『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第41話
◆第41カイ!「推しメン沼はつるつる深い!」◆ (監督:田崎竜太 脚本:香村純子)
遂に10年越しの再会から、功博士奪還に成功したゼンカイジャー!
「あれから毎日ちょっとずつ、空白だった家族の時間をとりもど…………せてるチュン?」
功博士は界賊船のシステムに夢中で、やはり、そういう人だった……!(笑) ……まあ、もともと並行世界に興味を抱いていた上に10年間の空白があるので、知識欲にブレーキがかからなくなっているのは、納得はできるのですが。
「なあ介人、せっかく親父さん帰ってきたのにあれでいいのか?」
「……なにが?」
世界の違いに興味津々の功博士は好奇心全開でキカイノイド組にも質問を繰り返しており、それについて気遣うジュランが、今回もおいしい。
「親父さんぶっちゃけ、介人たちより俺らや界賊のあんちゃん達と居る時間、長くねぇか?」
「すっごく父ちゃん全開、て感じ」
介人はむしろ、それこそが父ちゃんらしい、と笑顔で受け止め、誕生日と帰宅、一区切りを経ての成長という事なのでか、父ちゃんよりも介人の方が大人っぽい……!
「ふーーん、そういうもんだってんならいいけどよぉ。でもほら、親子でキャッチボールーとか、積もるはなしーとか、ないの?」
「あるにはあるけど……」
母ちゃんの事を、思い出して欲しいですね!!
ジュランはジュランで、親子の形、が妙にテンプレートなのはなにがしかの欠落を思わせるところもありますが、考え込んだ様子の介人が、秘密基地で機械いじりをしている功博士に話しかけようとすると、突然、功の目が黄色く光り……
「ごめん介人……俺、充電しなきゃ」
ばっちり残っていた、後遺症。
……いやまあ、10年、トジテンドにさらわれてイジルデに脳をあれこれされていたのかと思うと、現状、これで済んでいるだけマシな方なのかもですが……「おいらよりめんどい」扱いで、本当にいいのか。
街には懲りないトジテンドの刺客・メンワルドが姿を現して、金と交戦中。介人とヤツデは、俺の作ったゼンカイジャーの戦いを間近で見たい! と大興奮の功を必死に引き留め……やっぱり、基本的にダメな人だった。
……まあちょっと、仲間達が半分に割れたり、実の息子が折りたたまれたりする姿への、感想を聞いてみたいところはありますが。
かくして、ゼンカイザー不在でメンワルドを取り囲むゼンカイジャー&ツーカイザーだが、意外な腕利きだったメンワルドにより、次々と乾麺を必殺! されると、体内に打ち込まれたヌードルだけにニードルの作用により、チキンかシャケかむねかももか……じゃなかった、うどんかそばかの戦争が始まってしまう。
「ちょっとした派閥争いメーン!」
ワルド怪人の最近のトレンドは、いっけん地味だが着実な人間性の破壊で、前半より被害規模が狭まっているような気はする一方、見ていて感じるいやらしさは上昇しています(笑)
うどんかそばか、文明の興亡を懸けた争いが勃発し、結局は「ちょっとした保護者参観」気分の功を止めきれず「絶対隠れててよ。やっと洗脳解けたんだし」と強調する介人が、遅れて駆けつけた現場で目にしたものは、がっつり洗脳されている仲間たちであった。
「俺が蕎麦だっつたら、蕎麦だ!」
「うるせぇ。うどん派なめんじゃねぇぞ」
兄の前で銃の撃鉄を起こすフリントが、やたら格好いい(笑)
「……これが、トジルギアの力か……」
さすがの功博士も、俺の発明にこんな活用方法があったなんて……! じゃなかった、あ、俺、こんな連中にずっと利用されてたんだ……みたいな顔になる中、うどんvs蕎麦の闘争は瞬く間に街中に広がっていき、もはや一触即発。
両派閥からスカウトを受けた介人は、「おいしい方につく」と巧みに誘導すると、メン打ち対決を持ちかけて、セッちゃんがメンワルドをきゅぴーーーんするまでの時間稼ぎを狙い、すっかり、奇天烈なワルド事案への対処法に慣れきっている息子に、功博士は暖かい視線を向ける。
「……なに?」
「いや、頼もしく育ったなーっと思ってさ」
「なんだよ、これぐらい」
「メン対決だけの事じゃない。彼らと話してて思ったんだ。みんなそれぞれ面白くて、いい仲間じゃないか。そんな彼らに、介人は信頼されている。何年も会えなかった親として、こんな嬉しい事あるか」
ドタバタ騒ぎの中で父子の語らいの場をスムーズに差し込み、功博士は確かに知的好奇心もあったが、会えなかった間に息子が手に入れたものを見て、息子の確かな成長を感じ取ってもいた、と親心に繋げるのが、鮮やか。
「……でも俺、けっこう失敗もしてるし」
自分は父を取り戻したが、代わりにステイシーにとって唯一の仲間を取り上げてしまったのではないか……と気に病む介人の問いかけに、ハカイザー時代の記憶が無い功は、ステイシーを仲間だと思いようが無い、とバッサリ言い切り、
