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コスモス二番底

ウルトラマンコスモス』感想・第51話

◆第51話「カオスの敵」◆ (監督:根元実樹 脚本:梶研吾 特技監督:佐川和夫)
 カオスヘッダーの迎撃に向かうアイズだが、そこに突如として宇宙から巨大怪獣が飛来し……どこをどう見ても、河童は本当に居たんだ!!
 カオスヘッダーからキノコカッパ怪獣を引き離そうとするアイズだが、なんと怪獣は、憑依しようとしたカオスヘッダーを逆に捕食し始めて、一同唖然呆然。
 カオスヘッダーさんが慌てて逃げ出すと怪獣は地下へと姿を消し、その体内にはカオスヘッダーを分解消化する酵素が含まれており(どうやって分析したのか凄く謎ですが、地下に潜った際に地面に細胞片でも残留していたのでしょうか)……キノコカッパはカオスヘッダーの天敵なのかもしれない、と第51話にして、物凄いちゃぶ台返し
 アイズは、カッパ酵素が対カオスヘッダーの切り札になり得るとして、研究分析の為に今回は市街地に多少の被害が出ても目を瞑って、怪獣を無傷で捕獲したいと防衛軍に申し出、佐原司令はそれを承諾。
 今日も無駄に前のめりな西条武官は、アイズの行動次第で新型の怪獣殲滅兵器の使用をほのめかし、防衛軍を雑な悪役として描いてきたばかりに「目の前の生活を守ろうとする防衛軍なりの信念」ではなく「ただ新兵器を使いたい人」としてしか描けない歪みが、ひたすら辛い。
 カオスヘッダーの飛来に合わせてカッパキノコが再出現し、捕獲を試みるチームアイズだがレーザーラックも無効化され、いざ本格的に捕獲作戦が始まると、この1年間、ろくに捕獲装備を強化していないので、ミッションの顛末で盛り上げられないのが、辛い。
 目標が「怪獣の撃破」の場合、最終的にはウルトラマンが活躍するにしても、防衛隊ポジションによる「ある程度のダメージを与える」「避難誘導など別の仕事」を描くことが出来たのですが、目標が「怪獣の捕獲」である場合のウルトラマンをサポートする「ある程度の捕獲(とは何か?)」の方法論が確立できず仕舞いのまま、「戦闘機は強化されるが捕獲用装備は特に強化されずほとんど無効だが、防衛軍の新兵器には何かとケチをつける」集団になってしまったのは、返す返すも、辛い。
 テックサンダーを次々と撃墜した怪獣がカオスヘッダーを追って向かう先には防衛軍の弾薬倉庫があり、倉庫が破壊されるような事があれば、周辺一帯の街が火の海に。
 撃墜され組は「あちゃー!」とか言っている場合では全く無いと思うのですが、どうしてあなた方、この超重要な作戦の失敗直後に、緊迫感皆無なのか(これは演出が悪い)。
 唯一残ったヒウラ機がカッパの前に立ちはだかるが怪獣の前進は食い止められず、防衛軍はやむを得ず新兵器の使用を決断。
 だが発射直前、ヒウラと旧知であり、強力すぎる怪獣殲滅兵器を作り出してしまった事に悔悟の念を抱くハズミ科学主任(演じるはヒウラキャップと同じく80年代ヒーローだった筒井巧)が、怪獣の前に飛び出す事で、発射を阻止。
 それに気付いてハズミを止めようとするヒウラだが、ハズミは命を懸けてでも殲滅兵器の使用を妨げようとし〔ハズミの命・禁断の兵器・対カオスヘッダーの希望・大規模な周辺被害の可能性〕と、取捨選択の天秤に3つも4つも皿を増やしすぎてわけのわからない事になっており――恐らく、故意に混線させて眩惑しているのですが――、ハズミを止めれば新兵器が撃たれるし、新兵器が撃たれなければ周辺一帯が火の海になるしの状況で、大事の前の小事、と人類の未来(カオスヘッダー撃破)の為には多少の被害はやむを得ないと決断したキャップがハズミの命は助けようとするので、個人の感情論としては至極当然であるものの、1エピソードの筋としては支離滅裂な事に。
