『機界戦隊ゼンカイジャー』感想・第26話
◆第26カイ!「改造王子と闇の外科医!」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:香村純子)
「ゼンカイザー……久しぶりだな」
イジルデによる救命と再改造手術を受け、口笛風BGMと共にお洒落な新衣装でクールに格好良く現れたのに……
「ステイシー……良かったぁ! 元気だったんだ!」
満面の笑顔で詰め寄ってくる介人にいきなり上半身をのけぞらせ(横からのカットに変わるのが巧い)、3秒で! 崩された!!
「やめろ!」
「そうだよな……ごめん。こないだ俺が倒しちゃったのに」
介人、一応、自分の行為がかなりサイコな事に自覚があってホッとしました(笑)
雪辱に燃えるステイシーはさっそく暗黒チェンジすると、強化された右腕に盾を握ったステイシーザー2世へと変身し、介人の変身は待たずに攻撃してくるのが、きっちり悪役をやってきます。
介人が変身すると盾を投擲して攻撃し、これはもう完全に、キャプテン・トジテンド。
関節への銃撃から崩れた所に顔面膝蹴りなどえげつない攻撃を仕掛けてくるシーザーの頭上を取るも、至近距離から頭を吹っ飛ばすのに躊躇った白は反撃を受けて小型ミサイル――暗黒流星群――で吹き飛ばされるが、仲間達が駆け付けて、シーザーは一時撤収し、この一連のアクションシーンは、シーザー2代目の新装備を強調しつつスピード感もあって非常に格好良かったです。
ボッコワウスに手柄をアピールしようとするもイジルデに横からかっさらわれ、バラシタラにはいい笑顔で厭味を言われたステイシーは、抗議に向かったラボで、凍結された介人母を目撃。
不自然なほど落ち着きのないイジルデ曰く「別の世界からさらってきたサンプル」「科学者で少し知識を利用させてもらっている」「ステイシーを助ける為に人間の血が必要だったので、一時的に解凍した」との事で……これはもう、論文の盗用確定でしょうか。
ヤツデの言葉や表情を思い出しながらカラフルのおやつ券を手にしたステイシーは、何やらコールドスリープ装置の操作を始め……おやつ券の裏に書かれた「いつでも来てね!」が大写しなのが、えぐい、というか、ありふれた描写がこんなえげつない効き方をするとは夢にも思わず、何この邪悪な脚本家と演出家!
一方、介人はサトシ=ステイシーをヤツデに隠し通すべきかを悩んでおり、介人とステイシーの心情がヤツデを軸に絡み合ってそれぞれの行動原理を揺らし、爆発的に増大していくヤツデのヒロイン力。
2クール終了時点で、ヒロインが祖母はだいぶ予想外でしたが、東映特撮は過去にヒロインが日本刀はやっているので、ハイ。
「また迷ってんのか」
「……ゾックス」
「ヤツデが大事なら、今度こそちゃんとステイシー倒して、秘密は墓場まで持ってくしかねぇだろ」
ステイシーの覚悟も汲んだ上で、サトシくんは行方不明で処理するべき(とはいえこの「行方不明」が五色田家のトラウマ直撃の構造がまた巧妙な仕掛け)とアドバイスするゾックスには介人への気遣いと同時に、ヤツデへの配慮も感じられ、なんだかんだと餌付けされています。
「……でもさ……俺、嬉しかったんだ。また元気なステイシー見られたら……ホッとしたんだ」
対して、一度は覚悟を決めてステイシーを葬り去った事により、既にステイシー(サトシ)を失いたくない関係の中に入れていた事に介人が気付く、のは心情の流れとして非常に良かったです。
「……諦めて覚悟決めろ。でなきゃおまえがやられる。その方が、ヤツデも辛いと思うぜ」
「介人、こいつばっかりは俺も同じ意見だ。ステイシーの野郎、どんだけヤツデを慕ってようが、何度負けようが、おまえを倒そうって意志は変わんねぇんだから」
「…………うん」
ゾックスとジュランは選択を促し、ゾックスも追加されましたが、ジュランのフィーチャーは、決戦前の屋台のコンティニュー感もあり、すっと悩みを聞きにいける良識派のおじさんの面目躍如で良かったところ。
