東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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メスさばきインクレティブル

 前回の感想で、ど派手な書き間違いをやらかしていた事に投稿後1時間半ほど経ってから気付いて慌てて修正したのですが、修正前を目にした方は忘れてやって下さい……。

仮面ライダーエグゼイド』感想・第2話

◆第2話「天才二人は no thank you?」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 「バグスターウィルス感染症……ようは、ゲーム病です」
 もう少し、結婚間近から体が透ける奇病まで急降下した患者の心に寄り添う表現は無かったんですか衛生省様!!
 本放送時、『鎧武』以来となる“多人数ライダー(バトル)”を強調していた覚えがありますが、複数のライダーと変身者の存在をアピールしていくOP(そして今作も二重螺旋のイメージが使われていた)。
 ナレーション「彼の人生に与えられた、超弩級のミッション。それは――」
 私のテンションについてこれない研修医は減俸だーーーーー!!
 バグスターウィルスに冒された少年を勝手に外出させた問題について「医者失格!」と叱責した事実は恐らく既に忘却の彼方とおぼしきアッパー系テンションのピポ子により、CRに転属、ではなく、小児科医とCRの兼任を命じられ、早くも研修医の職場環境がどろどろのブラックに叩き落とされそうになっていた頃、衛生省に「仮面ライダー」への変身システムを提供したのは、どういうわけかゲーム会社の社長だと示され、癒着! 激しい癒着の匂いがしますよ!
 そしてCRには、前回ラストで登場した背広の青年――院長の息子でありアメリカ帰りの天才外科医・鏡飛彩(かがみ・ひいろ)が姿を現す。
 「研修医、おまえの存在は、no thank youだ」
 早くも院内で黄色い声援を浴びる鏡飛彩から一方的な戦力外通告を受け、自分の存在意義に悩む冴えない研修医だが、緊急通報で呼び出され、強制出動。
 倒れた男性患者を診察していると、ミニスカナース二人を侍らせた鏡先生が車で現着し……色々、大丈夫なんですか、聖都大学付属病院。
 鏡がその場で術式開始を宣言すると、両脇に控えた看護師がベルトを装着させ、ガシャットを手渡し、院長子息がこれで、本当に大丈夫なんですか、聖都大学付属病院。
 「何が始まるんですか?!」
 「オペです」
 「はぁ?!」
 倒れた男に付き添っていた女性を平然と巻き込み、後で国家権力による人格矯正、もとい情報操作する着満々ですが、「大きな寸胴鍋が、飛んだり跳ねたりしている……あはは……大きい! きのこの山かな? いや違う、違うな。きのこの山はもっと、ばぁーって動くもんな!」なんの問題ありません。
 ファンタジーRPG『TADDLE QUEST』を起動した飛彩は、全身鎧の騎士風味の仮面ライダーブレイブに変身し、変身モチーフを劇中ゲームとする事で複数ライダーの自由度を確保している一方で、そのゲーム内容の具体的な描写はほとんど無い今作、「ゲームジャンル」そのものをモチーフ化の可能な共通認識の存在するもの、として扱おうとしているのは、なかなか挑戦的。
 思えば「車」はともかく「フルーツ」「偉人」と続いているので、変身モチーフに関する模索が活発だった時期であったのかもしれません。
 ブレイブは、巨大なバクテリオファージじみた怪物(これを見るに、前回のミートボール魔人も「バグスター細胞」のイメージだった模様)と戦いを始め、バグスターと患者の分離はレベル1@寸胴体型でないと出来ない事が判明。
 「オペの段取りも知らないとは」
 説明書は読まない主義なので!
