岡本美登)vs黒のナイト(高橋利道)!
 戦いは組長一派の勝利に終わり、
 「ブライ……ワシの、仇を、取ってくれ……おまえこそ、王にふさわしい男だ……!」
 ゲキ実父は、その野望を“呪い”として幼い息子ブライに託すと、絶命。
 「じゃあ、俺の父親が……本当の父親を手にかけたというのか」
 元々、「肉親がだいたい死んでいる超古代戦争の生き残り」「新たな戦いに備えて1億7千万年コールドスリープ」と基本設定が重めのジュウレンジャーですが、叛乱を起こした実父を養父が誅殺していた更なるヘビー級のストレートが放り込まれ、「王族間における骨肉の権力争い」や「白と黒の兄弟」といった古典的なドラマツルギーを下敷きにしているとはいえ、思いがけぬ血なまぐさい真相には驚き(そして、バーザとノームの葛藤に納得)。
 組を抜けたブライは妖精の森で復讐を糧に育っていたが、ブライの手が届くよりも早く、大和組長はバンドーラ会との抗争で没し、抗争終結より1億7千万年――ブライの憎しみの矛先は、血を分けた肉親であると同時に、父の仇の手により育てられてきた偽りの後継者・ゲキへと向けられていた。
 時系列を整理するとどうやら、復讐の相手と見定めていたゲキがコールドスリープに入ってしまった為に、いずれ来る復讐の機会を見据えてブライは自ら眠りにつく事を選んだようで、お、重い……そして、復讐の念がどす黒い。
 「知らなかった……俺に本当の兄が居たなんて……。俺の父親が、本当の父親を殺したなんて。ブライ……俺の兄……ブライ」
 凄絶すぎる過去の真実に、マンションの屋上で思い悩むゲキの姿を見て、駆け寄ろうとするダン・ボーイ・メイを、無言でさっと押しとどめるゴウシが、おいしい。
 そして、甦った復讐鬼ブライは、独り荒波を見つめていた。
 「……ゲキ! 貴様の命は、必ず俺がもらう!」
 率直に、いきなりこのテンションで登場する事になったブライ(役)も、いきなりこのテンションを受けて立つ事になったゲキ(役)も、双方、大変そうではあります。
 「はっははははは……面白くなってきたよ!」
 ブライという劇薬の投入により血で血を洗う内部抗争勃発の気配に喜色を浮かべるバンドーラ様は、前祝いに楽しく踊ろうじゃないか、とミュージックスタートするとそのままテーマソングを歌い出し、使われた尺、約1分50秒。
 ここまでが重苦しい過去回想だったのでバランス調整の意図もあったのでしょうが、とても楽しそうで何よりです。

 今に私の子分が どしゃどしゃ潰してマッシュポテトさー
 トットバット! ブックバック! グリフォーザ! プリプリカン!
 さあ行くよ!

 バンドーラ一味は隊列組んで地球に乗り込み、ぴいひゃらぴいひゃらやりながら海岸へ繰り出すと、そのままブライに繋がった(笑)
 少々メタな演出から、シリアス時空に立っていたブライへとシームレスに接触して驚きましたが、敵の敵はひとまず味方理論を唱えるバンドーラ様は、ネームバリューだけはある伝説の武器の存在を指摘すると、ブライが復讐を果たす為の得物として魔剣ヘルフリードへの扉を開く。
 「おのれぇ……ゲキぃ! 貴様を倒し、世界を俺のものにしてやる!」
 ワシの野望は全国制覇じゃあ、となにやらちょっと気になる飛躍(前段と後段が全く繋がっていない)を口にしたブライが魔剣の間へと飛び込んでいき、その扉が閉まったところにほくそ笑むバンドーラ様が自転車で現れるのは、実に悪夢的な好演出。
 ブライは復讐の一念で骸骨騎士との試練に挑むと魔剣をその手に掴み取り、彼女候補をゲット。
 大丈夫。
 東映ヒーローでは、特におかしな事ではありません。
 「俺を兄と呼ぶな!」
 魔剣を手にしたブライは憎しみのままにゲキへと挑戦状を送りつけ、大和組の跡目相続を巡り、両者は直接の激突!