「見つけたぞ、ゼンカイザー」
そこにタイミング良くステイシーが現れ、小さな公園とブランコ、それを見下ろせる位置にある適度な高さのビル、と、よく見つかったなと感心します、このロケーション(笑)
暗黒チェンジした紫は、暗黒ジュランと暗黒ガオーンを暗黒召喚すると、なんと漆黒の巨大ロボ、ブラックジュラガオーンが誕生。……ままありますが、配色はこちらの方が格好いい(笑)
ブラックジュラガオの相手を痛快王が担当している間に、ゼンカイジャーvsステイシーザー&暗黒アバレマックス&暗黒スーパーゴセイレッドの戦いとなり、駆け付けたヒーローによる不意の銃撃を受け止めるだけで強敵感を出せて、ステイシールド、おいしい。
「たとえおまえが迷ってるとしても、俺たちは戦うぜ!」
介人とヤツデを守るため、赤黄桃青は前に立って変身。紫の攻撃を受けた介人は迷いを捨てきれぬままに変身し、戦いはよく見る気がする川の中に。
「僕は諦めない! 何度だって! ゼンカイザーを討ち取りに来る! 僕の目的の為に!!」
乱戦の中、執念を燃やす紫の猛攻に吹き飛ばされた白は、両親の言葉を思い出し……失敗も挽回、何回もトライ!
「そうだよな! …………俺だって、諦めなくていいよな! ちょわーーーーーーー!!!」
迷いを振り払った白は、銃弾の嵐をものともせずに紫へ突撃すると、パンチ、パンチ、全開パンチ!
「俺がずっとやられなかったら、いつか、おまえの気持ちが変わるかもしれない!」
「なにを言っている?!」
「ステイシー! またうちの店来いよ! ヤっちゃん、待ってるよ!」
「……うるさい!!」
「すぐには無理でも、俺も、諦めないから! だからみんな! これからも協力、よろしくぜんかーい!!」
ヤツデを軸に反響を繰り返していた介人とステイシーを、「諦めない」をキーワードに重ねたのが実に鮮やかな宙返りで、両親の思い出に後押しを受けながら(介人とステイシーで矢印が逆になっている部分でもあり)、立ち上がった介人がヒーローとしてステイシーを呑み込みにかかるのが、お見事。
顔面にパンチを、肝臓に膝蹴りを叩き込みながら、(ヤツデの感情を含めて)ステイシーを「握りたいもの」の中に収める事に介人が吹っ切れ、長らくこじれていたステイシー問題ですが、物語としての始末はさておき、介人のヒーローとしての立ち位置がはっきり定まって、ようやくスッキリ。
胸ぐら掴んで「またうちの店来いよ! ヤっちゃん、待ってるよ!」の言い方の明るさも、五色田介人/ゼンカイザーというヒーローの在り方を示していて良かったです。
「なるほど~。そっちの覚悟決めたわけね~。さすがだわ」
「介人が言うなら!」
「もち! 自分ら全力全開で!」
「お手伝いしますよ!」
戦闘アクションの途中に名乗りを交えながら、暗黒先輩ズを撃破した際の爆発を背後に背負っての「「「「「機界戦隊! ゼンカイジャー!!」」」」」は今作らしいナイスアイデア。
その頃、イジルデラボではサトシによって解凍された介人母が目を覚まし、ばったり出くわしたイジルデに「ちょわーーー!!」(親譲りだった)を放つと、慌てたイジルデがひっくり返った隙に逃走。
暗黒流星群を20バーンの力による超高速メカニックで解体(そこを拾うか!)された紫は、胸の歯車をバトルバズーカに変形させて必殺の一撃を放とうとするが、砕板係長補佐から「あの女が、並行世界間ゲートを使って逃げた」と急報が入って水入り。
「あの女って……」
「…………おまえの……母だろうな」
捜索の任を受けた紫は撤収し、残ったブラックジュラガオは、ゼンカイジュウオーのマックスブラスターを悠々と亜空間回避&反射すると姿を消し、必死に母を探して走り回る介人だがその行方は杳として知れず……つづく。
次回――母を探して異世界行脚。なるほど、解放したトピアをこう見せるか!