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年始コスモス

ウルトラマンコスモス』感想・第64話

◆第64話「月面の決戦」◆ (監督:根本実樹 脚本:大西信介 特技監督:佐川和夫)
 「行くなウルトラマンコスモス!!」
 「…………フブキさん……僕の事を」
 「薄々は気付いてた。かなり前からな」
 カオス会によって封鎖されたトレジャーベースに駆けつけようとするムサシを止める為、フブキは遂にその一言を口にし、「かなり前から」をアピール。
 「……どうして? どうして今まで?!」
 「……正直、俺も認めるのが怖かったのかもしれない。おまえがウルトラマンだという事をな」
 職場の仲間がウルトラマンの正体に気付かない問題は、気付かない理由をどうするかよりは、気付いたその時をどう描くか、の題材といえますが、9割方そうだと思っても実際には言いにくい、というのは心情として納得できる落としどころ。
 フブキは、混沌の海に消えかけていた空手チャンプ設定を持ち出してムサシを力尽くで止めようとすると、だまし討ちの空手パンチ!
 「どうしてそこで油断する?! ……いつまでも優しさに振り回されやがって! …………でも……そこがおまえのいいところだけどな」
 気絶したムサシを地面に横たえたフブキはトレジャーベース救出へと向かい、今作の問題点は、ムサシの「善良さ」「無垢なる正当性」を主張しようとするあまりに、それが時に物語の筋を歪めてしまっていた事だったのですが、あるキャラクターの「そこがおまえのいいところ」を鮮烈に引き出す為に必要なのは、何をやっても「いいところ」が肯定される世界ではなく、それは本当に「いいところ」なのか? を問いかけてくれる存在だな、と。
 改めて、ムサシに足りなかったのは我夢に対する藤宮的存在ではなかったかと思わされます(『ガイア』で巧くやり過ぎたので、二番煎じは避けたい意識はあったでしょうが)。
 トレジャーベースへと急行したフブキは外部からカオスバリアにキメラミサイルを撃ち込み、さすがに最終決戦、パイロットとしての見せ場……! は秒で終了して、撃墜されそうになったところをコスモスに救われる。
 「ウルトラマン、コスモス……!」
 「決着をつけよう、カオスヘッダー(コスモス声)」
 コスモスと、バリアを解除してウルトラマンの姿を取ったカオスヘッダーは月面へ飛んでいき、トレジャーベースの機能は回復。だが、バリアの消滅した鏑矢諸島から怪獣たちが姿を消してしまった事が判明し、更なるカオス化を防ぐ為、キャップは急ぎ、P87事務所へのカチコミを迫られる。
 「待ってくださいキャップ! コスモスは! ウルトラマンコスモスは……!」
 「それ以上言うなフブキ!」
 キャップ、フブキ、アヤノが次々と「私も知ってた」と告白を始め、事ここに至って驚いた表情を見せるリーダーがとても微妙な扱いになりましたが、誰か驚いてくれないと困るので、リーダーは尊い犠牲になりました(ドイガキも犠牲になりました)。
 アイズのメンバーそれぞれが二重の意味で戦友への思いに揺れる中、月面の巨人同士のやり取り、そして吉井が解読を終えた異星の記録により、カオスヘッダーの正体は、とある文明により人工的に作られた生命体である事が明らかになる。
 「我々こそが、秩序をもたらす」
 カオスヘッダーの目的、それは、多種多様な生物の意識を一つにまとめ、統一された不変の秩序を惑星にもたらす事であり、やはりこれは、銀河共和同盟の仕業なのでは。
 正直、ラスボスの正体と目的としては、凡庸な印象ですが(凡庸が悪いというより、凡庸さを劇的にするだけの仕込みが足りていない)、20年ぐらい前だとこういったアイデアが旬の頃合いではあったでしょうか……まだ、ポスト『エヴァ』華やかなりし時期ではあったのかも。
 「善意って言ったってな、それは押しつけだ」
 「そう。秩序は与えられるものじゃない。考えの異なるものが、互いの考えをを尊重しながら作り上げていくもの」
 ……言いたいことはわかるのですが、防衛軍を虫けらみたいに扱っていたアイズの人たちが言うと、悪い冗談のようにも聞こえて困ります。
 カオスヘッダーの(地球人から見た)侵略行為に時間がかかっていたのは、もたらすべき秩序の為に対象の惑星の生物がいかなる意識を持っているかを知る必要があった、というのは納得できる理由となり、地球人類の心から憎悪を知ったと語るカオス会長は、その憎しみをコスモスへと向ける。
 爆炎を突き抜けながらのコロナ変身、そして月面宙返りをしながら光に包まれてのエクリプス変身は大変格好良かったですが…………一瞬でも! このままコロナ活躍するの?! と思った、私が浅はかでした!
 P87事務所へ向かっていたキャップは土壇場で月面へと針路を変え、コスモスを援護。背後から打ち込んだキメラミサイルこそ防がれてしまうも、その間に体勢を立て直したコスモスが、月面を戦場に選んだ理由……それは例のカオスヘッダーが苦手とする鉱石の存在だったのだ!
 と鉱脈を露出させ、その光を浴びたカオス会長の動きが止まるのですが、一応、ヘルズキング2世回で扱っていたとはいえ、ソアック鉱石(と聞こえるのですが、ここまでキーにするなら、もっと聞き取りやすい名称にもしてほしかったなと)そのものが決して印象の強いアイテムでは無く、アイズが積極的に関わっていた印象的な記憶も無いので、大逆転の切り札にするには、劇的さが不足してしまいました。
 この最終章、『コスモス』ここまでの穴を埋めながら様々な要素を繋げて盛り上げようとする狙いは良かったものの、同時に組み立ての不備と仕込みの不足も露呈して、一つ上のステージまで、手が届ききらなかった感。
 背後に鉱石のバックライトを浴びた月面のステージで、ウルトラカラテバーストの直撃を受けて消し飛ぶカオス番長……だが、直後P87事務所が月面にそのまま瞬間移動すると、今、番長を超え、会長を超え、カオス総大将が姿を現す!
 再びウルトラマンを離れ、見るからに悪魔的デザインに戻った総大将のカオスパワーの直撃を受けたコスモスは海老反りで吹き飛び、なんかちょっと『ガイア』で見た覚えがあります(笑)
 満身創痍のコスモスはカオス総大将に追い詰められるが、事務所が移転したならむしろ好都合、とテックブースターからカオスキメラが打ち込まれ、それに合わせて放たれたコスモス必殺拳により、カオス総大将、あっさり消滅?!
 「ありがとう。ムサシを頼む」
 コスモスは体内から分離したムサシをテックブースターのコックピットに預け、今回の戦闘中、アイズの面々がずっとコスモスの事を「ムサシ」と呼んでいるので、既に分離されたムサシが地球に転がっていたら気まずいな……と思っていたのですが、中に入っていてホッとしました。
 「……コスモス? ……コスモス! ウルトラマンコスモスー!!」
 目を覚ましたムサシの前で魔法のステッキは青い鉱石へと戻り、コスモスの姿は月面の闇に飲まれるように消えてしまい……つづく。
 次回――さすがにあれで終わりではなかったカオス総大将、襲来! 夢を持つ限り、必ず奇跡は起こる!