東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

ウサギとモアイと毒リンゴ

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第13話

◆第13話「射て!黄金の矢」◆ (監督:東條昭平 脚本:荒川稔久
 街でウサギの着ぐるみから乙女の美容にとリンゴを貰ったメイはリンゴにかじりつくが、それはバンドーラ一味の罠であり、着ぐるみの頭部を外すと物陰から顔を出して「いひひひひひ……」と嗤うトットバット、年端もいかない少女を追いかけ回していた前回に引き続き、完全に変態路線を確立。
 時同じくして、ヘビの姿をした怪物・ドーララドゥーンが現れると花粉付きの矢を放ち、それを浴びた子供達は頭から生えたリンゴの樹の養分とされて、見る間に老人のような姿になってしまう!
 得意の弓矢で反撃しようとするメイだが、バンドーラ様の周到な罠により毒リンゴの呪いに倒れ、「子供達の若さと未来の夢」を養分として育ったリンゴを食べる事で永遠の若さを手に入れようとするバンドーラ様、今回も安定の頭脳プレイで某戸隠流ばりのえげつなさ。
 悪夢の具現たる魔女バンドーラが、憎む相手(子供)をいたぶる為に奸智を働かせて責め立ててくるのは、今作のいいところ。
 「メイは私の呪いの中で苦しみながら死ぬのよ」
 ドーララドゥーンは、かつて神々の食する黄金のリンゴの樹を奪おうとするもリシヤ族の英雄の手によって倒された邪竜ラドゥーンを原型としており、ここで語られている「金のリンゴを食す神々」……とは守護獣の事かと思うと、リンゴ、守らなくてもいいかな……という気もしてこないでもないですが、守らないと一族郎党Gに変えられるので背に腹は代えられません。
 バンドーラが先んじてメイを戦線離脱させたのは、ドーララドゥーンの弱点である伝説の弓を封じる為、と存在感の薄くなっていた伝説武器にスポットが当てられ、プロットとしては「ヘラクレスの12の功業」をベースに、リンゴ繋がりで『ウィリアム・テル』と『白雪姫』をミックスした感じでしょうか。
 割とゲキが熱烈に手を握りしめるメイは、ベッドでうなされながら呪いの生み出した悪夢の世界を彷徨っており、丁度いいオブジェが無かったのか、地蔵と石塔が並ぶ峠道……はさすがにあんまりだと思ったのか、そこに謎の石像を加えた結果、とても珍妙な心象風景に(笑)
 恐竜人類のエキゾチック衣装と合わせるオブジェはなかなか難しい……と思っている内に、無数の矢と降り注ぐ手槍にメイが襲われ、そこから続けざまの爆発! 爆発! 爆発! もひとつおまけに地割れからの大爆発!
 による、ど派手な崖ダイブは思わず吹き出しました。
 ……この、急に派手な爆発が起こると笑い出すの、我ながら、どういう病気なのでしょうね……。
 メイが溶岩の荒れ狂う谷底に向けてまさに崖っぷちの一方、外界では樹の成長と共に老衰が進み、苦しみうめく子供たちの姿に、俺たち4人だけでも戦うんだ、と野郎衆が拳を握って空気にならなかったのは、今回の大変良かったポイント。
 悪夢の世界で呪いに抗うメイを見守るバーザが守護獣に祈りを捧げると、それが通じたのかどこからともなく飛んできた無数の蝶がメイの危機を救うが代わりに炎に巻かれてしまい、ラドゥーンが子供達を襲う公園に並ぶのは……モアイ! モアイじゃないか!
 えー……何を興奮しているのかといいますと、
 〔『光戦隊マスクマン』第13話 → 『高速戦隊ターボレンジャー』第20話 → 同第35話〕に登場した脈絡の無いモアイが、90年代にも出てきた! 事にです。ちなみに、前の3本はいずれも(監督:東條昭平 脚本:井上敏樹)が共通していたのですが、今期は東條監督の単独犯となりました(美術スタッフの領分かとは思うのですが、何故か東條監督回に、毎年というわけではなく登場するのかが微妙に謎)。
 「子供たちの未来を奪って、このあたしが、地球をいただくのさ! あははははははは!!」
 男4人はラドゥーンに挑みダイノバックラーするが、病院ではとうとう、子供たちが巨大なリンゴと化してしまう。
 助けを求めるその声はメイの元まで届き……悪夢の世界で現在の状況を理解する術のないメイが、どうやって自発的に悪夢世界からの脱出(呪いの克服)を志向するのか(そこに最低限の理由付けがされるのか)は一つポイントだったのですが、多少強引ではあるものの要素を落とさないのは、荒川さんがさすがの手堅さ。
 「子供たちが……みんながあたしを呼んでる!」
 子供たちとメイの親しさが、冒頭で一緒に遊びに誘われるシーンぐらしか積み上げが無いのもちょっと苦しかったですが――ジュウレンジャーは基本的に“子供たちに受け入れられたヒーロー”であると捉えて良いのでしょうが、なにぶん2話前がサー○ェス案件だったので……マグマに焼かれる蝶の姿を、苦しむ子供たちの魂の象徴として見立てる事で映像的にブースト。
 「頑張れ、みんな! 俺たちは……俺たちは選ばれた戦士なんだ!」
 「私だって……私だって……リシヤ族のプリンセス!」
 勇気を奮ったメイは、子供たちの声が聞こえる方向、灼熱の溶岩渦巻く崖底へと飛び込む事で呪いの克服と現世への帰還を果たし、蛇地獄にのたうち回る男たちの危地に駆けつける。
 「まだ、プリンセスの私が居ます!」
 「貴様、死んだ筈では?!」
 「リシヤ族の血を、そう簡単に絶やさせはしないわ! ――ダイノ・バックラー!」
 メイの中でリシヤ族が既に自分しか居ない事になっているのが少し気になりますが、バンドーラとの戦いの時点でメイが最後の生き残りだったのか、現代に古代恐竜人類が生き残っていない認識なのか。
 「一億年の時を超えて、聖なるプテラアローの洗礼を、お受けなさい!」
 テンション上がると姫モードに入るらしい桃の放った矢がラドゥーンの力の源になっていた頭上のリンゴを貫き砕くと、弱ったラドゥーンにハウリングキャノン。
 巨大戦は無しで一件落着となり、回復した子供たちと共にリンゴを食べて、皆でトラウマ克服。一歩間違えると深刻なPTSDの症状が出て阿鼻叫喚のエンディングになるところでしたが、下品なセクハラをするダンがメイに追いかけられ、ナレーションさんが視聴者に語りかける態のメタネタを入れて、つづく。
 ……オチが急に昭和(放送は平成ですが)になりましたが、ダンの位置づけは、教室で「ちょっと男子、ふざけないで掃除してよねー」と怒られる悪ガキ小学生、といったところでありましょうか。
 前作『ジェットマン』で《スーパー戦隊》デビューした荒川稔久が参戦し、立候補したかのようなメイ回でようやく割と真っ当なキャラ回(同時に、メイン以外メンバーの存在も落とさない)が出てきましたが、巨大戦をカットしたがゆえの部分もあり、まだまだ試行錯誤が続きそうな気配。