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「開運麦わら帽の力、見たか!」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第45話

◆第45カイ!「超大凶って運勢最下位?!」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
 冒頭から、挿入歌に乗せてカラフルパフェを堪能するサトシをたっぷり描いて見ている側のMPをガリガリ削っていき、東映特撮では現在、人の心を求めています。
 お客様ー、お客様の中に、人の心は残っていませんかー!
 一方、街には「大凶」の文字を顔に見立てたデザインがなかなか秀逸なオミクジワルドが出現し、買い出し中にこれと遭遇したマジーヌとブルーンだが、凶のおみくじの作用によってラック値が下がると立て続けに不運に見舞われて手も足も出ず……完全に、「偶然だ! こんなの、全て、偶然にき、決まってる」(『轟轟戦隊ボウケンジャー』Task.27「風水占いの罠」)です(笑)
 トジテンドでは、ゲゲ兄は前回SDワルドを送り出した(ゲゲ弟モードの際の)記憶が無いが、ノイズと共に記憶の修正が描かれ、アース-45では、カラオケボックスの中でステイシーが目を覚ます。
 どうやらキャラソンCDが発売するようで、歌って踊る自分のカラオケMVを背負いながら、ステイシーはゲゲイシー時代の行動を徐々に思い出し……懐に手をやって取り出す
 おやつ券ーーー!
 いつでもおいでーーーーー!!
 「もう会わないって決めてたのに……」
 人の心ーーーーー!!
 ……人の心に告ぐ。
 今ならまだ間に合う。
 原隊に復帰せよ。
 世界の空にそんな紙吹雪が舞っていた頃、ゲゲに不審を抱くバラシタラは、その様子を窺っていた。
 「あいつ……もしや並行世界間ゲートの設定をいじっているのでアルか? ステイシーの脱走を手引きしたのも奴だとしたら……いったい何を企んでいるのでアル?」
 相変わらず鋭いバラシタラですが、残り話数を考えると、悪の幹部として華々しく散る余地はあるのかどうか。今回のエピソード進行具合を見るとイジルデとボッコワウスは完全に小物として処理されそうで、ボッコワウス様にいたっては下手すると戦闘する機会さえ無さそうになってきましたが。
 アース-45では白赤黄がおみくじワルドに戦いを挑むが、凶ばかり出てインチキだ! と難癖をつけたところ、クダック部隊に吉ブーストがかけられてラッキーヒットが立て続けに発生し、第45話にして戦闘員に苦戦する羽目に。
 強力無比なバフとデバフの使い手だったおみくじワルドに翻弄されているところに桃青も合流し、
 「運の悪いお二人さん、いいところへ来たオミクジ」
 は、ブルーンに向けて言うとあまり洒落にならないのですが、すっかり可も無く不可も無く平板な黄色いペースト状態のガオーンと比べると、いっそおいしいのかもしれない、と思えてきてちょっと悲しい。
 結局、全員揃ってオミクジの罠にはまってしまい、「日常的な行動(開く)が能力発動に繋がる」「些細な事象が積み重なってエスカレートしていく」辺りが大変スタンドバトルっぽいですが、
 「いーや……今おまえは、口を“開いた”ぜ」
 「な、ぼごうぉがぁっ?!」
 と、舌に貼り付いた大凶のおみくじで苦しむ岸辺露伴のコマが脳内に浮かんでおり、頑張って逆転してください露伴先生。
 話は『ゼンカイ』に戻って、5人揃って運悪ジャー(語呂が悪い)から、キュウレンジャーギアを発動してよっしゃラッキーで相殺を目論む白だが、ギアトリンガーの蓋を“開いた”事でおみくじトラップが発動すると誤射で消火栓から放水直撃のコンボは、放水が幸運に繋がった寿司ワルド回を裏返していて面白かったです(笑) ……まあ、借り物とはいえ、ラッキー負けていいのか感はちょっとありますが。
