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しゅっぱつしんこう

『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』感想・第2話

◆ドン2話「おおもも、こもも」◆ (監督:田崎竜太 脚本:井上敏樹
 前回のあらすじ、
 マンガ賞受賞! → 盗作疑惑で打ち切り! → 「君は戦士に選ばれた」
 のコンボが、確信犯すぎて酷い(笑)
 こうして、わけのわからない内に戦士ってやつになって全てを失ったはるかは、どこかの世界のカラフルと同じ場所にあるとおぼしき喫茶どんぶらでウェイトレスのバイトを始めていた。
 ……前作からの関連要素はひとまず受け入れるとして、この路地の風景で繋がりを感じさせるのは、上手い工夫。HAGURUMACOFFEEと提携している、どこかで見たような顔をした喫茶店のマスターは、これみよがしに『初恋ヒーロー』を読んでおり……
 「これ、盗作?」
 「全力全開で違います!」
 「…………ぜんりょく、ぜんかい……はっ、なんだそれ」
 あまり好きではないタイプのメタ小ネタでしたが(この方向に進みすぎるとただの内輪ウケになってしまうので)、マスターが凄くつまらなそうに鼻で笑うのは良かったです(笑)
 五色田神人なのかなんなのか、怪しんでくれと言わんばかりのマスターですが、タロウを拾った男の名が「桃井陣(じん)」なのも、気になるところではあり。
 その男の言葉に一縷の希望を託し、全てを取り戻す為にはるかが探す桃井タロウ……はその頃、宅配の仕事で雉野家を訪れていた。
 「これで俺とあんたは縁が出来た。その腕はどうした?」
 ハンコを押した相手の怪我を気にして家の外に引きずりだし……怖いよ!!
 何そのハンコ、悪魔の契約なの?!
 俺との縁は、超良縁だ! とタロウが肩をはめると雉野の脱臼は一発で治り、社会常識という名のレールをド派手にはみ出しているが本人の中ではまごうことなき善意であり、前回に続いて「荷物だけではなく幸運を運ぶ」のは真意にして真実(?)である模様。
 そこから雉野のモノローグで、呪いのサングラスと呪いの銃を装備欄に強制ログインボーナスされてしまった日の事が思い返され、主観人物はあっさりと切り替えてきました。
 (あれ以来、ろくな事がない……)
 小さな不幸のアクシデントが続き、職場でも冴えない平凡なサラリーマンの雉野だが、家庭では新婚3ヶ月の妻と幸せ真っ盛りであり、ちゃっかりキジアバターの力で交通事故を回避したりしていた。
 一方、桃井は勤め先でジャンケンに負け続け、同僚の磯野さなえには正面から粉飾無しの「68」と年齢を告げ、馬鹿正直さがアピールされるのですが、出来ればやはり、前回に入れておいて欲しかった要素。
 その頃はるかは、金がない理由について滔々と御託を並べた挙げ句に、コーヒー代として日本円の代わりに俳句を詠むと宣う明治時代の駄目な書生みたいな客と出会い、マスターまさかの許可。
 感情移入が激しいタチなのか、滂沱と涙を流しながら俳句を詠む書生崩れに呆れていると、スマホの上に浮かび上がった謎の囚人が、はるかに向けて桃井タロウの出現場所を予告する……。
 シロクマ宅配便では、加齢による容姿の衰えを気にするあまり、若くなりたい、とする欲望を肥大化させた磯野に、なにやら機関車のような姿をしたエネルギーがとりつき……今作における怪人サイドの立ち位置は今回時点でもまだ不明なのですが、日本における「オニ」とは元来、「隠(於爾)」に通じる目に見えぬ神霊であり、人間にマイナスを及ぼす霊的存在だと考えると、原義的には割とそのまま(の戦隊バージョン)といえるかも。