「俺の腰は良くねぇが、うどんのコシは最高よ」
「グルテンが、ブルンブルンです!」
うどん作りとそば作りをBGM代わりにシリアスを展開するのは、実に田崎監督らしい見せ方。
功からしてみれば、拉致・洗脳・改造時代の仲間を優先したい気持ちはあるのか、と問われてもさすがに首を縦に振る余地がないと思うのですが、それでもステイシーの立場でものを考えずには居られない、いくら介人でもやや過剰なステイシーへの甘さ、介人はなぜステイシーを救いたいのかを、もう少し掘り下げる(明確にする)のかと思ったのですが踏み込みきらず、どうしてもステイシー問題は、最終盤の大きな落とし穴としての不安が拡大していきます。
「ただ……介人がその彼の事を一人にしたくないんだって事はわかった。だったら俺じゃなくて、介人がどうにかしろ。本気出せるのは、介人、おまえだ」
功は介人を激励し、
「馬鹿みたいにうまいメン作ってやろうぜブルーン」
「介人たちを、僕らの仲間にする為に」
そこ繋げるのか(笑)
「結果出すまでー、全力全開だー!」
それはそれこれはこれとして、父から暖かいエールを受けた介人の元にメンワルド発見の連絡が入り、作戦第二段階だ、と立ち上がった介人は「実は俺、ラーメン派なんだ」と衝撃の裏切りを告白し、キーワードは、「裏切り者」です(『リバイス』の伏線を勝手に回収)。
そば派とうどん派の怒りを焚き付けて外へと駆け出した介人は、発見したメンワルドに向けてジェットマンギアを発動するとトマトを投げつけ、行動を妨害。そして、追いついてきた仲間たちに向けて、更なる衝撃の真実を突きつける。
「みんな! あのメンワルド、実はパスタ派だって!」
吐き気がするほどの、外道……!!
なぜトマト?? と思っていたら、それはメンの上にたっぷりかかったトマトソースの見立てと判明し、まんまとメンワルドを陥れた介人は、そば派とうどん派の怒りを糾合してメンワルドへと向けさせ、世界をパスタ派に支配させない為に、今、ラーメン派とうどん派とそば派が手を組む!!
割と、ワルドを倒す為なら卑劣を辞さない印象のあるゼンカイジャーですが、番組史上トップクラスに非道な策謀により、呉越同舟メンカイジャーが誕生し、キーワードは、「裏切り者」です!
勢いで爆殺されたパスタもといメンワルドは、巨大戦では全ての麺を統合するものの力を見せつけ、麺パワーにより再び派閥争いを引き起こすが、最後は怒りをまとめてぶつけられて弾け飛ぶのであった(なんかこの、派閥争いを起こすも逆にその怒りをぶつけられて敗北、って以前にもどこかで見たような)。
残されたそば粉とうどん粉を自分で麺に仕立てて完食(皆に振る舞うわけでもなんでもなかった)していた功博士は、フリントの設計図を元に作り上げた並行世界間移動装置を取り付けたワゴン車――デロリゼンで美都子探しへ……は、納得のいく落としどころ。
一方トジテンドでは、ハカイジュウオー敗戦の責任を問われてお仕置きを受けていたイジルデが、誰かに罪をなすりつけようと、ひらめキング。
そのスケープゴートには当然ステイシーが選ばれ、強引な言い逃れの中で、内部に裏切り者でも居なければ王様のパワーが負ける筈ないですよ、とボッコワウス大王のプライドをくすぐるのが、さすがトジテンド体制でこれまで生き延びてきた老獪さを感じさせます。
無茶苦茶な冤罪、どころか身に覚えのありすぎるステイシーは狼狽のあまり言葉尻を捉えられ、本当にキーワードだった「裏切り者」! 咄嗟に逃げようとするも壁王様直々のお仕置きサンダーを受け、どうなるステイシー?! でつづく。
トジテンドの体制が悪、というのは前提条件とした上で、ステイシーに関しては、裏切り者の末路としては因果応報ともいえる面があるのですが、キャラクターとしての好感度はともかく、結局のところ、どちらの世界にとってもコウモリとしてしか振る舞えなかったステイシーが、本当に自分が欲しかった居場所を、与えられるのでなく掴み取る為には何をすればいいのか、を問われる展開になればいいなというか、問われる余地がこの後残っていればいいな、というか……。
つまり君は、きのこ派なのか? たけのこ派なのか?(新しい戦争の火種)
介人の手には、功博士が新開発した46バーンのギアが残され、次回――桃太郎、参上!
渡辺監督が3連投して年末に1話浮いたところはどうするのかな……と思っていたら、既に新戦隊のパイロット版担当が発表されている田崎監督が第12話以来の参戦となり、次回のドンブラ先行登場合わせ、という事で成る程全開。
この10年、本編内部でのコラボはちょくちょくやっていますし、冬映画での先行登場を本編で、と思えばそれほど奇抜ではありませんが、どう処理してくるのか、楽しみにしたいと思います。