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「そうか……てめぇが見たのは、虹か」

『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第44話

◆第44カイ!「SD=スモール+デッカい?!」◆ (監督:山口恭平 脚本:香村純子)
 冒頭から、
 「ステイシーがいきなり味方面してきたチュン!」
 の、気持ちはわかるけど酷すぎる言いぐさが炸裂する一方、トジテンドでは壁王様が人生について考えていた。
 「征服は進まん。反逆する者まで、現れる。怒りを通り越して、萎えてしまうわ」
 「確かにな」
 「おまえも最近、甘えてくれんし~」
 「そうか? ――ねぇ、ボッコワウスー、じゃあ、甘えてもいいかなぁ?」
 目の輝きと共に、ゲゲの口調と性格の変化が明確に描かれ、コロッと流される壁王様、どこまで厚みが無いの?! は置いておいて、ゲゲ弟(仮)の求めにより街に繰り出すダイデンジ……ならぬ、Sエコワルド(このデザインだとやってきそうと思ったら、声優は元デンジグリーンの内田直哉さん(笑))。
 「?! そのフォルム……おまえSDワルドか?」
 襲撃を受けたゾックスが、「フォルム」で気付くという事は、SDトピアの住人は、みんなダイデ……なのか、それとも胸にエコマークが輝いているのか。
 SDGs!
 サスティナブル!
 1/8ならぬ1/2計画、そうつまり、人類全てをSD化する事により、食料問題やエネルギー問題を一挙に解決する事ができるのです麗子様!!
 SDワルドのSustainable Developmentビームを受けた人々は次々とSD化してしまい、巻き込まれたガオーンとブルーンがさっくり戦線離脱。
 「カッタナー……リッキー……人間に戻るまで、あとちょっとの辛抱だ」
 ゾックスはスーパーチェンジツーカイし、駆けつけた介人たちも参戦するが、ジュランとマジーヌが立て続けに戦線離脱。SDワルド以外は目に入らない、といった金の戦いに白も振り回され、援護しようとしたフリントをかばった金は武器をSD化されてしまう。
 乱戦での戦力激減に白が17バーンを発動して幻相鉄線に乗って一時離脱し……間違ってはいないのですが、これをシシレンジャーアイデンティティみたいに扱われると、複雑な気持ち(謎設定を生やされた黒騎士よりマシかもですが)。
 逆光で現れたゲゲイシーが薪をくべ、変身不能のゾックスは、それでも一家の長として、手出し無用を宣言。
 異を唱えようとする介人だが、SD化した人々が川を流れたり子供に玩具にされたりで色々大ピンチと連絡を受けてその救出を優先する事になり、
 「ごめん。実はそれ……玩具じゃなくて人なんだ」
 は、言われる側からすると、凄くホラー(笑)
 スーパーエコ化した人々を助けて回り、ネットに引っかかっていたSDガオーンを回収した介人は、SDワルドを探すゾックスを発見。
 「ねえ! なんでそんな一人でやろうとすんの? 俺の事はすっごい助けてくれたじゃん!」
 「……俺らの親父は、俺を守って死んだんだ。カイゾクトピアじゃよくある争いだ。その親父から、俺は家族を守る役目を引き継いだ。これは俺の誇りであり、けじめなんだよ!」
 「理屈じゃないってこと?」
 ゾックスの“在り方”の背景に、今作を貫く要素としての「家族」――それに関わる「父との物語」――が投入され、積極的に明かすような事柄でもないですし納得も出来るのですが、だからこそ、時間切れでゾックス自らが説明する形になってしまったのは、ちょっと残念。
 基本的に「家族大事」で一点突破してきたゾックスのパーソナル部分の掘り下げの遅れ――身も蓋もない話としては、キャラクターの優先順位におけるステイシーへの敗北を感じるところです。
 「功を助けた礼のつもりなら、手を出さずに黙って見てろ」
 「ずるいじゃんそんな言い方!
