『仮面ライダードライブ』感想・第38話
◆第38話「悪魔はなぜ進化を求め続けるのか」◆ (監督:舞原賢三 脚本:三条陸)
「俺の目的はただ一つだ。創造主である人間を、真っ正面から打ち破り、支配する事だけだ」
「人間を支配する……滅ぼすんじゃないのか?」
「ああ。滅ぼしたって、俺たちの強さを見せつけてやれないだろう」
傷ついた進ノ介を前に、切り株にどかっと腰を下ろすハート様、意外と話がわかる人、みたいな見せ方になっていますが、いや全然、駄目な人だぞ……。
「それに、おまえみたいに面白い奴も中には居る」
「……だったら……戦わずに済む方法は無いのか?!」
案の定、話し合いで解決しないのか、とか言い出す進ノ介ですが、いやその人、基本的に「支配する」って言っているからね?!
「……無いね。……俺たちは戦い、進化する。人間の歴史と同じじゃないか。……いや、違うか。俺は人間を越えるぞ、泊――進ノ介」
ここしばらくは、ハート様のこういった台詞回しの格好良さが、作品を助けている感。
「……ハート……不思議な奴だ。……チェイスもそうだったが、おまえは前からただの悪党には見えなかった」
「そりゃそうさ。こっちは元から悪のつもりはない」
うーん……“悪”とは相対的な観念に過ぎない点が再浮上するのですが、進ノ介/ドライブはあくまでも「人外の犯罪者」という視点しかなく、「種族単位」でものを見ているハートとは大きくズレがあり、それが意図的なものなのかどうなのか、とにかく延々3クール、進ノ介が「ロイミュードとは何か?」についてほぼ考えないで進んできている為、その部分の衝突が物語の魅力や面白さに繋がってくれません。
メディックの気配を察知したハートは、ベルトが無く戦えない進ノ介を捨て置いて去って行き、ハート様はどこまでも不良バトル脳。シュプリムを見張る特状課によりクックミュードの正体はオーナーシェフ、融合していたロイミュードは助手の女そのものと判明し、
「君達になんかわかるものか。味の進化に頂点など無いんだ!」
料理人の渇望する味の進化と、ロイミュードが求める進化を掛けたのは、うまくはまりました(『ドライブ』名物サブタイトル倒れではありますが)。
剛は黄金のタレを手に入れたメディックの前に立ちはだかり、久方ぶりの
「追跡・撲滅・いずれもマッハ!」
最近あまりにも扱いが悪かったので久々にこれを入れてくれたのは良かったですが、直後、メディック竜巻に打ち上げられる事に(笑)
3ライダーvsメディック&クック&死神ミュードが激突し、今回も挿入歌を重ねて盛り上げようとしてくるのですが、現状ドライブTRが突出しすぎて、マッハとチェイサーが雑魚の露払い係にしかならないので、どうにも盛り上がりません。
「ハートの為、だったのか……」
黄金のタレが砕け散り、泣き崩れるメディックにトドメを刺そうとするマッハだが、思わずそれを止めてしまうドライブ。
「ロイミュードにも誰かを愛する気持ちがある。そう思ったら、せめて正々堂々戦うべきだ」
……愛・無罪が発動しなくて心底ホッとしましたが……いったいぜんたい、進ノ介基準における「正々堂々」とは。
「人間を脅かす限り、俺はおまえ達と戦う。そして倒す!」
「……それでいいのさ」
現れたハートに対して、「人類社会の法秩序に従い、市民を守る為に戦うヒーロー」として立ち位置を改めて明確にして叩きつけるのは、妙なブレ方をしなくて良かったですが、ではそのヒーロー性を魅力的に描けていたのか? といえば、3クール目の方向性はやはりズレていたのではないか、戦わせる相手を間違えていたのではないか? と思うところです。
どうしても「秩序」の「内部の敵」を描くのならば、せめて最後の敵にした方が良かったかな、と。
「今分かった。一番大事な事が。やはりおまえこそが、俺にとって最高の相手だという事だ!」
興奮したハート様は、黄金の輝きに包まれ、超進化。
「約束の数は、超進化体が4。俺とブレン、残るはあと――二人」
と、意外と少なかった約束の数が公表され……正直、ここしばらくの『ドライブ』は淡々と面白くないのですが、あまりにも情報を隠しすぎて、ロイミュードの向かう先の手がかりが少なすぎる・主人公が敵に対してほぼ何も考えない・剛とチェイスはひたすら便利キャラ、をベースに取って付けたような展開ばかりで辛い。
「ロイミュードと人間……さーて、どちらが勝者になるのかな?」
一連の戦いを見つめていた、どこかで聞いたような声の謎の男が、他人事のように呟いて、つづく。