 その頃、正気を取り戻したステイシーは、気がつけばカラフルのある路地裏を訪れていた。
 (……僕は……無意識に足が向くほど……ヤツデに会いたかったのかな)
 だがそこで再びゲゲイシーになると、前回ラストでも口にしていた「あるべき場所へお帰り」の言葉と共に、カラフルから出てきたキカイノイド親子を転送ゲートの中へと放り込み……この後の言行も加えて見るにどうやら、並行世界の秩序を元に戻そうとしている様子。
 ゲゲイシーが暗躍を続ける中、圧倒的デバフのパワーで絶体絶命に追い込まれたゼンカイジャー(まあ今作の場合、「絶体絶命」の新鮮みがだいぶ薄れてしまっているので、終盤ならでは感は特に生まれないのですが)は、こうなったら先輩たちに倣って力業だ! と全力全開キャノンで強引に突破を図るが、頼みのキャノンも誤作動し、姿を見せたのはキレンジャー(二代目)・バトルコサック(初代)・イエローフォー(初代)。
 「そ、その3人は……!」
 戦慄するセッちゃんの警告は間に合わず、3人並んだ殉職戦士が次々に弾け飛ぶとゼンカイジャーはその大爆発に巻き込まれ…………う、うーん……近作を外したのは意識的だと思いますが、個人的にはジェットマンギア同様、オマージュとかセルフパロディを通り越して、一線を越えた内輪ネタ(&デリケートな題材の雑な扱い)に感じて、良い印象は持てず。
 例えば『激走戦隊カーレンジャー』は、本質的なところで“公式による公式の茶化し”を慎重に避けていたのですが、シリーズ過去作品を「素材」として割り切っている節のある今作は、不用意にその“公式による公式の茶化し”に踏み込みかける事があって、今回はそこを踏み越えてしまったのではと感じます。
 これは私が、作り手の「ここまでやる我々凄いでしょ?」が透けて見えるのが好きでは無い、というのがありますが、受け手のあらゆる感情に配慮できないのは当然としても、「ここまでやる」で踏みにじっていいものなのか、こと「生死」に関しては、慎重に扱ってほしかったなと。
 ……東映特撮の負の体質というか、過去の作品公式ブログでも「真剣に悪ふざけ」みたいな語が肯定的に用いられているのを見た事がありますが、「真剣に」は「真剣に」として、「真剣にやっていればどんな悪ふざけも許される」わけではないのに、時々そこを作り手がいい方に解釈して(言い訳に使って)「悪ふざけ」の内容を精査せずに「真剣に悪ふざけするのが凄い!」みたいな蛸壺の中の手前味噌が溢れ出てしまう事があって(例えば『リュウソウ』前半のメルトの扱いとか、そういう空気の中で生まれたと思っています)、今回はそれが凄く悪い形で噴出した印象。
 「これがプレシャスの力か……うぐ」
 「不幸だ……不幸すぎる」
 「……俺は、もう……駄目かもしれん」
 (特別出演:明石暁)
 運命に翻弄され、いよいよゼンカイジャーに全滅が迫るその時、座り込んだマジーヌが水晶玉占いに希望を託すが、浮かび上がったのは、超大凶の三文字。
 だが、自分の占いは外れるのでむしろハチャメチャ大吉、とマジーヌは独り立ち上がるとおみくじワルドに突撃、そして、カウンターパンチを受けてあっさり転倒。
 状況に困惑しているのはわからないでもなく、下手に動くと不幸のコンボが起こるかもの危惧を理由付けにもしているのですが、倒れても立ち上がり何度でもおみくじに立ち向かうマジーヌを、背後の4人があわわわわ、と傍観しているのも最低の絵面となり、加藤×香村で、どうしてこうなりましたか。
 普段は良い具合に状況を引き締めるジュランの台詞も「見てらんねぇ」って……いや見てるなよ! になってしまい、いつもなら真っ先に飛び出しそうなおじさん株も大暴落。
 結局殴り飛ばされたマジーヌを囲んだ4人が、そんなマジーヌの姿に「マジーヌの占いを信じるぞ!」と一致団結するのも途中ステップを3段ぐらい飛ばした随分ちぐはぐな流れになり、作品として「キャラ回」を避けている内に「キャラ回」の作り方を忘れた、みたいな事に。
