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究極の19人の救世主

『快盗vs警察vs宇宙』感想

◆『ルパンレンジャーvsパトレンジャーvsキュウレンジャー』◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久
 『宇宙戦隊キュウレンジャー』と『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』のクロスオーバー作品で、『ルパパト』終了後の2019年5月に劇場公開。
 3+3+1+12で、総勢19名だ!
 買い出し帰りの魁利たちジュレ一行(ルパンレンジャー3人組)は、突然、謎の宇宙人――『キュウレンジャー』世界の大スター、ホシ・ミナト――に拘束されてナイフを突きつけられるが、修羅場に慣れた3人がさくっと変身して片付けてしまおうとしたところ、本日も大概タイミング悪く通りすがる圭一郎ら国際警察ご一行(パトレンジャー3人組)。
 お互いの反応で、国際警察がルパンレンジャーの正体を知る前の時制だとわかり、即座に不審者へと銃を向ける圭一郎たちだが、そこに突然の隕石!
 その正体は真っ赤なスーツに身を包んだ一人の男であり……
 「よっしゃラッキーー!」
 テーマ曲と共に立ち上がったスーパースター・シシレッドの姿はヒーロー登場として格好良く、『キュウレンジャー』第1話におけるラッキー登場シーンのオマージュでありましょうか。
 事態を飲み込めない一同が愕然としていると今度はそこに車が乗り付け、運転席から降り立ったスーツ姿のどう見てもジェラシットが、魁利たちとホシ・ミナトをミニバンに詰め込むと急発進して逃走してしまい、残されたのは空から降ってきた謎の男と、ホシ・ミナトのギターケース。
 「俺はラッキー! 宇宙一ラッキーな男だ!」
 「はぁ?」
 そして勿論、朝加圭一郎は、こういう不審者には、一片の容赦もなく手錠をかける男だった……と、開始3分に戦隊3つとゲスト二人を詰め込んで畳みかける展開が、クロスオーバー作品の導入として秀逸。
 「だから俺は、別の宇宙からドン・アルカゲを追ってきた救世主の一人なんだ」
 と自称救世主の男は意味不明の供述を繰り返しており……
 「ドン・アルカゲは、ドン・アルマゲの影武者だ」
 と自称救世主の男は意味不明の供述を繰り返しており……
 国際警察機構地下3000mに隠された特別拘禁げふんげふん秘密の別荘にご招待して洗いざらい素直にうたいたくなるまで楽しいレッスン寸前、取調室にノエルが駆け込んできて、変装してジュレに向かった圭一郎たちは、一般人を装うオーナー・コグレと接触して、ジュレスタッフ誘拐事件の捜査を開始する。
 一方、今やすっかり誘拐犯人になりつつあるホシ・ミナトは、ジェラシット瓜二つのマネージャーと共に、事態の推移にパニック状態に陥っていた。
 「誘拐?! 誘拐?! 誘拐って、そこまでするつもり無かったのに~~~」
 「俺の親父曰く、やらずに後悔するより、やって後悔しろ」
 「……は?!」
 大騒ぎする妙ちくりんな二人組の姿を、快盗3人は冷ややかに見つめ、
 「ギャングラーかと思って誘拐されてみたけど、どこにも金庫ついてねぇよな」
 「うん」
 「……じゃあもういっか」
 ひたすら不測の荒事に慣れていた(笑)
 3人は平然と拘束を外して喧嘩の仲裁に入ると事態をあっという間に整理し、頼もしささえ漂います(笑)
 そこで聞かされたホシ・ミナトの事情……それは、別の宇宙で大スターだったホシ・ミナトが、コンサートツアーの途中でマネージャーともども見知らぬ宇宙へと飛ばされてしまい、誰も自分を知らない宇宙で飲まず食わずの生活を続けた末に、とうとう犯罪者まで身を落とした、転落の顛末であった。
