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しどんのはな

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第7話

◆ドン7話「せんせいのむれ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:井上敏樹
 見所は、猿原の指を潰して高笑いするタロウの邪悪な表情。
 盗作騒動以後、マンガのクイーンから華麗なる転落を遂げて針のむしろなはるかの通う津野角高校の特別授業――地域住民を講師に招いてその人生を聞く――に「教授」こと猿原真一が講師として現れ、金銭はケガレと触れず、幻の蕎麦を食べ、雲のように生きたいと語る高等遊民の語りに、学生たち、戦慄。
 「ホントだ! 見えるぞ!」
 「蕎麦だ、蕎麦を食べてる」
 「そうだ、これが空想の力だ」
 言い切った(笑)
 「愛の力だ」とか「正義の力だ」とかばりに力強い猿原の物言いに感化され始めた生徒たちを巻き込み、夢、希望、想像、祈り……その全てに通じるイマジネーションを皆で実践しよう、と空想もとい妄想をはばたかせている内に、何故か国民栄誉賞受賞パーテーから一転、オニシスターとしてヒトツ鬼と戦い始めたはるか(何かの伏線の可能性ありか)は、無我夢中で拳を振るい、側転キャンセルレバー入れ水平チョップを放ったところで、本日のもう一人の特別講師・桃井タロウに攻撃を止められる。
 一方、街にはキュータマ状の頭部を持った宇宙鬼……かと思ったら「先生」繋がりで地球鬼でした、が出没すると、社会のルールを守らない人々を次々と張り紙の中に閉じ込めていき、犬塚と雉野がこれを目撃してニアミス。
 シロクマ宅配便でジャンケンに負け、出張講師役を押しつけられたタロウは雑に授業をまとめて猿原の反感を買い……もともとタロウは正論で殴るマシーンなのですが、今回は妙に攻撃的で少々違和感。
 元来どのぐらいのバランスを企図していたのかはわかりませんが、少なくともここまで6話においては、ハチャメチャで傍若無人だが関わった相手への誠実さが見える(ところが好感に繋がっていた)タロウと、攻撃性が前面に出て行動全てが自分本位なドンモモの間に感じるギャップが一つの面白みになっていたのですが、今回はタロウがかなりドンモモ寄りに描写された結果、“他者への対応がひたすら雑な人”になってしまい、その状態でお伴へのパーティアタックはタロウ流パワーレベリングであると本人の口から語られるのも、意図公表のタイミングとしては面白くならず。
 あくまで罰ゲームで押しつけられた講師としてやってきた――荷物だけではなく幸福を運ぶ宅配業者の「仮面」を被っていない――ので仕事中ではない「素」が出ているという意図だったのかもですが、この先の計算もあるのだろうとはいえ、ここまで6話の流れからすれば、あくまで生徒たちに幸福を運ぼうとするタロウ(本人は誠実に接しているつもりだが結果的に常人を置き去りにしてしまう)の方が、スムーズに飲み込みやすかったですし、タロウの好感度にとっても良かったかなーと。
 脚本ベースでこうだったのか、加藤監督の解釈との間にズレが生じたのかはわかりませんが、作風としては1クール目ぐらいは監督3人でローテする差配にしてほしかったところもあり(勿論、6話までの演出陣の方がタロウをマイルドにしており、加藤監督の演出の方が脚本に忠実だった可能性はありますが、それならそれで、6話までの流れに軌道修正していってほしかったなと)。
 俳句説得を否定されたのを根に持っていた教授は、
 (おいおい、大空を流れる雲はどうした)
 と、はるかの心中ツッコミを受けながらタロウに勝負を挑み、どういうわけか監督またぎで脳内脱ぎ相撲が今回も行われ、裸マフラーが男のこだわり。
 雉野同様、相撲3番勝負のシミュレートで完敗を喫した猿原は、それならばと早口言葉で挑戦をするが、放置された生徒達が各自暇つぶしを始めた教室に地球鬼が入ってくると、次々と生徒たちを規則を書いた張り紙の中に閉じ込めてしまう。
