『恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第17話
◆第17話「六人目の英雄(ヒーロー)!」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升)
「あの子は、運命という糸に操られ、6月19日の今日、動き出す。そしてそれが、ジュウレンジャー崩壊の、序曲となるのだぁ……っ!」
朗々と呪文を唱え火花を走らせるバンドーラ様が冒頭から迫力満点で、実に得がたい存在感。
水晶玉に映し出された運命の少年・良太は、アパートの床をひっぺがすと隠されていた小箱の中から緑色の鍵を取りだし、それに反応したのは、凄く普通に、工事現場でフォークリフトを運転して働いているノーム(笑)
隠されていた鍵を手にいずこかへと向かおうとする少年に対するノームの行動は……フォークリフトで突撃じゃぁぁぁ!!
必死に逃げ惑う少年! それを追いかけ回すフォークリフト!
老人が少年をフォークリフトで轢き殺そうとする狂気の現場に出くわしてしまったジュウレンジャーは、これを止めようとゲキとゴウシがフォークリフトに飛びつき、
え? そこ、ブレーキ踏まないんだ……に続き、
え? そこ、さらっと乗れるんだ? みたいな超ハイテンション進行(笑)
「……あのじいさん、どっかで見たことあるなぁ……?」
「……ノームじいさんだ!」
だがゲキとゴウシはあっさり振り落とされてしまい、なんかもうここまでで、普段のジュウレンジャーの1話分ぐらい面白かったです!(笑)
ノームは華麗なドライビングテクニックで少年を追い回し、端から見ていると完全にバンドーラ一味の所業を改めて止めようとするゲキたちだが、今度はバーザが軽トラで乱入してきた(笑)
「ゲキ、おまえ達は手出しをするな!」
フォークリフトと軽トラで容赦無く少年の前後を塞ぐ、老兵たち戦慄の恐竜殺法でギャリドギャリドな寸前、少年は人間離れした大ジャンプで窮地を脱出。
事情のさっぱりわからないゲキたちは、少年を追う組と、バーザのもらした「鍵」についてアジトで調べる組に分かれ、ゲキとメイが良太少年の身柄を確保。
見た目は小学生だが、ノームの孫にして1億7千万年前から生きている古代妖精族の一員だった良太が持ち出した緑の鍵は、森で妖精族と共に暮らしていた戦士「ブライ」の眠りを覚ます為のもの。
ブライの兄貴が娑婆に帰ってくれば、バンドーラ会との抗争は秒で終わりなんじゃ、と鼻息の荒い良太だが、バーザとノームは何故かブライの覚醒に反対しており、基本的に真面目かつ精神判定の成功率が高いゲキは、
〔最強の戦士とか最高じゃん? このまま少年の言葉を鵜呑みにしちゃう〕
→〔ひとまず年寄りたちの話を聞いて事情を確認する〕
を選択するが、それに不満を抱いた良太に再び逃走されてしまう。
これを月から確認して哄笑するバンドーラが更なる一手を打つ一方、老兵二人は渡世の義理を貫こうとしていた。
「本当にやる気かノーム!」
「うむ。儂らは攻撃魔法を知らんから、こいつでやるしかないんだ」
鈍く輝く銃器を手に取り、向かうは修羅の仁義道、散るは真っ赤な彼岸花、通さにゃならん筋がある――
「それは絶対に守らなければならない。それを破る者は、たとえ孫でも」
良太を追いかけ、ブライが眠る秘密の森に辿り着くゲキとメイだが、3人の足を銃弾の列が止め、バイクのハンドルを握って激走するバーザと、その後部でアサルトライフルを連射するノームが吹き替えではないのが素晴らしい(笑) (※バストアップのカット以外は吹き替えだとは思いますが)
「聞けゲキ! ブライを起こしてはならん!」
「どうしてなんだ?! わけを言ってくれ!」
ブライの抱えるなんらかの「秘密」を守る事を誓っているバーザとノームは口ごもり、「事情を知っている関係者がだんまりを決め込んで状況を無駄に悪化させる」作劇はしらける流れになりがちですが、先に、秘密を守り通そうとする二人の決意を銃器と共に描く事により、感情の葛藤が見えて比較的飲み込みやすい流れに。
