『仮面ライダーエグゼイド』感想・第3話
◆第3話「BANしたあいつがやってくる!」◆ (監督:坂本浩一 脚本:高橋悠也)
――5年前、バグスターウィルスの感染により大量の人間が消失した通称「ゼロ・ディ」。
公には秘匿されたこの事件をきっかけに衛生省とゲンムコーポレーションが協力してCRが発足。その際に適合者として仮面ライダーに選ばれるも、医療ミスにより当時の鏡飛彩から「大切なもの」を奪い、CRから追放される事になった男――花家大我(はなや・たいが)が、金の力で買い取ったアカウントもといゲーマドライバーを手に、永夢の前に姿を現す。
「よお、ポッピーピポパポ」
……みんな、ちゃんと覚えてスラスラ呼べて凄いな……。
喘息の症状で通院するも、医者に対する恐怖心が強いストレスとなってゲーム病を発症した少年からピストルウィルスが実体化し、大我はシューティングゲームをモチーフにした、前髪枠の仮面ライダースナイプに変身。
「俺が求めているのはガシャットだけだ」
ドットズボンの青年・パラドと行動を共にする、緑色の鳥頭・グラファイトとなにやら因縁があるらしい大我は、乱暴な振る舞いで執拗に少年を怯えさせ、永夢と対立し……前回まで黄色マフラーで外出していた大我が、“少年を怖がらせる”話の都合により、医者のアイコンとして白衣をひっかけて外をうろついているのが、どうにも作りの雑なところ。
前回の永夢から飛彩への言行にもいえるのですが、劇中人物がわかりようのない未来の出来事を前提とした内容を喋ったり、行動を取ってしまっている事があり、見通しの悪い展開が続きます。
大我の説得を試みる永夢だが、患者の治療よりもガシャットの収集に執着を見せる大我と話が噛み合わないでいる内に、患者の少年がCRから脱走してしまい、第1話の永夢侵入に続き、色々、どうなってるんだCR。これが《レスキューポリス》時空だったら、感知された侵入者=永夢に向けて壁からレーザーが照射された挙げ句に、施設の秘密を守るために患者ごと自爆するところです!
少年のストレスを増大させる為にバグスター戦闘員が大我の病院を襲撃し、ストレスの原因である医者がデリートされたらむしろスッキリ爽快な気持ちになりそうなのですが、第2話の婚約者の扱いに続き、患者のストレス増減とバグスターの行動との関係性は、なんというか、雑に適当。
高い生身格闘力を見せる大我がバグスター戦闘員を蹴散らしていき、へっぴり腰の永夢がなんとか猛攻をしのいでいると少年を連れた指揮官バグスターが姿を見せ、自らを餌にバグスターをおびき寄せる計画だった大我はスナイプLV2へと変身し、蛍光イエローのマフラーがまぶしい。
後、縞模様の入り具合が微妙に猛虎魂を感じます。
「無免許医、おまえの存在は、no thank youだ」
そこに現れた飛彩が、ブレイブ初期装備の盾を派手に投擲してレベルアップするとスナイプへと斬りかかり……う、ううーん……一応、両者の間にある過去の軋轢がほのめかされてはいるのですが、飛彩が「目の前の患者(実質危篤状態)そっちのけで大我に殴りかかる人」になってしまった上で、
「二人ともやめろ! 子供の命がかかってるんだぞ!」
「勝負はお預けだ」
と、外野から声がかかると、ちょっと虫の居所が悪かったぐらいのレベルで正気に戻る為に情念の優先順位が完全に行方不明となってしまい、前回に続き、対立構造ありき、で人物の心情も物語の筋道も諸共に歪んでしまっています。
相性が良いとは言いがたい「医療」と「ライダーバトル」の要素を「ゲーム」で橋渡ししようとしているのですが、その「ゲーム」の“ルール”が曖昧な描写にとどまって接着剤としても潤滑油としてもこれといった効果を発揮していないので、「ひとまず対立」させた後に「医者っぽい理屈を付け加える」構造も、ちぐはぐさを増す事に。
それぞれゲームクリアを目指す3ライダーが激しい銃撃戦を展開し、これでもかと爆炎が上がり続けるが、バグスターの攻勢も止まらない。
「復活した?!」
「隊長リボルを倒さない限り、兵隊がどんどん強くなるゲームなの!」
読もう、説明書!
困惑している内に強化兵士の一斉射撃を受けると、エグゼイドとブレイブの胸のゲージがぎゅーんと減少。
「ライダーゲージに気をつけて! ゼロになったらゲームオーバー、死んじゃうよ!」
「えぇ?!」
読もう、説明書!
……というか、変身者の命にダイレクトに関わる要素に関して、どうして今まで説明していなかったのですかねこの人……。
エグゼイドとブレイブは慌てて物陰に隠れ、手術続行はリスクが高すぎる、と変身解除した飛彩がオペの離脱を宣言して、目が点。
いや、まあ……確かに命あっての物種ではあるのですが、執刀医(今作におけるヒーローポジション)が我が身優先で目の前の患者の命を力強く見捨てる大惨事で医者としての信念とか完全に消滅。
永夢が激怒して飛彩に罵声を浴びせるならこのタイミングこそだったと思うのですが、前回そのイベントを片付けてしまった為にこれといった強い反応を示す事もなく、ただただ虚無の空間だけが広がっていきます。
対するエグゼイドは少年を救おうと雄々しく踏みとどまり、本来なら、少年との約束を守る為に命を懸けてヒーローが立ち上がる劇的なシーンになったのでしょうが、先程は凄い勢いで減ったゲージが今回は正面から幾ら撃たれても微動だにしない為に大変都合の良い主人公パワープレイとなってしまい、残念。
物陰に潜んだ状態から「ゲームオーバーが怖くないのか!?」と説明を入れるスナイプの立場も凄く間抜けな事になり、一つの見せたいものの為に周辺の色々な要素が大量に犠牲になっていきます。
エグゼイドが少年と心を通い合わせた事で、少年の立ち向かう意志が兵士の増殖を止め、炸裂するマイティクリティカルフィニッシュ。ところがゲームクリアにならず戸惑っていると、ステルス状態で隠れていた司令バグスターを、スナイプがバンバンクリティカルしてミッションコンプリート。
永夢は戦いの前に賭けていたガシャットを大我に奪われてしまい、
「これでプレイヤーは4人。……そろそろ乗り頃だな」
派手な花柄シャツの男が物陰から顔を覗かせて……See you Next game。