 補習空間に飲み込まれる寸前、タロウがドンブラスターを起動するとイヌとキジも強制召喚を受け、変身した一同は校長室で規律についての授業を受ける事に(校長が花粉症なのは、モチーフ元の重要アイテムである「花」に「鼻」を引っかけて季節ネタに偽装して仕込んだ感じでしょうか)。
 そもそも脚本の出来が悪かったのか、加藤監督が井上脚本の面白さのツボを見つけるのに苦しんだのか、その両方のような気はしますが、猿・タロウ・校長、と「面白おかしく授業を展開する×3」のお題も厳しかったように思え、細かいルールにうるさい校長が変じた地球鬼がヒーローに仕掛けてくるのが、生徒たちを人質にとっての理不尽なパワハラ、というのは全く面白く見られず。
 そしてその理不尽を打ち砕くのが、「盗作」よばわりを受けながらも日々を創作の糧にしようとするはるかの精神性でもなければ、授業ジャックを受けた猿原の機知でもなく、より尊大なタロウの暴力というのも、カタルシスに上手く繋がりませんでした。
 何をもって世界の理不尽に立ち向かうのか、に関してタロウ以外は仕込みの段階という事なのかもですが、それならそれで1エピソードとしてのカタルシスを生むには――権力の横暴をヒーローが拳骨で打ち破るが一つのセオリーなればこそ――タロウに対する一定の好感度ゲージの蓄積が必要なわけで、今回タロウがやたら周囲に攻撃的な為に印象がマイナスに触れてしまったのは、組み立てを間違えた感。
 また、張り紙が燃え上がり囚われた魂が苦悶の悲鳴をあげている状況で、燃え尽きる前に物理で鬼退治だ! はタロウだから出来る合理的な判断、意図的な“危うさ”であったのかもしれませんが、人質無効体質! と笑い飛ばすには人質の受けている精神的被害がえげつなく、授業シーンにおけるボタンの掛け違いに始まって、全てがマイナスへマイナスへと負の方向へなだれ込んでしまいました。
 ……裏を返せば、どこか一点でプラスに転じればそこから正の連鎖が発生して上昇していく可能性もあったのですが、今作の中心を成す「桃井タロウ(無双)」という要素が、今回は完全に悪い方向に出たな、と。
 「少し、遊んでくるか」
 悪役スキル《実情を無視した余裕の態度》を発動したソノイは、バロム仮面に変身すると戦闘に乱入。
 ドンモモに切りつけると「やるな」とか「召使いぐらいなら使ってやるが」とか、私の方が高みに居るんだからねアピールを繰り返すが、心のシークレットブーツ履いているのバレてるからな……!
 アルターチェンジで適度にバロム仮面を攪乱したドンモモは、お伴の苦戦する地球鬼に攻撃を転じると一気に必殺奥義に持ち込み、ドン! ドン! ドンブラザーズ!
 バロム仮面は雑に存在感を消され、いつもながらのドンモモフィーバータイムなのですが、これも、第1話を除くと、
 なんだかんだと同僚に対して真っ直ぐな桃井タロウ
 なんだかんだと窃盗犯に義憤を燃やす桃井タロウ
 なんだかんだと真剣におにぎり屋を立て直そうとする桃井タロウ
 なんだかんだと犬塚翼くん誕生パーティを始める桃井タロウ
 なんだかんだと雉野と正面から向き合う桃井タロウ
 といった段階があったからこそ“気持ちよさ”になるわけで、今回の“正直というか大人げなくて万事に雑な”桃井タロウ(相手の得意種目で戦うのはタロウなりの正面からの向き合い方とはいえますが、ならやはり、どうして最初に授業を雑に片付けようとしたのか、という話になるわけで)の後だと、ドンモモの大暴れが気持ちよさにならず、負の印象に彩られてしまうのが、残念でした。
 巨大化した地球鬼のマグマ弾攻撃を華麗に回避したドン全開王は、ドンレッグバスター冷凍弾からのドン全開クラッシュ。
 「ははははははは! これが礼儀だ!」
 六方を踏むドン全開王の姿に合わせてEDが流れ出し、無事に解放される人々、クエスト推奨LVが足りてねぇ、と襲われるお伴たち、でつづく。
 誠意はあるが善意の調節が出来ないのが桃井タロウの一面といえますが、そんなタロウ描写のさじ加減一つで印象が大きく変わってしまう今作の特性が悪い形で顔を出し、次回――ソノーズも含めて人間関係が更に波乱の繋がりを見せそうで、挽回に期待。