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そして伝説のドスへ…

恐竜戦隊ジュウレンジャー』感想・第4話

◆第4話「甦れ伝説の武器」◆ (監督:小笠原猛 脚本:杉村升
 絶望の大地の呪いによる石化のタイムリミットまであと半日――守護獣を追い詰めるドーラミノタウロスだが、夜の訪れと共に極寒の地となる事を警戒したバンドーラによって撤収を命じられ、ゲキたちは九死に一生を得る事に。
 この隙に守護獣で城まで乗り込もうぜ! と提案する青だが……赤黒青、強制排出。
 「なにをすんだよ?!」
 「甘えちゃいかん! 自分の力で、武器を手に入れろと言っているんだ」
 ここで朽ち果てるならどの道試練の突破など不可能な卑小な存在よ、と守護獣は決して恐竜人類に従属する存在ではない(むしろ上位の神霊的存在?)事が描かれ、焚き火で暖を取りながら夜を過ごした3人は、同じ場所をグルグル回っているのは見えない壁がある為だと発見すると、無造作に体当たりで突破が、早くも大変ジュウレンジャー感(笑)
 雷地獄をフルアクセルで突破したボーイとメイが合流すると最後の試練の洞窟に突入し、心を悪に染めてしまう呪いの剣に打ち勝つ事でゲキが主人公性を発揮すると、5人はとうとう伝説の武器の間へ到達する。
 だがそこにはバンドーラ一味が待ち受けており、諸般の事情にあまりに詳しく、もはや完全にこの試練を用意した人がバンドーラ様になっているのですが(笑)
 「おまえ達は確かに、この伝説の武器を持つ資格を得た。だが、この私が渡さないよ!」
 バンドーラの魔法で拘束された5人が、タイムリミットにより足下から石化していく絶体絶命のその時――
 「俺は信じてる! おまえ達は悪を滅ぼす為に、この世に現れた筈だ! 応えてくれ!」
 ゲキはもの言わぬ伝説の武器に向けて呼びかけ、呪いの剣に打ち克つ行動力と精神力のみならず、どんな窮地でもギリギリまで諦めない姿と常人ならざる発想力においても、ゲキの主人公(ヒーロー)らしさを強く示して良かったところ。
 前作序盤との差別化もあるのでしょうが、バンドーラに備える為に1億数千万年の眠りにつく事をいとわず、目覚めるや公の正義の為に躊躇なく戦う、今作のヒーロー像はこうだ! を力強く打ち出してきます。
 「ならば、ならば目の前に居るバンドーラこそ、悪そのものだ!」
 「なにぃ?!」
 「聞け! 伝説の武器たちよ! バンドーラと戦わずして、誰と戦うのだ! ――来たれ! 我が手に!」
 ゲキは《説得》をつかった!
 でんせつのぶきたちはときめいた!
 東映ヒーローらしからぬ《説得》スキルのクリティカル成功により、黄金に光り輝いた伝説の武器がそれぞれゲキたちのもとへと飛来すると、石化が解除。
 それぞれの武器を用い、ここからはヒーローのターンだ! と戦闘員を相手に満を持しての大立ち回りが格好良く決まるが、なんとバンドーラ様は超巨大すると浮遊大陸を物理でゆすり、あまりにもハイスペック(笑)
 裏の世界だから使える大技なのかもですが、この調子で地球は大丈夫なのか……と序盤から出し惜しみしないボスキャラの力(作風としては、今の盛り上がりこそ一番で、帳尻合わせは未来の自分たちに丸投げしていそう)にひきつりつつ、戦闘中に壁が壊れた事により、囚われの身だった宏母を発見したゲキたちは、どさくさ紛れに洞窟の外へと脱出。
 ミノタウロスの放電攻撃に苦しむ5人はダイノバックラーし、名乗りに合わせてそれぞれの伝説武器がジュウレンジャー仕様になるのは、大変格好いい見せ方。
 ……これ多分80年代だと、母子を救って残った怪人に向けて揃い踏みを決めるところに盛り上がりのピークが合わせられると思うのですが、今作では伝説武器@ジュウレンジャー仕様完成のところにピークが設定されており、どちらが良いとか悪いとかの話では無しに、物語の組み立て方の変化が見て取れる部分です。
 当時の制作サイドの事情もあったのでしょうが、怪人1体の前後編で守護獣は前編で強調、後編は個人武器に焦点を合わせて巨大戦をオミットし(代わりにバンドーラ様が巨大化)、とにかく巨大ロボ戦優先よりも作劇が柔軟性を増す事になっているのも、面白いところ。
 「伝説の武器が一つになりたいと叫んでいる!」
 それぞれの武器で連続攻撃をしかけたジュウレンジャーは、すっかり、武器と会話できる男になった赤の音頭で5つの武器を合体させると、巨大なボウガン的な見た目のハウリングキャノンが完成し、ミノタウロスを一発粉砕。
 だがバンドーラ様の規格外の攻撃は続き、逃げの一手となるジュウレンジャー。撤収中に母の涙が宏少年の石化を解いて丸く収まり、とうとう木っ端微塵にされてしまった絶望の大陸から、5+2人はなんとか帰還に成功するのであった……。
 表の世界に戻ってきた事を確認した5人は母子を見送り、いっけん爽やかなエンディングで、全員、抜き身の武器を持っているのが、凄い(笑)
 バーザはともかくとして、5人はこの母子とは面識が無い可能性が高いので(全くそうとは思わせない勢いで押し切ろうとするのですが(笑))、下手をすると、曲がり角で見えなくなった数秒後には警察に通報されます!
  「国際警察の権限により、現行犯逮捕する!」
 バンドーラの幻像が警察より先に現れて戦いはこれからだと告げると高笑いを残して消え、パイロット版に続き、十数秒の台詞に合わせて実に彩り豊かに表情を変化させる曽我町子さんの魅力を積極的に押し出していくスタイル。
 「伝説の武器たちよ! 今日からおまえ達は、我々の心強い友だ。バンドーラを滅ぼすまで、共に戦わん!」
 「「「「おう!!」」」」
 個人武器を掲げて円陣を組んだ5人がそれぞれ決めポーズを取ると、その背後に浮かび上がる守護獣たち、とジュウレンジャーを支える力が示される格好いいカットで、つづく。
 上述したように「個人武器の誕生」にピークを合わせた組み立てが目立つ一方で、「宏少年の救出」が“帰り道のほぼ偶然”になってしまっているのが荒っぽいのですが、今後の洗練を期待したいところ。
 今作におけるヒーロー像、そして、今作における“格好いい”の両方が示されて、立ち上がりのフックとして良いエピソードでした。