『ウルトラマンコスモス』感想・第58話
◆第58話「復讐の空」◆ (監督/特技監督:原田昌樹 脚本:右田昌万)
防衛軍の戦闘機が立て続けに謎の怪獣に襲われる事件が発生し、囮作戦を敢行したチームアイズの前に、第47話「空の魔女」において地球侵略をもくろんだ共生生物ギリバネスが姿を見せる。
フブキ機の攻撃を受けて地上に逃走したギリバネスは、地球人そっくりの「青い服の男」と「赤い服の女」に擬態し、脚本家は変わっているので原田監督の女性ゲストが気に入ったので再登場させてみたパターンの可能性が高そうですが、これまで基本的に侵略異星人に関しては容赦無しの路線だったのに、フブキの攻撃を制して捕獲を優先しようとするムサシの態度にまず困惑。
更に、フブキが女の腕をねじり上げているところを目にすると解放させて優しく抱き止め(吸血洗脳能力は把握している筈なのですが……)、かつての想い人への擬態に苛立つフブキを強調したかった意図は見えますが、対するムサシの行動に激しく首をひねる事に。
もしかするとムサシ的に、女の方はあくまで「翼の怪獣」扱いなのかもしれませんが、明らかに地球人と対話する知性を持って表現されるので、「怪獣」と「異星人」の線引きも混濁してきてしまいます(ムサシ的に、どこまでが「保護の対象」で、どこからが「殲滅の対象」なのか、という話になるので、大変危ない)。
チームアイズは捕まえた女の身柄を医療センターへと押しつけ、女を警戒するシノブと、外見が女性なら博愛主義を貫くカワヤの対立も、“価値観の衝突”というよりも、あくまで医者の立場で接しようとするカワヤ(今回は全くの正論)に対してリーダーが無茶を押しつける形になっており、そもそも急に敵性異星人の拘束というこれまで検討した事もない行動を取るチームアイズの迷走ぶりがエピソードの軸を行方不明にする、毎度ながらの『コスモス』ぶり。
意図的だったのか尺の不足だったのかわかりませんが、10話以上ぶりの再登場にも拘わらず、第47話「空の魔女」の内容にはほとんど触れないので、前回のギリバネスが何をしたのか曖昧なまま進んでいくのも加わって、非常に入りにくい前半でした。
青い男が医療センターを襲撃して赤い女を取り戻し、いまいち冴えないリーダーの肉弾アクションシーンを挟んで、男女が、地球侵略を諦めた上層部の方針に逆らった事で群れから追放された、はぐれギリバネスである事が判明。
「戻れる場所が無いなら、この星で生きればいいじゃないですか!」
「……仲間を、殺した奴らとか」
「争う力があるなら、わかりあえる力だって、きっとありますよ」
ムサシにしてはいい事を言うのですが、そこに迫る防衛軍の戦車部隊、そして、ローリング石井さーーーん!(が今回最大の見せ場)
「話し合いもしないで、乱暴すぎるぞ!」
「これが仕事なんでね!」
ムサシが侵略者に対して、過去に話し合いから入っていたのなら説得力があったのですが、異次元人を見るなり、それまでとは打って変わって勢いよく銃を抜いていたインパクトが忘れがたいわけで(笑)
勿論、その後の様々な出来事を経て、ムサシにも「変化」が……というならわかるのですが、正直今作、そういった「変化」の積み重ね表現が上手くないので、どうしても、序盤の対応の印象が勝ってしまいます(そういう点で、個人的に今作において致命傷となったのは、第11話「動け!怪獣」)。
敵性異星人といえども拳で解決するばかりではなく和解の道を探ろうとすること自体は悪くないと思うのですが、作品全体の積み重ねからすると唐突になってしまったのは、残念。
いやあいつ、思い切り侵略してきた連中の仲間でしょ、というフブキの態度の方が当然に見えると同事に、フブキがそうである事により、“チームアイズ全体の「変化」を描いている”わけでもなく、結局、周囲のキャラクターの大半が、その場その場の都合で、“ムサシの言行を引き立てる為の小道具”になってしまうのが、終盤まで修正できなかった今作の短所かな、と。
翼女にシンパシーを示すリーダーも、それにほだされ始める翼女も、いずれも大変唐突で、カワヤの存在を含めたリーダーの心情にスポットを当てるならそちらへ、異星人との対話の道を選ぼうとするムサシにスポットを当てるならそちらを、どちらか一つに絞ればまだ違ったかと思うのですが、まとめてやろうとして船が山に登ってしまうのが、なんとも『コスモス』。
共生生物が、ムサシ×コスモスの関係性を「共生」と指摘し、「あんたは共生相手の指示に従って生きているのか」と問うくだりなどは面白かったので、そちらを掘り下げた方がまとまりは良くなったと思うのですが、リーダー×カワヤ派のデモ行進に押し流された感もあります。
コスモスは戦車隊の攻撃から異星人を守り、リーダーに説得された石井に開放された翼女が異星人と融合すると地球を離れて飛び去っていき、アイデアの良かったギリバネスの再来・侵略者視点の復讐・根無し草となった共生生物の孤独と悲哀と相互依存・敵性宇宙人との和解交渉・防衛軍特務部隊の心境変化……と一つ一つの要素は面白くなりそうなポテンシャルがあったのに、欲張りすぎて焦点が定まらず、どれもこれもピントがぼやけた内容になってしまいました。
今作の原田監督は出来不出来が激しい(というか、基本的に作品コンセプトを消化しきれていないのを感じる)のですが、最終決戦編を前に、名手としては余りにもまとまりの悪い、残念な出来でした。ラスト前に途中まで役名さえなかった石井(役者さんの名前そのままではありますが)に見せ場を作るなど、サブキャラへの目配りは、良いところなのですが……。
次回――帰ってきたカオスウルトラマン。