『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第29話
◆第29カイ!「王子のねらい、知ってるかい?」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)
見所は、爆発させればなんとかなるメソッド。
……なんというかこう、絵面がどんなにギャグでも、リアル爆発には謎の説得力が生じるな、と思うわけであります。
「やるからには勝って、おまえをカラフルに連れて行く!」
配達中の介人に問答無用で襲いかかるステイシーザー、と時同じくして、サーブを当てた相手をテニスボールに変えてしまうテニスワルドが街に出現。
「はははははは、この世界を、テニスで満たしてあげるテニス」
ヤツデが直接被害に遭う珍しいパターンで、マジーヌに運ばれてきたヤツデボールを目にした紫は戦闘を中止して姿を消し、「テニスでしかダメージを与えられない」テニスワルドを倒す為、介人たちはゾックスの指導でテニスの練習を行う事に。
「K.Oじゃねぇよ。格闘技じゃねぇんだぞ」
「テニスは格闘技だろ?」
島本和彦みたいなこと言い出した。
「そっか! テニスでダメージって……そういう事か!」
介人も満面の笑みで納得し、そうです、此の世の森羅万象は、全てコロシの技に通じるのです。
かくしてゼンカイジャーは地獄テニスの特訓に励み……腹筋……クライミング……白装束に身を包んでラケットで居合い……滝行…………
「なぁなぁ、ぶっちゃけ、俺ら、何してんだっけ?」
ラケットによる居合い斬りの映像にジュランのツッコミが被るのが面白く、テニスによる合法的な殺人技術の習得に励むゼンカイジャーの姿を、サトシが見ていた。
(奴らは何をやってるんだ)
同じ「何をやっているのか」の重ねが、微妙なトーンの違いでまた面白いのが、秀逸。
(バラシタラに、また奪われるのか)
幼少期、母親と共に壁打ちテニスを楽しんでいた思い出を脳裏に描くステイシーは姿を消し、介人達は人々を次々とボールに変えていくテニスワルドに改めて勝負を挑み、地獄テニス後半戦、行くぞーーー!
爆発!
爆発!
爆発!
だが、ジュランたちは次々とテニスワルドの魔球の前に敗れ去り、頼みの綱の介人&ゾックスも窮地に追い込まれたその時、コートに乗り込んできたのは、テニスウェアに身を包んだステイシー。
「どけ。選手交代だ」
「……え? ステイシ……」
「サトシだ!」
なんかもう、「サトシだ」と言うだけで面白くて凄いなステイシ……サトシ。
「どういうつもりだ?」
「おまえらは基本がなってない。黙って見てろ」
介人&ゾックスはすごすごと引き下がり、代わってコートに立ったサトシは、テニスワルドを圧倒。仮面が外れてテニスの加護を失ったテニスワルド(この謎の弱点は、前作の邪面師オマージュなのでしょうか……今回、怪人の方向性がどちらかというと邪面師ですし)は、ゼンカイジャーの名乗り合わせの必殺攻撃を受けて消し飛び、ゲームセット。
「おい。おまえ、面白いところあんじゃん」
「……うるさい」
ゾックスと、友達フラグが(笑)
ステイシーを軟着陸させる場合、ゾックスとの距離感の問題は出る可能性があったので、一つこの先の布石になりそうです。
ヤツデの為とはいえ、思い切り真正面から身内の撃破に手を貸してしまったステイシーはトジテンドに戻って苦悩するが、その前に、イジルデの作り出した新たな実験兵士が姿を見せる――その名を、ハカイザー!!
前回のラストを考えると、あまりにも不穏すぎる新たな敵が登場して、つづく。
髪に見立てたテニスボールで縦ロールを表現し、デザインと断末魔は「お蝶婦人」だったテニスワルド、ゾックスがテニスを覚えたのがマンガからだったり、テニスシーンの演出などもふくめて、前回と1セット、といった感じの内容。
戦隊×テニスというと、冒頭でメンバーが楽しんでいる程度の扱いが何度かといった印象で、テニスクラブの地下で毒ガスを精製とか、テニスのコーチが車のフロントガラスを突き破って跳び蹴りとか、テニスのコーチが物理的に蒸発とかはありましたが、1エピソードまるまるテニスがメイン、はもしかしたら史上初だったりするでしょうか(見ていない作品にあるかもですが)。
逆に、戦隊×スポーツ、の花形といえば今作でもオマージュ要素がある「野球」となりますが、国民的スポーツとして確固たる地位を築いていた時代には、野球仮面、デビルバッター、デッドボーラー、と野球モチーフの怪人が次々と登場している他、近年でも『ニンニンジャー』や『キュウレンジャー』で野球回が存在し、スタッフの年齢もありそうですが、チームで戦える、静止時間がある、など、変わらず使いやすいモチーフであるのでしょうか。
次回――トジテンドの新戦力は大変不穏な一方…………柿?