 「おまえこそ! 宝箱を取らないなんて、ゲーム初心者か」
 「ゲームじゃない。これはオペだ。――俺に切れないものは、無い」
 ブレイブをいやらしく煽るエグゼイドだが言葉のメスで切って棄てられ、ブレイブはカウンター気味の一線で華麗にバグスターファージを切断。
 患者との分離に成功すると魔法使いバグスターが実体化し、今度こそ大変身しようとしたその時、突如現れた漆黒のエグゼイドの妨害によりバグスターに逃げられてしまい、逃げたバグスターを倒さない限り、バグスターの方が完全な実態を得て、患者が消滅してしまう危機に。
 焦れる永夢に対して、おもむろにショートケーキを食べ始める飛彩先生、ポピ子の本名をスラスラと口に出来るのが、さすがエリートの貫禄。
 「なんで、ケーキなんて食べてるんですか? 今、しなきゃいけないのは……」
 「疲労回復の為の糖分補給だ」
 「患者よりも、疲労回復の方が大事なんですか?」
 患者の症状も治療法もわかっている以上、次の施術の為に執刀医が体調を万全に整えるのは何も間違っていないと思うのですが、「どっちも大事」でいいAとBを無理矢理に同じ皿に乗せて感じ悪く突っかかる永夢の、キレるポイントが全くわかりません……。
 勿論、不安な患者の心情に寄り添おうとする姿勢は尊いものでしょうし、過去の自分の体験から理想の医道を全ての医者に求めようとする永夢の未熟な青臭さを示しているとも解釈できるのですが、両者の間を取り持てる筈のピポ子が背後に無言で立っているだけな(事で露骨に永夢に肩入れしている)のが大変バランスの悪い描写に。
 それこそ、そのピポ子や、当の永夢自身が飛彩に突っかかっていないで患者に付き添えば役割分担が成立するわけですし(己を未熟だと思っているのなら尚更)、全員揃って患者の枕元に立っている必要性も無いわけですが、「腕は未熟だが患者を心から救いたいと思う永夢」と「腕はあるが患者に対してドライな飛彩」の対比を描こうとするあまりに、現況と会話内容がまるで噛み合っていないやり取りに。
 「患者には関わらない。それが俺の主義だ。患者が何者だろうと関係ない。俺はただオペで患者を治す。それだけだ」
 「患者の体さえ治せれば、それ以外はどうでもいいっていうんですか?!」
 そもそも、no thank you扱いへの悪印象はあるのでしょうが(これは飛彩の態度に難あり)、「患者が何者だろうと自分のオペで治してみせる」ってむしろ立派な信念にも聞こえるにも拘わらず、喧嘩腰の永夢は拡大解釈を続けて激高。
 「患者は物じゃないんですよ?!」
 これが現在の症状の治療最優先で他に負担をかけるとか、その過程において問答無用で患者の大切なものを蔑ろにするとかなら話はまた別ですが(現実に接近しすぎるので描写をさけた可能性はありますが……)、飛彩が言ってもいない事を一方的にマイナスに解釈しているのは永夢の方なので、とにかく両者の対立構造ありきで、主人公の、理想主義と呼ぶにはあまりにも独善的な敵意が熱暴走する地獄絵図。
 ……まだ第2話なので、若い永夢が飛彩の言行を過剰に悪く捉えている失敗を意図した描写の可能性もありますが、上述したように、両者のバランス調整を出来る筈のポピ子が後の某ヒューマギア秘書を思わせる姿勢で全く機能していない為、物語の作りは永夢の“正しさ”に傾斜しているようにしか見えません。
 「あなたはドクターじゃない。……患者は、僕が救います」
 もはや暴言を吐き捨てた永夢は患者の事情を聞き取りすると、前回の今回で「ストレスが原因かもしれませんね」と神妙な表情で言い出し、画面の向こうのポピ子と「え?」がシンクロ。
 と思ったらポピ子のそれは、“思わぬ気づき”の「え?」であり、バグスターウィルスが活性化する原因は患者のストレスなのでは……と新発見の可能性に永夢とポピ子は顔を見合わせ……え、いや、対抗手段の開発や地下施設の建造まで行われているのに、そのレベルから検証されていなかったの?!