 「俺は貴様を倒し、ジュウレンジャーを木っ端微塵に打ち砕いて、世界の帝王になるんだ!」
 「世界の帝王?」
 1億7千万年眠っている間に、すっかり妄想が肥大した人になっているブライですが、その「世界の帝王」はどこから出てきたのか……。
 「それが父の願いだった。世界を一つにまとめ、全ての人類を俺の足下に平伏させるんだ!」
 父だった、からの飛躍がまた、復讐に至る事情とは関係なしにだいぶ困った人なブライ、幼少期に親を失い、憎悪と呪いに支配された半生を送ってきたにしても歪み方が物凄いのですが、妖精の森で、どんな扱いを受けていたのですか。
 「馬鹿な。そんなの間違ってる」
 あくまで兄を止めようとするゲキだが、あの世でオヤジに詫びてこいやぁぁぁぁぁ! と魔剣にぶった切られたところで仲間たちが駆けつけ、怒りのダイノバックラー。
 若の命を守るんじゃぁと一同容赦無く銃を抜き、銃撃を浴びたブライも変身。魔剣を振り回す緑は4人を軽々と切り払い、見た目としては完全にヒーロー側であるドラゴンレンジャーが、憎悪に任せてヒーローを叩きのめしていく、割と刺激的な映像。
 「ブライもやるわねぇ」
 真っ赤に燃えさかる火種を投げ込み、激化する内部抗争を遠巻きに見つめるバンドーラ様だが、その視線が見据える先は、大和組のバックにある、関東守護獣会。
 ヒットマン・ブライも、関東守護獣会を潰す為の仕掛けの一つにしか過ぎない、とバンドーラ様がうそぶく一方、地上では殺意の刃が再びゲキへと向けられていた。
 「ゲキ! いよいよ貴様を地獄へ送る時が来た! 覚悟しろ!」
 「兄さん! 何故だ!? 昔の事はともかく、今ではこの世でたった二人きりの兄弟なのに、どうしていがみ合わなくちゃいけないんだよ!」
 「黙れ! 父を失い、ノームの森で一人で苦しんでいる時、貴様は王子としてちやほやされ、なに不自由ない暮らしをしていた。そんな貴様に、俺の気持ちがわかってたまるかぁ!」
 もしや、かつて人類と敵対していた妖精に何か吹き込まれたのではないか、とさえ疑念も浮かぶ威力の逆恨みファイヤーを燃やす緑は、倒れたゲキめがけて魔剣を振り上げる。
 「地獄へ落ちろ! ゲキぃぃぃぎゅわぁぁぁ?!」
 その背中に突き刺さる、ビーム。
 その背後に立つ、大獣神(笑)
 「立て、ジュウレンジャーのリーダー、ゲキ。己の感情を棄て、正義の為に戦うのだ」
 緑の背中をこんがり焼いた大獣神は、ゲキに向けて伝説のドスを放り投げると、組の為にキルマシーンになる事を要求するが、ゲキはそれを拒否。
 「やめてくれ大獣神、俺は、兄と戦う事はできない!」
 「愚か者め!」
 そんなゲキに突き刺さる、ビーム(笑)
 勝手に合体して出てきてパイロットにお仕置き光線を放つ巨大ロボ、という恐らくスーパー戦隊史上でもまれに見る絵図が展開しておりますが、守護獣(神)と大獣神の間にあるスペック的なギャップがちょっと気になる今作、両者の関係性はこれといって説明されずにあやふやなのですが(同一存在とはどうにも考えにくい)、守護獣(神)の力の一部が、大獣神(及び各恐竜)の形で実体化している、というぐらいで捉えておくのが良さそうでしょうか。
 雲の上に出ているモードが本体(神)の投影で、守護獣として実体化している時はあくまでその力の一部でしかないと思うと、スフィンクスに飛ばされそうになったり火花をあげながら首をガクガクさせていてもそれなりの納得はいきます(笑)
 ドラゴンレンジャーを背後から撃ち、そいつで奴のタマぁ取ってみんかい、とゲキに命じるも拒否されると、緑に向けて「おまえとゲキが、正々堂々と立ち合う日は、必ず来る」とか言い出す大獣神会長、これ完全に、生き残った方を跡目と認める気満々です。
 反発した緑は魔剣ビームを放つもマンモスシールドに跳ね返されて撤収し、大獣神、というか、大蹂躙。
 「わかってくれ大獣神! 俺は、生まれて初めて兄と巡り会えたんだ! それがたとえ、どんな兄でも……俺は、俺は兄と理解し合いたいんだ、大獣神!」
 だが、関東守護獣会による介入は、若きゲキの心にも激しい波紋を呼び起こし、その反抗心の芽生えこそ、バンドーラ様の思惑通りなのであった。そう、全ては、大獣神を倒す為――
 「10日と12時間後に、私の力で大獣神を、粉々にふーっとばしてやるからねぇ! あーっははははははは!!」
 引き裂かれた兄弟の悲劇と復讐のヒットマンと化して戻ってきたブライ、恐竜戦隊に芽生える神との亀裂、そして暗躍するバンドーラ様の思惑……「10日と12時間後」という予告の打ち方が格好良く、物語は急加速してつづく!