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一戦闘完全燃焼主義

仮面ライダーバイス』感想・第9話

◆第9話「カゲロウ暴走!五十嵐兄弟…崩壊!?」◆ (監督:坂本浩一 脚本:木下半太
 「大二の中にも悪魔が居たってわけよん。人は見かけによらないっていうじゃなーい」
 「あの大ちゃんに、悪魔……?」
 バイスの説明に呟くさくら、その反応だと、一輝なら悪魔が居てもおかしくないと思っていたようにも取れますね!
 一輝・さくら・一輝父は、大二のデビル化について深刻な表情を付き合わせ、これまで散々、素っ頓狂な人格として描かれていた一輝父が、“優しくてタフな”母親を描く為に、いきなりごくごく普通のリアクションを示しているのが、大変残念。
 別に父親の奇人変人路線が好きだったわけではないのですが、父親の奇人変人キャラは、母親の存在感をアピールする為にならあっさり足蹴にする程度のものでしかなかった、のがとても残念で、制作スタッフへの信頼感ゲージがゴリゴリと削られていきます。
 カゲロウがデッドマンズから新たなスタンプの払い下げを受ける一方、一輝は若林から、エビルの正体がうちの人間だとバレると隠蔽工作とか面倒くさいのでさくっと始末してこいと命令を受け、いくら雇用契約を結んでいるとはいえ、つい先日まで市井の一般人であった事を考えると、フェニックスの在り方そのものに強い疑念や反発を抱いてもいい命令だと思うのですが、その部分は無視して肉親の情の問題として処理されてしまい、開幕から全方位にフルスロットルで雑。
 第3-4話で謎の地上げ屋フェイズの挿話がありましたが、もういっそ最初から、銭湯をかたにフェニックスに所属を強要された(家族には隠している)、で良かったのでは。
 狩崎からカマキリスタンプを押しつけられるも悩める一輝だが、そこに入ってくる門田。
 「エビルは俺が倒します」
 「俺には無理だって言いたいんですか?」
 今の今まで悩んでいたのに、何故噛みつく。
 「俺ならエビルにトドメをさせる。おまえにそれが出来るのか」
 「……それは……」
 門田にビシッと言われると口ごもり、すっかり情緒不安定の一輝だが、街にブラキオデビルが出現すると二人で出撃していき、残ってモニターを見つめる狩崎は、デッドマンの背後に潜むカゲロウの姿をズームアップ。
 「私の目に、狂いは無い筈なんだけどね~」
 「……食えない男だな」
 フェニックス上層部は胡散臭い路線を隠さず、どこに転んでもどうにでもなる感じ。
 「我が命を懸けて、世界を守る!」
 地上に降りた一輝と門田は市民を避難させながらデッドマンズと激突し、門田さん、一戦一戦に全力投球すぎて、その内、肩と肘が再起不能になりそうで心配になります。
 ブラキオデビル(長い首の表現と下半身もふもふの為に、ほぼマンモス)の相手を請け負ったリバイにしばらくソロライブの見せ場が与えられ、カゲロウの後を追うも構成員に邪魔をされたリバイはカマキリスタンプを発動…………って、足止めしているバイスを、喚んだら駄目では。
 頭に血が上っている表現の一貫だったかもしれませんが、一輝が考え無しにフォームチェンジして足止めを担当していたリバイが戦闘を中断されるパターン、回数を重ねるほどに、被害の拡大に繋がらないのも不自然だし、被害の原因にするには安易になるので、状況設定そのものを避けた方が無難なような。
 鎧武モチーフのカマキリフォームは、武器もソニックアローなので、もう完全に、DLC追加カラーの鎧武。ミカン部分担当のバイスと共にライダー組み体操カマキリでブラキオを撃破するリバイだが、カゲロウの行方を見失った上に、フェニックスから完全にエビル=カゲロウを敵認定する通達を受けてしまう。