 烈車神霊の影響によりまるで40代の見た目となった磯野だが、タロウが相変わらず「68」を断言した事でその願望はますます加速していき……そうとは知らないタロウは街に配達へ。
 どんぶらこどんぶらこと大きな箱を抱えたタロウは、配達先の「犬塚」宅の前で黒ずくめの青年と出くわすが、警察に張り込まれていた青年は、荷物を受け取らずに一目散に逃走。幸福のきびだんごもといハンコを押さなかったので「彼とは縁が無かったようだ」扱いを受けた青年は、黒いサングラスを身につけると、壁に浮かび上がった扉の先へ進む事で刑事の追跡をまんまと逃れてみせる。
 「捕まってたまるか。――俺は無実だ」
 はるかの盗作疑惑が布石となり、短い出番と最低限の説明で、黒いサングラスを持ったこの青年にも何かあるのだろう、と思わせる流れが非常にスムーズで、井上敏樹らしさと切れ味があって、今回の一番好きなシーン。
 続けて、タロウが現れると予告された羅生ノ宮交差点で待ち構えるはるかの目の前を、タロウの運転するシロクマ宅配便の車が通り過ぎていく(わざとやっているのではないか囚人……)と、その向こうから横断歩道を渡って近づいてくる、巨大な傘をかついだ茶色づくめの青年の姿がはるかの目にとまる、は実に井上敏樹(笑)
 メインライター井上敏樹に続き、どうやら「あばたろう」=「アバター」らしいと情報が出た時点で、もし「仮面の特性を活かして互いの正体を知らないままの共闘を《スーパー戦隊》で行う」ならば井上敏樹の得意技が活かせて楽しみになる一方で、かつてのようなキレが無い事を目の当たりにするかもしれない不安が同居していたのですが、今回は総じて、テンポもすれ違いの見せ方も良く、この方向性に期待の持てる仕上がりとなりました。
 《平成ライダー》で長い付き合いの田崎監督以外では、助監督時代から脚本に接している渡辺監督、『キバ』『ゴーカイ』でやっている中澤監督を除くと、他の演出陣との相性がどう出るかも一つ課題になりそうですが、《スーパー戦隊》35年選手である井上敏樹のトップフォーム再び、或いはそれ以上のニューフォームを、是非とも見たいところ。
 今回も絶妙な勘違いを発動し、あれこそ桃井タロウに違いない、と茶色い青年の後を追うはるか(ここで、正面からは傘に見えた装備品が、真横からロングで撮ると「なるほど槍か」とわかるのが秀逸)だが、若さを求めて街を彷徨う磯野に行く手を遮られてしまい、女子高生へのジェラシーファイヤーから絶叫する磯野の外見は、なんと20代の美女に。
 異様な現象を目の当たりにしてサングラスをかけてみたはるかは、女の背後に烈車神霊が憑依している事に気付くが、その磯野は、ちょうど最寄りに車を止めていたタロウへとふらふら近づいていく。
 「ねぇ。……誰だか、わかる?」
 「……さなえさん、お疲れ様」
 多少は考える間があったものの、タロウはその変化をごく平然と受け入れ、主人公らしい存在感を発揮。
 「私、幾つに見える?」
 「68」
 続けての質問に笑顔で言い切り、予定調和の流れでありますが、前回、宅配シーンに尺があった割にはパッとしなかったタロウのキャラクター性がきっりと押し出されたのは良かったです。
 磯野の体を気遣ったタロウが宅配に走り去ると、更に暴走した磯野は体内から飛び出した線路で周囲の人々を無差別に攻撃吸収し、悪しき神霊と一体化して、烈車鬼神へと変貌。
 「どうしよう……逃げたい。……でも戦わなきゃ。……戦士だし。――『初恋ヒーロー』の作者だし」