 ミニバンは盗んだと明言されているので、事情が事情とは言え完全に真っ黒なのですが、ジェラシットそっくりのマネージャー登場にこの後の誘拐狂想曲が『海賊戦隊ゴーカイジャー』及び、その第13話「道を教えて」(脚本:香村純子)を彷彿とさせるのに加えて、泥棒を辞さない異世界から来た妙な二人組としては、松本寛也さん繋がりで『特命戦隊ゴーバスターズ』も加えた、多重のセルフパロディだったりもしそうでしょうか。
 「大スターなのに切ない話だ」
 「はい! うちらのお店に電話して、身代金、要求してみなよ」
 初美花がスマホを取り出すと、快盗3人が、この際コグレから身代金ぶんどって構わない、と笑顔で狂言誘拐を提案するのがルパンレンジャーの関係性を如実に示していて、大変素晴らしい流れでした(笑)
 そしてジュレに電話をかけた大スターは、勢い込んで「15万円」を要求して電話を切り、その予想外すぎる要求に固まるジュレサイド。
 「なんだよ15万って……俺らの価値一人5万円ぽっちか?!」
 「ふざけるな……!」
 「なに半端な値段言ってんの? うちらなめてんの?!
 一方の誘拐サイドは、よくわからないところでキレていた(笑)
 「せめて一億だろそこは!」 「そうだ一億だ」
 「つべこべ言わない、はい、やり直し」 「そそう~。とっととやっちゃいなー」
 そしてそこにしれっと混ざる、怪盗BN団(笑)
 「そうそう……ん?!」
 「僕は別の宇宙から来た、バランスでーす」
 「俺はナーガ・レイ」
 バランスとナーガは名乗りダンスを決め、透真が仏頂面枠と某古武術のプライドを燃やし、この場で一番変なマネージャーが「変なの出た」と叫び、事あるごとに挟まれる小ネタがあくまでくどすぎないのは今作の良いところ。
 「あの~、快盗ってことは、同業者?」
 「おまえ達も怪盗なのか」
 「うん」
 「バカか」
 「……あ」
 初美花が口を滑らせて快盗繋がりがばれると、BN団の狙いは現場に落とされたギターケースと判明。その中に、宇宙幕府ジャークマターの埋蔵金と言われる何かが隠されているのだった。
 「…………そうだ。ここは快盗同士、俺たちと手を組まないか」
 状況を検討した透真はBN団に取引を持ちかけ、そして再び、ジュレにかかってくる誘拐犯からの電話。
 その要求は、現金1億円、ギターケース、そして国際警察の持つルパンコレクション、と大きく跳ね上がり、話の裏に気付くや、ニヤニヤと顔を見合わせるコグレとノエル、おいノエル。
 いきなりオーバーアクションで悲痛さを露わにするコグレに対し、ノエルは率先してコレクションを提供し、ノエル、ノエル、君は、それでいいのか、ノエル。
 今回の脚本は、TV本編では前半のみの参加だった荒川さんですが、どう立ち回ればノエルとして適切になるのかには、やはり悩ましさが窺え、本編終了後の劇場版でも、なんとなく割を食うノエル。
 圭一郎たちもそれぞれコレクションを提供し、取引役にはコグレの身代わりとしてノエルが向かう、大変酷い茶番劇が行われようとするが、受け渡しの直前、地下から出現したブタギャングラーにギターケースが奪われてしまう! 取引現場を監視する警察戦隊の目がある中、魁利たちは捨て置かれた警察側の装備でまさかの警察チェンジを決め、特別編サービスを挟み込む流れが実に鮮やか。
 「国際警察! ……じゃないけど」
 「実力を行使するってね」
 「おーらら!」
 BN団はミニバンで一時撤収し、警察戦隊ジュレンジャーは、いつもの癖で回避しようとしたりワイヤー伸ばそうとして失敗し……バレませんか(笑)
 運動性無視して装甲値に強化ポイント全部突っ込んだの誰だよ?!(そこの「おーらら」言ってる人ですかね……?) と、警察スーツの扱いに苦戦するジュレンジャーは木の杭と煉瓦ミサイルをばらまいたブタギャングラーにまんまと逃げられてしまい、成る程、『三匹の子豚』。