ところが、バンドーラ様の巧みな一手により誘導されたゴウシ達が最悪のタイミングでそこにやってきてしまい、丸く収める方法を考えるのが面倒になったノームが頭ごなしに良太少年から鍵を取り上げようとする芸術点10.00の駄目ムーヴを発動した事で両者の関係はますますこじれ、反発した良太が鍵を手に逃走。
「良太! おじいちゃんの言うことわからんか! ばかもぉん!!」(ノーム)
撃った。
「勘弁してくれ!」(バーザ)
投げた。(手榴弾を)
東條×杉村が勢い余って《レスキューポリス》時空に肩まで突っ込んでいますが、ブライ覚醒を目指す良太少年が背後から銃弾を浴び、手榴弾の爆炎に飲み込まれる姿が克明に描かれ、普段、バンドーラ一味の標的とされた子供たちを救う為に戦っているヒーローの目の前で、その身内が(見た目)少年に銃火を浴びせる悪魔のような逆転現象(笑)
当然ジュウレンジャーは、気でも違ったんかオジキーーー! とバーザ&ノームを止めようとして取っ組み合いとなり、“いつものジュウレンジャー”のセオリーを用いつつ、こじれた末の身内に対する“ヒーローのトリガー発動”に説得力を持たせるのが巧妙な作り。
この混乱に乗じてバンドーラ様は地上に巨大グリフォーザを送り込み、強化ゴーレム兵も繰り出されるとダイノバックラー!
大獣神と巨大グリフォーザが切り結ぶ中、バックとバットの介入で生まれた隙に洞穴に飛び込んだ良太が緑の鍵を使ってしまい、莫大な呼気を放出し、電光をまといながら出所したのは、緑カラーのやや中華風装束が格好いい、
「ヤマト族・プリンス――ブライ!」
「ヤマト族プリンス? どういう事だ?!」
ブライ復活を確認するとバンドーラ一味はあっさり撤収し、喜び駆け寄る良太を乱暴に突き飛ばしたブライ(演じるのは、かつてチェンジペガサス/大空勇馬役だった和泉史郎)はダイノバックラー!
緑ベースに黄金の胸アーマーを身につけたドラゴンレンジャーへと変身すると、大獣神のコックピットにカチコミ(笑)
「地獄へ行け! ジュウレンジャー!」
今回とにかく、ゲキ達を除く全員のテンションが異常に高いのですが、フォークリフト突撃、孫の背中を銃撃、と来て、出所即事務所カチコミ、のホップ・ステップ・ジャンプが鮮やかに決まって素晴らしかったです。
ドラゴンレンジャーが内部のジュウレンジャーに襲いかかると、火花をあげながら頭をカクカクさせ、かつてないダメージ表現の発生する大獣神(笑)
ドラゴンレンジャーは大獣神から叩き出した5人に襲いかかるとその凄まじい武闘派ぶりを見せつけ、一応、話せばわかる、と《説得》スキルを発動する赤に対して、超雑に手持ち武器を投げつけるシーンが面白かったです!
話してわかるならハジキはいらんのじゃ、とドラゴン波動拳で5人を吹き飛ばした緑は、大昔の癖で高い所に立つと大笑いを響かせながら去っていき、果たしてその正体は? で、つづく。
『ジュウレンジャー』ほぼ知らない私でも、後代の《スーパー戦隊》に大きな影響を与えたキャラクターとして存在は知っていたドラゴンレンジャー/ブライが初登場。後の追加戦士の定番配色となっていくゴールドのアクセントが生えますが、少々もっさり感のあるジュウレンジャースーツの胸の菱形模様が、黄金の胸アーマーの意匠に取りこまれる事でスッキリして格好いい。
話の方も、伝説の戦士ブライの存在を軸に、なにやら企むバンドーラ様・その復活を願う良太・秘密を守る為に修羅道を行くバーザ&ノーム、の絡み合う思惑により興味の湧く謎を提示しつつ上手くメリハリが付きましたし、“ゲスト子供の親”とは一線を画す「バーザ&ノーム」がエピソードゲストの立ち位置に配置された事により、“ナチュラルに気の狂った登場人物によるナチュラルに気の狂った行動”という杉村脚本の持ち味が発揮されて、面白かったです。