 「かーいとーーーーー!」
 更なる説得を試みようとする介人だが、風船にくっついて宙を舞うブルーンが助けを求める声に気を取られている内にゾックスは姿を消してしまい、ブルーン、間の悪い奴(笑)
 そして、落ちた。
 「でもよぶっちゃけ、寂しいんじゃね?」
 「……だからって……戦えないし、引っ張りたくねぇし」
 「武器持って暴れるだけが、戦いじゃねぇんだなー」
 ゾックスに言われた通り、界賊船に引っ込んでいたフリント達には、ついてきたジュランが声をかけ……台詞からしてカタツムリワルド回の「妹たちはそういうの、寂しいんじゃねぇか?」を踏まえてかと思われますが、ロングパスが綺麗に繋がったというよりも、実に第12話という登場当初に提示していた問題を、延々と抱えすぎた印象。
 勿論、ゼンカイジャー側に対するツーカイ一座への好感・信頼度は大きく上昇しているのですが、とはいっても介人以外との個人間での関係性は“弱い”まま、ジュランの特殊スキル《イケオジパワー(説得:年の功)》で問題解決への道筋を立ててしまったのは、長すぎる助走からの平凡なジャンプで残念。
 これもまた、ステイシー(そしてハカイザー)の余波といえますが、一家揃って物語の中心軸から弾かれた結果として、およそ30話にわたって、一つの問題を克服するでも熟成するでもなく、ただただ放置の末に拾いに戻っただけとなってしまいました。
 地上では激しく降り出した雨が地面を叩く中、人々を追い回すSDワルドの耳に届く、
 「よほほい よほほい よほほいほい」
 雨に打たれながら生身のゾックスが空に向けて銃をぶっぱなすのは、なんだかんだと格好良く、サーベルと銃を手にしたゾックスとSDワルド&クダイター部隊が戦闘開始。
 「やれるもんならやってみやがれ! 元はこの身一つで渡り合ってきたんだ! 界賊を、舐めんな!」
 変身なしで奮闘するも多勢に無勢、追い詰められるゾックスだが、そこに飛んでくる、ちょわーーーー!
 「介人! おまえ手ぇ出すなって!」
 「あんちゃん残念~。俺らも居るんだわ、よろしこ!」
 SD化してしまった人々は介人たちに代わってヤツデらが助け出しており、ここで二つの世界の人々が共に行動しているのが実に今作らしく、この画だけで相互理解の一つの形を描けるのは、『ゼンカイ』の圧倒的強み(パイロット版でこれを示せたのが、本当に効いています)。
 そして、驟雨の去っていった空には七色の虹がかかり――
 「ゾックス! 俺最初に言ったよな! おまえは好きにすればいい。俺たちはおまえの分もみんなを守るって! だからゾックス、おまえは勝手にしろよ! 俺たちはみんなを助ける為に戦いに来たんだから!」
 「……ずるい言い方しやがって」
 SDワルドの被害者はむしろ自分たちだ! と介入に理論武装したゼンカイジャー(なお、ツーカイ一座はむしろSDトピアへの加害者である)はSD4人を交えた揃い踏みで、小さくても5人揃って機界戦隊ゼンカイジャー!
 更に、既にSDな双子がエコビームから兄貴を守り、フリントが、SD化したギアダリンガーに対応した超小型化したギアを開発し、天を見上げて苦笑するゾックス。
 「あーあ……誰も俺の言う事を聞きやしねぇ」
 ここまで道中の組み立てに物足りなさはあるものの、これは、いい台詞でした。
 「世界界賊、ゴールドツイカー一家の長としちゃ、まだまだだな」
 家族を守るのが長の務めだが、家族もまた成長するものならば、それだけデッカく強くなるのもまた長の務め――笑みを浮かべたゾックスは、小さなギアで、チェンジツーカイ。
 「ツーカイに行くぜ!」
 ギアが小さい分、スーツの面積が足りずに顔だけを覆い、限りなく変質者に近いツーカイワルド化したらどうしようかと思いましたが、無事に変身したツーカイザーは超力フォームでSDワルドを撃破。
 ニュークダイテストが現れて、スモール光線とデッカい光線を操る巨大SDワルドが誕生すると全力全開王と激突し、SDパワーが充ち満ちた描写でバトルフィールドの背景が簡略化された結果、なんだかとてもEテレっぽい雰囲気となり、これはもう『キッチン戦隊クッ○ルン』寄りの絵なのでは、となったのは、さすがに戦闘の緊張感を削ぎすぎたような。
