『恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第14話
◆第14話「小さくなァれ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:杉村升)
バンドーラパレスに就職の面接に来たドワーフのドンドンだが、社長の不興を買って不採用。
地球に落とされたドンドンは、宿題を忘れては親や教師に怒られ通しの少年・利夫と出会い、落ちこぼれ同士で意気投合。彫刻の資料にする為にと魔法の小瓶の中に地球の物を吸い込んでいき、いきなり、飛行中のジャンボジェット機を標的にする利夫少年が、超デンジャー。
東京タワーが新幹線が高層ビルが、次々と小型化して魔法の小瓶の中に閉じ込められ、想像力を欠いた子供の無邪気さが4桁単位の人命の生殺与奪権を握る一種ホラーな展開で、人類社会に与える脅威の規模が第1話以来の大きさに(笑)
渡辺敏キャスターの伝えるニュースでこの異常事を知ったゲキ達は街に繰り出し、ダンとボーイがドンドン&利夫を発見。追跡中に小瓶の中に閉じ込められてしまうも、二人が深く考えずに小瓶に収めた飛行機やビルの中には人間が居るんだぞ! と諭すと、ドンドンと利夫は自分たちの行為を反省。
素直に小瓶の中身を解放していき、事態は丸く収まりそうになるのだが……バンドーラ様がそこに介入して小瓶を巡る争奪戦が巻き起こり、第1-2話に通じる「小型化」の趣向なのですが、子供を小型化するとそのままになってしまうので、今回はダンとボーイが小瓶の中で恐怖を味わう事に。
「どうしよう。捕まったら死刑にされちゃう」
「オラも世の中騒がせたから、死刑にされるんだ」
「僕たちそんなに悪い事したの? そりゃ学校抜け出したり、いろんなもの小さくしちゃったのはちょっと悪かったけど、でも……」
大人目線としては、「ちょっと」ではない……ところでありますが、その点に関しては反省して解放した時点で悔い改めたとされ、ではそんな彼らを、周囲の大人たちがどう善導していくのかが今回の主題に。その前段階として、親や教師に怒られる事が、小学生の子供にとっては天地がひっくり返り世界が崩壊するかのような事態である、という恐怖のエスカレートが「死刑」の表現で示されるのが、“子供の世界”の表現として秀逸。
「ふはははははははは! あーっははははははは! おまえ達、死刑にされたくなかったら、その前に、大人をやっつけるのよ」
その恐怖心を煽り、革命をそそのかすのは、悪夢の化身バンドーラ。
「大人を?」
「そうさ。ママも先生も、おまえが大っ嫌いで、いじめたくてしょうがないんだよ!」
反転した世界の中へ悪意という毒を巧妙に流し込むバンドーラ様が大変いいところを突いてきて、まさしく大魔女の面目躍如。
まあメルヘンとしては、ドンドンと利夫がもう少し酷い目に遭った方が帳尻は合うのですが、そこは尺の都合もあってオミットされたのかと思われ、バンドーラ様が普段はモンスターの巨大化に使っている大地に眠る悪霊パワーをドンドンと利夫に浴びせると、なんと巨大ドンドンと巨大利夫が誕生する。
ここで「小型化」アイデアが“反転”するのですが、「悪くない怪人(ポジション)」「守るべき子供が引き起こす非常事態」「バンドーラの注ぎ込む悪意の内容」、そして「クライマックスのボーイの言葉」と、“反転”がエピソードを貫くモチーフになっていると見る事も出来るかも。
「大人なんかやっつけてやるダ!」
「大人なんて怖くないぞ!」
力ダ! 力こそが全てダ!
ジャイアント利夫はジュウレンジャーを踏みつけ、四股を踏んで大地を揺るがし、革命の狼煙は今ここから上がるのだ!
(※<レスキューポリス>シリーズに、天才少年が子供帝国を作ろうとするエピソードがあったような……と思って確認したら、『特救指令ソルブレイン』)第29話「子供帝国の反乱」(監督:三ツ村鐵治 脚本:山田隆司)で、杉村脚本ではありませんでした)
「どうしたらいいの、ゲキ!」
「守護獣を呼ぶんだ!」
力ダ! 力こそが全てダ!
男性コーラスによる合唱曲風のテーマソングに乗って守護獣召喚からダイノミッションし、だいだい・だいだい・だいじゅうじん!
「どうしよう、せっかく大きくなったのに、向こうも大きいのが出てきた」
そう、しょせん力は、より大きな力の前に膝を屈するのだ!
光の国から来た某矢的先生だったら、図体だけ大きくなって甘えやがってぇと鉄拳制裁からのヤクザキックを叩き込むところでしたが、時代は既に1992年――いきなりゴッドホーンは世間体がまずい、と躊躇している内に魔法の小瓶に吸い込まれてしまう大獣神だが、ゴッドホーン召喚を利用して脱出。
ところがそのゴッドホーンを引き抜いた利夫が「死にさらせぇぇぇ!!」と大獣神に斬りかかり、そんな悲しみだけが宇宙に広がっていくのです。
辛うじて利夫を取り押さえた大獣神に向けて、足下の利夫母が、利夫にお仕置きしてやってくれと呼びかけてくる(大獣神によるお仕置き……サル……G……ミジンコ……)が、コックピットの黄が、逆にそれを一喝。
「お母さん、あんたが一番悪い!」
終始、大人ってだけで小さい子供にとっては怖い存在なのだから接し方を考えるべきだ、と利夫の気持ちに寄り添う立場だったボーイが、叱りつけるばかりの母親をたしなめるのは、一ひねりが入って面白い着地に。
母子はそれぞれ反省し、明確な正解のない問題だけに顛末への納得度は人それぞれで大きく分かれる内容かと思いますが、“子供の世界”に寄り添い「今作はこういうスタイルで行きます」がハッキリと示されて、一息入れた後の杉村脚本回でそれを描けたのは『ジュウレンジャー』の舵取りとして良かったところ。
バンドーラ一味が撤収すると巨大化は解除され、ジュウレンジャーと利夫少年は、都会での就職を諦めて田舎へ帰るドンドンを見送り……注目は、なんか俺ら今回、超振り回されてたな……とちょっと疲れた感じで手を振るゲキ(笑)
次回――ようやくゴウシのターンで、なにやらちょっと格好いい系の敵が。