 フェニックスの命令も、それに対して煮え切らない一輝の態度も気に入らないさくらの連続回し蹴りが狩崎……じゃなかった、空手道場で唸りをあげ、OPのクレジットを見る限り、さくらに話しかける(以前にも話しかけていた)空手仲間は牛島息子のようですが、もう少し個体認識をしやすいキャラクター(演出)にした方が良かったのでは。
 そして、空手仲間に既に胡散臭い人物が用意されていた上にフリオについては一切の言及が無く、いったいぜんたい、フリオの道場潜入とはなんだったのか。色々と拡張しがいのある要素がざっくりゴミ箱行きになったのも大変残念ですし、そもそもフリオと牛島息子が被っていたのも首をひねる展開で、どうして話数一桁台から、即興リレー小説みたいになっているのでしょうか。
 フェニックスの命令と家族の情で板挟みの一輝は、「大二を信じる」と口にはしながらも何をすればいいのかを見出せず、五十嵐家における大二の喪失を深刻に描かれれば描かれるほど、ノーマル大二期間の不足が響いて、噛んでも噛んでも味がしなくて辛い。
 戦闘現場に出てくると足手まといになりかねないのは確かですし、一輝に対する信頼の表現と言えば聞こえがいいですが、両親が二人揃って「大二を助けてあげて」と一輝に丸投げなのも大概酷く、ここで多少、傍から見て愚かでパフォーマンス的でも強い愛情を行動でアピールできるのが、フィクションの強みだと思うわけなのですが(これだと、あの嘘っぽさ満載だった第4話の母親以下の対応になってしまうわけで)。
 「大二、ここが一輝の墓場だよ」
 水面に映った大二の姿を踏み砕いたカゲロウは、振り込め詐欺グループから生み出した、首・大砲・ドリルとバージョン違いのブラキオデビル1・2・3号を放ち、ブラキオサウルスアイデンティティが(笑)
 デモンズ(モグラハンコを用いて、右腕から生えてくるデビルドリルを披露)とバイスがブラキオ3体と戦っている間にリバイはエビルの中の大二に懸命に呼びかけるが、それを嘲笑うエビルは、大二の精神は既に粉々に砕け散って消えた、と重ねて強調。
 「教えてやるよ、俺が生まれたのは一輝、おまえのせいだ」
 常に場の中心に居る一輝に対してコンプレックスを抱え続けながらも、フェニックスに志願して仮面ライダーになる事で自らの場をようやく得たと思ったのも束の間、それを横からかっさらっていた一輝の方が仮面ライダーにふさわしいと思ってしまった事により己のレゾンデートルに深刻なダメージを受けた大二は魂の主導権を失ったのだ、とカゲロウは懇切丁寧に説明し、
 「おまえが、おまえが大二の未来を奪ったんだよ!!」
 ……台詞に込められた感情表現を見るに意図的なものかもですが、もはや、保護者目線。
 大二の抱えていた鬱屈を代弁しているというか、おまえもうちょっと弟の事をわかれと説教モードに入っているというか、一周回ってこれはもう、いい人なのでは。
 「違う……違う!!」
 カゲロウの言葉を頑なに否定するリバイは再びカマキリを発動するも、二本角のエビルジャッカル(龍騎モチーフ? あと、第一印象がゴーストだったエビルが、段々ブレイドに見えてきました)に蹴散らされ、ノーマル状態に戻ったリバイが、エビルの挑発を受けて必殺キックを放ったところで、つづく。
 監督ごとにキャラ解釈や演出ラインがコロコロ変わって作品に一体感が見えない事には既に定評のある『リバイス』ですが、立ち上がり早くも5人目の監督、ポイ捨てされていく諸要素、一貫して不安定なキャラクターたち(バイスが急に気の利く世話女房キャラになっているのも割と謎ですし……)、とスタッフに信頼感を持ちたい時期にむしろ信頼感を削ぎ落としていく作劇が続き、黄色信号が激しく明滅。
 (《平成ライダー》文脈におけるこの言い回しはあまり好きではないのですが)これが本当のライブ感だ! みたいな事になっていますが、次回――ああ、坂本監督の本命はそこでしたか。