 介人の「はちゃめちゃ勇気貰った!」の台詞からすると、『マジレンジャー』のキーワードである「勇気」を取り上げつつマジーヌ仲間入り回と繋げる意図だったと思うのですが、肝心の「勇気」の中身が『ゼンカイジャー』の中で掘り下げられていないので、ジーヌのテーゼとするには空疎で意味をなさない大失敗。
 で、今回単位の「勇気」=「自分の占いは当たらないと言い聞かせておみくじワルドに独りで立ち向かうマジーヌの姿」なのですが、ここまで来て自虐ネタなのがあまり美しくないですし、あくまで「占い」は理由付けであり、本質は“諦めずに立ち向かう事(あのマジーヌが率先して前に出る事)そのもの”とはいえ、その自己暗示のエネルギーとなる「占い」がこれまた本編で取り上げられたのがいつ以来か? の要素な為に、自己暗示としても仲間達が集って立ち上がる仮の旗印としても全く機能せず、これならいっそ「占い」挟まない方が説得力があるレベル。
 香村さん、基本的にこういう失敗をしない(むしろ、こういう落とし穴を避けるのが抜群に上手い)人なので面食らうのですが、とうとう、上手の手から盛大に水が漏れてしまった感があります。
 マジーヌのキャラソンをバックに、俺たちは大吉だ! と思い込みのパワーでゼンカイジャーが突撃して不幸と偶然が入り乱れるカオスなバトルに突入し、前半戦の内にこういうノリをやりたかったのではみたいな雰囲気を感じるのですが……そう考えるてみと今回、初期段階において想定していたマジーヌ話を、想定に則った蓄積のないまま最終章手前の隙間にねじ込んでみたらやっぱり破綻したのでは、と捉えた方が個人的には頷けます(或いは、前半に用意していたプロットの再利用)。
 「人を苦しめる為に占いを使う奴は、滅びろーーー!」
 色々な意味でif『ゼンカイジャー』の幻影を見ている内に、勇気は桃色のフェニックスでチェックメイト
 「こういう時なんつーんだっけなんつーんだっけ……ほら、マジーヌしか勝たん!」
 「そうっスー!」
 独り必死にワルドに立ち向かっていたマジーヌがダメージで巨大化できず、巨大おみくじワルドに対しては全開王ジュラガオ、から久々にあれやろう、とスーパーゼンカイオージュランを繰り出して、取り残されるガオーン……ガオーン……。
 だが、自らに超大吉ブーストをかけたおみくじワルドのクリティカルヒットを受けてあっさり撃墜されてしまい、一回きりの登場はどうかと思ったのかもしれませんが、結果的にマックスマグマとコロナモードが花畑の向こうから手を振っています。
 またも大ピンチのその時、人さらいを続けていたゲゲイシーが姿を見せると、なんと、おみくじのパワーを吸収。力を失ったクダイテストは撃破されるが、果たして、ゲゲイシーの力の秘密とは……?
 「実は僕――全ての世界を創った、神様なんだよね」
 「「「「「………………え?」」」」」
 爆弾発言で、つづく。
 謎めいた行動を繰り返してきたゲゲイシー容疑者が「僕は神様である」と供述し、海賊トピアの解放、キカイノイド達のお掃除と、どうやらアース-45から異世界の要素を排除しているようですが……だとすれば何故トジテンドに居たのかが新たな謎に。
 もっとも、本人の自己申告通りに「世界を創った神」だとすると、気まぐれでしたーとか暇つぶしでしたーとかで通ってしまうのですが、面白く転がしてほしいところ。
 事故とはいえ、混ざり合った二つの世界がまがりなりにも共存していたアース-45、そして広がった世界での出会いを経て成長してきた介人たち――「あるべき姿に戻す」事で、それを否定する力が現れるのは、長く大きな迂回を経て、番組初期のテーマが戻ってきた感がありますが、今作ワーストクラスの出来だった今回を踏み台にして、最終章の盛り上がりを期待したいです。