 〔取引現場での変身 → 特別編スペシャル → スーツの性能違い → ブタに苦戦〕
 と、ストーリー展開・視聴者サービス・作品の個性・敗北の理由付け、の連動が、大変お見事。
 魁利たちが変身を解除すると、駆け寄った圭一郎らは叱責と共に無事を喜び、勢いで初美花を抱きしめるつかさ先輩、そして、咲也から歓喜のハグを受けて瞳に殺意が宿る透真(笑)
 とにかく細かい笑いどころの入れ方が巧く、見ていて終始楽しいのが、大変いいところ。
 「それにしても……謎が一つ増えたね。なぜギャングラーが、割って入ってきたのか」
 ノエルがそれとなく場の空気を転換し、その頃、住所不定自称救世主の男は、留置所にいた。
 そして、そんなラッキーを探しながら恐竜やでランチを取っていたハミィ、スパーダ、スティンガーは、ニュース映像にホシ・ミナトの姿を発見し、それに興奮するスティンガーのテンションの振り幅がやたら大きくて私の知っているスティンガーとちょっと違うのですが、本編終盤(未見)で、いったい何が…………非業の死を遂げた小太郎とチャンプの精神が融合して一人で三人分の救世主になったりしたのでしょうか。
 「なんであいつがこの宇宙に……」
 高度な変態、じゃなかったミナティの大ファンであるハミィが、ばっちり記憶しているギターケースの匂いを追跡すると言い出し(さすがに、キュータマで嗅覚強化)、保護者スパーダとハミィ&スティンガーが動き出していた頃、快盗トリオとBN団はジュレで合流。
 BN団は、一億円を返却し……あれ、それ、ホシ・ミナトの取り分だったのでは??
 ここからキュウレン組が一気に登場してくるので、導入部のエンジン&コメディリリーフだったホシ・ミナトとマネージャーがフェードアウトするのは必然的ではあるのですが、どこぞに身を潜めて体育座りで現金を待っている二人、のワンカットぐらいは欲しかったところです。
 互いの利益の為に、快盗と怪盗が再び手を組む約束を交わしていた頃、ジムとヒルトップも登場した国際警察には、国連本部の権力ルートで別の宇宙からやってきた大統領である、とお墨付きを得た鳳ツルギが現れ、ラッキーの身元が保証される事に。
 圭一郎はラッキーに謝罪して留置所から解放すると変身アイテムを返し、ここでもう一組のヒーローが繋がるのが、美しい構成(ただし快盗サイドが握手をかわしたのに対して、こちらは変身アイテムの受け渡し分、距離がある)。
 「一つ聞きたい。こんな留置所は、君なら簡単に抜け出せる筈だと大統領が言っていた。なぜ大人しく?」
 「この星の正義を乱す事はしたくなったんだ」
 悪の幕府に支配された宇宙で育ったラッキーだからこそ、“自らの正義”を強引に貫こうとするよりも、“この星の正義”を尊重したかったと語られ、さすがに原典時代のラッキーのキャラ付けをあまり覚えてはいないのですが、今作のラッキーは(成長分も込みで)勢い任せのようで、その実は理性的、という人物像(ある程度、王族の自覚も出ている扱いなのかも)。
 ……とはいえこの辺り、“この星の正義”が“支配者に都合のいい正義”である可能性は充分にありうる危うさを孕んでいるわけですが、この宇宙で最初に出会ったのが国際警察機構の朝加圭一郎だったのも、ラッキーの「ラッキー」の内という事でありましょうか。
 釈放されたラッキーと、ちょっと痩せた気のするツルギにより、ドン・アルマゲを撃破した後、存在が判明した影武者、ドン・アルカゲを追って救世主一行がこの宇宙を訪れた事が改めて説明され……ワームホールによる時空移動直後に、ラッキーとはぐれてしまっていたスパーダ達は、ギターケースの匂いを辿り、ブタギャングラーのアジトを発見。
