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アミーゴ魂は永遠に

仮面ライダーバイス』感想・第16話

◆第16話「守りたい想い…時代は五十嵐三兄妹!」◆ (監督:諸田敏 脚本:木下半太
 いやあの、五十嵐三兄妹さんとやらは、どうしてのっけから、デッドマンズが変身してやりあっているのを、揃って放置……?
 仲間割れ?? とか言いながら呆けていないで、とっとと身柄を確保するべき状況だと思うのですが、追い詰めた敵組織の上層部を完全に野放しにしているのが、あまりにも話の都合丸出しすぎて、開いた口が塞がりません。
 かつてアギレラに救われたと語るフリオはオルテカに掴みかかるもカメレオンに羽交い締めにされ、ギフオブジェの消滅?に泣き叫んでいたアギレラは、傷つき倒れたフリオの姿を見ると、唐突に「私は、守ってなんかほしくない!」と、また、何の厚みも積み重ねもなく“それっぽい”だけの台詞を口にするや、地面に落ちていたハンコを拾って使用。
 何故かデッドマンズの修羅場を一同揃って棒立ちで見つめ、フェニックス構成員を含めて誰一人、フリーになっているイカやカメレオンを取り押さえようとするわけでもなければ、目の前に落ちているハンコを拾おうとするわけでもなく、地面の丁度いい位置にアギレラ用のハンコが落ちているのは、もはやギャグ。
 アギレラはハンコを用いるとハチデビルに変身し、オオカミ・イカと来たらヘビかと思ったら、女性なので蜂女オマージュで成る程。
 ……話の展開の方は全く成る程ではないのですが、恐らく脚本段階では、デッドマンズが目の前で内部抗争を始めたのがあまりに予想外で一輝たちはいい感じに呆然としてしまう! みたいな想定だったと思われるものの、映像への落とし込みが完全に失敗(落とし込み以前の状況設定にも多大な問題ありですが)。
 率直に、この10年の諸田監督については評価が低いのですが、もう少し、どうにかならなかったものでしょうか。
 暴れ回るハチデビルをリバイが止めようとするも、ドタバタしている内に結局デッドマンズにはみんな揃って逃げられて……口が開きすぎて顎が外れそうです。
 円盤の落下跡から発見されたギフ様オブジェはフェニックスに回収され、一輝は一応キルマークについて気に留め、「今後の殺しは俺が引き受ける」と大二に向けて宣言するも拒否されるのですが、兄の責任感とか、世界を守る為に手を汚す事を辞さない覚悟を決めたというより、“命の重さを感じる人の心が足りていない”ように見えてしまうのが、困ったところ。
 一方、さくらが心配でならない母親に改めて事情を説明する為に、銭湯を訪れた門田さんには、人の心があった。
 その尻馬に乗る形で、デッドマンズを完全壊滅するまで戦いたいと申し出る3兄妹もなんかいいこと言っている風に聞こえる、門田ミラクル。
 ……いやだって、本気で「さくらにはキルマークを背負わせたくない」と考えているなら、是が非でもこれからの戦いからはさくらを遠ざけようとすると思うのですが、とにかく3兄妹ライダー必須、という番組要件と、一輝に背負わせたいものの噛み合わせが凄まじく悪く、「要求されている作品構造」と「やりたい作品内容」が正面衝突して辺り一面火の海になっている、いつもの『リバイス』。
 一輝に比べると人の心があるように見えるも、実際のところ今回ぶっ飛んでいるのは、さくらを戦力として活用しようとする門田さんの方ですし、その点で門田さんは間違いなく「狂気の側の人」なのですが、では一輝がどうなのかというと、人の心の薄さが「狂気の側」を窺わせる一方で、悩ませたい問題は「正気の側」という点が噛み合っていなくて、物語の据わりの悪さを生んでいます。
 アギレラ様はドレス姿のまま大荒れで、騎士……というより忠犬フリオが、回収したと称していつもの衣装を運んできて…………うん、君、それ、クリーニングに出しておきますね! と手にした予備を今までどこに保管していたのか、早めに白状しておけば、検察も情状酌量の余地を認めてくれると思う。
 一方、旅館潜入グラシアス! とか音楽性が違いすぎるんですよ! と不満たらたらだったバンドを脱退した結果、変態カメレオン野郎と二人旅になってしまったオルテカは、厳しすぎる現実に打ちひしがれていた。
 一発逆転の手段として、五十嵐母に成り代わる事でリバイスドライバーを奪おうとするカメレオンだが、先回りして手を打っていた門田により五十嵐家の面々にはフェニックスの護衛がついており、作戦失敗。母親の前で三兄妹が変身を見せる、という趣向でバトルとなり、もう少し引っ張るかと思われたカメレオン、特に若林(本物)の存在が掘り下げられる事もなく、門田が若林の仇を討てるわけでもなく、あっさり爆殺。
 一輝は分離不能なデッドマンズ:フェイズ3を“殺してしまった”事を噛み締め…………うーん…………下手に手を出すと大やけどの要素を盛り込んできましたが、今作ここまでの出来からすると、銭湯灰燼に帰すの図しか思い浮かびません。
 司令に再任した門田は深刻な体調不良を抱え、その背中を狩崎がニヤニヤと見つめ、フェニックスの医療施設で治療を受けた五十嵐父はレントゲンに心臓が写らない事が発覚。そして牛島家(『ウルトラマンネクサス』を思い出すホラーハウス)に呼ばれたさくらを待ち受けていたものは……で、つづく。
 予告で煽った悲劇と準備万端だった門田リタイアをひとまず回避した上で、
 ・一輝のキルマーク問題
 ・門田の体調不良
 ・狩崎の邪悪な笑い
 ・五十嵐父の謎
 ・牛島家の地下室
 と不穏な布石を一挙ににばらまいて複数の引きを作る手法は面白かったですが、アバンタイトルの壊滅的な出来に心が凍り付いてしまい、以後、解凍されずじまいの年内ラストとなってしまいました。
 一輝の煩悶を描く一方で、さくらがキルマークをどう受け止めているのかについては全く触れないのも作劇としては誠実さを欠きますし、年明け早々にその要素を使ってくるなら少し見方も変わってきますが……次回――新生アミーゴブラザーズ、結成?!