 物陰から様子を窺っていたはるかが独り言の形で戦いへの躊躇を口にし始めた時は、安っぽくならないか心配になりましたが、盗作の汚名を返上し自らの作品を取り戻す、なんに恥じる事もないその作者としての誇りこそ、はるかにとっての全てを――己自身を取り戻す事だというのは、はるかの戦う理由の根幹として痺れる示し方でした。
 はるかはオニシスターへとアバターチェンジすると、なんとか烈車鬼神を止めようとするが、そこにわざわざバイクをウィリーさせながら現れる、青い詩人。
 「愚かな……若さを求める欲望こそ、自信を醜く歪めるもの」
 「その通り。……なんて感心してる場合じゃない!」
 詩人は腕のブレスを起動して仮面の戦士へと変貌し……初見から既視感が気になって仕方が無かったところ、どうやら超人バロム・1がデザインモチーフとコメント欄でGimmickさんに教えていただいて深く納得し、以後、バロム仮面様で。
 烈車鬼神に斬りかかるバロム仮面を食い止める黄だが、今度はそこに桃井タロウ(仮)な茶色づくめの青年が姿を現し、黄、期待に応えるスライディング跪いて忠誠を誓う。
 「――うざい虫だ。……どうする、ソノイ?」
 「好きにしろ、ソノザ」
 バロム仮面様の名前が判明し、茶色の青年――ソノザもまたブレスを起動すると、びゅっびゅーん! びゅっびゅーん! カ○スター!
 ……確かにこれは、頭の模様がカゲスター(笑) もっとも、元のデザインがあまりにも強烈すぎるので、印象としてカゲスターに見えるかといえばそうでもないのですが、とりあえずマントは置いてきたようで良かった。
 影の魔人だスター仮面は傘の変じた槍を振り回して黄を吹き飛ばし、更にサイケ人間を召喚。
 黄が追い詰められたその時、キジブラザーが空を舞って駆けつけるのは大変格好良く決まり、初回に誰か一人ぐらいはアバターチェンジを見せておきたい都合があったのでしょうが、前回この形にしておいた方が効果的だったのでは感はあり。
 「首輪も鎖も俺にはいらない。ましてや犬小屋など!」
 更にそこに新たな声が響き、だいぶロールプレイ入った前口上の主が姿を現すと二等身! も面白く、前回に比べると戦闘シーンの各種見せ方が遙かに良好。
 「犬?!」
 「好きで犬やってんじゃねぇよ」
 黒い戦士はつっけんどんで……ええとこれ……桃井陣容疑者(仮)、適当に電話帳めくって「犬・猿・雉」を選んでサングラスを送りつけた上で、「君のアバターはこれだ!」と強制しましたか。
 「ついでに鬼を加えるとちょっと皮肉でいいよね!」とマンガ賞受賞のニュース記事を見てぴーんと来ましたか。
 新たに参戦したイヌブラザーが、ベルトのバックルを開いて取り出したリュウソウジャーギアを呪いの銃にはめてアバターチェンジすると、リュウソウ蛮族化。
 それを見た桃も、いつの間にやらバックルに入っていたリュウソウジャーギアを用いてアバターチェンジする事で、リュウソウ筋肉化。
 先輩アバターチェンジが、まるっきり劇中の理由付けが(現時点では)全くされないゴーカイチェンジなのは引っかかる点はありますが、部分アップを交えるにしても桃黒がずっとCGなのは何かと難しいのでは……と思っていたので、適宜先輩に乗り換えるのは成る程。
 ゴーカイと違ってリュウソウ桃のスーツは男性化せず、黒と桃はあまりフレンドリーではない描写。
 「なんなの、この人たち?」
 サイケ人間は全滅させるもバロム仮面とスター仮面が黄黒桃&烈車鬼へと襲いかかり、いつの間にやら戻ってきてその戦いを見つめる桃井タロウが、いよいよアバターチェンジを初披露。