 そこに問題の影武者も姿を見せて、ブタは跡目争いの勝利の為に影武者に従っている事が判明し、将軍の影武者にへこへこするギャングラーのモチーフがブタなのは、『キュウレン』原典を考えるとなかなか意味深であります。
 ギターケースの中には、星100個分のエネルギーが閉じ込められており、それを自らの物にしようとする影武者を止めようと飛び出すスティンガーら、そして、快盗&BN団。
 「ドン・アルカゲ……おまえの好きにはさせない!」
 「予告する。あんたのお宝、いただくぜ!」
 だいたい映画の折り返し地点でルパンレンジャーが変身し(本編終了後の特別編という事で、なるべく生身キャストの芝居で進めたい意図もあった感じでしょうか)、8人のヒーローとブタギャングラーの激突となり、変身するとひとまず統一感出るのはスーパー戦隊の強みであり。
 「色とりどりで綺麗だけど、赤と青は居ないの?」
 「居るよ。全部で、12色ー!」
 「えぇー?!」
 「すっげ。クレヨンかよ」
 構成員を蹴散らすも、金庫3つのブタパワーに大苦戦する星間連合だが、明らかにいつの間にか救世主たちを矢面に立たせていたルパンレンジャーが横から奇襲を仕掛けると、軽い身のこなしで本領発揮から三つのコレクションをあっさり回収し、8人一斉攻撃を受けたブタはざっくり爆死。
 ルパンレンジャーは首尾良くコレクションの回収に成功し、5人の救世主たちは、自分たちの宇宙で生まれた悪が、他の宇宙に迷惑をかける事が捨て置けない、と爽やかに影武者退治へ急ぎ…………タ、タコ……はまあさておき、それを見送るルパンレンジャー。
 「……向こうの宇宙では、怪盗も救世主なんだね」
 イエローがぽそっと呟き、『キュウレン』世界の「救世主」という単語を「ヒーロー」の代わりに使う事で、快盗にもさりげなく「ヒーロー」を語らせるのが、憎い仕掛け。
 一方、ギターの力を我が物にしようとする影武者のエネルギー反応を事務方が感知して駆けつける警察一行だが、既に宇宙のパワーを浴びていた影武者は超絶強化。
 「馬鹿か! 何考えてるんだ!」
 しゃにむに突っ込む獅子赤を援護し、一時退却を進める警察赤だが……。
 「俺はひかない! 絶対にひくもんかーーー!!」
 獅子赤は影武者の胴体に食らいつき……ラッキーと差別化しようとすると、圭一郎は爆発力よりも知性重視になる結果、ぶっ飛んだ面白みの部分が削がれてしまうのが改めてなかなかバランスの厄介なキャラではあります(基本的に、魁利と並び立たせる事で映えるキャラ付けというのもありますが)。
 「明日の夜明けとともに、真の力を得たこの俺の強さを、思い知らせてやる!」
 影武者は両レッド、そして残りメンバーをまとめて吹き飛ばすと姿を消し、無謀に見えた突撃は、影武者の体に触れる事で宇宙パワーの吸収を阻害し、アキレスの踵のごとき弱点を作る為だった、と圭一郎に説明してラッキーは気絶。
 「どうする、圭一郎くん? 彼を信じてみる?」
 救世主一同も駆けつけてラッキーの行動を支持するが、ラッキーの言行を信じ切れない圭一郎は、本編終盤に続いて、厳しい役回り。
 そして翌日――背中に宇宙パワーリングを生やしたドン・アルカゲの前に立つ、救世主&警察連合、総勢10名は一斉攻撃を仕掛けるも、範囲攻撃であっさり変身解除。
 「これで最後だ」
 「ちょっと待ったぁ!」
 だがそこに巨大な竜が現れると、掟破りのダイレクト火炎放射に続いて地面に降り立ったのは、残り5人の救世主(チャンプと小太郎、生きてた)。
 更にはラッキーが復活し、BN団から受け取ったメッセージを手に、大変気取って現れる快盗たち。
 そして…………さわお
 「「「快盗チェンジ!!」」」
 「「「「「警察チェンジ!!」」」」
 『セイ・ザ・チェンジ!!』
 「本能覚醒!」
 ……なぜ(笑)
 ちょっと巻き気味で、3+4+12+1が、フル名乗りから揃い踏みし、ご一緒にジュウオウザワールドはいかがですか?