 物語の進行上は、患者と関わろうとする永夢の姿勢がなんらかのポイントを稼がないといけないのはわかるのですが、この、世界観の根底を成す“大きな嘘”に対する劇中人物の認識が不明瞭/不可解な為に、架空世界の在り方が回を追うごとに飲み込みにくくなっていくのは、もはや大森P作品の得意技であり、今作ではそれが、地盤沈下からの建造物崩壊に繋がらない事を祈りたい。
 永夢が患者のストレスの原因らしき婚約者に事情を聞いていると、「あの男を幸せにはさせない!」と元カノの生き霊みたいな事を言い出した魔法使いバグスターが乱入して、婚約者を拘束。
 「この花嫁を私の后にし、あの男が消滅した時、私は完全な存在となるのだ! わーはっはっはっは……!」
 「ゲームキャラっぽい台詞だな……いいぜ。やってやろうじゃねぇか」
 今回もガシャットのスイッチをONにすると前髪がふわっとするのに続き、性格が豹変する描写が入った永夢はドライバーを起動。
 「患者の運命は――俺が変える!」
 勇躍変身するも婚約者を人質にされて大変身を封じられた寸胴エグゼイドは苦境に追い込まれるが、そこに現れる鏡先生、ひとりで変身できるもん。
 「患者に情が移って執刀の決断が鈍るなど、ドクター失格だ」
 ブレイブはエグゼイドの制止を無視して術式レベル2を発動し、この時点(患者の治療の為に人質を危険にさらす)で永夢がキレるなら理解可能だったのですが……。
 「これより、バグスター切除手術を開始する」
 バグスターへ向かうブレイブと、人質救出に走るエグゼイドの交差が描かれ、スピードアップしたエグゼイドが人質救出……する前にブレイブが魔法使いバグスターの攻撃を阻止し……あ、あれ?
 「あれは、伝説の剣?!」
 「――これはメスだ」
 「え? メス?」
 「俺に切れないものは無いと言った筈だ」
 「患者も……彼女も両方救う。それが俺のオペレーションだ!」
 拾った剣で魔法使いバグスターの杖を叩き切ったブレイブに対してエグゼイドが高いところからヒーロー啖呵を切って睨み合い、両者の対峙が強調されるのですが、今、「両方救う」やっているのは明らかにブレイブの方なので、エグゼイドが何を大見得切っているのかさっぱりわからず、中澤監督でどうしてこうなった……。
 炎の魔剣でラッシュ攻撃を決めるも魔法で回復されたブレイブが、魔剣の属性を変えて氷の魔剣とすると、逆手持ちに切り替えて戦うのは、格好いいアクション。
 凍結攻撃で回復魔法を封じ込めると、エグゼイドがフィニッシュを横からかっさらおうとするが、ブレイブもタドルクリティカルフィニッシュを叩き込み、結果的にフィニッシュコンボでゲームクリア。
 回復した患者と婚約者はマリッジブルーを超えてよりを戻し、飛彩に向けて「こんな人に患者を任せられません」まで言い放った永夢はCR勤務を続ける事を宣言。
 院長が持ってきたアップルパイを鏡先生が鮮やかに四等分すると、人格否定に近い罵声を浴びせた直後の永夢が「ただの甘い物好きなのでは……」と呟いて外部から飛彩へ強引に愛嬌を付加するのですが、「永夢と飛彩を対立させたい」が「(職業的にも)飛彩を明らかな人格破綻者とは描きたくない」がせめぎ合った結果、「悪意を込めて行間を読んだ永夢先生が攻撃的なリプライを送りまくる」に辿り着いてしまい、どうしてそうなった。
 CRの先行きに暗雲が立ちこめる中、ゲーム会社に乗り込んだ白黒BJヘアの男が金にものを言わせてドライバーとガシャットを手に入れて、See you Next game.
 ……永夢vs飛彩のくだりは、本放送時の感想と似たような内容を繰り返している気はしてならず(以前の感想は読み返しておらず)、まずはさらっと再見のつもりが結局長々と引っかかってしまいましたが、次回――帰ってきた垢BANドクター。