 チェンジと同時に仙女と神輿が現れて今回も担がれながら登場するや、正直カチコミは血が騒ぐぜーーー! と東映ヒーローの本能に従って怪人と仮面にまっしぐらに斬りかかり、3体1で臆せず立ち回る戦闘力を見せつけると、自分ギアを用いて、アルターチェンジ。
 するとどういうわけかドロップキックの拍子に魂が抜けて、召喚されたこももロボに合身し、周囲の空間を跳ね回りながら攪乱攻撃を仕掛けるのは、こももロボのデザインがなかなか秀逸でドタバタバトルとしては楽しいノリになりました。
 これに慌てず騒がず対応する事で、バロム仮面様は美形悪役ポジションを確立し、これ以上滞在するとギャグ時空に引きずり込まれかなねい、と判断した仮面の二人は悪役スキル《思わせぶりな事を言いながらさりげなく退却》を発動して撤収。
 後に残ったのは、烈車鬼と、ドン桃太郎……の抜け殻。
 黄が赤を背負って逃げ惑うドタバタステージ2の末、こももロボから魂の戻った赤が反撃を入れるとお供たちに必殺奥義を指示し、とりあえず桃と黒は、既にお供である事を受け入れていた。
 3人が機械仕掛けをぐるぐる回すと舞台がせり上がり、当代無敵アバター乱舞でドン! ドン! ドンブラザーズ!(映像とノリが良かった)
 初回は、ドラマ部分でインパクトを出そうとする前半パートと、バトル部分でインパクトを出そうとする後半パートが上手く噛み合っていなかった印象で、特にドンモモ登場からギアチェンジを図った後半のテンポに乗れなかったのですが、今回は不条理を超えて黄の行動目的(鬼神を元の人間に戻そうとする)がハッキリした事により前半と後半が上手く繋がって、方向性も見えて割と気持ちの良いバトルになりました。
 また、前回は「変化」のアピールありきになって、あれもこれもと畳みかけすぎた演し物過剰により逆に全体がフラットになっていた面がありましたが、今回はズラリと並んだ芝居小屋に大通りからの距離がついて、見せたい演し物にメリハリがついてきたのは、良かったところ。
 巨大烈車怪獣と走りながらの線路バトルはフルCGならでは感があって前回より遙かに見栄えもして面白く、ドン全開で一刀両断すると、トッキュウギアが解放されて、それを本日もクロカイザーが回収。
 鬼神のコアとなっていた磯野も、吸い込まれてトラベリオンされていた人々も元に戻り、シロクマ宅急便にも帰ってくるいつもの日々。
 タロウは磯野からの問いかけに「生き生きとした幸せな68に見える」と告げ、大事なのはどう生きてきたのか、そして今をどう生きているのかではないか、と綺麗にまとめて、物事の本質を見抜く力を持った正直者を巨大な狂気を宿して描き出し、主人公がグッと面白くなったのは、お見事。
 (ひょっとして……)
 一方、今回も桃井タロウに跪いて忠誠を誓う事に失敗したはるかは、頸動脈を締めてきた赤いチョンマゲの姿を思い浮かべるが……
 (なんか、やだ)
 と却下して、つづく。
 初回の不満点(戦闘関連やタロウの見せ方)が幾つか解消され、過去作品要素が変に露悪的にこねくり回される事もなく、人物と情報をすれ違い錯綜させる井上敏樹の十八番が転がり始め、だいぶ楽しく見られた第2話でした。
 それにしても、蓋を開けてみたら予想以上に《スーパー戦隊》の定石に沿っていた『ゼンカイ』よりも、今作の方がそもそも白倉Pがやりたかった本命だったと考えた方があれこれ納得が行くのですが……勿論、多くの人が関わる貴重な1年を捨て石にする気は無かっただろうにしても、『ゼンカイ』はクッションというか、香村純子という虎の子を切ってまで仕掛けた大いなる布石だったのではという疑念が、だいぶ強まってはみたり(笑)
 次回――自ら率先して「変人」と名乗ってくるスタイル。