 「刮目せよ。今、伝説が始まる」
 「ドン・アルカゲ! 俺たち20人の力を、見せてやる!」
 「はっ! 20人がなんだ。この俺の力を教えてやる」
 …………あー……「19人」だと、なんか、据わりが悪かったのでしょうか(笑)
 影武者は数には数と再生幹部トリオ+足軽軍団を召喚し、『キュウレンジャー』主題歌(割と好き)で、大乱戦がスタート。
 野生大解放したサワオは、足軽兵を薙ぎ払うと、レベルが違うんだよぉぉぉと叫びながら明後日の方向に走り去っていき……本当に、なに(笑)
 「戦隊が二つある宇宙なんて、おったまげたな~」
 「じゃ、もっと驚くかな? ――快盗チェンジ」
 「うわっとぉ?! リバーシブル? いや……どっちつかず?」
 ルパンXに対して、別の宇宙から、酷いツッコミが入りました(笑)
 再生幹部との、金銀ぽい人たち、寒色系の人たち+シェフ繋がり、女子会、という組み分けは割と納得度が高く、まあ、スパーダ(黄色)は、シェフ繋がりより女子会にしれっと混ざっていた方が面白かったのでは感もありますが、ラプターの女子会妄想では、透真と共に料理提供役として登場。
 赤い4人は影武者と戦い、土壇場でラッキーを信じる事を決めたパトレン1号は執拗に影武者の下半身を攻撃する。
 「おい! 何してんだ! 馬鹿かよ。さすがに無茶だろ!」
 「いや、彼も不器用かもしれないが、馬鹿じゃない。な、ラッキー」
 「ああ! そういう事だ!」
 「お巡りさんが不器用なのは、俺が一番知ってるつーの!」
 皆が一斉に圭一郎をフォローすると、怒濤の連続攻撃を浴びせたところに、再生幹部を撃破した仲間達、そして通りすがりのグッティが加わり、パトレンU号、ミラクルマスカレード、スーパーセイザチェンジの大盛りで全方位からギャラクシー!
 ありたっけの必殺攻撃を叩き込まれたアルカゲは大爆発して消し飛び、見所は、しれっとルパンXのままパトレンU号の横に並んでいるノエルでしょーか(笑)
 しょせんは影武者という事か、大げさな強化と満を持しての再登場の割にはネオ○ゴーン様ばりの弱さだった影武者がさすがに巨大化して延長戦に突入すると、問答無用のグッと来るカイザーVSXに救世主たちまで乗り込む大所帯で、戦闘開始。
 ここで流れる挿入歌が格好良く、後はノリと勢いで一方的な攻撃を浴びせての撃破には、お祭りとしては十分に納得の行く盛り上がり。
 「永遠に、アデュー」「任務完了!」「グッドラック」
 ……弱かったな、影武者。
 かくして、ドン・アルカゲの、武道館満員計画は、水泡に帰すのであった。
 「戦いの中でつくづく感じた。おまえは本当にラッキーな男だ。感謝する」
 「違うな」
 「……え?」
 「あんたみたいに期待に応えてくれる男に出会えた事が、ラッキーだったんだ。だからラッキーを呼んだのは……朝加圭一郎、あんただよ」
 戦い終わって感想戦となり、隕石ダイブ直後に朝加圭一郎に出会ったのが、“ラッキーの「ラッキー」の内”である点が回収され……ほらラッキーさん、“この星の正義”とやらが“豚を飼い慣らすのに都合が良い正義”と判断したら、“飼い慣らされた豚どもの泣き言”とか知ったことじゃない人ですからね!
