『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第27話
◆第27カイ!「7つのセカイを大航海!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
や……柳葉敏郎が、巨大化している(番宣CM)……はさておき、捜索虚しく行方不明のままの美都子博士は、もしかしてアース-45以外の並行世界に居るのでは……? と考えついた介人たちは、ゾックス達の協力を仰ぎ、海賊船で並行世界へ出発する事に。
ブルーンがお留守番組はちょっと可哀想だな、と思ったら、他に目移りして人捜しの戦力にならない上に話がややこしくなるから駄目という理由に納得全開。
かくして黄青にアース-45を任せての並行世界巡りが始まって、どこにでもスーさんが居る、のは面白いアイデアとなり、カシワモチ、レトロ、そしてコオリトピアと訪ね歩くも空振りは続くが、介人はめげない。
「おまえ全然へこまないな。むしろ元気になってねぇか?」
「だって、世界が平和だから! 母ちゃんは見つかんないけど、解放できて良かったなーって。元気もらえる」
前回-今回と、夏の総集編を終えたタイミングでパイロット版監督に合わせて、後半戦スタート、といった内容なのですが、ステイシーの復活と、それにともなうゼンカイザーの再起、そして母逃走による新たな行動原理の設定、と来て、これまでの戦いの成果=解放された並行世界の姿を映像で見せる、のは鮮やかな構成になりました。
単純にこのエピソードの面白さ、という点だけでいえば、全員揃って異世界ドタバタ道中記にした方が面白かったとは思うのですが、今回の別行動そのものが次回以降の前振りになっているのが誠実な作りで、単発の面白さよりも全体の整合性を選んだ感。
「暢気なものだな」
そこに完全冬装備のステイシーが姿を見せると、美都子博士を探す砕板部隊が各世界で暴れている事を語り、それとなく情報を漏らしてくるサトシーーーーー!!
「俺たちとそっちで手分けして、トジテンドを倒しに行こう!」
「俺はおまえだから協力してんだ。よその世界まで助けてやる義理はねぇ」
美都子博士を探すのか、トジテンドを迎撃するのか、意見の分かれるゼンカイジャーと界賊一座だが……マジーヌの、美都子が見つかれば解決なのに、の一言にひらめキング。
キノコトピアに乗り込んだ一行が美都子博士を発見したとの報告が、ゴミ・ドア・ジシャクトピアを駆け巡って「7つのセカイ」のノルマが達成され、砕板部隊が集まったキノコトピアで見つけられた美都子博士……はマジーヌの変身で、偽美都子の身柄をめぐって一当たり。
美都子を探す・世界を守る、両方を同時にやる為に介人が思いついたのは、「美都子はゼンカイジャーに助けられた」とトジテンドに見せつける事によりトジテンドが他の世界を襲うのを防ぐ事で、父ちゃん母ちゃんを探す、世界も守る、ステイシーの心も折る、とやりたい事を全部やるヒーローとしての行動が、ゾックスとの意見の違いの中から生まれたのは、綺麗な流れ。
一方で、全てを“飲み込む”系のヒーローになりつつある介人に対して、ゾックスが“飲み込まれる”一方になる危険性が出てきましたが、ヒーローとしての大きな転換を見せるのか、あくまでアウトローの立場から介人に負けない矜持を見せるのか、ゾックスの今後の描き方も期待したいところです。
「ヤツデの為だ……」
戦意の見えないステイシーザーは、美都子を奪われるに任せるが、イジルデの命令でブラックジュラガオを召喚する事となり、並行世界を移動中のワニ型宇宙船に襲いかかるブラックジュラガオ……って、これは、デスファイト!(『伝説巨神イデオン』)
亜空間でもつれあった両者は氷トピアに落下し、ゼンカイジュウオーvsブラックジュラガオ、凍土の大決戦は格好いい映像。
ゼンカイジュウオーは氷山を破壊する事でブラックジュラガオを生き埋めにすると必殺攻撃を直撃させ……2話で、やられてしまいました(笑)
一行は無事にアース-45へと帰還し、介人は留守番組のガオーンとブルーンに、トジテンドの目をアース-45に引きつけつつ、美都子を探しながら世界も守る、今後の方針を説明。
「ゾックス達も、これからもよろしくぜんかーい!」
「……ま、乗りかかった船ってやつだ」
「……あ! 代わりに、カラフルの代金、これから全部奢れよな」
「え? えちょっ……10%オフとかじゃ駄目?」
「「だめーーー!!」」
「そこは、財布全開、だろ?」
海賊船がタクシー代わり、はあまりにも親切全開に過ぎる(介人が界賊に寄りかかりすぎる)ので、ここでフリントが取引関係を持ち出してくれたのは、バランスの調節として綺麗に収まってくれて良かったです。……兄はなんかもう、流されるままになりそうでしたからね!!
余談:今回の日記タイトルは、「母親」絡みの印象深いエピソードを探して『動物戦隊ジュウオウジャー』第24話「よみがえる記憶」(監督:竹本昇 脚本:香村純子)から採ったのですが、割とギリギリまで、「しかしまさか……大和がお姉ちゃんそっくりの人と付き合ってるとはなぁ」とどちらにするか悩んでいた事をここに白状します。
《スーパー戦隊》×「母親」というと、80年代には親子の繋がりを主題の一つにした『フラッシュマン』『ファイブマン』もありましたが、00年代の『デカ』『マジ』『ゲキ』における「母性」の押し出しが印象深く、どちらかといえば「父性」の強いシリーズにおいて、塚田Pの「母性」三部作みたいなイメージがあったり。
エピソード単位だと、『電撃戦隊チェンジマン』第12話「ママはマーメイド」(監督:山田稔 脚本:曽田博久)が、傑作回。