 一応、「ハズミを救う」のも「カッパを捕獲する」のも、“人類の未来の為”としてキャップの中で筋が通っているように見せているのですが、それを両取りする為には「アイズがとっととカッパを捕獲する」しか無いので現状唯一働けるキャップが戦闘機を降りてはいけない、という致命的な落とし穴にはまっており、極限の葛藤と選択を描こうとしているというよりは、チームアイズは常に善玉である事を崩せないが為に、局面Aにおける善玉アクションAと、局面Bにおける善玉アクションBが、相互に矛盾を孕んでいるのにどちらも正当化しようとして、ただただ変な話に。
 ヒウラとハズミが揉めている間にもカオスとカッパの激しい攻防が続き、飛び出したムサシはコスモスに変身するが、その間隙を突いて発射される新兵器。
 直撃を受けたカッパは新兵器の効果により細胞核を破壊されていくが、それによりカッパ酵素が失われた事でカオスヘッダーの憑依を受け、頭の皿からトゲトゲが生えたカオスカッパが誕生。
 尻尾でびしばしされたコスモスはイクリプスし、挿入歌に合わせて、ウルトラカラテ全力全開。
 電光石火の飛び蹴りから、尻尾を掴んでの巻き込み投げ、更には飛び二段蹴り、と壮絶な肉弾戦の末にカラテバーストでカオスヘッダーを浄化するが、カッパキノコは新兵器の効果によって倒れ、カッパ酵素は人類の手から失われてしまうのであった……。
 「カオスヘッダーに対抗できたかもしれないものを……」
 歯噛みするヒウラは、防衛軍の作戦室に乗り込むと西条を殴り飛ばし、え……。
 怪獣の捕獲に失敗した上、ハズミを助ける為に機体を降りた時点で新兵器の発射を受け入れたも同然であり、もはや完全に、ただの八つ当たりによる暴力行為でしかないものを、まるで正義の筋を通した、みたいに描かれて目が点。
 「おまえは、人類の希望を握り潰してしまったんだぞ……わかってるのか!」
 西条も西条ではあるのですが、キャップは本気で、カッパ捕獲の為なら周辺の街が全部火の海になってもOKだったの……?
 “長い目で見れば……”目の前の被害に目を瞑ってでもカッパ捕獲を優先すべき、というキャップの考えには一理がありますし、“長い目で見れば……”はアイズの行動理念でもあるわけですが、それにしても、さすがに今回の展開で西条に全責任を押しつけるのは無理がありすぎで、アイズを善玉として描く為に「周辺地域が火の海」問題が都合良く無視されているのが、大変タチの悪い話運び。
 大体、アイズに任せていたら「周辺地域が火の海」どころか被害が拡大する一方だった可能性も棚の上に放り投げられており、とにかくアイズと防衛軍の関係を、“相互の信念に基づく価値観のぶつかり合い(落としどころは探しうる)”ではなく“わかりやすい善玉と悪玉(落としどころは無い)”として描く事による歪みが、手がつけられなくなるばかりです。
 これならいっそ、カッパ捕獲の為に防衛軍に協力を要請し共同作戦を展開するが、暴走した西条が新兵器を発射してしまう……とかの方がまだ筋が通ったと思うのですが、キャスト面の都合などありそうにしても、その場その場で雑な悪役にはする割に、西条を徹底した悪として描く(退場するほどの行動を取らせる)覚悟が無いのも、延々と中途半端。
 ハズミは防衛軍に見切りをつけて辞意を示すと、開発者として禁断の兵器の解体をアイズに約束するのですが、そんな権限は無いような……というか、今、捨ててきたばかりのような(笑)
 個人的な引っかかりの大きい防衛軍問題を脇に置くとしても、今回のカッパ怪獣に対してアイズは「保護」するのではなく、「研究材料」にする気満々であり、人類の役に立つか立たないかと関係なく同じ地球の命として怪獣を保護しようとするのと、人類に役立つからなんとしても捕獲しようとするのは拠って立つ理念が全く違う話で(それこそ先日「資源活用」のエピソードがあったりしたわけで)、『コスモス』のコンセプトとしても大きく外した印象。
 そこに疑問を抱かない(これも都合良く無視される)ムサシの姿も、カオスヘッダーを倒す為なら怪獣を実験動物扱いでもいいのだろうか、と首をひねるもので、カオスヘッダーの天敵を始め、見なかった事にした方が良い気さえするエピソードでした。