 そんなフィールドで小型化されてしまう全力全開王だが、巨大SDワルドの背後に、ワニ型宇宙船が浮上。
 「食らいやがれ。ゴールドツイカー一家の、全力だ!!」
 背後からの全力ワニキャノン、SDゼンカイビッグバン、そして双子のラッシュ攻撃により、ツーカイ一家総出の出入りの形でSDワルドは倒され……今回終始、仇敵SDワルドをツーカイ一座が力を合わせて撃破した、みたいな空気で描かれているのですが、双子のSD化はそもそも身から出た錆である事を、視聴者に忘れさせようとしていませんか(笑)
 かくしてSDトピアは解放され、カッタナーとリッキーの呪いを解くべく、アース-45を離れるゴールドツイカー一座。
 アウトローであるゾックスに「家族最優先」のポイントで愛嬌を与えてきたので、その行動原理を曲げるわけにはいかないとしても思い切った戦線離脱となりましたが、もはやトジテンドの脅威は消え去ったばりの清々しすぎるさらばーーいに、え、これ、一時離脱でラスト2話ぐらいに帰還するんですよね?? という予想が不安に代わりますが、ゾックス退場して最終章は原点回帰で! と言われたら、まあそれはそれで……の気持ちもちょっぴり。
 「……バイバイ界賊くん」
 ……あ、これアレだ、一時退場は一時退場でも、見送った界賊船が空中で木っ端微塵に吹き飛ぶアレだと思ったらそんな事もなく、一座の転移を見送ったゲゲイシーがギアを破壊するとカイゾクトピアまで解放されてしまい、果たしてその真意や如何に――で、つづく。
 このまま戻ってこないと、それこそゲゲイシーのもくろみ通りになってしまうので帰還するのかとは思うのですが、それはそれで、ゲゲイシーの行動に「裏がある」とは思いながら、家族最優先にしても、力強く去って行くのはどうなのか……? は、少々引っかかる部分。まあ、ゲゲイシーの目を誤魔化す為に、まんまと乗せられたポーズを取った……という可能性もありそうですが。
 後、にこやかに見送っているけど、SDトピアからすると界賊一家は恐らく「悪」な上に、アース-45以外の世界では再び界賊行為に手を染める可能性が十二分にあるのですが、その辺りに関しては結局、投げっぱなし。双子の呪いも、やむにやまれぬ事情があったと双子側に感情移入させる要素を作って、呪いを解く事に納得できる筋道を作る手もあったと思うのですがそういった仕掛けもなく、界賊周りの問題は、(視聴者ではなく)介人たちの倫理観からしてネガな部分の要素を、「アウトローだから!」と突っ込んだまま「そういうルールの世界から来たので!」で通してしまい、どうにも消化不良。
 よそのトピアのルールにまでは干渉しない、のは線引きとしては一定の筋が通っているのですが、界賊一家の場合、並行世界間ゲートを用いて自分たちのルールでよその世界を襲撃している……つまりはその筋を破っての侵略者ポジションになりうるので、そこは介人たちの踏み込みが目に見える形で必要だったような。
 完全退場にしろ、一時退場にしろ、せめて前後編で出来ていればもう少しは……とも思いますが、1話にまとめられてしまったのも、キャラ的にも内容的にも厳しかったところです。
 追加戦士登場後のセオリーである既存メンバー個々とのコンビ回をやらないとか、そもそも「キャラ回」にこだわらないとか、“《スーパー戦隊》シリーズの文法”に一石を投じようとするのは今作のスタイルでありますが、それに加えて“善悪の狭間に居るキャラ”を敵と味方の双方に置いてしまったのは、結果論としては、やりすぎになってしまった感。
 もう少し、立ち位置の重なるゾックスとステイシーが互いを高める形で衝突すれば話は違ったかもですが、その席はどうしても介人で埋まってしまい、よほほいの面白インパクトなどゾックスそのものは嫌いではないものの、物語としては「介人にとっての都合のいい彼氏」に落ち着いてから身動き取れなくなってしまったのが、残念でした。
 次回――「いや、俺は占いなんて信じない」。