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楽園追放

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第10話

◆第10話「猿はもうイヤ!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 ユーロ王子からタマゴの隠し場所を聞き出してダロス島に乗り込んだバンドーラ一味が魔物除けの結界に行く手を阻まれていた頃、ジュウレンジャーと王子一行は島へ到着し、島民たちと合流。
 王子の案内で洞窟へと向かうジュウレンジャーだが、入り口をバンドーラ様の嫌がらせにより封鎖されてしまい、裏口から入るには危険な道のりを超えていかなくてはならない、と冒険物語として王道の展開。
 パレスへ戻ったバンドーラ様はその間に1号より激しくテンションの高いドーラコカトリス2号を生み出し……ただの嫌がらせかと思いきや、次の作戦の下準備だったのがバンドーラ様、超有能。
 そうとは知らずに洞穴へ向けて危険地帯を突っ切ろうとするジュウレンジャー&王子&少女(なぜ同行させた……)は、左右からの爆撃の雨にさらされ、恐らく、悪質な妖精たち、みたいなイメージだったのかとは思うのですが、道の両脇から爆弾というか火炎瓶というかを次々と投げつけてくる絵面が、完全に、過激化した学生運動で公安案件。
 どうして悪い妖精的な存在の扮装が過激派なのかは首をひねるところですが、王子付きのゲストキャラの扮装がやや過剰で大道具のワープマシン含めて演劇的雰囲気があり、客演に劇団が一つ付いてきたというか、舞台的な衣装や道具立ての盛り込みに、ファンタジー感を出す為の試行錯誤が窺えます。
 景気よく吹き飛ばされたジュウレンジャーは河原に転がるとにこやかな表情で起き上がり、ゴウシとボーイが明らかに笑顔を浮かべているのですが、どういう場面解釈でそうなったの……?!
 この熱……この爆風こそ戦場よ!!
 ナパームを浴びると、生きてるって感じがするよな……と一億数千万年ぶりに心身をリフレッシュした5人はそこでようやく王子&少女とはぐれている事に気付くが、既に王子にはバンドーラ様の放ったドーラコカトリス2号の魔手が迫っていた。
 洞窟の入り口をふさぐ → 時間稼ぎ&ジュウレンジャーを遠回りさせる → 実は事前に抜け道を準備しておく → コカ2号の化けた少女により王子を洞窟の奥まで誘導する → 王子に結界を破壊させる
 と実にエレガントな作戦で、バンドーラ様、超有能。
 まんまとタマゴ強奪に成功するバンドーラ一味だが、本物の少女を救出したジュウレンジャーが立ちはだかり、生身バトルに突入。コカ2号に苦戦するジュウレンジャーは変身から反撃し、バンドーラ様、我慢ができないというか過保護というか、ちょっと苦戦するとすぐに巨大化するのが、ドーラモンスターの敗因のような気がしないでもありません。
 巨大戦の足下ではタマゴを巡り、活動家も参加しての大事なアイテムパス合戦に突入し、火炎瓶とミサイルと斬撃が飛び交った末に、タマゴは海へ。
 その間に大獣神はマンモスシールドを初使用すると、シールドビームで弱らせてからのゴッドホーン雷光斬りでコカ2号を葬り去るが、恐竜のタマゴは潮流に乗って島から遠く流れ去ってしまうのであった……。
 「……どこにあるんだタマゴは、どこに」
 「諦めましょう、ユーロ王子。タマゴはこの広い海を流れていってしまったんだ」
 一族総出でタマゴを探すアペロ族に対して、ヤマト族のプリンスは、ものすっごくドライだった。
 ゲキくんは、廊下に出て今回のサブタイトルを、20回ぐらい読み返してきてください!
 「ダロス島のアペロ達よ。おまえ達は二度までもコカトリスに欺かれ、約束を果たす事が出来なかった。永久に猿のまま、この島で暮らすのだ」
 そして守護獣たちよりもたらされる、更にドライな有罪宣告。
 守護獣には、人をサルに変えるだけの力がある事に戦慄していると、さすがに少女とゲキたちがこれに反論。
 「守護獣たちよ! 我々は神ではない! 失敗もする! 騙される事もある! それを暖かく見守るのが、おまえ達の使命ではないのか?!」
 「そうだ。タマゴは俺たちの手で必ず見つけ出す! だから、王子たちを許してやってくれ!」
 アペロ族をダシにしてジュウレンジャーを試していた感があるのが大変いやらしいですが、ここでゲキたちが感情論だけではなく、失敗を挽回する為の行動を他者のために宣言するのはヒーローとして良かったところです。
 ゲキたちの嘆願が受け入れられて人間に戻ったユーロ王子らは天界への帰還も許され、恐竜のタマゴは必ず見つけ出す! で、つづく。
 「恐竜が現代に甦ったらワクワクするよね!」で押し通すのかと思いきや、タマゴ周辺の設定に無理を感じたのか背景を色々と付け加えた結果、「タマゴを守り切って人間に戻りたい!」が最優先事項になって王子の行動原理が「夢」と「欲」で混線を起こしてしまい、少女との関係性も含めて焦点が散らかってしまった印象。
 先への布石だとは思いますが、前後編使って結局タマゴは海を流れていきました、も消化不良となってしまい、1話1話の内容の密度に対する不慣れと苦闘の見えるエピソードでした。