もうちょっとスッキリ涼しくなってくると、脳内歯車がカチッとはまってきそうな気配があるのですが、だらだらと充電中な感じでしかし、油断していると11月には『真・女神転生5』が出るので、そろそろ調子を取り戻して積み上がる録画関係と向き合いたいと思う今日この頃であります。
読書スイッチ入り中
●『聖遺の天使』(三雲岳斗)
煙の中に聖母子像が浮かび上がる奇跡の香炉、その所有者である建築家が、まるで磔刑にされたかのよな不自然な死体となって発見される。更に現場では“天使”の姿が目撃され――15世紀ミラノを舞台に、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが探偵役を務める長編ミステリ。
ライトノベルジャンルでのヒット作を複数出している著者だけあってか、ミラノの宰相ルドヴィコ、その愛妾と囁かれる謎多き美少女チュチュリア、そして気まぐれな天才レオナルド、といったメインキャラクターへの魅力の付け方が巧み。
ミステリとしては、なにぶん探偵役が探偵役なので、謎を解く過程よりも、謎の背後に立ち現れる物語、の方を重視した感のある作り。
まあまあ面白かったです。
●『消失!』(中西智明)
赤毛の人が多く住む奇妙な街、高塔市。その街で美しい赤毛に異常な憎悪を燃やす男の手により、次々と殺害される、マリー、裕二、純……だがいずれの事件においても、犯人も、凶器も、そして死体も、全てが忽然と消失してしまう!
謎めいた3つの消失事件に挑む、名探偵・新寺仁の活躍を描く、長編ミステリ。
三重ぐらいの仕掛けがある作品で、メイン(?)のトリックは、成る程、と感心。
●『未明の家』(篠田真由美)
ふと思い立って、今更ながら初の、建築探偵桜井京介シリーズ。
面白くないわけではなかったですが、好みの方向性とは違う感じ。
話の内容、ではなく、物語の構造に微妙に既視感があるな……と思ったら、読んだばかりの『聖遺の天使』が似た構造で、発行年を考えると『聖遺の天使』が桜井京介シリーズを意識していた部分はあったのかも、と。
●『法月綸太郎の功績』(法月綸太郎)
短編集。
だいぶ昔に呼んで肌に合わなかった法月綸太郎に再挑戦してみたのですが、やはり合わず。
●『酒呑童子の誕生』(高橋昌明)
「酒呑童子」とは何か――それは、疫神である、と置いて、酒呑童子伝説の意味づけや成立過程を様々な資料から紐解いていき、なかなか面白かったです。
●『中国侠客列伝』(井波律子)
『史記』より「刺客列伝」に始まって、“侠の精神”の観点から中国史を辿り……中国古代史で物語られる人物には色々とぶっ飛んだ人が多いですが、恩人の遺した幼子を守る為「今ここで死ぬのと、その子を追っ手から守りながら育て上げるのと、どちらがより難しいだろうか」「後者の方が難しいだろう」「よしでは、私が囮にとなってここで先に死ぬので後は任せた」みたいなぶっ飛んだ話が次々と出てきて、面白かったです。
前半は史書に基づき、後半は『水滸伝』を中心にフィクションの世界の“侠”を取り上げた構成も読みやすく、最後は近代中国に見える“侠”の精神に触れ、興味深い一冊でした。