 「似たもの同士かもな、あの二人」
 つかさ先輩が綺麗にまとめようとするのですが、圭一郎は他人の分まで自分の命をベットしようとするけど、ラッキーは何かを手に入れようとするなら当人にも命をベットする事を要求するタイプだった気がするので、ちょっと違うような(笑)
 ……そういう点では、そこで躊躇なく命をベットできる男=あんたみたいに期待に応えてくれる男なので、相性は凄く良かったわけですが。
 「そういえば、前にラッキーが言ってました。お巡りさんの居る宇宙では、お巡りさんが救世主だって」
 「ありがとう、お巡りさん」
 「サンキューであります!」
 BN団からの感謝に対して、びしっと敬礼を返す咲也とつかさの姿が綺麗に決まり、祭りの終わりにほんのちょっと、希望と共に“現実の明日”へ寄せるのが、冴えた一球。
 「じゃあな、朝加圭一郎。この宇宙の平和は、任せたぞ」
 「オッキュー」
 救世主の流儀に合わせる洒落っ気を見せる圭一郎だが、快盗の事を持ち出されると途端に憤激してラッキーを追いかけ回し……それを見下ろす、快盗トリオ。
 「圭ちゃんブレないな」
 「……ねぇねぇ。うちらも救世主になれたかな?」
 「……さあな」
 ブタギャングラー戦後の「向こうの宇宙では、怪盗も救世主なんだね」も鮮やかに拾い、一瞬、魁利の視線は陽の当たる道をゆく二人へと向けられて…………
 「……ま、快盗のほうが気楽でしょ。アデュー~」
 背中を向けて再び影へと潜む快盗たちの姿から青空を映してEDに入り、登場オールキャストによるキュータマダンスでスタッフロール。EDの見所は……
 ・元バリバリのアイドル力を見せつける初美花
 ・しれっと混ざっているさわお
 ・さらっとバック宙するノエル
 ・そして、当たり前のようにねじ込まれる、武突参流古武術
 ニータッチ! ニータッチ!
 なお、クレジットによるとジェラシット似のマネージャーは、ジェラタロウ、との事。
 最後は、警察&快盗が笑顔で並んで画面の向こうへメタ的な挨拶をするが、肩を組んでいる事にハッと気付くと追いかけっこが始まって、一人立ち尽くすノエル……ノエル……。
 「おーらら~」
 結局アムールってなんなんですかノエルさん……!
 圭一郎に追われる快盗魁利が画面に向けてカードを投げつけると、そこには
 「また会える日まで…」
 のメッセージで、Fin.
 ……ホシ・ミナト、拾わなかったぞ(笑)
 ただでさえややこしい構造の『ルパパト』に、大人数戦隊の『キュウレン』を掛け合わせるクロスオーバーという事で大きな期待はしていなかったのですが、テンポの良い導入、小刻みに挟まれるユーモア、顔出し若手俳優を優先しつつ段階的に登場する救世主たち、の構成が綺麗にはまり、面白かったです。
 ブタと影武者があまりにざっくりと退場して、悪役サイドの脅威感が薄かったのは少し残念でしたが、クロスオーバーによる化学反応にウェイトを置き、遊び心溢れる加藤監督の軽妙な演出と、キャラクターの魅力を前面に出した荒川さんの脚本が良い形で噛み合い、最初から最後まで、気持ちよく楽しめた一作でした。